『君の名は。』の宮水三葉が入れ替わった先は、瀧くんではなく――エッチな舞台に上がるストリップアイドル!?

流されるままに舞台に上げられた三葉は、身体の本人になりきり――

しかし、その性感は紛れもなく三葉にもたらされ、そして――


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君の名はルミノ

 目が覚めたら、そこは東京やった。

 もちろん、部屋の中では気づかんかったけど。

 でも外に出て、頭上に掲げられた大きくて真っ赤なアーチを目の当たりにすれば……確かに、テレビで見たことあるし。アレ、新宿の有名な繁華街のでしょ。だからここは、東京なんやと思う。

 問題なのは――どうやってここまで来たのか、まったく記憶に無いことか。

 

 さて、ここで一度状況を整理してみよう。

 昨晩は、普通に寝た。糸守の自分の部屋で。お祖母ちゃんと四葉と一緒にご飯食べて、日付が変わる前には。

 そして、今日。自分でも気づかんうちに目の前の景色は一変しとった。その内装は……何かこう、鉄筋コンクリートながらも若干古めかしい――いや、築年数でいえば他所様のこと言える自宅やないけど。ともかく、こざっぱりとしたワンルームの、ベッドの上で私は起きた。

 目覚ましは鳴っていない。寝ぼけ眼のまま、枕元のスマホを見てぎょっとしたのをよく覚えている。

 十一時半――!!

 それはもう遅刻ってレベルの寝過ごしっぷりやない。慌てて飛び起き――そこはベッドと布団直敷きの違いか。床が低かったことでバランスを崩しながらも冷静さを取り戻し――ようやく理解したのである。ここが、いつもの部屋ではないことに。

 この時点では、まだ夢を見ているのかとも思ったが――それでも、先ずは学校に行かねば、と考えてしまったのは学生の 性(サガ)か。初めて見る謎の部屋ながらも、試しに背の高い扉を開いてみれば、そこは案の定クローゼット。その中に――何に使うかよくわからない紐のようなもんや、透き通った雨合羽が何故かハンガーにかかっとったけど、学生服もちゃんと入っとった。ブラウスとリボンとスカート。デザインこそ違えども、構成は一緒だ。

 ということで――脱ぐものはなかったのでそのまま着て――部屋の隅に置いとったスクールバッグ――今日の授業の用意は入っているものと信じて、スマホだけポケットに突っ込み――幸い自宅の鍵も玄関の靴箱の上にあったので、それで施錠して家を出てきた。

 

 そして、いまに至る。

 

 何も考えずに出てきておいてなんだけど――そこは、地方暮らしゆえの配慮不足というべきか。

 ……学校、どこ?

 スマホにはロックがかかっていて開け方がわからず、残念ながら大きめな懐中時計に成り下がっとる。一応制服着とるわけやから、通りすがりの誰かに聞けば、どこの学校か知っとるかもしれない。

 けど、私は――

 ――うん、きっとこれは夢やな!

 いや、もしかしたら夢やないかもしれんけど……せっかく東京におるんやし、エンジョイせんのももったいない。学校をサボるんはよろしくないとはいえ、もうこんな時間やし諦めよう。うん、うん。

 カバンのサイドポケットを開くとピンクの長財布が入っており、一万円札が三枚も。これなら……ああ、いや、何があるかわからんし、いきなり豪遊するつもりはないけれど。ともかく、花の東京見物を――! と、いきたいところではあるが、なにぶん私はこの街に対して見識がまったくない。見渡す限り背の高い建物で視界が塞がっていてどこがどこやら。一度迷えば二度と帰れなくなるかもしれんし、住所がわからなければ人に訊くこともできない。

 と、いうことで――うぅ、本当はもっとオシャレなところに行きたいけれど、しばらくは近所でウロウロするしかないかー。ま、それでも数え切れないほどのお店はあるしね。

 と、踵を返したところで……あ、いきなり良さげお店発見ー。お店じゃなくて、案内所やけど。そりゃ、これだけお店があるわけやし、繁華街ってことは観光地でもあるわけで。ここなら地図とかもありそうやしちょうどええかもー、って入ってみたら――

 

       ***

 

 ――こ、これが……東京……これが、繁華街……あまりのピンクっぷりに、思わず放心しちゃったわ……。他の男の人にソワソワされて、ようやく我に返ったけれど。

 しかし……あー……スゴイ空間やったわ。フラフラと外に出てきて、ふぅと一息。けど、その鮮烈な光景はいまなお脳裏に焼き付いている。おっぱいおっぱい……の中に、普通に男の人――ホスト? の写真に混じって十六歳未満入店禁止の赤丸スラッシュのマークもいたるところに。十六歳未満入店禁止のホストって……うぅ、気になる……どんなサービスしてくれるのかめっちゃ気になるけど……! ……ん? 十六歳? 十八歳でなく? 東京ともなると、年齢制限引き下げられてるん? だったら、私もあのお店に……? いやいやダメでしょ。そんなところ行ったら何をシてくれる……やなくて、何をされるかわかったもんやないし。例え、相手がオシャレなイケメンやったとしても!

 けど……うーん……もしこれが夢でなく、ずっとこの街で生きていくことになったら……働く場所はいっぱいあるんやろなぁ……そりゃ、おっぱい丸出しではあったけど、キラッキラだったり、フワッフワな衣装にはちょっと興味ある……。これで、ちゃんとおっぱい仕舞っててくれればええのに。でも、それじゃ普通の街と変わらない、ってことなんやろなぁ。……うん、もう少し土地勘持ったら、普通の街に引っ越そう。

 気を取り直して。

 とりあえず、通りを真っ直ぐ行って、同じ道を真っ直ぐ帰ってきたので、再び家の前まで戻ってきた。どうやら五階建てのマンションのようで、名前は『メゾン・ニュー』 一階は何かのお店として使われており、住居としてのフロントは少し奥まったところにある。ただ、まだ開いていないらしく、中は暗い。貼ってあるポスターの様子から、どうやらアイドルショップのようだ。

 さて、ここまでわかれば、帰り道に迷っても人に訊きようもある。ご近所様なら。

 ということで、ちょっと強気に。今度は街の奥へ奥へと突き進んでいく。

 それにしても……こんだけお店があるのに、営業内容偏りすぎでしょ。お金にお酒におセックス……あまりにも欲望まみれすぎる。可愛い雑貨屋とか服とか売ってないの? ……ああ、そういうのは街の外で買うんか。何となくわかる。

 真っ昼間の日差しは暑くて、正直、そろそろどこか建物に入りたい。そんな中で、ようやく見つけたのは……パチンコ……やないよね? いわゆるゲームセンターってやつ。しかも、パチンコホール並の大きさ。もちろん、年齢制限もない。

 中を覗いてみると……おおおお……っ! そう、こういうのを期待してたんやって! スゴイ! スゴイ! UFOキャッチャーがこんなにいっぱい……! いや、UFOばかりでもないか。この出っ張りが動くんで、タイミング合わせてボタン押すんやろなー、ってのは直感でわかるけど。景品の方も、定番のぬいぐるみだけでなく……人形? ああ、これが噂のフィギュアってやつ。箱に入ったものを直接落とすんか。豪快やなー。

 欲しいものはいっぱいやけど……むむむ、我ながら、資金の底がわからない。いきなり無駄遣いして良いものか……? なので、ここは控えめに。それに、見とるだけでも楽しいし。おお、エスカレーターまであって、二階、三階もあるんね。あとで行ってみるとして……いまはまだこのフロアが気になっている。

 奥にある――プリクラ? どれもこれもキラッキラで大人な雰囲気。美白だの美麗だの、美しい文字が並んでいる。こ、これが都会のプリクラ……ッ! せっかくやし、一枚くらいなら撮ってみてもええよね……? ぬいぐるみとかと違ってシールなら場所もとらんし……。

 ということで、中に入ってみたところ――

 

 ――え……誰……?

 

 どうやらそこは全身を映すタイプのプリクラだったらしい。ゆえに、身なりをチェックするための姿見の鏡が設置されていた。そこに映っていたのは、見知らぬ女のコ。何だかぼんやりしていて、ウェーブがかった髪は長い。これまでもそんな背が高いつもりはなかったけれど、さらに一〇センチくらい縮んでしまったような気がする。それに何より……あー……なんか肩が重いと思ったら……胸がひと周りふた周り大きくなっとる。

 ……って、ちょッ!?

 ここで私はいろんなことに気がついた! 鏡にベタっと指紋を着けて胸を近づけると……うわ、うわ……ちょ……私、ノーブラ……? というのはさておき……何だか嫌な雰囲気を感じて……一応カーテン越しに個室なので、私はブラウスのボタンを上からいくつか外してみる。そして、襟元を開いてみれば――

 な、ナニコレ……乳首を中心に二重丸――それに――放射状に線が――いや、わかる。私にも、それが何を意味する記号なのかはわかる。けどなんで、そんなものがこんなところに……しかもこれは、ペンとかで書かれたものではなく――しっかりと肌に沈着しとるなんて。

 愕然としつつも――軽くスカートの上から手を当ててみる。やっぱりノーパンやった。しかも、毛の感触がない。どうやら、剃ってしまっているようだ。起きた直後は混乱しとったし、そこからは浮かれてて気が回らんかったけど……ああ、そうか、私、裸で寝てたんか……。

 正直なところ、どこから驚いてええのかわからない。こんな格好で外を出歩いて良いのかも。ただ――少なくとも、この身体は自分のものではない。どうやら、別人の身体の中に入ってしまったようだ。だからって、開き直れるものではないけれど。何より、身体にこんなことをされとる人だ。どんな生活を送っているのかわかったもんやない。

 いまさらながら、カバンの中を確認しようとしたんけど……外から触ってみただけで、中身が教科書やノートの類でないことはわかる。特に、この円筒状のモノは……ちょうど握りやすく、硬すぎず柔らかすぎず、端が丸くなっており……ぅ、このカバンはここで開かない方が良さそうだ。

 それもあって……私は一旦元の部屋に帰ることに。自室を漁って、もっと詳しくこのコのことを知らなくてはならない。エアコンのおかげで汗は引いたけど、外を歩いていればまた透けてしまう。乳首どころか、卑猥な刺青まで。だから、不自然にならないように腕を上げて胸を隠しながら――迷わないよう不用意に道を曲がらなくて良かった。改めて戻ってきた『メゾン・ニュー』――何号室かはうろ覚えやけど、鍵穴を回していけばわかると思う。

 一階のお店は、私がウロウロしている間に開店していたらしい。しかし、よりにもよって……露骨なモノはないけど雰囲気でわかる。ここ、絶対厭らしいオモチャを売ってるお店だ。それに、店頭ポスターもやっぱり厭らしい。脱いではいないけれど、厭らしい案内所に飾っていたものとよく似てる。

 どうやら、三人娘のようやけど――その中で私は、信じられないものを見た。

 センターの、背の低い女のコ。ぼんやりした雰囲気で、長い髪をふたつの大きな三つ編みでまとめている。上は迷彩柄の詰め襟なのに、下はピンクのミニスカート――そんな衣装は着ているけれど、ひとりだけ浮くほど胸が大きい。そのコに、私は確かに見覚えがあった。さっき、プリクラの鏡で見た女のコ――

 もしかして私は、とんでもない相手に乗り移ってしまったのかもしれない。ポスターは風俗っぽいテイストではあるものの、服を着ていれば普通にアイドルにも見える。こんな街の、こんなお店に貼られていなければ、ちょっとワクワクしたかもしれない。けど、この状況では――何より、こんな刺青彫ってて、アイドルなんてできるん……? アイドルはアイドルでも、厭らしいアイドルなんじゃ……。

 色々と思うところはある。が、情報は集めなくてはならない。ポスターを貼るくらいなんやから、店内にこのコの関連商品が置かれている可能性もある。勇気を出して、自動ドアをくぐってみると――

 ……ああ、うん、さすがに焦らなかったわ。うん、おっぱいどころか割れ目まで丸出しばっかね、この店。もちろん、大人のオモチャや写真集も目白押し。CDもあるけど、これ音楽なん? 厭らしいこと言わされとるセリフ集かもしれない。

 しかし、これでこの身体の持ち主が何者なのかはっきりした。写真集に、名前がしっかりと書かれとったから。そして、どんな仕事をしとるのかも。

 やっぱり現在絶賛売り込み中やったらしく、天井隅に設置されているモニタに私を含めた三人娘のミュージックビデオが流れている。私はこの街に詳しくはないけれど、その雰囲気はこの街並みによく似ている。そんな道路を借り切っての撮影――伴奏はちゃんとしたものだし、その内容も歌番組に出てきてもおかしくないもの。そういうところは、普通にアイドルっぽい。けど、油断はできない。だって、私の写真集……というかポルノやね。表紙からして素っ裸でSMっぽい雰囲気やったから。

 そしてミュージックビデオは、予想を裏切ることなく踊りながら脱いでいく。が、中は同じく迷彩柄のビキニだった。けど、これで済むはずがない。……ほら、背中に手を回して……自分の身体ながら、見ていてソワソワしてしまう。そして、ポロリとブラを外せば……うぅ、例の刺青が……。そういう三人組かと思ったら、そんなの入れてるの私だけじゃん! ナニコレいじめ!? ……というには、普通のアイドルみたいに楽しそうなんやけど……おっぱい丸出しなのに。

 そして、パンツの方にも当然のように手をかけて――って、これはダメでしょ! 胸がこうなのだから、そっちにも何か彫られてるとは思っとったけど、そのー……いわゆる断面図ってやつ? 図形的ながらも 挿入(い)れられてる様子がしっかり掘られてて。私って、一体何者――? 恐る恐るスカートを捲り上げて覗き込んでみると……ぎえぇ、確かに同じものが私にも――

 

「あれー? ルミノなのー?」

「ッ!?」

 

 何を見ても驚かないつもりだった。けど――さすがに生身が出てきたらビックリするわ! って、ここ、グッズのお店だよね!? そのー……変なサービスまでやるとこじゃないよね!? というか、まさか女のコが店員やってるなんて! しかも全裸で!?

 これは、うっかり鉢会ってしまった、とかじゃない。そのコは、確信犯的にそんな格好をしている。

「入ってきたのがちんぽじゃないからおかしいなー、って思ったんだけど……んんん~……?」

 店番の女のコは、まるで寝起きみたい。私のことを少しだけじーっと見て――

「ああ、人違いー」

 そう言って、レジ台の向こうに倒れ込んだ。その奥がどうなってるのかはわからんけど、多分横になれるような床なり椅子なりがあるんやろ。

 どうやら知り合いみたいやったし、長居していては中身が違うことがバレてしまうかもしれない。早々に退散しておくべきか――と出ようとしたところで棚の背表紙が目に入った。ついでだから、最後にひとつだけ確認させて。背表紙だけじゃ小さかったけど、パッケージの表面で確信。さっきのレジのコは…… 姫方(ひめかた) 紫希(しき)。こんなに大きなおっぱいもなかなかないので間違いないやろ。そして私は、 砂橋(すなはし)ルミノ。写真集の表紙にそう書いてあったし、こんな刺青が他におるはずがない。つまり、ふたりは同業者、ということになる。やはり、この場は離れておいた方がええ。

 ということで、紫希さんが人違いだと思っているうちに私は外へ出て――しかし、一階にこんなお店がある以上、ここは家ではなく関係者の事務所かもしれない。そんなところへ帰る気にはなれず、私は再び街中を探索してみることにした。もし有名なAV女優なら、他のお店にも商品があるかもしれんし。けど……はぁ、またあんなお店に入るのかと思うと気が滅入るなぁ……。

 あんまり何軒も周りたくないから、できるだけ大きなお店を探していると――え、え、ちょっと、ちょっと、いや、ちょっと、待って、何? 変なお店に入りすぎて、私、目がおかしくなってる? ベージュの上下着てるだけで裸に見えちゃうなんて。うん、だってここ、普通に繁華街だし。さっきのビデオと違って普通に人もいっぱい歩いてるし。ただ、そのふたり組の周りだけ妙に距離を取られているのが無駄にリアリティを感じる。かといって、カメラマンやスタッフが取り巻いている様子もない。お仕事や撮影とかでもないん?

 これは……絶対逃げるべきやろ! と、思ったが、時すでに遅し。

 ……うわ、やば、絶対目が合った。手を挙げてるのは、私に向けてでしょ。見たばかりやったこともあり、シルエットで何となく察したんけど……見つかった相手がマズかった。あのふたりはまさに、一緒にポスターに映っとった――えーと、同じユニットやろから名前も覚えてる。

「おーっ、ルミノー、どうしたよー」

 赤縁眼鏡にツインテールは 桑空(くわそら) 操(みさお)。

「わざわざ服なんて着てー。珍しくない?」

 サラッサラの黒髪ロングにパンツ穿いてたら男の人と間違えそうな胸は 村月(むらつき) 李冴(りさえ)。

 てか、私――じゃなくて、このコ、服着てる方が珍しいの!? おかげで、さっきのお店でも誤魔化せたのかもしれない。タチの悪いジョークであって欲しいところだけど、言ってる本人が全裸なところからもどうやら本気らしい。周りから遠目でチラチラ意識されてるし、私だけ服が見えてないとか、そういうことでもなさそうだ。

 同じメンバーってこともあり、このふたりはさすがに人違いで済ませそうにない。

「てかそれ、昔の制服じゃねーか」

「何かのプレイ?」

 昔の、って……この身体の持ち主、私と同い年くらいに見えたけど、意外と歳上? 

「え……えーと……今日は、ちょっと調子が悪くて……」

 幸い自宅も近いし、帰る途中ってことにしたかったけれど。

「おいおい、今日のステージは大丈夫か?」

 ステージ!? まさか今日撮影あるの……?

「せっかく、ルミノがセンターの新曲発表なのに」

 あー! さっきのポスター、確かに、私が真ん中にいたー!

 けど、あえてここはそれを言い訳にさせてもらおう。きっと楽しみにしていたであろう本人には申し訳ないが。

「せ、せっかくの新曲やし、万全の状態でお披露目したいなー……とか」

 我ながら無難な理由のつもりやったけど、ここで一気に空気が変わる。

「……ルミノ、まだそんなこと言ってんのか」

 へ?

「私たち、まだ新人なんだから、上手くできないのは仕方ないでしょ」

「そりゃー、鳥越学園にいて、すごい連中に囲まれてきたのはわかっけどさ」

 鳥越って……もしかして、あの芸能人がよく通ってるっていう!? 私、そんなところ出身なの!?

「歌や踊りはパフォーマンスの一部。TRKにはTRKの魅力がある、ってプロデューサーもいつもゆってるでしょ?」

 T……え……? 私たち三人のユニット名は、確か……トライデントフラッシャー……のはずじゃ。

 ここで、操さんの方がククッと意地悪く笑う。

「いつも始まる前は逃げ腰なクセに、まな板まで終われば満喫してんだからよー」

 それに続いて李冴さんも安堵の表情。

「うんうん、ある意味いつものルミノだわ」

 え、えええええええええ!? ちょ、ちょっと! 本人、普段からちゃんと真面目にやっててよねー!!_!

「とにかく……ほら、リハーサル行くぞ」

「そこでダメそうならプロデューサーに判断してもらうから……ねっ」

 裸の女の人に両脇を固められ、私は現場へと連行されていく。……ど、どうしよう……。私、歌も振り付けもわからないし、それに……絶対変なことさせられるーーーッ!!

 

       ***

 

 そこで私は、すべてを理解した。

 辿り着いた先はストリップ劇場で――ストリップっていうと、服を脱いでいくダンス、ってイメージやったけど、ここでは歌も唄うらしい。ただ、やっぱり普通のアイドルのステージとは、劇場の構造からして一線を画している。ただの舞台だけでなく、客席中央に向けて通路のようなものが伸びていて――どうやら、これは花道というらしい。目的を考えると、あまり綺麗な名前を着けてほしくはないんやけど。

 で、私たちは『TRK26』という二十六人のストリップグループで、トライデント云々ーってのは、その中での私たち三人のユニット名のようだ。

 どうやらグループ自体がまだ創設されたばかりらしく、一部のメンバーを除いてまだまだ未熟。そう、一部のメンバーを除いて。

「……すご。普通にプロみたい……」

「それ、 未兎(みと)に聞かれたら怒られるよ」

 舞台袖のモニターで観てるだけでも……うー、むしろ、私も客席の方で観覧したいくらいやわ。リハーサルでも圧倒されたけど、本番でライトアップされると本当にアイドルのようだ。けど、私たちのミュージックビデオと同じように未兎さんも、服を脱ぎ、ブラを脱ぎ、パンツを脱ぎ……全裸で唄い踊る彼女の心境は如何ほどか。普通にテレビとかにも出られそうなのに。そんな逸材と同じ舞台に上がるやなんて、萎縮して当然でしょ!

 プロデューサーさんについては……まー……こんな仕事に就いとるくらいやから、黒サンかけたイカツい大男ー、ってのを想像してたんけど……案外弱々しい感じで、心境としてはホッとした。むしろ、秘書の女の人の方が怖くて、無理そうなら今日は休んでもらっても、と宥めるプロデューサーさんに、今日は新曲の初舞台やから、余程のことがなければ外せない、って檄を飛ばしてたのは秘書さんの方だったり。……やっぱ、女に厳しいのは女の方か。

 私たちのスキルが足りてないのはお客さんの方も承知しとるのやから、むしろ、本番に勝るレッスンはないって勢いで、私は舞台袖に軟禁されている。どうやら、ルミノってコは何かにつけて逃げ腰だったらしく、周りもグイグイと背中を押し気味だ。ただ、本人は本番に強いらしいけど……私はその本人やないっての!

 結局、プロデューサーさんの――できる範囲でベストを尽くしてください、って言葉を信じるしかない。秘書さんも、“まな板”の方はどっちでも、って言ってたし。てか、まな板ってナニ? 私たちはトリなんやけど、ここまでの出演メンバーたちがそれっぽいことをしている様子はない。リハーサルでも触れてないんよね。ってことは、アフターサービスみたいなもの?

 今日は一日変なモノばかり見てきたからか――そもそも、別人に乗り移るなんて現実離れしすぎている。その所為か、何もかもが実感なくて――これから私が舞台に出るってことも、出番を目前に控えてなお実感がない。何しろ、お店で見たときはてっきりAV女優で、アレはミュージックビデオ風のAVなのかと思ってた。

 なのに――これ、本当に劇場なんよね……? 集まってくれてるお客さんたちも撮影のためのエキストラとかではなく、普通にチケットを買って観に来てくれた――

「よっしゃ、イクぜ」

 どうやら操はぶりっ子キャラを作っているらしく、男勝りな口調とは裏腹に、アイドルウィンクで私を励ましてくれる。……慣れてないのか、反対側の目蓋も閉じ気味やけど。

 そして、李冴さんもまた。

「ま、失敗も愛嬌、ってね。大丈夫だよ、みんなルミノのこと大好きだから」

 そりゃー、センター務めるくらいやしね。だからこそ……きっと、みんな注目するんやろうなぁ。そんな中で、私……あんなことするん……?

 けど……前の出演者たちもみんなそうしていたし……いや、そ(・)れ(・)以(・)上(・)の(・)こ(・)と(・)をするのは私たちだけで……リハでは段取りだけで、プロデューサーさんも秘書さんもそ(・)こ(・)ま(・)で(・)はシなくても大丈夫、とはゆっとったけど――

 ――なんて考えがまとまらないまま――!

 左右から両手を掴まれて、私は光の中へと引き込まれていく――

 

 ワアアアアアアアッ!

 

 劇場自体は小さいはずなのに、まるで学校の広い体育館のような。

 ステージ下は暗くて見えないはずなのに、お客さんたちの瞳だけは見えるような。

 リハーサルが終わった後も、ずっと反復練習だけはしてきた。完全に付け焼き刃やけど――私――!

「~~~~♪」

 わ、わ、私……唄えとる……踊れとる……! そりゃ、歌詞は足元のカンペモニタに出てるし、振り付けの難易度も私たちのスキルに合わせて抑えられてるからやと思うけど。でも……こうしてステージに立っていると――お客さんたちの手拍子――揺れるサイリウム――なんか、本当にアイドルになっちゃったみたい――

 けど――

 一番が終わったところで、この衣装を脱ぐことになっている。中は水着なので、まだ恥ずかしくない――ことはないけれど、大丈夫といえば大丈夫。でも、Bメロが始まる頃には――みんなそうしてきたのは見てきとるけど、やっぱり未だに実感はない。

 実感は、ないのだけれど――

 操さんや李冴さんが脱いでいる以上、私も脱がなくちゃいけない――んやろなぁ……。

 いざ、脱ぐ段になると――自分の身体を意識すると、それが他人の身体なのだと思い出される。

 だから、というわけでも、持ち主の身体を粗末に扱うつもりもない。

 けど、これがこのコのやるべきことやとしたら――

 ブラのホックを外し――私はとんでもない刺青のことを思い出す。でも……初めてやないんよね……? みんなファンやし、周知のことなんよね……?

 

 ワアアアアアアアッ!

 

 お、おっぱい丸出しで……私……! リハのときも思ったけど、こんな格好で跳ねたり回ったりすることなんて普通ない。両胸の重みに……振られる……っ!

 けど、そんなことを気にする暇もなく……パンツも……脱ぐ、んよね……? 隣のふたりはもう手をかけているし……ああ、もうっ!

 

 ワアアアアアアアッ!

 

 こ、こんなことシちゃって……ええの……? 多分、ええんやと思う。三人揃って――むしろ、この劇場のメンバー、みんなシてるし。

 でも……これ、私の身体やないんよね……? 見られとるのは、私やないはず。なのに……うぅ……まるで、自分の裸を視姦されているように感じられる。

 そんな私を我に返してくれるのは、お客さんたちの声援やった。

「ルミノちゃーん! ルミノちゃーん!」

 ……ああ、そうだ。いまの私は宮水三葉やない。砂橋ルミノやったっけ。だから、恥ずかしくない――はずはないんやけど――こんなに恥ずかしい想いをしているのに、歓声を浴びるのは私ではなくルミノさんの方。何だか私、恥かき損な気がしてくる。ルミノさんが脚光を浴びるために、私が羞恥心を負担しているというか。

 二番が終わると大サビに入る前にクネクネとしたダンスが入る。ここに歌詞はなく、パフォーマンスに注力せよ、とのことらしい。

 けど、こんなの、パフォーマンスにならないでしょ! わざわざアソコを指で開くやなんて。間近で覗かれてるわけでもないんやから、さすがに見えんやろし!

 だから多分、これは、ソ(・)レ(・)のため。

 

 びちゃびちゃびちゃびちゃ……!

 びちゃびちゃびちゃびちゃ……!

 

 う、ウソでしょ……? あのふたり……本気で……! もちろん、リハでは溜めておくために 放尿(だ)しはしなかった。だから、正直半信半疑やったところはある。

 けど……無理でしょ! 立ったままなんて……しかもトイレでもないところで――というか、人前で――それどころか、お客さんに向けてなんて!

 けど――これは自分の身体やない、って思ったら――一瞬だけ、私の身体から緊張が抜けた。

 

 びちゃびちゃびちゃびちゃ……!

 

 オオオオオオオオッ!

 

 うわ、うわ……こんなことで、今日一番の盛り上がり……!? ここに来てる連中、どんだけ変態なんよ! とはいえ……こうやって良い意味でのリアクションが来ると、頑張った甲斐はあった気がしてくる。

 一度溢れたものは止められない。私は指で開いたまま、お腹に溜まっていたものを解き放ち続ける。

 そして、ついに大サビへ。私たちは身体を魅せつけるために、客席に近い花道へ。その間に、盛大にやらかしたメインステージの方の幕は下りる。すぐさま裏でスタッフさんが拭き掃除を始めてくれるはずだ。

「~~~~♪」

 何かもう……大きな山を超えた気がする。あんなことをやらかした後ともなると、ただ裸で踊るくらいなら……と少し落ち着いてしまう自分が憎い。

 歌のパートは終わって、曲に合わせて肌を寄せて――決めポーズ。……はぁ、やっと終わった……。これでちゃんと着衣していたら普通のステージなのに。けど、これはこれで……なんて考えているのは、喉元すぎれば、というやつかもしれない。

 さて。

 リハではここまでやった。けれど、操さんたちに退場する気配はない。やっぱり、ここから始まるのだろう――『まな板』と呼ばれる何かが。

 花道のスポットライトも消え、真っ暗になった会場内にドラムロールが響く。うわ、何? 何があるん? まさか、本日のMVPを決めるとかそんな? で、選ばれると追加公演? ちょっと待って。そんなこと言われても、リハにないことはさすがに――

 と思ったが、選ばれたのはよりにもよって。

 

 オオオオオオオオッ!

 

 ……え? お客さん……? スポットライトが照らしているのは、三つの客席の方だった。それで、私は直感する。多分――まな板ってそういうことだ……! なんでまな板っていうかまではわからないけれど!

 そして、なんでまな板っていうかの理由もすぐにわかった。ステージ脇に急遽設置された階段で上ってきたお客さんたちは、花道に次々と仰向けに横たわっていく。もちろん、休憩に来たわけではない。操さんたちは、男の人のズボンを脱がして……!

 ただ、私の相手だけ何かおかしい。

「…………」

 操さんたちの方は、よろしくお願いしますー、とか穏やかな雰囲気なのに、私の相手だけは完全に無言。しかも、両手を背中で手錠され、足首も同じく拘束されているのでちょこちょことここまで歩いてくるのも大変そうやったほど。もちろん、ライブ中からずっとこうやったわけではなく、壇上に来る際にスタッフによって施されたもの。ルミノさん、一体何があったん? ここまでシてでもシなきゃいけないことなん……?

 けど……こうなると、逆に何もしないと申し訳なくなってくる。ナニをどうするか……シたことはないけど、操さんたちをお手本に……先ずズボンのベルトやホックを外して……うわっ、ホントに出てきた! ビヨンと飛んでくるみたいに! こ、こんなもの……パンツの中で押さえてたん……? 男の人の身体ってヤバくない……? けど、これって興奮してるってことなんよね。両手を錠前と一緒に敷き込んじゃってるけど、しっかりエッチな気分にはなっているらしい。というか、痛みさえ快感に変わってそうやけど。変態やし。

 さて、これを……うん、私の後ろにもカゴが到着しとる。スタッフさんが、壇下からこっそり届けてきてくれたものだ。そこに入ってた除菌シート? で……綺麗に拭いてから……うわ、うわ、アツっ……病気と思うほど熱を持っていて……よく、ウィンナーに例えられるけど、折れたり千切れたりしそうな雰囲気はない。それに、思ってたより太いし大きいし。操さんたちはそれを、本当に自然に……さも、当然のように……口に入れたり、舐めたり……こ、こんなところを……! けど……エッチなプレイの中では、わりと普通のことらしいし……!

 ……あむっ! む、む、むぅ……顎が外れるんじゃないか、と思ったけど……きっと、私の身体の関節が柔らかかった、ということなんでしょ。私が知るのは、歯を立ててはいけない、ということだけ。詳しいことはわからないけれど……チロッ、チロッと舌で撫でてあげると、男の人は気持ちよさそうに息を漏らす。それに腰もヒクヒクって。こんなに反応されると……ちょっと面白くなってきたかも。ここ? こことか? ん、ん、なるほどねぇ。

 とか何とか遊んでいるうちに、他のコたちは次の手順に移っていた。うん、それもまた予想通り。男の人に跨って…… 挿入(い)れるんでしょ? やっぱりねぇ……そうかと思ったよ。

 だから覚悟はしていたし、そもそも自分の身体でさえないし。だからといって、すっぱり開き直ることはできないけど。でも、やらなきゃ……なのよね……。

 だから……私は顔を上げて身体を起こす。そして、男に跨がり、上からその顔を見下ろした。私を見上げるその表情は、許しを乞うようでもあり、願うようでもある。私に何を期待しているのか――それは、快楽――それも、男として最上の――

 

「んっ、ああああ……っ❤」

 

 こ、これって……ちょ、ちょっと待って……っ。そりゃ、 挿入(い)れ慣れてるだろうから、痛くはないと思ってた。けど……こんな……あ、あ、あ……身体の奥から胸を貫いて、喉まで届くような甘痒い感覚――一言でいえば――気持ちいい……っ! こんなの、じっとしていられないほど……!

「あっ、あっ、あぁっ、あぁん……っ❤」

 変な下ネタでは聞いたことあったけど、こういう声、本当に出るんだ……❤ 奥は奥で気持ちいいけど、そこに至る間を上下させるのも――ズリズリ、ゴリゴリって……そのうえ、勢いをつけてズンってされると……こんなの……ヤバイって!

「はぁんっ、あぁん……すごい……すごいのぉ……っ」

 このコ、いつも仕事でこんなことしてたの……? こんな気持ちいいこと……毎日……毎日……っ! いい……っ、良すぎるよ、こんなの……っ! これなら私、このコとずっと入れ替わってもいい……っ! 恥ずかしさにもすぐに慣れるやろし、頑張ればこんなことができるのなら……!

「ルミノちゃ……ルミ……ルミノちゃぁん……っ!」

 こんなときに、他の女の名を呼ばれるのはちょっと癪だ。身体の名はルミノでも、私の名は三葉だから。もし、ここで働くことになったら……芸名変えちゃお。宮水三葉……三葉に……っ! それを想像してたら……

「 絶頂(イキ)そう…… 絶頂(イッ)ちゃう……っ」

 私だって、オナニーくらいしたことはある。けど、それとは全然違う。溜め込まれているものの力強さが、全然。これを解き放ったら……どうなっちゃうのか……。ちょっとの不安と、期待感。それは、この身体に対してと、ファンならきっと、何をシても、どうなっても許してくれるという。

 けれど――私が至るその前に――

 

 ビュルッ! ビュクッ! ビュッ、ビュッ……

 

 あ、あ…… 射精(で)てる…… 射精(だ)されてる……私の 膣内(ナカ)に―― 子宮(ナカ)に……赤ちゃん 妊娠(デキ)ちゃったらどうしよう……けど、こんなに熱くされたら……気持ち良すぎて――

 

「 絶(イ)ッ 頂(ク)ゥゥゥゥゥゥゥゥ❤❤❤」

 ビクビクンッ! ビクンッ! ビクンッ! ビクンッ!!

 

 あ、あ、あ、あぁ……っ、これ、背中がピーンってなって……何とか倒れずに耐えてはいるけど、角度が悪くてスポンと抜けてしまった。すると、トロンと溢れてきたものがお尻の方まで垂れてゆき、それどころか――

 

 ビチャアアアア……

 

 オオオオ……っ

 

  放尿(だ)したばかりなのにもう溜まってたなんて……何も考えられず、男の人にかけてしまったけど……本人は嬉しそうだし、他のお客さんたちも喜んどるし……あぁ……これで良かったんだ……きっと……私……はぁ……❤

 もう何も考えられなくなって――見上げた先からは眩い光が降り注ぐ。身体も中から外から熱くて――私――もう――私――

 

        ***

 

 ゴスっ、ゴスっ。

「うひゃぁッ!?」

 脇腹に何かが刺さる感覚に、私は思わず身体を起こした。

「うわぁ、まだそんなカッコなん?」

 聞き覚えのある声に顔を上げると、小さな妹が私を嫌そうに見下ろしている。

 右見て、左見て――木造の六畳間――どうやら糸守の私の部屋らしい。けど――ギェっ!? なんで裸!? そりゃー、昨日ステージ上で脱いだから……ってそれは夢の話! 掛け布団で胸元を隠してみるも、四葉はジトっと私を見るばかり。

「お姉ちゃん、来とるで」

「誰が?」

「昨日の連中やろ」

 昨日の……? と言われても身に覚えがない。しかし、どうやら状況は切迫しているらしい。

「ほら、鬱陶しいからどうにかして。お姉ちゃんが出ないと収まりそうにないから」

「う、うーん……?」

 とにかく、出てみるしかないだろう。

「じゃあ、すぐに着替えて―――」

「そんなんええからすぐ行ってっ!」

 今度は背中を蹴飛ばされて……! それが姉に対する態度か! と一言言ってやりたいが、本当に急を要するようなので、それについては後ほどに。一先ず全裸で出歩くのは落ち着かないので、私は布団に包まったまま階段を下りていく。

 四葉の様子だと、熊だの蜘蛛だのが出たような雰囲気だったけど、私を待ち構えていたのは――

 

「三葉様っ! おはようございますっ!!」

 

 ぎゃあああああああっ!? 町中の男の人たちが跪いて……ッ!?

 だというのに案外落ち着いているのは、昨日の夢のお陰か。中が見えないように隙間なくぎゅっと布団を閉じて、私は誰か話しやすそうな相手がいないかを探す。見事に男ばっかなんやけど……その中にわりと親しい友人を見つけた。

「テッシー、これ、どうなってんの?」

「おぅ、三葉! ……いえ、三葉様」

 立ち上がり、フランクに話しかけてきたと思えば、周囲に睨まれて縮こまる。そして、私の傍に来て、小声で。

「……ほら、昨日の件だよ。お前がいきなり……放課後に町のド真ん中でストリップなんて」

 え、え……どういうこと……? アレは私じゃなくて……え……?

「それをやめさせようとした親父さんと俺たちが衝突して……お前が街から追い出されそうになったから、俺たちが身体張って食い止めてんじゃねーか」

 ど、どういうことなの? ともかく、冗談には見えないので……どうやら、私が町から追い出されそうになっている、ということらしい。

「俺たちは命に変えてもお前を守る……けど……」

 ちょ、テッシー大げさ。けど……さっきの四葉の反応を見ると、女性陣は概ね追い出し派になってるっぽい。いまや、私の味方はここに来ているメンズたちだけ。しかも……!

「ほら、みんなの士気を上げるため……というか……いや、決して俺が見たいわけじゃないんやけど……」

 そう言って、テッシーは真っ赤になっている。それで、私に何を期待しているのかわかってしまった。

 なのに――全然イヤな気分がしない。それは、夢の中で未練がの未練が残っていたから。あんなに恥ずかしいことさせられたのに、すべての声援は身体の持ち主であるルミノさんに。けど、当然よね。あれはあくまで、ルミノさんの身体なのだから。

 ということは――私が、私への声を受け止めるためには――

「み……み……」

 今度は正真正銘私の身体である。そんなことをしたら、本当にもう後戻りできなくなってしまう。いや、この状況を見れば、多分もう、後戻りできない。

 だったら――せめて、私の恥ずかしさは、私のために――

「 視姦(み)てぇ……っ!」

 

 オオオオオオオオッ!

 

 身体に巻いてきた布団を背中の方へとバサリと落とすと――うわ、テッシーも 視姦(み)すぎでしょ! こんな間近で……けど、だからこそ、吐息まで伝わってきそう。

 その熱が……私にも伝わってきて……あぁ……はぁ……こんなの……抑えきれない……っ!

「三葉の恥ずかしいところ…… 視姦(み)てぇ……ッ!」

 あの舞台でしたように割れ目をクニっと広げてみたら……それだけじゃ収まらず、クリトリスを……

「あっ、あぁん……あぁ……っ❤」

 私が恥ずかしいことをするたび、気持ちいいことをするたび、男の人たち――テッシーも、私に食いついてくる。いい……いい……っ、けど……これ以上シてたら……でも……っ! ルミノさんの身体でも……シちゃったし……!

「 放尿(で)そうなの…… 放尿(シ)て……いい……っ!?」

 我ながら変なことを訊いていると思う。けど、男たちはもっと変だ。

「お願いします!」

「三葉様、お願いしますっ!」

 それを聞いて、私は――

 

 パァァァァァァァ……っ!

 

 おおおおおおおおっ!

 

 この人たち、逃げるどころか、自ら浴びに来るなんて……。ぶっちゃけ気持ち悪いけど、立ちション自体は気持ちええ♪

 夢か現か、どうやら町はとんでもないことになっているようだけれど……恥ずかしさはあるし、躊躇もある。けど、これから進む道に公開はない。

 何故なら――私の行く先に、ルミノさんがいてくれる気がするから。

 


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