紡ぎ直そう、本当の恋心を。
その為にまず、証を残そう。
翌朝――
いつものように、陽光に釣られて目を覚ますと…………身体が重かった。
その上、微妙に発汗もしている。
(昨夜も暑かったからな……って、違う)
原因は分かる。
首を動かし――
「…………」
幸せそうに寝ているノルシェ。
全身で俺に絡み付いて、寝ている。抱き枕じゃないんだが?
(……いや、そういうモノなのか?)
彼女にとっての彼氏というのは。
…………。
違う気もする。
(何にしても、早く起きてくれないか……)
脚も絡められている為、起きれない。
……振りほどくにしても、床に叩き付けるぐらいか。起きないだろうけど。
(こういう場合、起こす方法は…………接吻がだったか?)
違う。それは頭の中が花畑化した恋人のやる事だ。……そこまで堕ちる気は無い。
「……起きろ、ノルシェ」
耳元で言う。
「……っ!?…………すぅ……」
が、一瞬擽ったそうに悶えただけで、起きやしない。
(…………図に乗るなよ)
生憎と俺は、まだ
お前の事を嫌いではないが、今は起床させろ。
口で分からないならば、やる事一つ。
「Ура!」
気合い一発、横回転から絡み付いたノルシェを床に叩き付ける。
「へみゅうっ!?」
なんとも言えない声と共に、彼女の戒めが解け、起床。
タンクトップを着て、何時ものジャケットを羽織る。
「……酷い」
一方で、頭を抑えながら、欠伸混じりに俺を見るノルシェ。蔑んだ目だ。
「起きない方が悪い」
「セルゲイの抱き心地が良いから」
「…………一般的に考えれば、その理由は性別が逆だ」
男の身体の何処が、抱き心地の良さに繋がるというのか。
温もりか?それこそ、女の方だろう。
「……そう?」
小首を傾げられた。
「疑問で返すな」
疲れる。
「質問が悪い」
そう言って、ノルシェは立ち上がり部屋を出ていく。
……正確には出ておらず、昨日壁の一部を
「……日課の準備をするか」
俺は日課たる射撃訓練の為、武装の用意を始める。
壁際のラックに近付き、まず手に取るのは9.6㎜口径バトルライフル《AA KrG37》。
今まで使用していた7.62㎜の《KrG35》も悪くは無いが、既に骨の髄まで感覚が染み付いている反面、《KrG37》は使い始めて日が浅い。更に日が浅い11.2㎜口径の《KrG38》は、弾速と破壊力の関係上、射撃場で使用しづらい故の選択。
……とはいえ、念の為《KrG38》も取る。
続いて、9㎜自動式拳銃《AA AP04》と、11.5㎜自動式拳銃《AA AP04-KrS》をホルスターに入れ、装備。
各種弾倉も持ち、自室を出る。
他のメンバーの予定を思いだしつつ歩き、談話室に着く。
まだ、早朝。起きている奴は限られるだろう。
(……寝てる奴はいるだろうがな)
中佐の“飼い猫”とか、な。
入室。
中にいたのは――
「あ、セルゲイさん。おはようございます」
フィアと、
「んぁ?なんだ隊長かよ。起きんの早いな」
アランだった。
二人とも、各々が改良したらしい野戦服を纏い、装備の確認中。
(……あぁ、依頼が入っていたな)
内容はエリアRos SSE近郊で活動するチンピラ集団の“排除”。
この場合の排除は、
不安要素はフィア。人を撃てない餓鬼には荷が重い。本人が克服した、と言っていても不安要素に代わりはない。
(……死んだら、所詮はその程度の個体だっただけ、だ)
アイツにも軍上層部は絡んでいるだろう。強化個体であったのだから。
「しっかし大丈夫かよ?人撃てねぇ餓鬼が、こんな依頼の要員なんてよ」
「だ、大丈夫です……よ。きっと」
「……ホントかよ。“人形”が相手とは限らねぇぜ?…………ま、殺れねぇ場合は隅っこで震えてろ」
……口論を聞く限りは大丈夫そうだ。
(ここに用は無いな)
加熱し始めた口論を背後に、談話室から外に出る。
数分後。
いつもの射撃場に先約がいた。
しかも、長距離射撃区画。
俺やノルシェぐらいしか使わない区画。
銃声。
(……この音、6.8㎜MBか)
と、なると銃種は狙撃銃か選抜射手ライフル。
ノルシェは.338以下を狙撃用に用いない筈だから……。
(天樹、か)
アイツ、役割上は選抜射手か、分隊支援要員だからな。
区画に入ると、案の定というか、伏射で6.8㎜マークスマン・ライフル《AA SG36-S》を扱う天樹がいた。
約400m先の標的を一瞥。
着弾痕があるのは、頭部と胸部だけ。
腕を上げたな、天樹。
だが、射撃間隔が一定。
それでは、駄目だ。
「集中するのは構わないが、それでは殉職しか待たんぞ、天樹」
「…………え?」
忠告が聞こえたのか、指を止めた天樹が俺を見る。
「おはよう……ございます……セルゲイさん」
「あぁ。……天樹は早く、確実に殺れる方だが、反復練習はそろそろ卒業しておけ。必要な火力を、必要な時に。……それが天樹の役割だ」
諭すように言い、 《KrG37》を構え、初弾装填。
上部レールに装着した《AA ZF11-ZS 1.5-8x35㎜スコープ》を覗き、照準修正。
三度発砲。
着弾。
頭部右眼窩、左側頭部、鼻骨。
即死だな。
固まっている天樹を見下ろし、
「まだまだ厳しいだろうが、このぐらいの技量は持ってくれ」
再び諭すように言い、射撃再開。
1弾倉分を撃ち切るが、結果は然程変わらず。
現実的にはかなりの結果かもしれない。……でも、俺としては『400mでこの様』という感じだ。
「ブレが大きいな……今日は風が強いか?」
風を感じながらそう言うと、
「……違う。慣れていないだけ、だと思う」
背後から横槍を入れられる。
ノルシェだな。
振り返る。
やはり、ノルシェだ。
グラナデが背負うような大型コンテナを担いでいる。
「《KrG38》や《PB16MF-PAel》等は、AA社曰く、先行モデル。今後は電磁投射兵装を増やしていくらしい。……技術革新で、蓄電池の放電出力と容量が増えたから出来るらしいけど」
「……とはいえ、速射用の火器はコイルガン方式だろうな」
答えつつ、《KrG38》に持ち替え。
射撃方式は低出力二点バーストリミッター。
《KrG38》には、電磁投射といっても、レールとコイルの併用。
手数が要る時は、簡便かつ安価なコイル。長距離射撃には、加速効率の良いレールを用いる事で、効率化を図っているとか。
それでも、定期的なレールとコイルユニットの交換が必要だが、コイルでも中型ドーピング系種の弱点をブチ抜くには充分な威力が出るし、レールならば大型や魔獣相手にも火力的に足りる上に、携行サイズに収まっているのだから、文句ばかり言うのはゲームやら漫画やらに毒された、クソ野郎に他ならない。
(技術者の努力を鼻で嗤っているも同然だからな。……大した学も無いくせに)
反吐が出る思案だが、集中力は乱さない。
装着しているスコープを覗き、照準調整。
トリガー。
撃針が雷管を殴打。
火薬の爆縮が弾頭を押し出し――銃身内部で、導電したコイル内の磁界変化によって、再加速。
一瞬にして、着弾する。
標的の頭部に大穴が空く。
「……そっちだと、標的が消し飛ぶな」
電磁投射バトルライフルでこれなのだから、電磁投射対物砲では、粉々だろう。
「…………確かに。
生物か。……いや、その生物では過剰殺戮が確定する。
かといって、大型魔獣相手は、そもそも排除対象となる個体数が少ない。……つい先日、同クラスの
「…………」
「大丈夫か、天樹?」
固まったままの天樹を気にかけ、目の前で手を振るが、反応無し。
気絶はしていないと思うんだがな……。
肩でも叩いた方が確実か?
軽く肩を叩く。
「ひぅっ!?……セルゲイ……さん?」
「大丈夫か?」
意識が戻ったようだ。
同時に、
「……丁度良い依頼がある」
ノルシェは練習用の依頼を見つけたらしい。
「…………確認しよう」
――依頼主:エリアRos Lim-E都市役場
依頼内容:都市近郊廃虚群にて発生した小規模魔物群の排除。
「……なるほど。試射には丁度良いな」
文面だけみれば、麻薬系種の魔物が相手だろう。
仮に、それ以外が出て来ても、俺やノルシェで対処可能だろうから、天樹が殉職する危険性も低い。
何より、いつまでもパターン化された標的を撃っていては、実力が着かないからな。
(しかし、現状のメンバーではな……)
比較的、全距離対応型に近い俺はともかく、ノルシェと天樹は後方支援を主とする。
バランスが悪いのは少し考えれば分かる事。
(……取れる戦術は、一撃離脱のゲリラ戦か)
それでも、狙撃の練習にはなるが。
「その依頼、請けよう。天樹、シフトは入っているか?」
「いいえ……今日はお休み……です」
好都合。
「了解だ。ノルシェ、天樹。装備を整え、ガレージに集合だ。集まり次第、出発する」
「了解」
「り、了解っ」
各々が行動開始。
が、最初にすべき事は同じだ。
即ち、店に戻り、自室で装備を整える事。
数分で自室に着いた俺とノルシェは即座に準備開始。
所持武装は《KrG38》、《KrG35》、《AA PGW-04》。補助に《AP04-KrM》。
後はそれぞれの弾倉を収納したベストを羽織り、火器も背負う。
ノルシェの方も概ね、似たような装備だが、使用するのが汎用型対物砲故か、大型の迷彩塗装コンテナを背負っている。
「……急ごう」
「あぁ」
ガレージに移動。
残っている車両は主力戦車(魔改造済)、戦車輸送用トレーラー、高機動輸送車、バイク。
(主力戦車はノエル用、トレーラーはセットだ。……で、人数的には……バイクか?いや、駄目だ)
バイクではサイドカー有りでも、重量過多になる。
輸送車を使おう。
そう思い、残されたPvE社製の《PzW-11》に乗り込む。
程なくして、天樹も到着。助手席に搭乗する。
俺はいつも通りというか、銃座に着いていた。
装備は長砲身の40㎜擲弾機関砲《AA MW00-S》。
ドットサイト、スコープ完備。定点狙撃も可能だな。
「出発」
安全装置の確認を終えた所で、ノルシェがアクセルを踏んだらしく、発進した。
法定速度を守った、
戦場まではしばらくかかるだろう。
ならば、ブリーフィングを済ませるか。
銃座から離れ、車内へ。
「……さて、目的地に着くまで暫し時間がかかる。その間、今回の作戦について話そう。……今回は端的に言えば、ゲリラ戦だ。質的にはこちらが上と思われるが、油断をするな。一射一殺を心がけ、可能ならば一射多殺を狙っても良いが、深追いするな。尚、敵の注意は俺が全て引き付ける。……以上だ。何か質問はあるか?」
「いいえ」
「無い」
質問無しか。……大丈夫そうだな。
「ならば良し。天樹はノルシェと行動しろ。ブリーフィング終了」
俺は再び銃座に戻る。
数時間後――
程無く依頼を終え、俺達は帰投。今は自由行動――言い替えれば非番。
かくいう俺は、使用した《PzW-11》の整備中。
車体下に潜りながら、各部を確認しながら、思う。
(……良い練習だったな)
案の定と言うべきか、敵対勢力は麻薬系種のL型と精力剤系種のS型だった。
数自体も40程度と少なく、練習としては成功したのだろう。
(天樹も、大分腕を上げていたし、な。……火力支援をやるには充分か?)
距離300程度ではあったが、一発も外す事は無く、ましてや誤射も無し。
前線の野郎共のお守りには充分。後は、自衛能力の強化だが……対人相手では既に問題無い。
マスター曰く、『天樹も
飲食店としては大問題だが、立地的に見れば仕方無い。……一応、金蔓たる俺達がいる以上は、潰れないだろうが。
思案しながらだったからか、気が付くと《PzW-11》の整備を終えていた。
(自動操縦じゃねぇんだぞ)
緩んでるな、俺。
矯正しないと。
(……とはいえ、だ。今は身体を休めたい)
実質一徹で依頼を完遂していた俺は、想像以上に疲労が蓄積していた。
普段の俺ならば一徹でも、大型魔獣5桁単位で相手しない限りは疲労困憊にならない。
ならば、原因は……一つだけ。
ノルシェとの格闘戦。……いや、ノルシェからの求愛と取るべきか?
(……どっちでも良いな)
どのみち俺は、その求愛を受けてしまったのだから。
格闘戦で、敗北したのだから。
(……さ、早く戻って――)
自室のドアに手を掛け――
「…………遅い」
開けた途端に、不機嫌なノルシェの顔があった。
俺や旧《Ъедый・Медвдъ》の仲間以外は、不機嫌だと分からないだろうが。
「整備に時間かかり過ぎ」
「別に良いだろ。……俺は修理工でも整備兵でもない」
おざなりに等しい返答をしつつ、ジャケットをハンガーにかけ、脱衣所へ入ろうとしたが、
「そういう問題じゃない」
腕を掴まれ、引き寄せられる。
「……どういうつもりだ」
醒めた声で聞く。
しかし、答えは言葉ではなく――
「……ん」
口付けだった。
頭を押さえられ、爪先立ちでのキス。
互いにとって初めてのキスなのだか、
「っ!?」
舌を捩じ込まれる。ようはディープキスだ。
唾液を無理矢理飲まされ、口腔内は蹂躙される。
数分間、ただ貪るように続けられたキス。
完全に愛しているわけではない俺にとって、至福とは言えない時間。
だから、
「……どういうつもりだ」
唇が離れた後、問う。
「…………証」
「証?」
嫌な言葉だ。
「痕、でもいい。……セルゲイから、私に刻んでほしい」
刻む……。その言葉が意味する事柄は二つ。加えて、現状を鑑みれば一つだけ。
「…………それは出来ない相談だな」
するべきでは無い事だ。
「まだ、引き摺る?」
「あぁ。……奴らの掌の上で踊らされるのは……もう……御免だ」
既に、奴らの思惑通りに事が進んでいるというのに。
俺はまだ、諦めていない。
……いや、
では、何を諦めていないのか。
考えるまでも無い。“子熊計画”の礎となる事だ。
俺はノルシェを孕ませなければならない。
それが、俺に与えれた子熊計画での役割。
悲劇を生む元凶となる事を、強要される事。
目の前のノルシェは、性交を望んでいる。
結局は、老害によって形作られた偽りの恋心に唆されて。
どんな形であれ、ノルシェは自分だけの感情だと言い張るだろう。
仮に、ノルシェ自身の純粋な恋心だとしても、俺達にとっては望まない結末しか、待っていない。
(……とはいえ、ある意味で老害の思惑は潰えているんだがな)
俺は思い出す。
ある意味で、生物として歪になった自分の体質を。
「……痕を刻む事は出来ない。刻めるほどの物がないからな」
「嘘。……セルゲイは化物である前に、男性。……欲情させれば、自然と大きくなる」
「ならないんだよ。……そういう風に、俺の身体は変化した」
禁欲的である必要性があった
故に、性的欲求は無い。……ナニが勃つ事も無い。
如何な小柄なノルシェとはいえ、届く事は無いだろう。
届く事は無い。証を……痕を刻み付ける事は出来ない。
「…………おそらくだけど、問題無い」
……問題無い?
引っ掛かる物言い。
(…………おい待て、冗談…………とは思えないな)
すぐに気付く。
俺とノルシェを《第17特殊強襲中隊》にブチ込んだのも、第7.5世代強化個体に転化させたのも、軍上層部と、その息のかかった研究者。
つまり、俺が自身を“不能”にした事を知っており、ノルシェに対応策を仕込んでいる筈。
(……クソッ)
手詰まりか。
狙撃手は……というか、暗殺者は慎重であり、臆病だが……同時に執念深い。
この場合、狙ってるのは俺の貞操だが。
根本的な基礎能力で、俺はノルシェに勝てない筈だ。……主に柔軟性とかで。
「だから、問題無い。……それに…………避妊具、すればいい」
そう言って、ゴムを取り出すノルシェ。
「…………使う気無いだろ」
何となくだが、使わずに喰らいそうな気がする。
「……なら、使わせるように努力して」
「努力は出来るだろ――うおっ!?」
反論しようとして、足払いを食らう。
空中で体勢を整える事は出来ず、転倒。
「……初めよう」
すかさず、腹上位を取られる。……ただし、俺に背を向けるような体勢だ。
因みに、両腕は脚で絡められており、動かせない。
ならば、脚で――と、考えるところだが行動に移す前に、ズボンと下着を脱がされ、足首を掴まれる。
「……小さいまま」
「だから言っただろ。……諦めろ」
言っても無駄なのに、俺は何故、言ったのだろう。
「……」
「っ!?」
その証拠に、ノルシェは躊躇無く俺の陰茎を咥え込む。
所謂、“口淫”で、準備を終わらせる気らしい。
「んっ……」
初手から亀頭とカリに舌を這わせ、唾液をまぶしてくる。
「くっ……!」
どちら、一般的に男性の性感帯にあたるもの。……何で学んだかは分からないが、手早く勃たせる気か。
(上の奴ら……やっぱり、仕込んで……やがったな)
快楽信号が身体中を駆け巡る。
おそらくだが、第1世代のままだったら、既に勃っていたかもしれない。それほどまでに、ノルシェは手慣れていた。
本当に……何処で学びやがった。
(何とか……勃つ前にこの状況を打開……は無理だな)
身体をマトモに動かせず、ナニもしっかり咥え込まれている。
(……で、目の前には、ノルシェの尻があるわけだが……)
飽くまでノルシェをどかすだけなら、秘所や陰核を舌で転がせば可能かもしれないが、限り無く低い確率。ほぼ確実にノルシェを発情させ、行為の助長を促すだけだろう。
「……止めろ……ノルシェ……ッ」
「……あむ……ふぅ……それは……無理……セルゲイの……もう、硬い」
クソッ!
確かに陰茎は完全に勃ってやがるし、腰も浮きそうだ。
俺が性欲を捨てたのは確か、強襲中隊2年目の頃。つまり、少なくとも5年はオナ禁していた事になる。だが、適応の都合上、欲求不満は別の形で発散させている筈だから、堪っていても一ヶ月分程度だろう。
(……いや、待て。最後に発散させたのは何時だ?)
記憶を掘り返し、気付く。……2ヶ月は溜め込んでいる。
年齢にもよるだろうが、2ヶ月でも相当。そんな状態で、性感帯を執拗に責められてしまえば、すぐに暴発するのも当たり前。
鍛え方が足りなかったか。
(ヤるしか無いのか?……いや、だったらゴムを奪わないとな)
まぁ、無理難題だが。
「……ねぇ、セルゲイ」
「……なんだ?」
「舐めなくていいの?」
…………何を言っている。
「“シックスナイン”をしろと?強引にフェラチオ
現状から責め始めた所で、絶頂に達するのは俺の方が先になりそうだ。
「…………加虐思考?」
何を履き違えたのか。と、思うのが一般的だろうが、何となく察せる。
これから“本番”をするつもりのノルシェにとって、事前に幾らか膣分泌液を出しておかなければ、抽送が円滑になりづらい。潤滑剤が破瓜の血だけでは、特に。
苦痛に歪む女の表情を肴に、自らの欲を満たす。だから、加虐思考というわけだ。
「……違うな。何度言わせるんだ。俺は――」
「
違う。数はいらない。……一体でもくたばれば、大惨事。
「……一理あるが、それでも俺は賛同できないな」
「…………説得力が無い。勃ってるから」
「勃たせたのはノルシェ――っうぉ!?」
反論は最後まで言えなかった。
ノルシェが身体を反転させ、俺の陰茎を自らの膣に捩じ込んだから。
「挿入するには勃たせ……ない……と。っあ……!……セルゲイ、の……太……い」
苦痛に耐えるような声。
勢い良く捩じ込んだ為、処女膜を破った為だろう。
男性には分からない痛みだ。
「くっ……狭ぇ…………」
外見から想像できる事だが、ノルシェの膣内は狭い。
「っあ……太ぃ……。中……苦……しぃ……」
動かされる事を期待していないのだろう。苦痛に耐えながら、自ら上下運動を繰り返し、半ば自慰でもするように、悶えるノルシェ。
悶えながらも、上下運動を止めない。
「っ………ぁ……止めろ……」
耐えられてこそいるが、限界は近い。
(肉襞と膣圧だけで、こうも効くのかよ……)
膣と子宮を往復する過程で、膣内の肉襞が捲れ上がり、うまい具合に雁首や裏筋を擦る。
かつての同僚が焦がれていたのは、こういうものか。
「セル……ゲイ………まだ…………出な……い……?」
「出す……っ……ものか……っあ!?……排卵しているか……くっ!……も知れないだろう?……孕ませたくねぇ……。第一、孕んだら……堕胎でもするか……?」
「当……然……っ!セルゲイ……との繋がり……。痛い、けど……嫌じゃない……。避妊具付の……っあ!?……繋がりなん……ひゃっ!?……て、考え……たくないっ!!」
言い切ると同時に、ペースが上がる。
「っあ!?止めろ、ノルシェッ!」
洪水か何かの如く、快楽が脳を駆け巡り、射精感を促進させる。
(堪えろ。……もう手遅れかもしれないが……確率は下げろっ!)
感覚的に、
だが、微量だ。本隊たる精液は出さないようにしない――とっ!?
「くあっ!?」
決意を固める暇もねぇ。
手早く射精させる気だ。
これでは強姦と大差無い。性別が逆だが。
「早……くっ…………出してよ……セル、ゲイッ!」
「……諦……めろっ!」
射精を堪えつつの口論。
お互いに、限界が近い。
(なら……せめて引き抜いて……)
とは、行かない。
「離れ……るの……認め、ないっ」
引き抜こうとしたのがバレたらしく、ノルシェの両足が腰に絡み、挿入速度が更に増す。
「膣内に、欲し……いからっ!早く射精、して」
「いいから……抜か、せろっ!!」
引き抜こうと抗う。
抗う度に、ノルシェの外と膣内の締め付けが増す。
(クソッ……まだ、手はあるだろ?考えろ)
残り時間は僅か。
腰に絡み付いたノルシェ。
ノルシェの手は…………俺の腕を掴み、押さえ付けている。
でも、脚は自由。
手はあったな。
(……寝技で抜ける)
結論を出し、実行に移そうとした直後、
「あっ、あ…………セル、ゲイ……。……私、限界……。だから……」
ノルシェが大きく腰を浮かし、
「これで、出し……っあぁ!?」
一瞬にして子宮まで挿入。悶えた。
「ぐっ……ぁ……」
対する俺の陰茎も大きく脈打ち、込み上げた劣情。
「あぁぁぁぁぁーー!?」
決壊し、勢い良く吹き出す精液。
「ふぁっ!?セル、ゲイ……射精、し……あっ!?……精液、熱いぃ……」
子宮内膜に直撃し、更に悶えるノルシェ。
しかし、その表情は恍惚とした……嬉しそうなもの。
「いい、からっ。抜かせ……あぁぁっ!?」
射精感は止まらない。
一般的には数秒、数ml程度しか出ないらしいが、既に俺は数十mlは放出している。
劣情を溜め過ぎていた弊害。
(……やっちまったな…………)
俺は諦める他無い。
これで、老害共の筋書通りに事が進んだ。
抗い難い、糞みたいな筋書通りに――
1時間後――
数分間にも及ぶ射精でノルシェの子宮に精液をブチ込んだ後、互いに後処理と入浴を済ませた。
入浴中、ノルシェの膣内に残った精液を掻き出す際に無理矢理、俺の手でやらされ、結果として、ノルシェは指だけで数回程度、性的絶頂に達し、膣分泌液が残存する精液を排出した。
それはそれで良かった……のだろうか?
大人しそうに見えて、強引なのがノルシェだと理解していたが、流石に
ともかく、身体を洗った俺達は――
「身体が……重いな……」
「同感……」
虚脱感を感じて、ベッドに倒れ込んでいた。
因みに、ノルシェは俺の腹の上に倒れ込み、胸に頬擦りするような体勢。
退ける気力は無い。
「セルゲイの温もり…………気持ち良い」
頬擦り。
猫か、お前は。
「頬擦りできる程度の体力は残っているんだな…………俺には……」
瞼を閉じる。
「ねぇ……」
そして、睡魔に身を任せた――
以上、Таяние Снегаでした。
さて、サブタイトルの意味は“融雪”、でしたがこれで性交渉回だと分かった方は何人いたか。
まぁ、前書きが地味に本番前っぽい感じでしたが。
しかし、今回は疲れました。資料として散々美少女ゲームをやりまくったけれど、ほぼ不能に近い主人公の本番なんて無かったですからね。……その結果が、今回のアレです。
章の主人公がノルシェである以上、ノルシェ視点で書くべきなんでしょうが……。レズはやれても、女性視点の本番は資料がほぼ無いんです。……18禁の乙女ゲーとかあったっけ?
…………咎〇の血とか?アレはBLゲーだけど。
……話が逸れましたね。
今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました――