※この作品はR-18です。

Dirty Works   作:空薬莢

49 / 59
初めよう、新たな記憶を。
紡ぎ直そう、本当の恋心を。
その為にまず、証を残そう。



Таяние Снега

翌朝――

いつものように、陽光に釣られて目を覚ますと…………身体が重かった。

その上、微妙に発汗もしている。

(昨夜も暑かったからな……って、違う)

原因は分かる。

首を動かし――原因(ソレ)を確認。

「…………」

幸せそうに寝ているノルシェ。

全身で俺に絡み付いて、寝ている。抱き枕じゃないんだが?

(……いや、そういうモノなのか?)

彼女にとっての彼氏というのは。

…………。

違う気もする。

(何にしても、早く起きてくれないか……)

脚も絡められている為、起きれない。

……振りほどくにしても、床に叩き付けるぐらいか。起きないだろうけど。

(こういう場合、起こす方法は…………接吻がだったか?)

違う。それは頭の中が花畑化した恋人のやる事だ。……そこまで堕ちる気は無い。

「……起きろ、ノルシェ」

耳元で言う。

「……っ!?…………すぅ……」

が、一瞬擽ったそうに悶えただけで、起きやしない。

(…………図に乗るなよ)

生憎と俺は、まだ恋(・)人(・)ご(・)っ(・)こ(・)に付き合ってる状態だ。

お前の事を嫌いではないが、今は起床させろ。

口で分からないならば、やる事一つ。

「Ура!」

気合い一発、横回転から絡み付いたノルシェを床に叩き付ける。

「へみゅうっ!?」

なんとも言えない声と共に、彼女の戒めが解け、起床。

タンクトップを着て、何時ものジャケットを羽織る。

「……酷い」

一方で、頭を抑えながら、欠伸混じりに俺を見るノルシェ。蔑んだ目だ。

「起きない方が悪い」

「セルゲイの抱き心地が良いから」

「…………一般的に考えれば、その理由は性別が逆だ」

男の身体の何処が、抱き心地の良さに繋がるというのか。

温もりか?それこそ、女の方だろう。

「……そう?」

小首を傾げられた。

「疑問で返すな」

疲れる。

「質問が悪い」

そう言って、ノルシェは立ち上がり部屋を出ていく。

……正確には出ておらず、昨日壁の一部を破(・)壊(・)して繋げた自室へと移動しただけだ。

「……日課の準備をするか」

俺は日課たる射撃訓練の為、武装の用意を始める。

壁際のラックに近付き、まず手に取るのは9.6㎜口径バトルライフル《AA KrG37》。

今まで使用していた7.62㎜の《KrG35》も悪くは無いが、既に骨の髄まで感覚が染み付いている反面、《KrG37》は使い始めて日が浅い。更に日が浅い11.2㎜口径の《KrG38》は、弾速と破壊力の関係上、射撃場で使用しづらい故の選択。

……とはいえ、念の為《KrG38》も取る。

続いて、9㎜自動式拳銃《AA AP04》と、11.5㎜自動式拳銃《AA AP04-KrS》をホルスターに入れ、装備。

各種弾倉も持ち、自室を出る。

他のメンバーの予定を思いだしつつ歩き、談話室に着く。

まだ、早朝。起きている奴は限られるだろう。

(……寝てる奴はいるだろうがな)

中佐の“飼い猫”とか、な。

入室。

中にいたのは――

「あ、セルゲイさん。おはようございます」

フィアと、

「んぁ?なんだ隊長かよ。起きんの早いな」

アランだった。

二人とも、各々が改良したらしい野戦服を纏い、装備の確認中。

(……あぁ、依頼が入っていたな)

内容はエリアRos SSE近郊で活動するチンピラ集団の“排除”。

この場合の排除は、蝋(・)燭(・)の(・)火(・)を(・)消(・)す(・)という意味だ。

不安要素はフィア。人を撃てない餓鬼には荷が重い。本人が克服した、と言っていても不安要素に代わりはない。

(……死んだら、所詮はその程度の個体だっただけ、だ)

アイツにも軍上層部は絡んでいるだろう。強化個体であったのだから。

「しっかし大丈夫かよ?人撃てねぇ餓鬼が、こんな依頼の要員なんてよ」

「だ、大丈夫です……よ。きっと」

「……ホントかよ。“人形”が相手とは限らねぇぜ?…………ま、殺れねぇ場合は隅っこで震えてろ」

……口論を聞く限りは大丈夫そうだ。

(ここに用は無いな)

加熱し始めた口論を背後に、談話室から外に出る。

 

数分後。

いつもの射撃場に先約がいた。

しかも、長距離射撃区画。

俺やノルシェぐらいしか使わない区画。

銃声。

(……この音、6.8㎜MBか)

と、なると銃種は狙撃銃か選抜射手ライフル。

ノルシェは.338以下を狙撃用に用いない筈だから……。

(天樹、か)

アイツ、役割上は選抜射手か、分隊支援要員だからな。

区画に入ると、案の定というか、伏射で6.8㎜マークスマン・ライフル《AA SG36-S》を扱う天樹がいた。

約400m先の標的を一瞥。

着弾痕があるのは、頭部と胸部だけ。

腕を上げたな、天樹。

だが、射撃間隔が一定。

それでは、駄目だ。

「集中するのは構わないが、それでは殉職しか待たんぞ、天樹」

「…………え?」

忠告が聞こえたのか、指を止めた天樹が俺を見る。

「おはよう……ございます……セルゲイさん」

「あぁ。……天樹は早く、確実に殺れる方だが、反復練習はそろそろ卒業しておけ。必要な火力を、必要な時に。……それが天樹の役割だ」

諭すように言い、 《KrG37》を構え、初弾装填。

上部レールに装着した《AA ZF11-ZS 1.5-8x35㎜スコープ》を覗き、照準修正。

三度発砲。

着弾。

頭部右眼窩、左側頭部、鼻骨。

即死だな。

固まっている天樹を見下ろし、

「まだまだ厳しいだろうが、このぐらいの技量は持ってくれ」

再び諭すように言い、射撃再開。

1弾倉分を撃ち切るが、結果は然程変わらず。

現実的にはかなりの結果かもしれない。……でも、俺としては『400mでこの様』という感じだ。

「ブレが大きいな……今日は風が強いか?」

風を感じながらそう言うと、

「……違う。慣れていないだけ、だと思う」

背後から横槍を入れられる。

ノルシェだな。

振り返る。

やはり、ノルシェだ。

グラナデが背負うような大型コンテナを担いでいる。

「《KrG38》や《PB16MF-PAel》等は、AA社曰く、先行モデル。今後は電磁投射兵装を増やしていくらしい。……技術革新で、蓄電池の放電出力と容量が増えたから出来るらしいけど」

「……とはいえ、速射用の火器はコイルガン方式だろうな」

答えつつ、《KrG38》に持ち替え。

射撃方式は低出力二点バーストリミッター。

《KrG38》には、電磁投射といっても、レールとコイルの併用。

手数が要る時は、簡便かつ安価なコイル。長距離射撃には、加速効率の良いレールを用いる事で、効率化を図っているとか。

それでも、定期的なレールとコイルユニットの交換が必要だが、コイルでも中型ドーピング系種の弱点をブチ抜くには充分な威力が出るし、レールならば大型や魔獣相手にも火力的に足りる上に、携行サイズに収まっているのだから、文句ばかり言うのはゲームやら漫画やらに毒された、クソ野郎に他ならない。

(技術者の努力を鼻で嗤っているも同然だからな。……大した学も無いくせに)

反吐が出る思案だが、集中力は乱さない。

装着しているスコープを覗き、照準調整。

トリガー。

撃針が雷管を殴打。

火薬の爆縮が弾頭を押し出し――銃身内部で、導電したコイル内の磁界変化によって、再加速。

一瞬にして、着弾する。

標的の頭部に大穴が空く。

「……そっちだと、標的が消し飛ぶな」

電磁投射バトルライフルでこれなのだから、電磁投射対物砲では、粉々だろう。

「…………確かに。生物(ナマモノ)を撃つしか、練習方法が無さそう」

生物か。……いや、その生物では過剰殺戮が確定する。

かといって、大型魔獣相手は、そもそも排除対象となる個体数が少ない。……つい先日、同クラスの魔(・)物(・)を潰したばかりだ。

「…………」

「大丈夫か、天樹?」

固まったままの天樹を気にかけ、目の前で手を振るが、反応無し。

気絶はしていないと思うんだがな……。

肩でも叩いた方が確実か?

軽く肩を叩く。

「ひぅっ!?……セルゲイ……さん?」

「大丈夫か?」

意識が戻ったようだ。

同時に、

「……丁度良い依頼がある」

ノルシェは練習用の依頼を見つけたらしい。

「…………確認しよう」

 

――依頼主:エリアRos Lim-E都市役場

 

依頼内容:都市近郊廃虚群にて発生した小規模魔物群の排除。

 

「……なるほど。試射には丁度良いな」

文面だけみれば、麻薬系種の魔物が相手だろう。

仮に、それ以外が出て来ても、俺やノルシェで対処可能だろうから、天樹が殉職する危険性も低い。

何より、いつまでもパターン化された標的を撃っていては、実力が着かないからな。

(しかし、現状のメンバーではな……)

比較的、全距離対応型に近い俺はともかく、ノルシェと天樹は後方支援を主とする。

バランスが悪いのは少し考えれば分かる事。

(……取れる戦術は、一撃離脱のゲリラ戦か)

それでも、狙撃の練習にはなるが。

「その依頼、請けよう。天樹、シフトは入っているか?」

「いいえ……今日はお休み……です」

好都合。

「了解だ。ノルシェ、天樹。装備を整え、ガレージに集合だ。集まり次第、出発する」

「了解」

「り、了解っ」

各々が行動開始。

が、最初にすべき事は同じだ。

即ち、店に戻り、自室で装備を整える事。

数分で自室に着いた俺とノルシェは即座に準備開始。

所持武装は《KrG38》、《KrG35》、《AA PGW-04》。補助に《AP04-KrM》。

後はそれぞれの弾倉を収納したベストを羽織り、火器も背負う。

ノルシェの方も概ね、似たような装備だが、使用するのが汎用型対物砲故か、大型の迷彩塗装コンテナを背負っている。

「……急ごう」

「あぁ」

ガレージに移動。

残っている車両は主力戦車(魔改造済)、戦車輸送用トレーラー、高機動輸送車、バイク。

(主力戦車はノエル用、トレーラーはセットだ。……で、人数的には……バイクか?いや、駄目だ)

バイクではサイドカー有りでも、重量過多になる。

輸送車を使おう。

そう思い、残されたPvE社製の《PzW-11》に乗り込む。

程なくして、天樹も到着。助手席に搭乗する。

俺はいつも通りというか、銃座に着いていた。

装備は長砲身の40㎜擲弾機関砲《AA MW00-S》。

ドットサイト、スコープ完備。定点狙撃も可能だな。

「出発」

安全装置の確認を終えた所で、ノルシェがアクセルを踏んだらしく、発進した。

法定速度を守った、鈍(・)い(・)運転。

戦場まではしばらくかかるだろう。

ならば、ブリーフィングを済ませるか。

銃座から離れ、車内へ。

「……さて、目的地に着くまで暫し時間がかかる。その間、今回の作戦について話そう。……今回は端的に言えば、ゲリラ戦だ。質的にはこちらが上と思われるが、油断をするな。一射一殺を心がけ、可能ならば一射多殺を狙っても良いが、深追いするな。尚、敵の注意は俺が全て引き付ける。……以上だ。何か質問はあるか?」

「いいえ」

「無い」

質問無しか。……大丈夫そうだな。

「ならば良し。天樹はノルシェと行動しろ。ブリーフィング終了」

俺は再び銃座に戻る。

 

 

数時間後――

程無く依頼を終え、俺達は帰投。今は自由行動――言い替えれば非番。

かくいう俺は、使用した《PzW-11》の整備中。

車体下に潜りながら、各部を確認しながら、思う。

(……良い練習だったな)

案の定と言うべきか、敵対勢力は麻薬系種のL型と精力剤系種のS型だった。

数自体も40程度と少なく、練習としては成功したのだろう。

(天樹も、大分腕を上げていたし、な。……火力支援をやるには充分か?)

距離300程度ではあったが、一発も外す事は無く、ましてや誤射も無し。

前線の野郎共のお守りには充分。後は、自衛能力の強化だが……対人相手では既に問題無い。

マスター曰く、『天樹もライヒ(ウチの馬鹿)みたく、柄の悪い客を笑顔で半殺しにするようになってる』らしいから。

飲食店としては大問題だが、立地的に見れば仕方無い。……一応、金蔓たる俺達がいる以上は、潰れないだろうが。

思案しながらだったからか、気が付くと《PzW-11》の整備を終えていた。

(自動操縦じゃねぇんだぞ)

緩んでるな、俺。

矯正しないと。

(……とはいえ、だ。今は身体を休めたい)

実質一徹で依頼を完遂していた俺は、想像以上に疲労が蓄積していた。

普段の俺ならば一徹でも、大型魔獣5桁単位で相手しない限りは疲労困憊にならない。

ならば、原因は……一つだけ。

ノルシェとの格闘戦。……いや、ノルシェからの求愛と取るべきか?

(……どっちでも良いな)

どのみち俺は、その求愛を受けてしまったのだから。

格闘戦で、敗北したのだから。

(……さ、早く戻って――)

自室のドアに手を掛け――

「…………遅い」

開けた途端に、不機嫌なノルシェの顔があった。

俺や旧《Ъедый・Медвдъ》の仲間以外は、不機嫌だと分からないだろうが。

「整備に時間かかり過ぎ」

「別に良いだろ。……俺は修理工でも整備兵でもない」

おざなりに等しい返答をしつつ、ジャケットをハンガーにかけ、脱衣所へ入ろうとしたが、

「そういう問題じゃない」

腕を掴まれ、引き寄せられる。

「……どういうつもりだ」

醒めた声で聞く。

しかし、答えは言葉ではなく――

「……ん」

口付けだった。

頭を押さえられ、爪先立ちでのキス。

互いにとって初めてのキスなのだか、

「っ!?」

舌を捩じ込まれる。ようはディープキスだ。

唾液を無理矢理飲まされ、口腔内は蹂躙される。

数分間、ただ貪るように続けられたキス。

完全に愛しているわけではない俺にとって、至福とは言えない時間。

だから、

「……どういうつもりだ」

唇が離れた後、問う。

「…………証」

「証?」

嫌な言葉だ。

「痕、でもいい。……セルゲイから、私に刻んでほしい」

刻む……。その言葉が意味する事柄は二つ。加えて、現状を鑑みれば一つだけ。

「…………それは出来ない相談だな」

するべきでは無い事だ。

「まだ、引き摺る?」

「あぁ。……奴らの掌の上で踊らされるのは……もう……御免だ」

既に、奴らの思惑通りに事が進んでいるというのに。

俺はまだ、諦めていない。

……いや、諦(・)め(・)て(・)は(・)い(・)る(・)。自分の存在理由――自分自身の正当化は諦めている。

では、何を諦めていないのか。

考えるまでも無い。“子熊計画”の礎となる事だ。

俺はノルシェを孕ませなければならない。

それが、俺に与えれた子熊計画での役割。

悲劇を生む元凶となる事を、強要される事。

目の前のノルシェは、性交を望んでいる。

結局は、老害によって形作られた偽りの恋心に唆されて。

どんな形であれ、ノルシェは自分だけの感情だと言い張るだろう。

仮に、ノルシェ自身の純粋な恋心だとしても、俺達にとっては望まない結末しか、待っていない。

(……とはいえ、ある意味で老害の思惑は潰えているんだがな)

俺は思い出す。

ある意味で、生物として歪になった自分の体質を。

「……痕を刻む事は出来ない。刻めるほどの物がないからな」

「嘘。……セルゲイは化物である前に、男性。……欲情させれば、自然と大きくなる」

「ならないんだよ。……そういう風に、俺の身体は変化した」

禁欲的である必要性があったあ(・)の(・)時(・)代(・)、俺は……第7世代の特性として、自己進化の性質により、性的感覚を捨てた。

故に、性的欲求は無い。……ナニが勃つ事も無い。

如何な小柄なノルシェとはいえ、届く事は無いだろう。

届く事は無い。証を……痕を刻み付ける事は出来ない。

「…………おそらくだけど、問題無い」

……問題無い?

引っ掛かる物言い。

(…………おい待て、冗談…………とは思えないな)

すぐに気付く。

俺とノルシェを《第17特殊強襲中隊》にブチ込んだのも、第7.5世代強化個体に転化させたのも、軍上層部と、その息のかかった研究者。

つまり、俺が自身を“不能”にした事を知っており、ノルシェに対応策を仕込んでいる筈。

(……クソッ)

手詰まりか。

狙撃手は……というか、暗殺者は慎重であり、臆病だが……同時に執念深い。

この場合、狙ってるのは俺の貞操だが。

根本的な基礎能力で、俺はノルシェに勝てない筈だ。……主に柔軟性とかで。

「だから、問題無い。……それに…………避妊具、すればいい」

そう言って、ゴムを取り出すノルシェ。

「…………使う気無いだろ」

何となくだが、使わずに喰らいそうな気がする。

「……なら、使わせるように努力して」

「努力は出来るだろ――うおっ!?」

反論しようとして、足払いを食らう。

空中で体勢を整える事は出来ず、転倒。

「……初めよう」

すかさず、腹上位を取られる。……ただし、俺に背を向けるような体勢だ。

因みに、両腕は脚で絡められており、動かせない。

ならば、脚で――と、考えるところだが行動に移す前に、ズボンと下着を脱がされ、足首を掴まれる。

「……小さいまま」

「だから言っただろ。……諦めろ」

言っても無駄なのに、俺は何故、言ったのだろう。

「……」

「っ!?」

その証拠に、ノルシェは躊躇無く俺の陰茎を咥え込む。

所謂、“口淫”で、準備を終わらせる気らしい。

「んっ……」

初手から亀頭とカリに舌を這わせ、唾液をまぶしてくる。

「くっ……!」

どちら、一般的に男性の性感帯にあたるもの。……何で学んだかは分からないが、手早く勃たせる気か。

(上の奴ら……やっぱり、仕込んで……やがったな)

快楽信号が身体中を駆け巡る。

おそらくだが、第1世代のままだったら、既に勃っていたかもしれない。それほどまでに、ノルシェは手慣れていた。

本当に……何処で学びやがった。

(何とか……勃つ前にこの状況を打開……は無理だな)

身体をマトモに動かせず、ナニもしっかり咥え込まれている。

(……で、目の前には、ノルシェの尻があるわけだが……)

飽くまでノルシェをどかすだけなら、秘所や陰核を舌で転がせば可能かもしれないが、限り無く低い確率。ほぼ確実にノルシェを発情させ、行為の助長を促すだけだろう。

「……止めろ……ノルシェ……ッ」

「……あむ……ふぅ……それは……無理……セルゲイの……もう、硬い」

クソッ!

確かに陰茎は完全に勃ってやがるし、腰も浮きそうだ。

俺が性欲を捨てたのは確か、強襲中隊2年目の頃。つまり、少なくとも5年はオナ禁していた事になる。だが、適応の都合上、欲求不満は別の形で発散させている筈だから、堪っていても一ヶ月分程度だろう。

(……いや、待て。最後に発散させたのは何時だ?)

記憶を掘り返し、気付く。……2ヶ月は溜め込んでいる。

年齢にもよるだろうが、2ヶ月でも相当。そんな状態で、性感帯を執拗に責められてしまえば、すぐに暴発するのも当たり前。

鍛え方が足りなかったか。

(ヤるしか無いのか?……いや、だったらゴムを奪わないとな)

まぁ、無理難題だが。

「……ねぇ、セルゲイ」

「……なんだ?」

「舐めなくていいの?」

…………何を言っている。

「“シックスナイン”をしろと?強引にフェラチオだ(・)け(・)しておきながら。……もう遅いだろ」

現状から責め始めた所で、絶頂に達するのは俺の方が先になりそうだ。

「…………加虐思考?」

何を履き違えたのか。と、思うのが一般的だろうが、何となく察せる。

これから“本番”をするつもりのノルシェにとって、事前に幾らか膣分泌液を出しておかなければ、抽送が円滑になりづらい。潤滑剤が破瓜の血だけでは、特に。

苦痛に歪む女の表情を肴に、自らの欲を満たす。だから、加虐思考というわけだ。

「……違うな。何度言わせるんだ。俺は――」

「お(・)前(・)と(・)繋(・)が(・)る(・)気(・)は(・)無(・)い(・)。……分かっている。でも、好きな人とは最終的に繋がりたいと思うものじゃないの?……私もセルゲイも、いつ死ぬか分からない仕事に就いている。殉職と国家の破滅が直結する第7.5世代強化個体とはいえ。……でも、だからこそ数がいる」

違う。数はいらない。……一体でもくたばれば、大惨事。

「……一理あるが、それでも俺は賛同できないな」

「…………説得力が無い。勃ってるから」

「勃たせたのはノルシェ――っうぉ!?」

反論は最後まで言えなかった。

ノルシェが身体を反転させ、俺の陰茎を自らの膣に捩じ込んだから。

「挿入するには勃たせ……ない……と。っあ……!……セルゲイ、の……太……い」

苦痛に耐えるような声。

勢い良く捩じ込んだ為、処女膜を破った為だろう。

男性には分からない痛みだ。

「くっ……狭ぇ…………」

外見から想像できる事だが、ノルシェの膣内は狭い。

「っあ……太ぃ……。中……苦……しぃ……」

動かされる事を期待していないのだろう。苦痛に耐えながら、自ら上下運動を繰り返し、半ば自慰でもするように、悶えるノルシェ。

悶えながらも、上下運動を止めない。

「っ………ぁ……止めろ……」

耐えられてこそいるが、限界は近い。

(肉襞と膣圧だけで、こうも効くのかよ……)

膣と子宮を往復する過程で、膣内の肉襞が捲れ上がり、うまい具合に雁首や裏筋を擦る。

かつての同僚が焦がれていたのは、こういうものか。

「セル……ゲイ………まだ…………出な……い……?」

「出す……っ……ものか……っあ!?……排卵しているか……くっ!……も知れないだろう?……孕ませたくねぇ……。第一、孕んだら……堕胎でもするか……?」

「当……然……っ!セルゲイ……との繋がり……。痛い、けど……嫌じゃない……。避妊具付の……っあ!?……繋がりなん……ひゃっ!?……て、考え……たくないっ!!」

言い切ると同時に、ペースが上がる。

「っあ!?止めろ、ノルシェッ!」

洪水か何かの如く、快楽が脳を駆け巡り、射精感を促進させる。

(堪えろ。……もう手遅れかもしれないが……確率は下げろっ!)

感覚的に、先(・)走(・)り(・)は出ており、これにも微量ながら精子は含まれているという。

だが、微量だ。本隊たる精液は出さないようにしない――とっ!?

「くあっ!?」

決意を固める暇もねぇ。

手早く射精させる気だ。

これでは強姦と大差無い。性別が逆だが。

「早……くっ…………出してよ……セル、ゲイッ!」

「……諦……めろっ!」

射精を堪えつつの口論。

お互いに、限界が近い。

(なら……せめて引き抜いて……)

とは、行かない。

「離れ……るの……認め、ないっ」

引き抜こうとしたのがバレたらしく、ノルシェの両足が腰に絡み、挿入速度が更に増す。

「膣内に、欲し……いからっ!早く射精、して」

「いいから……抜か、せろっ!!」

引き抜こうと抗う。

抗う度に、ノルシェの外と膣内の締め付けが増す。

(クソッ……まだ、手はあるだろ?考えろ)

残り時間は僅か。

腰に絡み付いたノルシェ。

ノルシェの手は…………俺の腕を掴み、押さえ付けている。

でも、脚は自由。

手はあったな。

(……寝技で抜ける)

結論を出し、実行に移そうとした直後、

「あっ、あ…………セル、ゲイ……。……私、限界……。だから……」

ノルシェが大きく腰を浮かし、

「これで、出し……っあぁ!?」

一瞬にして子宮まで挿入。悶えた。

「ぐっ……ぁ……」

対する俺の陰茎も大きく脈打ち、込み上げた劣情。

「あぁぁぁぁぁーー!?」

決壊し、勢い良く吹き出す精液。

「ふぁっ!?セル、ゲイ……射精、し……あっ!?……精液、熱いぃ……」

子宮内膜に直撃し、更に悶えるノルシェ。

しかし、その表情は恍惚とした……嬉しそうなもの。

「いい、からっ。抜かせ……あぁぁっ!?」

射精感は止まらない。

一般的には数秒、数ml程度しか出ないらしいが、既に俺は数十mlは放出している。

劣情を溜め過ぎていた弊害。

(……やっちまったな…………)

俺は諦める他無い。

これで、老害共の筋書通りに事が進んだ。

抗い難い、糞みたいな筋書通りに――

 

1時間後――

数分間にも及ぶ射精でノルシェの子宮に精液をブチ込んだ後、互いに後処理と入浴を済ませた。

入浴中、ノルシェの膣内に残った精液を掻き出す際に無理矢理、俺の手でやらされ、結果として、ノルシェは指だけで数回程度、性的絶頂に達し、膣分泌液が残存する精液を排出した。

それはそれで良かった……のだろうか?

大人しそうに見えて、強引なのがノルシェだと理解していたが、流石に被虐性快楽主義者(マゾヒスト)だとは思わなかったな。

ともかく、身体を洗った俺達は――

「身体が……重いな……」

「同感……」

虚脱感を感じて、ベッドに倒れ込んでいた。

因みに、ノルシェは俺の腹の上に倒れ込み、胸に頬擦りするような体勢。

退ける気力は無い。

「セルゲイの温もり…………気持ち良い」

頬擦り。

猫か、お前は。

「頬擦りできる程度の体力は残っているんだな…………俺には……」

瞼を閉じる。

「ねぇ……」

そして、睡魔に身を任せた――

 




以上、Таяние Снегаでした。
さて、サブタイトルの意味は“融雪”、でしたがこれで性交渉回だと分かった方は何人いたか。
まぁ、前書きが地味に本番前っぽい感じでしたが。
しかし、今回は疲れました。資料として散々美少女ゲームをやりまくったけれど、ほぼ不能に近い主人公の本番なんて無かったですからね。……その結果が、今回のアレです。
章の主人公がノルシェである以上、ノルシェ視点で書くべきなんでしょうが……。レズはやれても、女性視点の本番は資料がほぼ無いんです。……18禁の乙女ゲーとかあったっけ?
…………咎〇の血とか?アレはBLゲーだけど。

……話が逸れましたね。
今回はこの辺で。

拝読ありがとうございました――
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。