※この作品はR-18です。

Dirty Works   作:空薬莢

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さぁ、賽を投げろ。
それが、悪意故の結末しか生まぬ賽だとしても。
犠牲無くして、得られる物だと、俗物でしかないのだから。




第Ⅴ弾倉~Ген Цепь~
プロローグ


 

 

 

某日 エリアRos Lim-E IC――

(……ようやく、着いた)

高速をおり、一般道に入りつつ、私は思う。

エリアRos Lim-E。

エリアRosという国家の最東端。

かつてはウラジオストクと呼ばれた街。

(ここに、兄さんがいる)

もっとも、私がこの地に飛(・)ば(・)さ(・)れ(・)た(・)理由はそれではない。

“上”からの命令、第3独立遊撃隊への編入。

実にどうでもいい理由。

思惑のようなものがありありと浮かぶ、糞以下の価値しか持たない命令。……そんな下らない戯言しかほざかない老害達のせいで、私はここに飛ばされた。

「……エリアRos Lim-Eか」

思案に耽っていると、助手席から聴こえる相方の声。

私と同じ理由で、僻地に飛ばされた存在。

彼女も、同じ事を思っているのだろうか?

「……」

考えるだけ不毛。

まずは目的地を目指そう。

ギアをセカンドからサードに。

アクセルは少し踏み込む。

戦闘中でもない市道で、曲芸をかますつもりは無い。

法定速度内での、やや急いだ安全運転。

「ここにアタシの姉貴がいるんだよなぁ」

その最中、相方は車窓を眺めながら言う。

「……兄さんもね」

運転中でも余裕はある。少し、話に付き合おう。

「そうだったな。……姉貴のお兄さんもいるんだった。部隊長だっけ?」

「そう。セルゲイ・モヴィーク少尉。第3独立遊撃隊 隊長。元は第17特殊強襲中隊 第一小隊所属の選抜射手兼観測手」

兄さんは有名な兵士だった。

……いや、特殊強襲中隊自体が有名だった、か。

魔獣狩り等を専門とする連中。戦闘能力は言わずとも分かる。

一般兵にとっては、ただの化物に違いないとも言えるが。

「……詳しいな。ストーカーか?」

「……兄妹の事は兄妹が一番知っている。そんな俗説、知らない?」

「あー……なるほど。そういう事か」

納得したように相方は言い、再び車窓見物に没入。

運転への集中力配分を増やす事にする。

十字路を左折。

視界に映る、廃墟街。

この近辺の筈――

「消え失せろ生塵共ぉっ!!」

「脳漿をブチ撒けろー☆」

――なんて、目的を忘れる事態に遭遇する。

人が宙を舞っているのだ。

…………いや、その表現は適切じゃない。

かつて人であった骨付きの肉塊が鮮血と脳漿を巻き上げながら、舞っている。

火薬由来の硝煙も抱いて。

その中心に位置するのは、二人の若い女性。

どちらが嗤い、

手にした得物の引鉄を弾き、

巻き上げられた血肉に狂喜する。

――異常。

 

戦場に身を置き続けた者は精神に異常をきたし、一般社会の害悪と化す。

……市民の、一般的な軍人の感性では当然思う事。

間違いではないが――

(…………到着、か)

ゆっくりとクラッチとブレーキを踏み込み、停車させる。

ある店――――便利屋の前で。

 

 

「邪魔するぜー」

「……」

下車し、便利屋に入る。

上の指示通りならば、配属先はここの筈。

ならば、早く部隊長に会わなくては――

「…………убираться」

その前に出会ったのは私とそう変わらないくらい若い女性。

白髪、色白、碧眼。

全体的な特徴も、私や相方と似ている。

(……ノルシェ・リオート曹長)

第3独立遊撃隊 副隊長。

担当は後方支援全般。主としては火力支援を担当する。

…………有名で……優秀な兵士だ。

しかし、第一声が“出ていけ”。

歓迎されていないみたいだが、上の意地の悪さを鑑みれば当然か。

……尤も、私達には帰る場所がない。

故に、相方が口を開く。

「おいおい姉貴、そういうのはねぇんじゃねぇか?」

「Сохраните его(口を閉じろ)」

だが、無意味。

「姉貴っ…………実力で、分からせれば良いのかよ」

「……」

話は平行線。

副隊長の方は不明だが、相方の方は牙を剥く寸前、といった具合。

…………大人しく、出ていこうか。

行き先が完全に無いわけではないし。

そう思い、私が踵を返そうとし――

「…………いい加減にしろ。役割からは逃れられん」

諭すような声を聴く。

振り返る。

灰色のやや長い髪。碧眼。感情が希薄な青年が立っていた。

「お前らが補充兵だな。……まずは実力を見せてみろ」

……やや高圧的な口調。

…………兄さんだ。

「どうやってだ?」

「簡単だ。表のアホを沈めてみろ。……無理だろうがな」

確かに、無理だろう。

兄さんの言う表のアホとは、先程の狂人の事。

片方に見覚えはあった。

より小さい方。

グラナデ・ヴェルファー元軍曹。……元正規軍第100歩兵大隊所属。

使い潰される事が前提の為、必然的に生きている限りは実力が着いていく、地獄を生き延びた強者。

所詮は新兵に過ぎない私達に勝ち目が無いのは当然。

――と、私は事の無謀さを理解しているが、相方の方は理解していないらしく、

「あんな幼女ごときに負けるかよ」

意気揚々と、外へと出ていった。

直後、罵倒と銃声の多重奏が奏でられたのは言うまでもない。

結果についても…………ね。

 





――以上、第Ⅴ弾倉~~プロローグでした。
今話から第Ⅴ弾倉に入ります。
実質的に言えば、今章のサブ主人公は2人います。
基本的にその片方と、セルゲイの視点で話が進む予定。

で、作中に出てきた狂気の沙汰――を行っていたのはグラナデとライヒです。因みに、当初の予定ではキャットファイトでした。……ガチレズの。

現状で言えるのはこのぐらい。
今話から登場した二人が誰か、分かった人は真面目にDirty Works、及び関連小説を読んでいると言えます。

今回はこの辺で。

拝読ありがとうございました――
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