※この作品はR-18です。

Dirty Works   作:空薬莢

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現実は美しく、残酷である。
同様に、幸福と絶望は共生する。
だからこそ、だろうか?
信じられる物を無くしていくのは――



指標たる銃声

 

数時間後――

談話室には、隊員全員が集まっている。

理由はただ一つ。

「何人かは知っているだろうが、本日付で、3名の兵士――と言っても、一人は違う気もする――が加入する事になった。……詰まるところ、召集理由は、自己紹介と言った所。……まずは、そこのアルビノ達から始めよう」

「……了解」

先に始めるのはアルビノの片割れ、感情が希薄な、銀髪赤目の少女。

長めの銀髪を雑に纏めたわりには、着ている野戦服はしっかりとしている。

全体的にノルシェ同様、人形然とした美少女といった所だろう。

「……スナリャート。スナリャート・モヴィーク。原隊は存在しない。以上」

少女――スナリャートと、ノルシェが異なるのは、歪さと――

「ごふっ!?」

脛にローキック。

何しやがる、ノルシェ。

…………と、思うのは創作の登場人物くらいだ。

理由なんて分かっている。スナリャートの方が、ノルシェよりも起伏のある体型だから。

要するに、嫉妬だ。

横目でノルシェを睨み、

「……」

「……次に行こう」

案の定、涼しい顔だったので次の奴へ。

「……で、次が私ってわけだ」

次の奴――もとい、もう一人のアルビノが立ち上がる。

こちらは、勝ち気そうな紅い瞳に、やや短い銀髪。均整を保ちつつも、女性的な身体付き。全体的な印象はフィアに近いか。

「クローフィ・リオートだ。スナリャートと同じく、原隊はねぇ。後、姓名で察しただろうけど、私はここの副隊長――ノルシェ・リオート曹長の妹だ。必然的に、スナリャートは隊長の妹って事になる。……ま、んなこたぁどうでも良いから、仲良くしてくれると助かるよ」

笑い飛ばすように言い、着席。

余計な事を言いやがって。

再び横目でノルシェを確認すると、ノルシェも同様の事を思ったらしく、若干顔が歪んでいた。

そして、突き出された携帯端末。

(……依頼が来た。研修用に適する、か)

画面の文章を読み、納得。

「……スナリャート、クローフィ。後で個人的な話がある。集会終了後、ここに残れ」

「了解」

「了解……」

少なくとも、クローフィは嫌そうに言う。

「え~と……次は私だね」

最後に立ち上がったのは、スナリャートとクローフィ以外の全員が面識を持つ、淡い金髪の少女。

「名前はライヒ・フランキ。所属は……喫茶店《Engage》ってことで良いのかな?まぁ、今後ともよろしく♪」

「……以上、3名が新戦力となる。各自、険悪な関係にはできる限りなるなよ?…………集会はこれで終了とする。新入りは全員残れ」

自己紹介が済んだところで、解散を促す。後はブリーフィングなりで各自、親睦を深められるだろう。

程なく、隊員達が談話室から出ていき、俺とノルシェ、新入り達の5人が残った。

「……早速だが、明日は新人研修だ。……尚、研修とはいえ、実戦だ。最悪、死ぬ事になるが、研修程度で死ぬような屑は第3独立遊撃隊どころか、正規軍には不要だ。……即ち、好運で生き残ったような奴も、その場で俺が処理する。……そのつもりでいろ」

言い切り、横目でノルシェを一瞥。

意図を察した彼女は口を開く。

「……依頼内容の説明に移る。内容はLim-E郊外の放棄市街地に出没した、小規模魔獣群の排除。同地区は、《F》由来の植物が繁茂した、二重の意味での石膏樹海となっている。待ち伏せや不意打ちは容易。……注意して。既にセルゲイが言ったけれど、作戦決行日は明日。詳しい戦術、立ち回りは後程各員の端末へ送信する。……以上」

「明日に備えろ。……解散」

伝えるべき事は伝えた。後は帰しても問題無い。

談話室を後にする新入り達を見送りながら、俺は思う。

(……くたばるとしたら、ライヒだろうな)

予想が正しいのであれば、ライヒだけがよくて、一般強化個体だから。

 

 

――翌日。

「では、ブリーフィングを始める」

装甲車の車内で、ブリーフィングが始まる。

「資料には目を通したな?……悪いが、読まない奴は無視していく。ざっと見た限り、今回は前衛役に適する兵士の方が多い。まぁ、後方支援は最悪、ノルシェ一人でどうにかなる。分担は俺、クローフィ、ライヒが前線に立つ。ノルシェとスナリャートは後方から火力支援を行え。で、前線組だが、互いの援護を考えて行動し、無理はするな。だからと言って、手を抜いた奴は、この仕事が最後の仕事になると思え。……俺はクローフィ、ライヒに合わせて行動しよう。各自の判断力に期待する。……ブリーフィングは終了だ。各自、ヘッドセットを装着しろ。周波数は《191.439》だ」

「了解」

了承し、ヘッドセットを装着。起動はまだしない。

蓄電池が勿体無い。幾ら、安いとはいえ。

「了解だ。腕がなるな」

続いて、クローフィも了承し、傍らに置いていた短小銃二挺を手にする。

銃床を廃し、銃身も短縮したが、一挺は擲弾射出器、もう一挺は散弾銃を装備した、木材に似せた複合材を多用とする造型。

全体的には、旧共産圏産の突撃銃を彷彿とさせるもの。

――JA AB-42-Kv。

おそらくは、その独自改造モデルだろうけど。

《AB-40》の大幅な改修により、別系列化した《AB-42》の近接戦仕様が、《42-Kv》であり、当然ながら銃身の短縮化による初速の低下――即ち、破壊力の低下という欠点がある。

しかし、それは弾薬次第で解決する場合がある。……機関部の寿命と引き換えだけど。

(……その辺りを考えた上での改造なのかな)

考えてもしょうがないけれど。

だから、自分の得物の確認に移る。

長大な銃身と機関部。

重厚かつ安定感のある銃床を持つ、狙撃銃。

――8.6㎜口径多装狙撃銃《FR StSS-1》。

主力製品を除けば低価格、特殊(変態)色の強いFR社製としては一世代前のモデルだが、狙撃銃としてはそれなりの新鋭にあたる。

StSS-1も例に漏れず、機構的にかなり扱いづらく、大抵の狙撃手からは嫌われる。……というか、狙撃手の求める銃火器の最高峰はAA社製。

高精度、高火力。信頼性も高水準。でも、財布に優しくない。

それ故に、正規軍もAA社製の火器を回すのは、本当の精鋭のみで、大抵は廉価なFR社製やJA社製を回す。

(……で、問題の元一般人は…………《AB-40》の改造モデル)

妥当な線。

一般市場に、現行の軍用制式採用小銃は流れない。流れるのは、各種の法回避処理を施した、民間向けのモンキーモデルだけ。

ライヒの武装も、モンキーモデルかも知れないが、一瞥しただけ判別可能なほど、私の眼は鋭くない。

(……少なくとも、何処の馬の骨が乱造した歩兵鎗じゃない事を祈るしかないか)

戦場での動作不良は死を招く。

実戦を経験していない馬鹿でも分かる事だ。

(……ま、私は後方支援役。……補助を重点に考えるとしよう)

決意と共に、ボルトハンドルを起こし、音高く引き絞る。

バネによって、3発の8.6x60㎜焼夷徹甲弾(API)が押し出され、

ボルトを戻す事で、薬室を兼ねる内蔵弾倉へと弾薬を叩き込む。

初射分の装填。

安全装置はかかったまま。

戦場はまだ先。

すぐに外せるようにはしておこう。

思うや否や、停車する車体。

「30」

「30か。…………50は確定だろうな。弾薬は足りるか?」

「雛次第」

「了解だ」

兄さんと副隊長の声が聴こえる。

短い言葉。

経験に裏打ちされた、何か。

「安全装置を外せ。外に出ろ。スナリャートはノルシェに、残りは俺に続け」

「了解」

「了解っ!」

「りょーかい」

指示に従い、降車。安全装置も外す。

ブリーフィング通りの、コンクリートと樹海が融和した、ある意味、正しいコンクリートジャングル。

視覚よりも、他の四覚が重要か。

『メドヴェーチ2より、スナリャートへ。14時方向、1600mに移動』

副隊長の無線。

見学する時間は無いようだが、いつの間に1マイルも移動したのだろうか?

(……同系列個体でも、経験の差は大きいか)

元々、そういう個体種別だ。

無駄な思案を振り払い、指示された位置へと移動開始。

おそらく、その位置は狙撃地点だろう。

走りながら《StSS-1》を背負い、代わりに腰のホルスターから副兵装を抜く。

銃身下部に光線照射式照準器(L.A.D)、シリンダー上部に、ドットサイトを装着した 異様に長い円形弾倉(シリンダー)を持つ、リボルバー。

《AA AR12》の改修モデルである、《AA AR12-KrA》……を自分好みに改造したもの。

状況的には、突撃銃あたりが適切なのかも知れないが、生憎と手持ちには無い。

撃鉄を起こし、引鉄に指はかけない。

暴発で自傷しては、笑えないから。

(約1000mぐらいかな)

距離がある。

使った方が速く着くか。

仮死化させていた細胞を1%程度解放。

全身に何かが迸るような感覚を感じた所で、力強くコンクリートを蹴る。

身体を押し出す反動と共に、蹴り飛ばしたコンクリートが粉砕。

今までの十数倍の脚力を以て、疾走する。

当然ながら、足音も響く。

故に、狼に似た生物達が林から、私の首を食い千切らんと顋を開きつつ、飛び掛かる。

(6頭)

《AR12-KrA》を構え、無防備に晒された喉に向けて一射。

爆縮。

膨張。

11.5㎜の完全被甲弾が撃ち出され、食道、脳髄を貫く。

少し遅れて、コンクリートの上で空薬莢が跳ねる。

絶命。

残り5頭。

死亡確認は要らない。

狼達は、射的の的にしろと言わんばかりの横列。

銃把を握っていない手を利き腕に添え、《AR12-KrA》は寝かせる。

そして、発砲。

反動を利用して、銃口を移動させる。

狙いが定まった所で、再度発砲。

4回、繰り返す。

所謂、流し撃ち。

狼達は回避出来ずに骸と化し、私は先を急ぐ。

残弾は充分だが、減音器が無い以上、無駄な発砲は控えたい。

(……と、すると――)

野戦服の胸部、ズボンの大腿側面に巻いたベルトを一瞥。

双方にしっかりと固定されているのは、鞘に収められた小振りなナイフ。

こっちを使う事も考えるべきか?

……とは考えたが、使う前に副隊長との合流が果たされる。

崩落した廃墟の一角。

射角が充分に取れる位置に、副隊長は伏せていた。

手には、大型の減音器を取り付けた25㎜口径の対物砲《AA PB5L》。

「遅い」

視線を寄越さず言い、響く砲声。

減音された――拡散した砲声。

聞きながらも、私はコンクリートに身を投げ出しつつ、背負っていた《StSS-1》を保持。《AR12-KrA》はホルスターへ。

接地。

二脚架も展開。

望遠照準器(テレスコピックサイト)の覆いも外し、覗く。

上部を欠いたT字上の照準線。その下部には、一定間隔で並ぶ横線。

射距離と落下量を表す指標。

照準器に同軸接続された射距離測定器(レンジ・ファインダー)から照射された不可視光が一体の狼型魔獣を捉える。

――750m。

(…………左に5ミル、上に1ミル)

計算し、調整。同時に、安全装置も外し――

引鉄を弾く。

暴発の危険性を無視してまで軽くしたトリガープル故に、出来る事。

バネが解放され、撃針が雷管を打突。

撃発。

後はガス圧を利用し、速射。

視界の中で爆ぜる魔獣の身体。

確認しつつ、ボルトハンドルを操作。

次射装填。

『次点へ移動する。11時方向、800m』

そして、狙撃地点の変更指示。

今ので位置が露見したという事だろう。まぁ、減音器も無しに三点射撃式狙撃銃なんて扱った私が悪い。

『……бесчестие(恥晒し)』

故に、下されたのは辛辣な評価と、

「Белый установлены(着けておけ)」

すれ違い様に、やや長い減音器が手渡される。

言葉には、呆れが混じっている……ように思えた。

(……最低合格圏は覚悟かな)

減音器を取り付け、立ち上がりつつ、スリングを胴に回して、《StSS-01》を懸架。

先を急ぐ、副隊長を追い掛けるべく、私は走り出した。

彼女は既に、米粒程の大きさに見える。

速い。

私以上に重武装の筈なのに。

鍛え方が違うのか?

考えても、答えの出ない無駄な思案。

放棄して、疾走。

今度は、奇襲が無い。

代わりに、地面に散乱する死体。

先行した副隊長が殺ったのだろう。

自分との実力差を痛感してばかりだ。

幾分も遅れて、狙撃地点に着き、伏射姿勢に移行。

構え、照準修正。

900、34、1.3。

上1、左3。

弾く。

拡散した銃声。

爆ぜる肉片。

『メドヴェーチ1より各員へ。追い込みだ。そっちに残りが行くぞ』

『了解。射線に注意』

『……前に出過ぎるなよ、お前ら』

隊長の言葉通り、視界に十数頭程度の狼型魔獣を確認。

――それと――魔獣の頭上を跳躍する少女。

「逃がすかよぉっ!!」

クローフィだ。

モモンガか何かのように、木々やコンクリートを蹴り、跳び回りながら両手に保持した《AB-42-Kv》を速射する。

強化個体故の立ち回りだが、基本的な戦術としては間違いだろう。

……とはいえ、死角たる頭上から執拗に着弾した5 56㎜弾により、数頭が絶命。

「永眠しなっ!」

仕留めきれない相手には、銃身下部の擲弾射出器から擲弾を撃ち出し、潰す。

……負けていられない。

ボルトハンドルを引く。

修正。

弾く。

鮮血。

残りは……

『後、8頭』

『上等だ、飛び散りやがれぇっ!!』

……頭に血が上っているのかな、私の相方は。

(少しは落ち着きなよ)

弾道計算。

(クローフィらしくない)

修正。

撃発。

鮮血。

ボルト、コッキング。 最終射分。

照準修正。

撃発。

マグキャッチ、リリース。

腰に巻いていたポーチから予備弾倉を引き抜き、挿入。

ボルトハンドルを引く。

次の標的はどいつか……と、探すも、あるのは死体のみ。

『周辺に敵対生物は確認できない。……依頼完遂と思われる』

そして、現実を伝えたのは副隊長の無線だった――

数時間後――

帰投し、諸々の処理を終えた俺は、自室に戻る。

……すると、想定外の事態に遭遇した。

「……いつもより遅い」

ドアを開けるなり、目に前にノルシェが立っている。

…………出迎えは要らないのだが。

「猫の暴走を止めてきたせいだ」

この場合の猫とは、グラナデの事だ。

転じて、暴走する対象は生粋の同性愛者のライヒ。

何が起こったのかは想像に難くない。

「……そう」

興味が無いような口振りと共に、奥へと戻っていく。

……何だかな。

気にしてもしょうがない事。

俺も部屋の奥へと行くと――

「おかえり、兄さん」

「早かったなぁ、兄貴」

妹達がいる。

「…………お前ら、何故いる」

割り当てた部屋がある筈だぞ?

「義姉(ねぇ)さんに呼ばれた」

「アタシは付き添いだぞ?」

義姉……ノルシェの事か。上層部は既に知っていた、と。

まぁ、そこはどうでもいいか。些細な問題だ。

問題なのは、ノルシェが何故スナリャート(愚妹)を呼んだか、という事。

薄々察しは着くのだが、それが正しい保証は無い。

「なら、クローフィは部屋に戻れ。おそらく邪魔だ」

「駄目。残って。貴女にも関係があるから」

「……そうかい。なら、早く始めた方が良いんじゃね?姉貴」

「……」

無言で、俺に向き直ったノルシェ。

いつも通りの無表情。

……の裏に潜むのは、焦りか?

「……愚妹の兵装矯正作業を行いたいと思う。手伝って」

(…………やっぱりか)

予想通りだった。

主な矯正対象はスナリャート。点射式狙撃銃なんて代物は、本来的に使われるべきではない兵装だからな。ノルシェが苛立つのも当然。

で、クローフィも……という事らしいが、俺としては好きにやらせろよ、といった具合。

突撃銃の二挺持ちは強化個体連中では見慣れた形式。

急所の防御と射撃精度を捨てるが、単純な単位時間辺りの火力が高い事から、掃討戦や殲滅戦に向く為だ。弾薬の消費速度も問題だが。

むしろ、フィアのような二挺拳銃の方が異端だ。アイツこそ矯正しろよ。

「兄の意見ならば、聞くはずだから。セルゲイからも言って」

……どういう理屈だ。

(いや、上の目論見を鑑みるに……有り得るか)

納得がいく。相手をするのも必要も、あると言えばある。

「……対魔物戦ならば、精度よりも火力が重視されるべき。兄さんなら、分かる筈」

思案を終えたところで、スナリャートが口を開く。

……精度より火力か。

扱う得物がグラナデと同構成ならば、正しい事だな。

「言い分は分かる。が、俺としても点射式狙撃銃は無い。実力で認めさせてくれ」

故に、否定する。

仮にもノルシェの観測手を務めてきた経験があるからな。

狙撃にはどういう銃器が向くか、好まれるか程度は分かる。

「その理論自体、後方支援要員としては間違いではない。けれど、効果的な火力を効果的な位置に叩き込めない武装に、意味は無い」

続けて、補足するようなノルシェの意見。正確には、現実を叩き付けているだけだが。

心をヘシ折りに行く口調。

余程、模(・)造(・)品(・)が嫌いと見た。俺も嫌いだが。

(……とはいえ、コイツらは生(・)贄(・)と見て間違いない)

強化個体の世代としては、俺達と同格である筈。

ならば、殉職させてはならない。

……手間をかけさせるなよ。

「スナリャート。点射式狙撃銃は発射弾数が多い分、隠密性が低く、複雑な機構故に弾道も安定しない。ほぼ、大型相手にしか使えないという事だ。一般論ではな」

仕方が無いので、便宜をはかる事にする。

厄介者を押し付けやがって。……老害共め。

「対魔物用点射式狙撃銃において、.338口径などという、対人用大口径程度の物は要らない。今回の戦闘で言えば、単発半自動式の方がマシだった。……ノルシェの意見を要約すれば、そんな所だろう?」

振り返り、ノルシェを見る。

小さな首肯。正解らしい。

スナリャート、クローフィの方に向き直る。

今度は、少し口調を和らげて。

「手始めに、武装の選択から始めよう。……明日、俺が見繕ってやる」

「私も行く」

即座に反応したノルシェ。

取られると思ったのだろう。

堕ちる気は毛頭無いが、口で言っても聴かないのは知っている。

「…………好きにしろ。スナリャート、クローフィも問題無いな?」

「……大丈夫」

「私も問題ないぜ。……しかし、兄貴の方が大丈夫かよ?両手に花じゃ――」

「話は以上だ。自室に戻れ」

クローフィの発言を無視し、二人を追い出す。

言われなくても分かっている事だ。

突っ掛かる阿呆は潰せばいい。

往々にして、そういう妬みを表に出すのは屑なのだから。

「……セルゲイ」

背中に感じる、刺すような視線。

「……嫉妬は程々にな。俺の胃に風穴が空く」

事実、精神的な原因で胃癌や胃潰瘍を起こした人間がいたらしい。

「させる方が悪い」

「…………言い返せないな」

全面的に俺が悪いのは分かるが……状況的に避けられるか?

……これも、言った所で無意味。

機嫌取りが必要か……。

また、思考の海に身を投げ出す。

少々面倒な妹達の武装と、ノルシェの事についてを考える為に――

 





――以上、『指標たる銃声』でした。

何人かは予想していたでしょうが、プロローグの二人はPiece of Storyの銃火器/重火器解説のスナリャートちゃん、クローフィちゃんでした。
同時に、セルゲイとノルシェの妹でもあります。
“妹”……つまり、血縁である事は、重要な事です。ここまで読んだ方は重々承知でしょうし、どうなるかも察せる筈。

で、戦闘場面。まず、(現実的描写上)増えてはいけない二挺持ち枠であるクローフィちゃん。
しかも、オプション付アサルトカービンで、という暴挙。……強化個体はそのぐらい出来る、という例です。本文中で有用性は少し述べていますが、強化個体を含む人外が使用する事が前提ですね。グラナデちゃんのアレコレは既に大概ですが。

次に狙撃手枠、スナリャートちゃん。
第3独立遊撃隊には既に狙撃手が2名いますが、ノルシェは超長距離狙撃/火力支援――というか、基本は万能型。天樹ちゃんは分隊支援、スナリャートちゃんは中長距離火力支援的な位置付けになります。
因みに、得物であるバースト射撃式狙撃銃は、後に携行兵装解説に載せますが……多少、変態です。エリアGer(現実に於けるドイツ連邦)という時点で納得してください。
……とはいえ、バースト式狙撃銃自体は、創作界隈では珍しく無いですが、現実的には利点がありません(正確にはデメリットがメリットよりも大き過ぎる)。……では、何故本作では存在するのか……という点ですが、本文通り、単純に相手が魔物/魔獣だからです。対人相手にはすこぶる向きません。

では、今回はこの辺で。
拝読ありがとうございました。
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