※この作品はR-18です。

Dirty Works   作:空薬莢

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幸せなど幻想だ。
幻想に溺れる者には、望まぬ結末が与えられる。
だからこそ、幻想を幻想だと知るべきだ――





悪意と思惑と必然と――

 

 

ガリアン・レーヴァ元技術少佐の討伐から数週間後――

「では、討議を始めよう」

エリアRos国内某所の会議室。

鎮座する円卓には、軍服を纏う老人が座っている。

彼らはエリアRos正規軍の上層部。

つまり、高級将校や将軍と呼ばれる類の存在。

今回、上層部が集まった理由は一つだった。

「今回諸君らを招集したのは他でもない。“子熊計画”に進展が訪れた」

「ほぉ……」

「漸くか」

「手間をかけおって……」

議長の言葉に対する反応はいずれも、呆れが混じっている。

彼らにとっては、苛立たしい事態が続いたせいだろう。

「とはいえ、良い知らせと悪い知らせがある。……諸君、どちらから話そうか?」

しかし、進む議題。

「「「「「良い知らせからだ」」」」

全会一致で、先に告げられる事となったのは、朗報から。

「承知した。……進展、という時点で察しが付くと思うが……先日、“聖水”が“聖杯”に注がれた。少数とはいえ、塵芥の処理という手土産を用意して、な」

「ほぉ……ヤりおったか」

「駒風情が。漸く自らの役目を果たしたか」

「獣は獣らしくしていればよい」

飛び交う意見は、肯定よりの侮蔑か。

計画の駒に与える情等無いのだろう。

その証拠に、

「……次に悪い知らせだが……“聖杯”が役割を放棄した。おそらくだが、もう計画の目的を果たすには至らない」

「……嘆かわしい」

「俗物風情が……与えられた役割すら果たせぬとは……」

「所詮は獣。飼い慣らせぬ道理……」

悲報を聞いた老人達は、すぐに態度を変えられた。

――完全な嫌悪と侮蔑に。

「……」

全員を一瞥した議長は、溜息一つ。

このままでは、無駄な時間を費やすだけ。

「故に第3独立遊撃隊へ《Ъм-870》、《Ъм-1500》を投入しようと思う。……諸君はどう思う?」

議題を進める事で、空気を変えると、

「……小娘二人か。少なくはないか?」

「構わんよ。計画が進むならばな」

「どちらも適性個体だろうな?」

「……」

「……」

幾つか、反対とも取れる意見はあるものの、概ね賛成の意が示された。

「……諸君の意見は聞き届けた。では、第3独立遊撃隊への配属は決定事項とする。……尚、数が少ない、という意見も存在したが、それについては問題無い。第1、第2独立遊撃隊にも数名は投入せよ、との大臣からのお達しだ」

意見総括。反対意見者も納得するであろう事情を含ませて。

対する老人達はというと、

「それはまた、性急な事だ」

気にも止めぬ者、

「本腰を上げたか」

賛同する者、

「何か理由があるのだろう。……我々には知り得ぬ事かも知れないが――」

勘繰るような意見を述べる者。

そして、議長は口を開く。

「――残念だが、“熊”を増やさなければならない時が迫っている。……あれから10年以上経っているのだよ……」

「「「「「!」」」」」」

硬直する老人達。

理由は、言葉の意味を察したから。

緊張感が出始めた円卓。

満足げに議長は続け、

「来る“雪崩”に備えて、我々は準備を進めねばならない。……まずは――」

真剣さを増した討議は続く。

思惑と、真摯さを交えて――

 

 

同日――エリアRos Lim-E 第3独立遊撃隊事務所――

「…………老害共が」

唐突に振動した携帯端末を開き、原因たる電子メールの内容を一瞥した俺は、苛立つ。

予想通りの行動を上層部が取ったからだ。

 

――通達――

 

第3独立遊撃隊へ人員補充を行う。

セルゲイ・モヴィーク少尉、ノルシェ・リオート曹長の適切な指導を期待する。

尚、補充人員の詳細な情報は追って通達する。

――以上。

 

補充人員。

この言葉が意味する事は、老害達が俺とノルシェの現状を知り得ている、という事実。

お互いに、“子熊計画”を全うする事を拒んだが故に、切られた次策。

送られる人員はほぼ確実に第7世代強化個体。

そうでなければ、“子熊計画”の“聖杯”とはなり得ない。

(……いや、待て?もしや……)

思い返す。

戦闘時の身体機能を見る限り、俺、ノルシェ、グラナデを除く全員が第6世代までかつ、現行の最弱個体である第3世代型も存在している。

老害達が第3独立遊撃隊を孵(・)卵(・)器(・)として見ているならば、おかしい。

では、何故低位個体まで混じらせた?

(…………分の悪い賭けに出やがったな)

もっと早くに気付くべきだった。

俺とノルシェに与えられた役割は、“子熊計画”の聖水と聖杯だけでは無い。

合(・)法(・)的(・)な、人員強化手段としての役割もあるのだろう。

致命的な流血を伴う、限り無く零に近い賭け。

それが実行されなければならない理由もあるはずだ。

「……セルゲイ?」

「…………ノルシェか」

思考中断。

「…………」

同時に、俺の端末を覗き込んだノルシェ。

数瞬後、

「еби(※※※※)」

「おい」

普通は言うべきではない言葉が飛び出した。

……ノルシェも同意見という事か。

「拒否できない?」

「無理だ。俺達に拒否権は無い。……それに、指導はしっかりしなければ、俺達が死ぬ」

予想通りならば、だが。ほぼ的中だろう。

「Чёрт」

「…………同意見だ」

半ば呆れるように返し、端末を閉じる。

嘆くだけ時間の無駄だ。

思案再開。

指導方法、内容をある程度纏めようとし――

「……」

膝上にノルシェ。

先日から何故か気にいったらしく、よく腰掛にされる。

その上、可愛がり過ぎると、寝てしまうので、注意が必要。……今はする気が無いが。

(……まぁ、考えられなくはない、か)

軽くノルシェを抱き締め、思考の海に没入する。

邪な感情に流されなければ良いのだが――

 






――以上、第Ⅳ弾倉13話目、《 悪意と思惑と必然と――》でした。
短いですね。
まぁ、プロローグとエピローグは、短くてもどうにかなる、と考えているせいか。

シリアスに混じって、微妙にイチャコラしようとするノルシェ。……実際、そういう系のキャラは好きだったりします。無表情ならば尚良し。
…………どうでもいいですね。

次回からは第Ⅴ弾倉。
今話であった通り、キャラが2名増えますよ。

では、今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました――
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