後にアンダーワールドで《死神)と呼ばれる男の、知られることのなかった(というか知られたくない)挿話である――
※長編として連載しています『ソードアート・オンライン パラダイス・シフト』のR-18エピソードです。
ようこそ、紳士の館へ
カンテラの光が消えても、部屋の中は完全な暗闇とはいかなかった。安宿だからか窓にカーテンはなく、月の青白い朧気な光が薄く照らしている。何だか月の女神ルナリスに覗かれているみたいだ。天界の神も下品な趣味をお持ちらしい。
わたし達はベッドの上で、文字通り手探りで互いの服を脱がせていった。コートを脱いで肌着1枚になったセツナの身体の感触が布越しでも分かる。その肉体が放つ熱も。
男性特有の角ばった筋肉は硬いけど、しなやかで肉の弾力も確かにある。その胸を、首元を、顎の輪郭を指でなぞっていき顔の位置を探り当てると、わたしは彼の唇にそっと口付けした。
セツナの手がわたしの肩に伸びて、ゆっくりと下着を外す。唇を離したわたしも彼のシャツを脱がす。一糸まとわぬ姿で抱き合うと、互いの上気した体温を一層感じられて、少しの肌寒さも手伝って温め合うようにしばしそうしていた。
宵闇に慣れてきた目が、彼の眼差しを捉える。咄嗟に胸元を手で覆い背を向ける。左胸にある掌に心臓の鼓動が伝わってきた。分かりやすいほどに速く脈打っているのは、単に体の向きを変えたせいだろうか。
変なものだ。慣れた行為のはずなのに。もはや男に肌を晒すことへの躊躇など失っていたと思っていたのに、この時のわたしは羞恥が確かにあった。怖かったのだ。日常的に弄ばれ汚されたこの身体を見られることが。
背後からセツナの腕が、わたしの前へと回ってくる。わたしの腕に手がそう、と重なる。でも彼はわたしの腕をどかそうとはしなかった。
まるで包み込むような力のなさに、わたしも思わず脱力し腕を降ろす。露になったわたしの乳房はセツナの掌に収まってしまうほど小ぶりだ。アーウィンみたいに大きければ、彼も気分が昂ぶるだろうか。
劣等感は、胸にセツナの指が沈み込んだことで搔き消された。お世辞にも大きいとはいえないから、柔らかさなんてあまり感じられないだろう。セツナの力任せじゃない手つきは程よくわたしの乳房を刺激してくる。
その指が乳首に触れた瞬間、わたしの身体が跳ね上がるように痙攣した。セツナはさらに指で乳首を揉んでくる。質の悪いことに、彼は加減を知っていた。痛みが伴う寸前の力で揉み潰し、わたしは込み上げる快楽に息を荒げる。
片方で乳首を揉んだまま、もう片方の手が腹をなぞるように下って股へと、その先にある恥部に達する。
わたしは両足を固く閉じた。今そこに触れられるには、心の準備が必要だった。だけど胸の時のようにセツナは待ってはくれず、わたしの太腿の間に指を滑り込ませて閉じた割れ目に触れてきた。
ただでさえ敏感になっているから、力が抜けて更に侵入を許してしまう。柔らかく最も感度の高いそこに指が入り、中をまさぐってくる。2本目の指が入ったときには粘っこい音がした。潤って滑りやすくなったのを良いことに、彼の指が激しめにわたしの中を乳首と同時に刺激する。
セツナはきっと、記憶を失う前はかなり経験が豊富だったことだろう。彼は的確にわたしの弱い部分を責めてきて、それでいて手つきに痛みはなかった。
もはやわたしに抗う力はなかった。だらしなく声をあげ、唇の端から涎まで垂らしている。ベッドに仰向けにされるがまま足を広げられ、すっかり濡れた割れ目にセツナは腰を近付けた。
わたしの方から刺激していないのに、大きくそそり勃っていた彼のものがわたしの下腹部に降りてくる。我慢も限界が近いらしく、先端から粘り気のある滴が膨らんでいた。
セツナと視線が交わる。その目に蔑みは全くない。まるでお菓子をねだる幼子みたいなもの欲しそうな眼差しに、わたしは無言で頷いた。彼のものがゆっくりと下腹部から降りて、割れ目の入口に触れる。
熱を帯びた彼が、わたしの身体に入ってくる。ゆっくりと、強張ったわたしの膣内を手探りで広げていくように。
どこか懐かしいとすら思える実感だった。股からせり上がってくる、自分を別のものに作り替えるかのような感覚は以前なら拒んでいたものだが、今この瞬間だけは拒む理由が見つからなかった。
セツナのものが、終わりへと辿り着いたんだなと分かった。その地点に触れた瞬間に、わたしは思わず出た声を必死に押し殺す。セツナは一度わたしの膣内から出ていき、また入ってくる。その間隔を徐々にだが速めていき、わたしたちふたりの身体も激しく揺れ始める。
かつては毎日のように行ってきた作業のはずなのに、この時のわたしにとって行為は明らかな別のものへと変容していた。奥を突かれる度に下腹から頭頂まで突き抜けるような感覚が繰り返され、意識を溶かされていくような錯覚に陥る。
怖かった。とても。
行為によって何かが変わるわけじゃないことは、とうの昔に知った。恐怖なんてものは杞憂で、事が終わってもわたしの身体が亜人族に変わることなんてなかったし、悪魔の紋様を刻まれることもなかった。
いまわたしが感じている恐怖とは――
その答えは理性より、身体が先に分かっていたようだ。無意識にわたしは両腕をセツナの背に回して引き寄せていた。抱き合う、というような情緒はなかった。本能のままに互いを獣のように貪り悦に浸るだけの、至って単純なもの。
顔を近付けられたセツナは粗く息をするわたしの口に自らの唇を押し当てた。口を塞がれたわたしは鼻で呼吸するしかない。それはセツナも同じで、粗い鼻息で互いの頬を撫で、絡め合った舌からは粘っこい音を立てる。
離した舌から唾液を垂らしたまま、セツナがわたしの乳首を舐めて、唇で包み吸ってくる。お返しにわたしも彼の乳首を摘まむと、彼のものがわたしの膣内で更に膨らんだ。
セツナがわたしの両脇に手を差し入れた。幼子のようにひょいと持ち上げられる。上体を起こされたわたしをセツナは強く抱きしめ、まだ繋がっている腰を激しく揺らす。すると、僅かだが跳ねたわたしの身体が重力に従い、寝ていたときよりも強く彼のものが突き上げてくる。
思わず貪っていた唇を離して声をあげてしまった。もう、抑えなんてものは効かなくなっていた。
再び仰向けに寝かされたとき、わたしの頬に生暖かい雫が落ちた。恍惚に浸っていただろうわたしを見下ろすセツナの目元が月光を反射し光っていた。
それは涙だった。彼はわたしを抱きながら泣いていた。果たしてそれが悦びなのか悲しみのせいかは分からないけど、初めて見る彼の顔はわたしにはとても愛おしく感じられて、その顔を手で手繰り寄せてまた口付けをした。
より激しくなる。離れまいと互いの肉体にしがみ付いて、込み上げる熱が身体を溶かしひとつになろうとしているよう。それはもう錯覚と思えなかった。事実としてわたしの意識は殆ど溶解したようなもので、彼以外求めるものがなくなっていたのだから。
膣内から頭の奥へと、それは上り詰めてきた。力強く彼を抱きしめる。溶かしかき回されるような感覚に一抹の恐怖はあるものの、それをもたらしてくれるのがセツナという事実はむしろ恍惚をもたらしてくれた。
そして、絶頂がわたしの全身を駆け巡る。腰の動きが止まった。瞬間、膣内が暖かいものに満たされていく。始めたときのようにゆっくりとセツナは突き入れ、何度かすると残りを絞り出したのか膣内から抜いてしまった。
白い粘液を引いて彼のものが出ていくのを見ながら、わたしは下腹部を撫でて寂しさを覚えていた。以前と同じだ。行為を経たからといって、何かが変わることなんてなかった。
わたしはわたしのまま。目の前のセツナもセツナのままで、わたし達は繋がりはしても完全なひとつへと溶け合うことができなかった。
当然だ。今までだって何度しても相手と溶け合うことなんて無かったのだから。セツナとて例外じゃない。でも、この寂しさがあるということは、わたしは今回の事に何かしらの変化を求めていたのだろう。
分かりやすいほどわたしが寂しそうにしていたのか、それとも自分が寂しかったのか、セツナはわたしを抱き寄せてそう、とまた口付けをした。さっきの獣のような貪りとは違う、とても優しい感触だった。
胸同士が密着し、まだ高鳴っている彼の鼓動を感じられた。もうすっかり出し切った彼のものは勃つことがなく、わたしのあそこも濡れはしない。でも、この鼓動はもうしばらく続きそうだ。
わたしは腕に力を込めて、セツナの硬い胸元にしがみ付いた。そうしている間だけは、この熱を感じ取っていたい。
次の投稿は果たしてあるかな?
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