さぁ、銃を手に躍れ。
観客に
そして、黄泉送りという終焉を与えよう。
数十分後――
(……さーて…………獲物は人間、だったな)
輸送車から出た私は、手にした《AB-42Kv》の感触を確かめつつ、思う。
「塵掃除って、いつもやってるんだけどなぁ~」
詰まらなそうに言うのは、ライヒ。
この子は、そういう環境にいたらしい。学生でありながら、平然と人殺しが出来る少女。
今のご時世じゃ、普通に起こりうる事。過去ならば、異常者の烙印を押される境遇だけど。
「……仕事をしましょうよ。楽しんで殺せ、というわけでは無いんですし」
そんな私を尻目に、《AB-42》を構えるエイノは嗜めるように言う。
正論だろう。
姉貴はどうか知らねぇけどね。
「……じゃ、お仕事始めますか……の、前に」
一旦、言葉を区切って、仲間達を見回し――
「役割の再確認をしようぜ?」
おどけた調子で言う。
こんな事でもしなけりゃ、進まない気がしたのだ。
「それもそうですね。……僕とスナリャートさんは後方支援、クローフィさんとライヒちゃんが突入です。深追いは厳禁でしょうね」
即座に、一番マトモであろうエイノが説明。
「……理解した。射線に気を付けて」
「了解だ。背中に鉛弾は勘弁だぜ?」
「単純明快だね。 同じく、誤射は勘弁してよ?」
私達は再確認を終えた。単純な説明の方が、理解は早いだろう。
「作戦は?」
「状況次第ですね。索敵結果等は無線で伝えます」
「……あいよ」
そっけ無く答え、《AB42-Kv》の安全装置を外す。
マガジン確認。
ジャングルマグ、ロングマグ双方共に充分。異常も無い。
擲弾、ショットシェル……も同様。
「さて、ライヒちゃん?」
「いつでも良いよ」
即答。
確認は必要なかったようだね。
じゃ、行こうか!
脚に力を込め――地面を抉り飛ばしながら、走り出す。
『目標は3ブロック先の廃虚を根城にしているそうです。崩れかかった五階建ての宿屋、見えますよね?』
五階建て…………アレか。
「あぁ、確認した。しかし、3ブロック前って…………素人相手にしては過剰じゃねぇか?」
『素人相手でも手を抜くな――セルゲイさんならば、そう言いませんか?』
兄貴なら言いそうだ。
「了解――っと」
前方に断崖。
眼下は廃虚群。
「先に行ってるぜ、ライヒちゃん!」
細胞仮死状態、10%解除。
断崖を蹴り飛ばし、降下。
降下予想地点は一件の廃屋。
僅かに話し声も聴こえる。
“当たり”かもな。
《AB42-Kv》を構え直し、銃身下部の擲弾射出器のトリガーに指を掛け――弾く。
爆発。
崩壊しかかったトタン屋根が崩落。
白煙と黒煙の中に突っ込む。
「邪魔するぜぇっ!!」
着地。
同時に、周囲へ5.56㎜弾の掃射。
数秒で撃ち切った30発湾曲弾倉を排出。
50発湾曲弾倉と交換。
初弾装填。
ステップ。
(残りは……3人か?)
手近な鉄製テーブルを倒し、掩蔽物としつつ、周囲の確認。
背後には、気配を感じない。
と、すれば――
「F〇ckyou!!」
「Shit!」
罵倒と共に、無数のライフル弾が返される。
(やれやれ……雪隠詰めにでもしようって?)
この後は、対装甲ロケット砲や迫撃砲で吹き飛ばす、って所だろうけど――
そうはいかねぇよ。
「メドヴェーチ11、確認できるか?」
支援要請。
『確認。……排除する』
くぐもった砲声。
「ぐあっ!?」
「っあ″!」
血飛沫と鉄錆臭い香り。
残敵は物言わぬ肉片となったか。ざまぁみろ。
「良い腕だ、姉貴」
『義姉には劣る。後、今は作戦中』
「分かってるって」
廃屋から脱出。
直後、崩落。
(迫撃砲か?位置は……おそらく、一ブロック先の廃屋)
遠いなぁ……。でも、
「首を長くして待ってな!弱者がよぉっ!!」
殺り甲斐があんのは良いもんだ。
『一ブロック先、迫撃砲部隊、3』
「理解してるぜ、メドヴェーチ10。殺れそうなら、殺ってくれ」
言いつつ、口角を吊り上げる。
《J.T》構成員が団体様で
所持武装がCA社製の型落ち品。エリアU.S製なのは、せめてもの誇りか?
(誇り……下らねぇ)
誇り――即ち、単なる自己満足――は、利益足り得ない。足枷、手枷でしか無いんだよ。戦いに於いては。
「
故に、わざと
着弾。
爆発。
肉片が舞い、血飛沫が空を染め、苦痛を訴える絶叫が響き渡る。
喧しい、雑音。
擲弾は至近で爆発した筈であり、彼らが助かる見込みは無い。
それは、奴らも理解している。
だから、遮蔽物の裏に引っ込んだ。
(無駄だっての……)
腰のポーチから、一発の40㎜擲弾を取り出す。
コッキングレバーを引き、排莢口から装填。
瓦礫と瓦礫の間、目標の隠れる側に照準を合わせ――発射。
同時に、跳躍。
数十m先の廃虚に着地。
爆発音。
廃屋も盛大に崩落した。
(効果覿面、ってか?)
今、撃ち込んだのは40㎜口径の対人用近接信管式サーモバリック弾。
サーモバリック弾は所謂、気化爆薬弾の一種であり、それ以前の
団体様は地獄にご招待ってなわけで、後は遠くから玉入れをしている奴から
『メドヴェーチ12、迫撃砲部隊の殲滅が完了しましたよ』
「ありがとさん。じゃ、親ん所に向かうぜ」
《AB-42Kv》を構え直し、走り出す。
残りは2ブロック。
『了解。支援を続行します。必要な時に指示を』
「……了解。……って、階級は私の方が下だったと思うんだが?」
『メドヴェーチ12。私達とメドヴェーチ10の階級は同じ』
そうだったんだ。必要無いと思って聞かなかったからなぁ。…………我ながら、不用心だよ……。
『……メドヴェーチ10。17時方向に数人。距離はおよそ100』
『ありがとう。……確認した』
向こうも忙しくなってきたらしいね。
無線切断。
疾走。
ひび割れたコンクリートやアスファルトを蹴り砕き、前へ。
散発的に現れる、ならず者に対しては銃弾を送り付け、或いは蹴り壊して、無意味な肉塊へと変える。
放置しても、そこらの野犬や魔物が餓えを満たす為、喰らうから。
最小限の労力で。
ただ、後方でふんぞり返る、親玉目指して。
残り1ブロックを切る。
微かに聴こえる声も、徐々に鮮明さを増す。
焦っている。
当然だ。
自身の部下達が、仲間だった者達が、次々と死んでいくのだから。
大した抵抗も出来ず。
無惨な姿に変わり果て、
犬の餌となる。
(……歯向かうからだ。後悔しな)
無意味な後悔を、ね。
どうせ、あと数分程度で同胞の後を辿れるよ。
「……っと、この建物か」
そうこう考えながら、走るうちに、クソ野郎共の所に着いていた。
無線接続。
「メドヴェーチ10、11、13配置に着いたか?」
仲間の状態を問いつつ、残弾が少なくなっていた両手の《AB-42Kv》から弾倉を落とし、予備のドラムマガジンに交換。
擲弾、ショットシェルも装填、補充。
『着いてる。……一撃多殺も可能』
メドヴェーチ11。
『いつでもいいですよ』
メドヴェーチ10。
『私も』
メドヴェーチ13。
全員、万全だ。
なら、行こうか。
「メドヴェーチ10に合わせる。……それでいいか?」
『『問題ない』』
『了解した。3から始めますよ』
『……3』
『……2』
『……1』
『突――』
が、
『全員、伏せてっ』
出方をメドヴェーチ11に崩される。
抗議を返そうかと思ったが、同時に聴こえた僅かな原動機の駆動音。
気付かれたかっ!?
『ならず者にしては、良いもの持ってる。……破壊対象は《FA M1015A3-G》』
メドヴェーチ11の声。
後方支援担当故に、確認できたらしい。
やっぱり、狙撃手がいるだけでも、戦闘はやり易くなる。
しかし、《FA M1015A3》……。
(聴いた事ねぇな)
FAってのは会社名か?……多分、エリアU.Sの複合企業、Freedom.Incの機甲部門、《Freedom Armor》の事だろう。
彼処の製品については知らないしなぁ……。
『一世代前のエリアU.S.陸軍採用の主力戦車ですね。兵装は……120㎜滑腔砲、20㎜対空/対人機関砲一門、12.7㎜主砲同軸機関銃二門、7.62㎜対人機銃四門。……近付くには厳しいかと』
あぁ、同僚にメドヴェーチ6がいたね。彼女、そっち方面に詳しいらしいし。
『追加装備がある。……7.62㎜回転銃身式重機関銃搭載の遠隔操作銃座四基と地対空ミサイルランチャー二基』
酷い重武装。針鼠じゃないだぞ。……いや、害悪さで言えば、山荒しか?
「ひでぇ重武装だ。……で、対装甲兵装持ちは……いねぇな」
確か、装甲車内に《TRG-4》はあったけど……。取りに行く時間も惜しいな。
『装甲車内に《TRG》が合ったと思うけど?』
気付いていたらしい、メドヴェーチ13が進言。
取りに行く気か?
『車体後部に撃てる?』
『無理です!』
馬鹿、騒ぐな。
案の定、メドヴェーチ13の方へと、機銃座が向く。
吐き出される暴雨。
(クソッタレ)
《Ge-00》の弾倉を外し、別の弾倉に変える。
装弾は40㎜HEAT。
無いよりはマシな弾種。
同様に散弾銃の方も、12ゲージHEATフラグへ。
後は……腰に提げていた物を確認。
《AA Stg45-G》。……柄付手榴弾。
ハッチを抉じ開け、コイツを捩じ込むしかねぇか。
……大分前の某島国に対戦車戦術だな。玉砕前提だけど――
「危険な賭けだが、策がある。……援護を頼めるか?」
『メドヴェーチ12、何をする気だ?』
「ヤツの腹ん中に手榴弾を捩じ込むだけだ。……島国の魂ってやつだよ」
『……それは自殺行為。私は反対』
『同じく、薦められないな。……もっと安全策をとるべきだ』
「黙れよ。このままだと、メドヴェーチ13が殉職する。本人の失態だが、叱るのは後だ」
『『…………』』
数秒の沈黙。
『了解した。長くは保たないぞ』
『同じく。効果は期待しないで』
返ってくるは了承。渋々、という雰囲気はあるけれど。
「注意がそれりゃ、充分だ」
《AB42-Kv》を構え直し、体勢も直す。
――細胞解放率を40%へ。
身体が暖まった所で――
「Ура!!」
突入。
側面を晒す《M1015A3-G》の履帯目掛け、40㎜HEATと12ゲージHEATフラグを撃ち込みつつ、走る。
着弾。
爆音。
極音速の金属とガスの奔流により、転輪の一つが抉れ、履帯は断裂。
取り敢えず、
安心は出来ないがな。
その証拠に、幾つかの機銃座が私の方に向き、吐き出される大口径ライフル弾。
しかし、何れもが私の過去位置を抉るだけ。
遅いなぁ。
支援は必要なかったかな?
『油断しないで、メドヴェーチ12』
心を見透かしたようなメドヴェーチ11の声と共に、二基の多連装MSLが抉れる。
発射体勢に入っていたのだろう。
「ありがとよ、メドヴェーチ11」
点射式狙撃砲では精密射撃は不可能らしく、信管をブチ抜くには至らなかったようだが、充分だ。
「メドヴェーチ13!逃げてないで撃ちなっ!注意は引き付けてやる!!」
レシーバーに向けて、咆哮。
『無理ですよ!頭を上げれば即、挽肉です!』
「……注意を引き付ける、と言っただろ?」
転回し始めた砲塔。
最大火力をぶつける気か。
……当たると思っているならば、爆笑物だぜ?
とはいえ、これも好都合。全火力が私に向くのだから。
「……全ての火力が私に向いてんだ。キューポラの防弾ガラスにヒビでも入れてみな」
焚き付けるように言い、《M1015-G》の武装を再確認。
(機銃座数基に、滑腔砲。……比嘉の距離は――15mって、とこか)
サイドステップ。
轟音。
擦過する砲弾。
細長い矢状の羽根付弾。
装弾を間違えたな。
対人用ならば、
着地。
急制動。
コンクリートを蹴り砕き、再疾走。
軌跡のように、ライフル弾がコンクリートを砕く。
機銃座の狙いも遅いなぁ。
(どんなボンクラが動かしてんのやら……。少し気になるな)
聴覚関連の細胞を5%解放。
鮮明化した聴覚が、装甲越しに搭乗者の声を拾う。
『クソッ!ポンコツめ、俺が直接撃つ!!』
『待て、死ぬ気か!?』
『ハッ!雌餓鬼一人を挽肉に変えるだけだ!』
『勿体ねぇ。俺なら
『うるせぇ!戯言ほざく暇があったら、一発ぐらい当ててみろ!』
一人、出てくるらしい。
疾走する勢いそのまま、軽く跳ぶ。
開くハッチ。
「ブッ殺してやる!!」
眼前に、苛立った男。
交錯した視線。
「
トリガーを引き絞り、
バラ撒かれた5.56㎜ライフル弾が男を血飛沫と肉片に変える。
物言わぬ死体が出来上がった所で、死体を蹴り飛ばす。
無価値な肉片が吹き飛ぶ様は見ず、《AB42-Kv》の負い紐を肩にかけつつ、乗車。
「
着座と同時に操縦者、砲手の首を掴み、
手榴弾を使うのは、直前で止めたからだ。
(……メドヴェーチ6あたりが好きそうだからな、こういうの)
程度は知らんが、あの人は乗り物好きだ。土産がわりに一両、という事。
ならば、中身は綺麗なままで鹵獲したいだろ?
誰に言うでもなく、そう思いつつ、死体を車外に投げ捨て、下車。
「メドヴェーチ10、シャールさんと連絡はとれるか?」
同時刻 エリアRos Lim-E近郊 某所海岸
「……この量は久々だな」
日本海を一瞥し、俺は呟く。
海岸を埋め尽くす、爬虫類型ドーピング系種の魔物群が闊歩し、海は無数の航跡が刻まれては消えていく。
……一応は小規模か。
「まずは、雑魚から消し飛ばす。……大物は後」
「分かっている。……大物は陸地に追い込み、刈り取る。……いつもの方法だ」
ノルシェに返答し、大型の武装コンテナを背負う。
隣では、ノルシェが大型の多薬室狙撃砲《AA PB15-L》を組み立て、肩に担ぐ。
お互い、今回は重武装だが……細胞開放率は0.1%程度で充分か。
「準備は良いか、ノルシェ」
「いつでも」
「了解だ」
腰に提げていた8.6㎜バトルライフル《AA KrG-37》を抜き、安全装置を外す。
コッキング。
初弾、装填。
同、
規定開放率での細胞仮死化解除、完了。開放率、0.1%。
「始めようか」
「Да」
返答と共に、地面を蹴り砕く。
ただそれだけで、俺は数十m前方に蹴り出され、海岸上空へ。
自由落下しつつ、照準。
射撃。
大口を開けて、餌を待つ
絶命。
続けて、同じように喉へと銃弾を叩き込み、着地地点を掃討。
死体を緩衝材として着地。
蹴飛ばし、加速。
背後で、派手に血飛沫と肉片が舞っている。
ノルシェだ。
流石は40㎜。
対装甲/対空用重機関砲の弾薬が原形なだけはある。
――まぁ、それはともかく。
加速した勢いを乗せ、眼前の魔物の眼窩へと、銃剣を突き立てる。
血飛沫。
抉り抜き、反転。
『85㎜HE、投射。退避して』
バックジャンプ。
直後、前方数m先に迫撃砲弾が着弾。
爆風と弾片が魔物を薙ぎ払う。
(埒が明かないか?)
まぁ、数が数だからな。
ライフルは弾切れを起こすか。
《KrG37》を構え直し、装着した《GW31》を使用。
45㎜HE弾を発射。
数体の魔物が吹き飛ぶ。
着地地点確保。
残敵は130ぐらいか?
まだまだいやがる。
『次弾装填、投射。予測着地地点は前方15m』
爆音。
『次弾装填、照準修正中。10秒待って』
その間に、“塊”を作れ、ということか。
上等。
《KrG37》を腰のホルダーに納銃。
サイドステップ。
魔物の噛み付きを避け、逆に顎を掴み――投げ飛ばす。
飛んでいった奴は数体の同族を巻き込み、地面に激突。
爆音。
続け様に、迫撃砲弾が出来上がった“山”と周辺のヤツを肉片に変えた。
『……セルゲイ。正規軍から連絡が来た』
「内容は?」
『30分以内に、正規軍機甲部隊が到着する。それまで持ち堪えろ』
「……」
俺達は露払いか。
大型は必ず仕留めろ、という暗黙の連絡も含まれているな。
「ノルシェ。残りの雑魚を任せても良いか?」
『……問題無い』
「ならいい。……先に追い込み漁をやる羽目になるとはな」
『上の無茶振りはいつもの事』
……違いねぇ。
心中で呟き、
「“漁”が終わるまで、無線は切る」
『了解』
無線切断。
ヘッドセットを外し、背負っていたコンテナ内へ《KrG37》と共に格納。
同時に、展開したコンテナ内部から長大な物体を取り出す。
流線型を帯びつつも、直線的な地対空ミサイルランチャーといった風貌の物体。
――AA社製70㎜口径水中用汎用兵装システム《UGW-13》。
一世代前の歩兵携行型水中戦用兵装。
強襲中隊時代からの付き合いだ。
「さて……」
《UGW-13》を肩に担ぎ、
「行くか」
サイドステップ。
眼前に迫っていた、魔物の横っ面を蹴り飛ばす。
顎の骨と頭蓋が砕け散り、肉と神経を抉り裂く。
絶命。
続けて、死体を掴んで振り回し、周囲の魔物も吹き飛ばす。
爆音。
吹き飛んだ先に迫撃砲弾が着弾。
肉片の山がまた一つ。
確認せずとも分かる事故に、開けた海への進路を駆ける。
一瞬にして、入水。
獲物は…………いた。
呼吸器、循環器系の細胞開放率を10%へ。
呼吸方式、細胞形式変更。
脚部細胞開放率は1%へ。
強化した脚力を以て、海中を駆けるように泳ぐ。
浅瀬故に、光量の問題も無い。
俺を食い殺さんと、大口を開けて突っ込んでくる、鮫に似た魔獣――いや、魔魚か。
《UGW-13》を構え、トリガーを引く。
やや大きい反動により、斜め下方に
同時に、水泡を伴い、前方に流線型の
魔魚の喉に突き刺さる。
炸裂。
脳漿と肉片が飛び散る。
絶命。
(……さて、後は寄ってくるな)
死体は撒き餌。
纏まったら、引き摺り出す。
後はノルシェの独壇場になるだろうからな。
(……っと。来たな)
鼻と耳が良い奴らだ。
が、数が多いな。
50はいるか?
(流石に、弾薬が不安になるだろうな。)
間引こう。
コンテナ開放。
中から、《UGW-13》に似た小型の投射器――120㎜口径水中用汎用兵装《UGW-15》を取り出す。
閉鎖。
排水。
各部確認。
異常無し。
《UGW-15》を片手で構え、魔魚群の中心に向ける。
まだだ。
引き付けろ。
250m――遠い。
100m――まだまだ。
50m――もう少し。
15m――今だ。
銃爪を弾く。
重い反動。
水泡を伴い、6発の銛が放たれる。
各々が、放射状に進み――炸裂。
爆発が膨大な熱量の収縮を起こし、巻き込まれた魔魚群を吹き飛ばす。
――バブルパルス。
水中で起きた爆発は“泡”を形成し、エネルギーの増減によって膨張と収縮を繰り返すが、この時に隣接する物体は、圧力とは異なる別種の作用によって損傷する。その作用がバブルパルスであり、近い現象は壊蝕か。
ともあれ、20は殺っただろう。
ならば、後は陸に打ち上げるだけ。
死体に向けて、《UGW-15》を構え、投射口下部のアンカーユニットを起動。
突き刺し、牽引。
血の匂いに誘われ、残りの魔魚群が追ってくる。
(それで良い)
身体をしならせ、反動を以て、一気に上陸。
ワイヤーを引き――死体は宙を舞う。
そして、地面へ直撃。
同時に、魔魚群も海岸へと侵入し、折り畳んでいた“前足”を以て、這い進み、陸地に姿を晒す。
両生類かしていたのだろう。
……多少は面倒になったが――問題は無い。
(後は頼んだ)
アンカー格納。
《UGW-13》、《UGW-15》双方をコンテナに格納しつつ、後退。
代わりに抜くのは、ヘッドセットと《KrG37》。
眼前で吹き荒れる血飛沫と肉片の嵐。
遅れてきた
《PB15MF-Ael》による砲撃だ。
結構、ギリギリの着弾地点。
今回は大丈夫だったが、普通は距離を取らなければ、音速突破時に発生する
(……ノルシェなら、そんなヘマはしないだろうが)
兎も角、後退。
肉片に混じる撃ち漏らし。
《KrG-37》を構え、発砲。
幾つかのライフル弾は眼球を抉り、多少の有効打となるが、飽くまで
殆どは強固かつ、しなやかな鱗に阻まれ、跳弾。
注意を逸らすだけ。……それが狙いなのだから、良いのだが。
回避行動を潰し、塊を形成し続ける。
出来た塊は数秒後に、赤い肉片と化して、屍を晒す。
(今ので、5回目)
後5回で砲身交換作業を挟まなければならない。
本人曰く、交換は少々面倒らしく、所要時間は弾倉交換よりも長くなるのは明白。
加えて、俺の手持ちで、魔獣相手に有効打となり得るのは、120㎜対装甲擲弾筒《PGW-4》、70㎜水中用汎用兵装システム《UGW-13》、120㎜水中用汎用兵装システム《UGW-15》の3つ。
後者2つは作動機構、推進方式の都合上、地上では接射前提。
出来れば、避けたい事態だな。数を再確認しよう。
牽制として8.6㎜ライフル弾を点射しつつ、魔魚群を一瞥。
残りは…………十数体程度。
交換は必要なさそうだ。
(……と、すれば)
問題は後一つ。
「ノルシェ。
機甲部隊の到着までの猶予。
『……5分程度』
もうすぐか。
「次の1発で終わりに出来るか?」
『セルゲイ次第』
……煽ってるな。
挑発したつもりは無いんだが。
「……やってやるよ」
まぁ、いい。
お互い、一般兵の御膳立てをするつもりは無いのだ。
残すのは小物ぐらいで充分だろう。
《KrG37》を構え直し、照準修正。
射撃方式は2点射。
狙いは眼球と鼻先。
どちらも、脆弱部位。
発砲。
一発が眼球にめり込み、もう一発は瞼を抉り取る。
鮮血。
絶命には至らない。
入射角が浅く、脳髄を抉れなかったから。
ならば――
銃床に添える手を《GW31》の銃把へ。
照準調整。
発砲。
緩い弧を描いて飛翔した擲弾は、魔魚群の中心に着弾。
炸裂。
砲弾片と爆発が鱗を剥がす。
これも決定打足り得ない。
それでも、奴等の注意は俺に向いた。
ノルシェを狙いに行く個体はいない。
加えて、うまい具合に固まったまま。
『10m後方へ退避』
故に、耳元に聴こえた声。
指示通り、バックステップ。
どうなるかはおおよそ、検討はついている。
(終わりだ)
黒煙と閃光。
爆音と高音。
鮮血と肉片の雨。
着弾した40㎜砲弾と迫撃砲弾が、残る魔魚群を消し飛ばした。
『……これで、終わり?』
「一旦はな。追加分は機甲部隊に任せよう」
《KrG37》を腰に戻し、歩きながら言う。
…………いや、歩くと間に合わないかもな。
脚に力を込め、跳躍。
輸送車を停めている丘に着地。
解放していた細胞を再び仮死化。
駆け巡る奔流が鎮まるような感覚を覚えつつ、体勢を整えると――
「……おかえり」
無味乾燥した声音と共に、棒状の高熱量携行糧食が手渡される。
「ありがとよ」
受け取り、開封。
一息に食い尽くす。
水中戦時に用いた、呼吸方式の変更のせいで、空腹だった為だ。
アレは外部からの酸素供給他が不要になる代わり、エネルギーの消費量が増加する。
(……あまり使いたいものでは無いが、使わないといけない時はある)
今回が、そうだっただけ。
「もう一本?」
「いや、1本で充分」
返答し、輸送車にコンテナを積む。
ノルシェは既に積んでいたらしい。……手際が良いな。
扉を閉めずに、乗車。
銃座に移動。
続けて、ノルシェも運転席に乗り、走り出す輸送車。
遠ざかる海岸と、隊列を組む自走砲群。
(……漸く来たか)
確認できた部隊章を見るに、アレは第5自走砲大隊。
数少ない、マトモな部隊の1つだ。
(腰の重い連中のせいで、無駄骨折ったようだけどな……)
少しは残しておくべきだったか?
「――セルゲイ」
思考を現実に戻される。
「なんだ?」
「今回の依頼、情報より数が多い。……何故?」
確かに、両生類型魔物群の出現については提示されていなかった。
不測の事態と言えばそれまでだが、説明が付くのは海棲魔獣の方。
つまりは――
「分析力の欠如…………いや、違うな」
言いかけた答えを訂正。
今の時期ならば、もっと説得力のある理由があった。
「
周期的に、繰り返される物事の
「……セルゲイも、そう思う?」
「あぁ。近い内に起こるだろう。……“雪崩”が」
「……忙しくなる」
だろうな。
扱き使われるのは確実だろう。
なんて思いつつ、旧エリアChi方面を見据える。
鬱蒼と生い茂る樹海。
今回は何億が溢れるのか。
(……いや、兆に届くかもな)
最悪に備えるべきは当然。
慢心は“死”か“後悔”、“絶望”のみを連れてくるから――
――以上、Cross Fire でした。
今話は、二視点Ver.。前半がクローフィ、後半がセルゲイ。
……どっちも、スタイリッシュ(厨二)ガンアクションです。後半はノルシェ視点にすべきだったかな……。専門用語と計算が乱舞する事になるけど。
尚、水棲魔物(魔獣)が出てきましたが、コイツらがいる為、Dirty Worksの世界で全船舶は棺桶扱い。まぁ、当然の理由ですね。艦載式対艦、対潜兵装ごときでは殺れない種類もいますし。※精度と弾速、誘導性能的な理由で。殺傷力的には可能。
さて、今回は推奨BGM有り。
前半部
・Keep on Keeping on
タイミング/「役割分担の確認、しようぜ?」から
→作者系列的にはグラナデ系に属するクローフィのテーマとしては微妙。歌詞と合ってはいないが、ノリとは合っている。
・フェアリーテイル
タイミング/「邪魔するぜぇっ!!」から
→全てを台無しにするBGM。それ以上は語るまい……とは、言いませんが…………相手側が可哀想になります。パーティ的に蹂躙されるので。
とはいえ、戦闘中のグラナデ、クローフィ、ライヒ辺りのテーマとしては合っています。
後半部
・サイキック エフェクト
タイミング/「始めようか」から ※直後の「Да」からでも可。
→ガチの殺し合い間を促進させるBGM
が、タイマン勝負ではない。
・NO PLACE LIKE A STAGE
タイミング/「行くか」から
→ご存知、某グロゲー外伝作品の曲。歌詞とは合いません。
・firing pin
タイミング/「さて……」から。
→某エロゲBGM。水中戦にしては激しい曲調。
共通
・Red Fraction
タイミング/ 前半=「役割分担の確認、しようぜ?」から
後半=「この量は久々だな……」から
→ノリを楽しみましょう。