綺麗事を抜かす奴に、存在意義は無い。
綺麗事を受け入れる奴に、存在意義は無い。
死力を尽くして足掻く者達にこそ、存在意義がある。
故に、持てる力を振るえ。
命を狩り尽くせ!
『第30~第60戦車中隊の信号途絶。第4戦車大隊、壊滅!』
『第5戦車大隊壊滅!第7戦車大隊もです!防衛戦が崩壊します!』
『死守しろっ!我らの後方には、無力な市民がいるんだぞ!?』
『畜生!何なんだよコイツらっ!?』
『いいから撃ち続けろ!轢き殺されるぞ!!』
『砲撃支援を要請する!』
『了解した。第11重野砲中隊が対応する。座標はーー』
意識を無線から外す。
聴くに耐えない。
たった数時間で、前線の一部が瓦解したのだ。
(瓦解位置は……敵正面……のやや右翼寄りか)
屑共が。銃爪を弾く事すらできないのか?
……いや、期待するだけ無駄だったな。
俺は……
偶然は無く、あるべき必然は……予想出来るもの。
だから、来る必然に備えよう。
意識を切り替えると共に、分隊間周波数の通信。
回線接続。
『隊長さんよぉ、俺達は行かなくて良いのか?前の奴等は阿鼻叫喚みたいだぜ』
通信相手は、メドヴェーチ8。惨憺たる戦況に嫌気が差したのだろう。
「俺達の任務は列車の護衛だ。……前線が壊滅しようが関係無い」
メドヴェーチ8の言わんとする事は分かるが。
戦線維持の観点から、俺達は最前線で戦うべきであり、メドヴェーチ3を筆頭に、味方ごと吹き飛ばしかねない危険人物が多いウチは、一番前で死に急ぐくらいが丁度良い、と。
一見、合理的にも思えるだろう。
が、それは上層部にとっては非合理なのかもしれない。
そう思える理由は、2つある。
1つは、第3独立遊撃隊には第7世代以上(であろう含む)が多く配属されており、その何れかが、
もう1つは、上層部の面子絡み。要するに……手柄を立てんとする、老害達の
(……多分、両方だな)
あの司令、上層部のクソ共の言動を鑑みると断言できる。
『……命令遵守って事か。隊長も固いな』
吐き捨てるような返答。
分かっていないな、この餓鬼は。
下らない正義感は捨てろ。命令は絶対だ。
兵士個人の失敗は絶対に許されない。無論、上の失敗も許されない筈だが……そういう連中の失態は揉み消されるか、権力争いの材料になるが。
「下手に動くと不利益しか呼ばん。“上”は強化個体を信用していない。俺達を殺したくて仕様が無い連中ばかりだ」
尤も、殺したいが、殺せない存在が強化個体。悩ましい事だろうな。いい気味だ。
『出る杭は打たれるってか?……糞がっ!』
悪態をつくメドヴェーチ8。
当然、俺の考える理由をコイツは知らないが故の答えだ。
『メドヴェーチ8。任務中』
『……煩かったか?』
メドヴェーチ2の返答は無い。する価値が無いのだろう。
代わりに、別所から無線が入る。
『司令部より第1独立遊撃隊へ。……聴こえるか、少尉』
司令部からだ。
薄々嫌な予感がするが、これも命令。拝聴しよう。
「メドヴェーチ1、感度良好。要件をどうぞ」
『5個戦車大隊が壊滅し、前線が後退し続けている。至急、立て直せ』
予感的中。
やはり、必然だった。
「……賛同しかねます」
『何故だ?』
「我が隊の現在位置は最後方。配置図を見る限り、第37歩兵大隊或いは、第9戦車大隊を向かわせるべきでしょう」
このぐらいの判断は、(マトモな)新兵でも出来る。
アンタ、本当に士官か。
『……元とはいえ、正規軍最精鋭の一角がそんな泣言を言うのか?』
「……常識の話をしていますよ。現場を知らない発言は、部隊を壊滅させるだけです」
古今東西、無能な士官が引き起こした惨劇は数知れない。
無駄な被害を避けたいのは、お互い様だろうに。
『貴様らには出来る筈だ。いいからやれ。これは命令だ』
「……了解」
通信終了。
……石頭が。
「……屑司令」
聴こえていたのだろう、メドヴェーチ2が呟く。
「あぁ、屑だ。戦力配分に私情を捩じ込む…………何処にでもいそうな」
「でも、命令は命令」
その通り。
俺達に拒否権は無い。
だから、無線機の回線を開き……指示を飛ばす。
「メドヴェーチ1より各員へ。前線支援が必要になった。メドヴェーチ2、3、6、11は後方支援。他は前線行きだ」
運び込んだコンテナから重機関銃を取り出し、初弾装填。
酷使と火力を優先したJA製。値段も手頃。
代償が取り回しだが、そいつは俺達には無問題。
細胞仮死状態、限定解除。倍率……5%。
「……だが、俺達は支援が主任務だ。前線一歩手前まで前進、援護に徹しろ。無論、状況によるが。……各自、死に急ぐなよ」
二つ目の指示は、行動と共に。
地面を蹴り飛ばしーー跳躍して。
轟音と土煙を伴い、兵士達の頭上を越える。
応戦する者、逃げ惑う者。
下士官は然程見当たらない。
……いや、それは正しいとは言えないか。
下士官足り得る兵士がいないのだ。
士気もクソもあったもんじゃない。
……まぁ、今の兵士じゃ当然だがな。
俺がそう思うのは、
使えない奴が多いからこそ、一部の奴が苦労する。
一部の、
残るのは、自身を強者だと
だとしても、引かれた道筋から外れる事は出来ない。
出来るだろう、とほざく奴は阿呆だ。
阿呆の為に血を流すのが、造られた存在の役割。
違うか、
(違わないよな。……だから、俺達を使うんだ)
眼前に写る、
止めるべき、人々が恐れる存在。俺には見慣れた
「メドヴェーチ2、11はメドヴェーチ隊の直援を頼む」
『『了解』』
両手には14.5㎜重機関銃《JA Pu-03》。
俺達の存在意義を果たそう。
姿勢制御。
照準。
「メドヴェーチ1、交戦開始」
眼下の魔獣へと掃射開始。
同時に、掃射地点周辺で爆発。
(砲兵の攻撃では無いな。火力が低い)
かと言って、歩兵火器の火力よりは高い。
と、なると……メドヴェーチ2。
輸送車の最高速度を考えれば、最低2㎞超からの狙撃。弾種は榴弾か?
……いや、狙撃砲用榴弾にしては爆発規模が大きい。
狙撃砲以上、野砲以下の榴弾。メドヴェーチ2が野砲を担いで移動するとは考えにくい。……というか、そんな暴挙はメドヴェーチ3しかやらないだろう。
導き出される結論はーー
(……サーモバリック?)
所謂、燃料気化爆弾と誤認される事もある、非装甲目標用面制圧兵器。
言うまでもないが、誤爆時の被害は甚大だ。
対応する火砲規模にもよるが、総じて生物相手には効果的。
危ないな。味方ごと吹き飛ばすぞ?
「メドヴェーチ2、火力支援に何を投射している?」
『時限信管式サーモバリック』
やっぱりな……。
「誤射には気を付けろ」
『……メドヴェーチ隊は巻き込まない』
……俺達の心配しかしてねぇな。
(こうなったのは8割方、軍上層部が原因だが……)
現状で言えば、責任の在処は俺である。……常識的に考えた場合。
故に、
「味方の上には降らすな。いいな、メドヴェーチ2」
例え、愚鈍な友軍ーー敵同然の味方でも。
『了解』
返答を聴くと共に、着地。
同時に、予備弾倉を装着、初弾装填。
射撃再開。
両手に握る銃火器から次々と銃弾が弾き出され、空薬莢が舞う。
しかし、肉の奔流は止まらない。
当然と言えば、当然。
現状でも数百万は下らない量が樹海から溢れているのだ。
高々2挺の機関銃で止められる方が異常と言える。
歩兵火器で野砲並みの火力を出せれば楽なんだが……無い物強請りだな。
「撃ち続けろ!死体の山を築け!」
尻込みする友軍に咆哮。
それに応える奴らとは思っていない。期待するだけ無駄なのは、過去の経験が証明している。
濁流の遅滞さえ、出来ればいい……のだが、響く銃声は10にも届かない。
雑多な声から鑑みるに、多数が敵前逃亡をかましている。……最低でも中隊規模だ。
戦略的撤退……ではなく、純粋な臆病風か。
正規軍ではないのだろうか?
ボルトストップ。
再装填。残り弾倉は4。
絶対的に弾が足りないな。
掃射。
「援軍は一個小隊だけかよぉっ!?」
「俺達に死ねって言うのかよっ!」
数少ないマトモな兵士を一瞥、ざっと数小隊分。
しかも使用火器は初期型の《AB-40》。
現在の正規軍主兵装は改良型の《AB-42》か、《AB-40A5》。
改良前の《AB-40》は既に退役、民間市場でも販売終了済である為、横流し品か密造品の可能性が高い。
そこから察するに、前線に配置された兵士に、傭兵や暴力団紛いの連中が混じっているのだろう。
……って、よく見ると《AB-40》ではなく、《丙式歩兵槍弐型》だ。
つまり、コイツらは成り上がりか、暴力団予備軍。
士気の低さも納得がいく。所詮は、戦場で生きていない一般人だからな。
……面倒だが、やる事は1つ。
「あぁ、その通りだ。上は死を望んでいる」
静かに、強く告げる。
「だが、肉壁で終わりたくは無いだろ?なら、撃ち続けろ!機関部がイカれて使えなくなるまでな」
柄でもない、激励が終わると同時に、残弾切れ。
再装填。
残り2弾倉。予備の銃か弾倉を探すか。
周囲を一瞥、目星はすぐに付く。
掃射再開。
「……クソッ!」
「報酬の増額を要求しろっ!!」
逃げ出していた連中の一部も、加勢。
手にした小銃を、機関銃を乱射する。
自棄糞気味だが、火力の足しにはなるだろう。
「火力が足りねぇぞ!迫撃砲か野砲持ってこい!!」
友軍の火力支援を求める声が聞こえると共に、両火器のボルトが後退。
残弾が無くなった。銃身も白熱化。
予備の銃身はあるが……周囲に予備弾倉は無かった。
銃と予備銃身を廃棄。
近くの銃座から25㎜機関砲《AA PzMk-00》をもぎ取る。
軍も汎用性を考えてか、銃座型ではない。好都合。
安全装置は解除済み。当然か。
残弾は…………9割ぐらいだな。
脇に置かれた弾薬箱(負い紐付き)も背負う。
掃射再開。
先程までとは、比べ物にもならない轟音と発砲炎を撒き散らし、魔獣共に風穴を穿っていく。
「メドヴェーチ2、前線部隊は肉壁にすらならん。俺の前方500m地点に煙幕を投射」
『了解』
指定位置に煙幕弾が投射される。
立ち昇る煙は、赤。
意味は砲撃支援。意図を理解してくれたようで、何より。
「同地点に砲撃支援。行けるのは何処だ?」
おそらく0だろうとは思いつつも、砲撃要請。
『こちら独立野砲部隊。420㎜、155㎜榴弾を投射した』
『こちらチェルミ隊。俺達も行けるぜ』
応じたのは、2部隊。
で、チェルミ隊は……近接支援機でーー無線の声から察するに、中佐の管轄か。
「チェルミ隊は弾着後、撃ち漏らしの処理を頼みます」
指示を飛ばしつつ、後方へ飛び退く。
やや間を置き、轟音。
肉片が吹き飛び、土砂が舞い上がる。
ギリギリを狙いやがったな、砲兵っ!?
避けられると思ったのか?
俺やメドヴェーチ12はともかく、他はハンバーグになるぞ。
『弾着確認。全機FOX3、俺に続け!』
飛来する攻撃機が機関砲の雨を降らせ、転回。
同型機も続く。
ただそれだけで、赤い土煙が立ち昇る。
近接航空支援も頼もしいものだ。
(25㎜か?いや、あの
ならば、40㎜位のヤツを使用したのだろう。歩兵用火器ならば、対物砲や迫撃砲で扱う程の巨弾だ。
「……負傷者は後方へ。戦える奴は弾幕を切らすな。食われたいのか!?」
「うるせぇ!きりがねぇんだよ!!」
クソッ、埒が明かないな。
再び機関砲を掃射。
既に酷使されているが故、砲身が朱く染まり始める。
耐用限界に近付いてるな。
『第3防衛線が崩壊。穴が開く』
抑揚無く告げるメドヴェーチ2の無線。
第3防衛線……約20㎞の距離か。すぐに向かえるか。
「了解。移動だな」
残弾を撃ち切り、砲身と弾倉の交換。
『大丈夫です、隊長。俺達が向かいます』
割り込んできたのは、メドヴェーチ7。
装甲車搭乗者は……メドヴェーチ4、5、7、8、9、10だったな。
下士官のみだが……火力支援に11が付いている筈。
…………行けるか。
「そうか。任せるぞ」
返答。
踵を返し、掃射再開。
『了解。隊長も無理はしないで下さい』
「無理の内にも入らない些事だ」
通信終了。
敵への集中力配分を再調整。
「わりぃ兄貴、遅れた」
メドヴェーチ12が合流。
手には重機関銃、背には対装甲擲弾筒。
大群、対装甲向けだな。
「……弾はあるな?」
「たっぷりね。そういう兄貴は…………両手に25㎜って……」
馬鹿なのかな、と言いたげな目。
言われるまでもない。
俺自身、馬鹿な真似という自覚はある。
「無駄話は後だ。掃除しろ、メドヴェーチ12」
が、馬鹿な真似が必要な事態だからな。
「了解、兄貴」
メドヴェーチ12も掃射を始める。
肉の山が築かれる速度が増す。
すると、肉の奔流が僅かに鈍化している気がする。
所詮は野性動物と大差の無い知能。
ましてや、飢えたヤツらだ。
食い切り次第、また、侵攻が始まるだろう。
そうならない為に、お代わりを用意しないといけない。
「弾切れだ!支援を!」
メドヴェーチ12が叫ぶ。
「長くは保たんぞ」
俺の方も、残弾が怪しいからな。
『メドヴェーチ1、支援攻撃が可能だ。指示を』
「了解」
腰から煙幕弾を抜き、投擲する。
まだまだ、お客様の胃袋を満たすには時間がかかりそうだーー
ーー同時刻、戦線後方
「暇だなぁ……」
メドヴェーチ3こと私、グラナデは空を眺めていた。
幾つかの航空機。
航空支援まで使うとは……というか、アレは対地攻撃機だ。
しかも、重装甲の強行爆撃用じゃん。 機種までは知らないけど……新型かな?
まぁ、下らない思案は置いといてーー
(上も本気だなぁ……)
雪崩じゃ当然だけさ。
数えるのが面倒なくらい、魔獣が出てくんだから。
焼き払っちゃえば楽なのに。核とかで。
実際、大昔には核砲弾を使う迫撃砲があったらしいじゃん?
……後処理がクソ面倒か。件の迫撃砲も、最低射程と爆発半径的に被曝待った無しだったらしいけどさ。
「メドヴェーチ6~。砲撃要請とか、来てる?」
『引っ切り無しに』
そりゃ、そうだよね。
「じゃ、ぼちぼちやりますか……。私達が使えるのは155㎜だっけ?」
『えぇ』
「一基ぐらい引っこ抜いてもいいよね?」
言いつつ、装甲列車の砲をもぎ取る。
予想はしていたが、遠隔操作仕様だ。
これなら使える。
配線を掴み、掌の神経に擬似接続。
……掌握完了。
『……言ってる側から引き抜いてますよ』
「勝てば良いんだよ、勝・て・ば☆」
請求書は政府持ちだ。派手にやらなきゃ損!
「はぁ……。まずはS27。小型だけです」
S27。
地図上の座標記号。
まぁ、何となく位置は察する事が可能。地図持ってないけどね。
「雑魚が多いのかぁ……。じゃ、弾薬は
車内の給弾コンベアから砲弾を物色。
装填。
一気に掃除しよう。
砲撃。
数㎝程、反動で後退。
踏ん張り、鋼鉄の床が凹む。
後退も止まる。
薬室開放。
砲口と、排莢口越しの薬室からたなびく硝煙。
廃莢。
放物線を描く薬莢は、携行銃器のそれとは違う形。
明らかな円筒ではない。雷管周りだけなのだろう。
なるほど、
……まぁ、だから何とはなりそうだけど。
『……着弾。効果有り』
「どのくらい?」
『およそ数百kgの挽肉が出来ました。小隊分の主食には困らないかと』
数百かぁ。効果有り……とは言い難くないかな?
魔獣の進行を止めるには、少な過ぎる。
『同地点に再度砲撃を。敵の勢いが落ちていません』
「了解」
だろうと思ったよ。
弾薬庫を覗いた直後、
『榴弾かっ!?誰の仕業だっ!』
『腕の悪い砲兵がっ!後でブッ殺してやる!!』
回線に混ざる雑音。
遮音性が低い無線機だなぁ。
後で開発元に文句言わなくっちゃ。
……まぁ、それは後にしてーー
「ハハッ!出来るかなぁっ!!」
軽口を返しつつ、再装填。
弾種は同じ。
「次は直上かも知れないよ!さぁ、逃げろ♪」
発砲。
着弾予想地点は、…………
後退射撃や定点掃射でもしているだろうから、当たらないだろう。
予想に反するならば、ハンバーグが量産される。
あまり食べたくは無いけどね。
理由は単純。
(クソ不味いハンバーグなんて、誰が食べるのかな?)
少なくとも、私なら料理人の顔面に吐く。
吐いた上で言ってやる。
「残飯は土地の肥やしにでもしてろっ!!」
ーーという感じにね!
『……心の声が漏れてますよ、メドヴェーチ3』
「え?」
着弾。
炸裂。
肉片が舞う。
「…………友軍、ハンバーグになってないよね?」
『魔物のハンバーグは出来てますよ。……いや、アレは炭ですね』
炭かぁ……。
消毒完了。……結果オーライ?
(……気を付けよ)
次弾装填。
今度は
「メドヴェーチ6、次は?」
『S27の進行速度が鈍化。次の支援地点は……S11、B23、H2です』
「3ヶ所一気にっ!?嫌がらせかなっ!」
『出来ますよね?』
苦情は冷淡に潰される。
「“やれ”の間違いだよねっ!?」
言いつつ、空中に二発の砲弾を投擲。
二発とも、弾種は榴弾。
(そりゃあ、出来るけどさ!)
片手間に、照準修正。
砲撃。
排莢。
次弾落着。
「全力はっ!」
装填。
射角修正。
「出したくないのにっ!!」
砲撃。
鬱憤を晴らすように砲を振り、排莢。
落ちてきた二発目を装填。
砲撃。
弾着観測は時間の無駄。
どうせ、魔獣か馬鹿には当たる。
「次っ!」
『A1、C33、D1~D7』
「多いって!メドヴェーチ6も手伝ってよぉっ!!」
『使用可能な兵装がありません。後、目標は独立野砲隊他にも割り振ってますよ』
分担させてこれなのっ!?
やっぱり数が膨大。
航空支援も出るわけだけど……爆撃機は?
(……弾薬不足?それとも、練度不足?)
今の状況では、誤爆必死かな。
砲兵と戦車兵が頑張らないと駄目かぁ……。
と、なると榴弾じゃ、追い付かない。
どうするかーー
「あ」
弾薬庫に置かれた弾薬を二度見する。
ーー燃料気化弾。
実に広域制圧向けの弾薬だ。
(良いものあるじゃん)
装填。
砲撃。
『着弾。有効』
報告が届く頃には、次弾装填済み。
砲撃。
装填。
私の役割は、雨を降らせる事……じゃないけど、今はいい。
雨粒は必ず何かを叩く。
誰もが知る摂理。
装填。
「そう言えば、他の砲兵は?」
砲撃。
『半数が過労か恐怖心で使い物になってません』
軟弱者共め。
(……ま、仕方無いか)
軍上層部は下に期待なんぞしていないし、そもそも期待出来る人材も少ないのだが。
要するに、所詮捨て駒。
考えるだけ無駄。
装填。
僅かな違和感。
耳を澄ます。
聴こえるは、無数の
「増えてきたかぁ……」
『増えてきた?』
「虫と鳥」
担いでいた砲を置き、《MW-00》と《SRW-00》を担ぐ。……次いで其々の弾薬も。
『飛行型の魔獣ですか。空対空戦闘に於いては、固定翼機は部が悪いですからね』
「そ、だから蠅叩きをしないと。火力支援との二足わらじは無理だし」
頭の使い方が違うんだ。一般人に右左脳別思考は無理だって。
……いや、一応やれるけどね。練度低下が著しいからやらないだけ。
『……解りました。……ウェルディ大尉』
『何だ、メドヴェーチ6』
『本来の任務に戻ります。……負担が増えますが、問題ありませんか?』
『……』
暫しの沈黙。
火砲の炸裂音が響く。
『問題無い』
『そうですか。着弾観測、及び支援座標伝達は継続します』
『助かる』
『……通信終了』
事務的に言い切ったメドヴェーチ6。
多分、呆れてるよね。
即答できないって事は、部下に不安要素が多いのだろう。
まぁ、いざという時は手伝う事になる、と頭の片隅に置くとしてーー
『メドヴェーチ3、始めましょう』
「りょーかい」
空を見据え、構える。
安全装置、解除。
《SRW-00》の照準器を覗きーーすぐに目を離す。
予想よりも対象が多いからだ。
(いや、魔獣相手に予想云々は無いか)
現場を知らない人間の発想だよ。私も鈍ってるなぁ。
(と、なると誘導弾は厳しい。時限信管式の擲弾も数が少ない。……というか、普通のHEは火力不足だし……って、考える時間は無いよね今っ!?)
若干の混乱。
すぐに回復。
負い紐で提げられた《MW-00》に持ち替える。
『メドヴェーチ3、落ち着きましたか?』
心配するメドヴェーチ6の声。
察されたかな?
「うん。……悪いけど、大型目標の排除を頼めるかな?私は小型に注力からさ」
『問題ありません。……爆発物や大型砲の扱いは私の管轄ですし』
「……爆発物は私もだよ?」
知ってるよね?
『メドヴェーチ3は携行型の、ですよね?』
「引っかかる言い方だなぁ……事実だけど」
発砲。
幾多の薬莢が乱れ飛び、鋼板を叩く。
同時に、空には幾多の爆炎。
爆音と金属音が奏でる、出来の悪い旋律。
しかし、それで良いのだ。
戦場で奏でられるは不協和音のみなのだから。
「弾薬切れ!」
『了解。2秒で足りますか』
「足りないよっ!?」
馬鹿なのっ!?
驚愕しつつも、予備弾倉を装着。
初弾装填。
「装填完了!」
『1秒95』
記録有りっ!?
「
掃射再開。
ほぼ減ってないように見える。……減ってる筈だけどさ。
『
すっとぼけた返答。
おそらく、気を紛らわせる為の冗談かな。
気遣いどうも。
……とはいえ、だ。
「……私って、そんな印象?」
言う事は言うよ。礼儀って、あるじゃん?
『はい』
返答は即答。
「……」
うん、間違ってないよ?
間違ってないけどさ。
……なんか、釈然としない。
(って、今は仕事…………ん?)
気を取り直した直後、異音。
それは爆音でも、魔獣の唸り声でも……ましてや、兵士の声じゃない。
異音の出所は…………遥か上空。
遥か上空の、
これが指す事実はーー
(音の数的に爆撃機。……しかも、エリアRos、Ger系の駆動音じゃない。……多分、エリアU.S.機かな?)
なんでアイツら?……という疑問を浮かべるのは、ほんの一瞬。
(……嫌な予感がする)
動物的な勘が訴える、危険へと変わる。
経験上、エリアU.S.が関わる時は……碌な事が起こらない。
確認を取ろう。私よりも、確実に状況を把握できる存在がいる。
「メドヴェーチ6、聴こえる?」
『えぇ。エリアU.S.の爆撃機ですね。……随分と物騒な物を積んでいますけど』
「物騒?まさかっーー」
予感は的中した。
そして、メドヴェーチ6が静かに、確かに事実を告げる。
『ーー積み荷は戦術核です』
ーー以上、Лавина~Один~でした。
まずは相当期間の休止を行い、申し訳ありません。
何分、気力も体力も減退著しい状態でしたので……。
完結はさせますので、更新は気長にお待ちいただけると助かります……。
……では、本編側を話すと……総力戦の開始ですね。
尚、ユーラシア大陸中央部から溢れた魔獣の数は数~十数億程度となります。※中、大型のみ数。小型は数えるのが面倒なので省略。
某エロゲ及び派生作品をプレイした(視聴した)方にとっては、『なんだ普通じゃないか』という物量。
……馬鹿なの?と思った方、正常です。
因みに作者は前者ですので、『全然少なぇなぁ……』という感じ。榴弾やら空爆で吹き飛ばせば終わるので、B〇ATや〇ydoよりマシですね。
では、今回はこの辺で。
拝読ありがとうございましたーー