※この作品はR-18です。

Dirty Works   作:空薬莢

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誰かに決められた流れ、というものは存在する。
が、大概それは当事者にとって都合の悪いものかもしれない。




必然たる交響

 

 

翌朝――

(……やっぱりかよ)

目を覚ました俺は、落胆する。

予想通りの事が起こっていたからだ。

身体が重い。

疲れが残っていて、反応が鈍いのではなく、単純に関節を決められているようなもの。

要するに、組み付かれているのだ。ノルシェ(恋人)と…………スナリャート(義妹)に。

因みに、左半身がノルシェで、右半身にスナリャート。

ノルシェはいい。恋人であり、最近は愛着も湧いてきた。

一方で、スナリャートは邪魔。

何処となく、愛らしくはあるのだろうし、ほっとけない感もある。……飽くまで、一般論として

故に、子熊計画抜きならば、多少は気持ちも変わったかもしれないんだが……。

(……取り敢えず、起こすには……)

いつものように、遠心力で床に叩き付ける事は出来ない。

どうしようか?

「……доброе утро、セルゲイ」

と、思った直後にノルシェが起床。

旧公用語が混じっている以上、不機嫌らしい。

「……遠慮無くやればいい」

俺のやろうとする事を察したのだろう。ノルシェは離れ、元自室へと歩いていく。

(言葉通り、遠慮無くやるか)

ベッドから横転するように出る。

当然、スナリャートを緩衝材にして着地。

「はみゅあっ!?」

握力、脚力が緩んだところで離れ、立ち上がる。

「доброе утро」

シャツを着ながら、床に蹲るスナリャートに言う。

「行き過ぎた兄妹愛はロクな事にならんぞ」

「それは……兄さんの決める事じゃない」

「御託は不要だ。着替えてこい」

ジャケットを羽織り、腰にホルスター付きベルトを巻く。着替え終了だ。

武装はどうするか。……取り敢えずは《AP4-KrS》は確定だが。

「……了解」

渋々といった様子で、スナリャートが退出。

彼女が部屋を出ていくと同時に、

「……行った?」

私服を纏うノルシェが戻ってきた。

だが、この間購入したドレスではなく、灰色のカーゴとジャケット。

腰には、大型のホルスターを巻いている。得物は《AA AR-11J》か。

火薬臭い買い物だ、そういう服装の方がいい。

俺もさっさと最後の準備を済ませよう。

壁と一体化したラックから、《AA AP4-KrS》と《AA AP4-KrM》を取り、ホルスターに納銃。

弾倉もベルトに差す。

ナイフは……ブーツに収まっている分で充分か。

ゴロツキ程度ならば、素手でも無問題。

「……行こうか」

「……」

準備が済んだ俺とノルシェは、部屋を出る。

すると――

「兄さん……遅い」

「姉さんが早いだけだ」

私服姿の妹達がいた。

スナリャートは、少女らしい簡素なワンピース。

クローフィは、野戦服のズボンとタンクトップ。

それぞれの性格が表に出たらしい。

(……火薬臭くなってもいい衣装か?)

スナリャートは疑問を感じざる負えないが。

「準備は出来ているようだな。行くぞ」

一銭にもならない思考を放棄。歩き出す。

返答は待たない。

待つだけ無駄。

(愚妹に勧める武装でも考える方が有意義だな)

行き先は決まっているわけだし、思考全てを思案に向けるわけでもない。

夏ってのは……いや、限定するべきじゃないな。

夏に限らず、馬鹿と屑は一年中、湧く。

肉欲と物欲を本能のままにブチ撒ける為に。

(……向かってくるならば、退場させるだけだ)

この世から。

幸いというべきか、戸籍を持たぬ馬鹿がいくら消えた所で、国も世界も俺達を責めない。

それ所か、感謝される事すらあるからな……。

(歴史を紐解けば、酷い御時世だな)

 

 

数十分後――

「……ここだ」

のんびり歩いた後、目的地に着く。

――火器専門店 “Tienchin”――

“弾雨”を意味する某国の言葉。

「……久し振り」

「数日ぶり、程度だがな」

ノルシェの問いに答えつつ、入店。

出迎えは多数の銃火器と、重火器。

何れもが、欧州系企業の製品。

それもその筈。

この店は、欧州方面の火器を専門に扱っているからだ。

「……久しいな、坊主」

入店にやや遅れて、奥から金髪の青年が現れる。

「……そう歳は離れていないだろ、店主?」

この店の店主で、名前は確か――ヴァンドル・レーヴァ。

元エリアRos正規軍 第2補給中隊の補給兵。

除隊理由は不明だが、不名誉除隊らしい。

「まぁ、数年程度の差だな。……で、今日は何の用だ?AA社の新製品は入ってるが、お前らは無償で貰ってるだろ?」

この間の騒動の時に受け取ったアレら、か。

もう販売されていたとはな。……どうせ高価だ。買うのは金持ちの屑共だろう。……可哀想に。

と、内心で思いつつ、

「……アイツの武装選びだ」

何食わぬ顔で物色するスナリャートを顎で指す。

「アイツの――って、おい……。何処で捕まえたんだ、あんな上物」

「妹だ」

質問に答えると、ヴァンドルは暫し沈黙し――

「…………マジかよ」

唖然とする。

「あぁ。…………何なら、貰ってくれて構わないが?」

まぁ、最終的には悲劇しか待たんが。

断るだろうし――

「被害を増やさない」

「……冗談に決まってるだろ……。察してくれよ」

俺だって、知り合いが魔獣になるのは御免だ。……面倒事的な意味で。

「……」

が、背中に刺さるのは蔑みの視線。

…………後で埋め合わせだな。

「……さて、目に毒な光景を見たことだし、仕事の話に戻ろうか」

「あぁ」

刺さる視線は無視しよう。構ってやるのは帰宅後だ。

「まず、だ。そこの嬢ちゃんの適正は?」

「分からん。……が、現行の主兵装はFR社の《StSS-1》だ」

「《StSS-1》だって?あんなゲテモノを使うのかよ。素直に汎用機関銃を持たせろよ」

店主も同意見か。……普通の感性ではあるらしい。

「そういう目的で来たんだ。……分隊支援火器で良いのはあるか?」

「欧州系では――特に無いな。最近は突撃銃の小改修を施して製造される奴が多いな。……セルゲイ、《ストーナー M63》って銃火器は知ってるか?」

「あぁ。20世紀半ば頃に製造された奴だな。機関部を基本として、部品の換装で様々な銃種に変更できる。信頼性は低かったらしいが」

懐かしい代物だ。今や、その筋の収集家の玩具どころか、骨董品兼置物扱いだ。

「その通りだ。最近はあぁ言う種別が再発してるんだ。……信頼性も良くなったしな。……その類なら、紹介でき――」

「――これ、下さい」

ヴァンドルの言葉は遮られ、スナリャートは会計を要求。

「…………正気か?」

スナリャートが保持していたのは、大型の対物小銃。

全体的な大きさからくるレイアウト以上に長大な機関部。

太く長い銃身――いや、アレは25㎜の砲(・)身(・)に、太い二脚架。

――《FR StSK-2》。

信頼性と威力が増した、《StSS-1》の後継機種。ごく最近、発売されたモデル。

元が元である為、要はゲテモノに代わりはないが。

「当然。……幾ら?」

「1,600,000Rubだ」

元兵士ではあるが、現在のヴァンドルは一人の商人。

金を払う以上は、製品を提供する義務があるのだろう。

「意外と安い。……請求書は軍に送って」

「…………了解だ。持ってきな」

……今のやり取りで確信、理解する。

スナリャート(コイツ)は頑固だ。

(……まぁ、弾薬自体はノルシェの《PB5L》と共通だからな。戦果さえ振るえばいいか)

兵站面での苦労は多少緩和される。フィア並みに無駄撃ちするならば、本気で矯正するまでだ。

「――なぁ、兄貴」

折り合いがついた所で、今度はクローフィの声。

「……欲しい火器が見つかったか?」

少しはマトモであってくれ。

「弾幕形成に向く火器が欲しいかな。出来れば、短機関銃か突撃銃で」

「《AB-42Kv》では不満だと?」

「悪くはねぇんだけど……威力が、ね。5.56㎜だからなぁ」

……単純な火力不足か。

5.56x40㎜MB弾は対人用ライフル弾薬。魔獣相手ならば、最低でも6.8x48㎜MBだろう。腕が伴っている事は前提条件だが。

で、クローフィ的には単発の火力を上げたい。

元はJA社の火器。……信頼性は絶対条件だな。と、なると…………アレか。

「店主、《KrG-35-MK》はあるか?」

「……おい、セルゲイ。あんなジャジャ馬がいるのかよ?」

ヴァンドルの意見はある意味当然だ。7.62㎜MB弾を利用するバトルライフル《KrG-35》の全自動モデルである《KrG-35M》を短縮化したものだから。

反動制御性の更なる悪化と、多少の威力低下も起こしている。……とはいえ、5.56㎜MB仕様の《AB-42Kv》よりも威力がある事に代わりはない。

「必要らしいからな。改造代込みで二挺欲しい」

言いつつ、背後のクローフィを指す。

「……そっちの嬢ちゃんが使うんだな?……ま、選択は人それぞれだ。どういう改造をするんだ?」

「クローフィ」

「あいよ、兄貴」

クローフィと代わり、

「銃床の折畳化、《AA GW31》又は《JA Ge-00》対応のマウントレールの装着。排熱打撃用バレルシュラウドの装着」

「……正気か?」

注文内容を聞いたヴァンドルが眉をひそめる。

当然の反応だ。

「正気だよ。こういうのが性に合うんだ」

「……ひでぇ近接射撃戦(CQB)仕様の注文は散々聞いてきたが、こういう類は久し振りだ」

……とはいえ、過去にもあったような注文らしい。

成金連中だろうか?……知る必要性は無いだろうけど。

「酷いCQBか……。どういうのがあったのかな?」

「戦闘用散弾銃の回転銃身式機関銃化や、銃剣付弾道刃物射出小銃(バリスティックブレード・ライフル)の製作、とかだな。後者は断ったぞ?」

おい……。

「いや、それは当然だろう。趣味の範疇だ」

思わず、口を挟む。

態々、刃物を弾体に使用する意味は皆無だから

「あぁ。対人用途ですら有用性は微妙な所だ。馬鹿な便利屋が増えんのは嘆かわしい事だな、セルゲイ」

……依頼主は便利屋かよ。

「全くだが、それは現場でくたばる俺達の意見であって、役所や軍上層部連中にとってはどうでもいい事だ。アイツらからすれば、便利屋は代替可能な消耗品。正規軍兵士よりも運用費は安いしな」

「世知辛ぇよ」

事実を言って悪いか?

「なぁ、店主……。話の腰を折るようで悪いけど、私の注文は通ったのか?」

「あぁ。そっちは大丈夫だ。料金は正規軍持ち。要望通りに仕上げてやるさ」

「なら良かった。話の続きをどーぞ」

安堵したクローフィは下がる。

「…………だ、そうだ――」

「――セルゲイ」

……今日もか。

「仕事が入ったようだ。……また来るぜ、店主」

「了解だ。行ってきな!」

ヴァンドルの見送りを受けながら、俺達は店を出た――

 

十数分後、便利屋談話室――

「依頼内容の説明に入る。…………役場からの依頼。内容は、ならず者集団“Justice Trigger”の排除。手段は問わないらしい。……添付された資料によると、“Justice Trigger”はエリアU.Sからの移民で構成されており、設立自体はここ数年以内、との事。主に《F》と武装の密売、取引先はエリアU.S.が有力らしい。……同時に、国内の情報も流れていると思われる」

「なるほどな。最近、警察気取りの無能がでしゃばる原因の一つかもな。……で、出撃可能な奴は……」

俺は談話室内を見回す。

「セルゲイと私以外ではスナリャート、クローフィ、ライヒ、エイノの四人」

確認しきる前にノルシェが答えを述べる。

頭を切り換え、組合せを考えよう。

(相手はならず者。……武装の大半は近~中距離用だろうから、長距離支援と乱戦の組合わせか?)

だとすれば、ノルシェに支援を任せ、突入組はクローフィ、ライヒ辺りか。

幾分、不安はあるが――

「……もう一件、依頼が来た。……小規模大型魔獣群の殲滅。場所は……Lim-E近郊の海岸」

無慈悲に告げられた追加依頼。

……二件同時かよ。

構成は仕切り直しだが、すぐに決められる。

大型魔獣相手ならば、経験者が出るべきだから。

これは俺とノルシェで片付け――

残りは消去法。

「“Justice Trigger”の排除はスナリャート、クローフィ、ライヒ、エイノで行え。魔獣の相手は俺とノルシェでやる。異論はあるか?」

振り分けた結果を告げると、

「無い」

「無いぜ」

「ありません」

「ないよー」

異論無し。

「よし。各自、行動開始だ」

「「「「Да(了解)!」」」」

そして、各々が戦闘準備の為、談話室から出ていく。

「重装は久し振り」

「…………そうだな」

やや遅れて、俺とノルシェも談話室を出る。

さて……どの程度の魔獣だろうか――

準備は念入りに、だな。

 

 

 

 




――以上、必然たる交響 でした。

……初っ端から『羨ま……けしからん』、『爆ぜろリア充』……なわけですが、本編(正史)では不倫や浮気はありませんし、一夫多妻も起こりません。セルゲイはノルシェとしか交わりません。
……まぁ、If√では構想がありますが。


で、本編の大部分を占めた、銃火器店の描写。
今回登場したのは、大口径の三点バーストリミッター限定半自動式対物砲と、《AA KrG35》の派生モデルです。
前者である《StSK-2》は前モデルの《StSS-1》同様、実戦では使い物になりません。はっきり言って、浪漫火器ですが、魔物相手には使える。その程度の代物です。機構を脳内構成するのは楽しかったけれど。……尚、値段は日本円で約288万円。※2017年2月上旬為替レートに当て嵌めた場合。
高価な事で有名なH&K社の《PSG-1》や、米軍他で使用される対物ライフル《M82A1》がおおよそ80万円程度なので、如何に高いかが分かりますね。まぁ、ドイツ製の高性能光学照準器等を積むと、あっさり100万円を越えますが。
DW世界基準で同レベルの事をやると、軽く500万円ぐらいにはなりますかね……。
弾薬単価が現実より高めである事を踏まえると、便利屋は大変です。……軍もですが。

次に、派生モデルの《KrG35-MK》。
末尾のアルファベットはそれぞれドイツ語で『機械』、『短い』を意味する単語のイニシャルです。尚、『KrG』もドイツ語のイニシャルを取った形で、意味は『戦争小銃』。早い話、バトルライフルの意味ですね。
この辺は、ミリヲタや大学以上に進んだ方はすぐに解ったと思います。

では、今回はこの辺で。

次回は再び狩りの時間。

拝読ありがとうございました――
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