『アオのハコ』
人の心は分からない、経験で少しずつ理解していくしかない。
それが正しいかは、終わってみるまで分からない。
分からないけど、とにかく進む。間違っていないと信じて。

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思いはアオく咲き乱れ

 人よりも経験豊富な菖蒲だけど、分からない事も多い。片想いだとかプラトニックだとか、そういうのは特に分からない。どうにもまどろっこしいのは苦手だし、面倒でいけない。

 好きになったなら即言えば良いし、言われたなら好きになるための努力をすれば良い。そうすれば話は簡単だ、まず動き出してから決めればそれが一番。そうやって一回付き合ってみて、うまく行かなかったらそれで別れて次を探そう。

 トライアンドエラー、それがいつだって最適手を見出だす唯一の道だから。

 なのにみんな、どうしてああも面倒臭いんだろうか。

 ちーちゃんもいのたも、ひなっちも。もうちょっと効率ってものを考えるべきだ。

 ――だって人生は、有限なんだから。

 

 

 菖蒲は好きって言われたら、よっぽどの事がない限り断らない。だから今夜は、村岡くんと一緒。

 最近マネージャーになったバド部の子で、アタック……じゃなかったスマッシュのフォームもなかなか格好良くサマになっている。

 けど、ねえ。えっちの方は、まだまだかな。最初は初めてだったんだし仕方ないよ頑張ったね、で笑って済ませたけど――ねえ。

「んー……指、ちょっと……イヤかなぁ……っ」

 菖蒲の中を掻き回そうとする指を、ちょっと強めに抑えて制する。人差し指と中指並べてグリグリされると、流石に痛いかも。それに何て言うか、力任せなんだよね。元々菖蒲は濡れやすいから、そうやってグチュグチュするのは楽しいんだろうけどさ。気持ちいいかって聞かれると微妙。

 それに指ばっかりで――あんまり口ではしてくれない、菖蒲にはさせたがるくせに。オトコノコを舌で弄ぶのは好きだけど、一方的にするだけじゃなんか不公平じゃない? そっちからも舐めて欲しいのにさ。

 こりゃ、ちょっとだけ……外れかな。良い子だけど、えっちの相性が合わないとなんか……ねえ。

「あの、……入れて良い、かな?」

 菖蒲が色々考えているのは、村岡くんには伝わっていない。そりゃそうだ、言わないことが分かるわけないもん。

 えっちは下手だけど、菖蒲を好きだと言ってくれたのは嬉しい。それはちゃんと伝わっているよ、菖(・)蒲(・)は(・)菖(・)蒲(・)を(・)好(・)き(・)な(・)人(・)が(・)好(・)き(・)だ(・)か(・)ら(・)。

 だから、菖蒲はこう言ってあげる。

「うん。良いよ、来て」

 お尻を高く突き上げ、菖蒲は手でオンナノコを割り拡げた。オトコノコを誘う、えっちの為だけの姿勢で。

 震えるオトコノコが菖蒲の入口に当たって音を立て、そして――。

「う、ぁ……っ」

 にゅるりと村岡くんが、菖蒲の中に呑み込まれた。

 熱くて硬い塊が、お腹の中を焼いていく。ああ、これこれ。何度しても、誰としても、やっぱりえっちは気持ちいい。

 だけど、でも。村岡くんとのえっちは、そこから広がってくれないのがちょっと寂しい。

 ゆっくりと抽挿しようとはしてくれるけど、毎回長くは持たないから。

「あ、あぁ、出……っ」

 ああ、やっぱり。村岡くんはすぐガクガクと震え、菖蒲の中に精液を注いでしまった。

 部活の練習は熱心なのに、こっちはからっきしなんだよね。まあ、その辺を指摘するとスゴく落ち込ませてしまうから言わないけど。でもたまに、「スマッシュもこれくらい速かったら良いのにねぇ」とか言いそうになったりするんだよね。

 加えて村岡くん、若いのに淡白。一回出しちゃうと、回復までかなりかかってしまう。つまり今夜は多分、これでお仕舞いなわけだ。菖蒲はまだ一度もイケないまま、ね。

 ……これはそろそろ、お別れかな。でもま、ベッドの上でそんな話は野暮ってものだ。

 今夜は一緒に仲良く眠って、明日改めてお(・)話(・)すれば良い。ちゃんと御互いの意思を確認しあってから友達に戻らないと、後で揉めるからね。せっかく好きになってくれた人と、喧嘩なんかしたくない。穏やかに平和に、綺麗にバイバイしよう。

 

 一夜明けて、時刻はもう昼前。菖蒲は一人、街をブラブラしている。村岡くんを嫌いになったわけじゃないからね、と念を押し話を終わらせて別れはしたけど、この後特に予定はない。さてどうしようかなーなんて思って歩いていると、不意に菖蒲は誰かに呼び止められた。

「あ、……守屋先輩。ちょっとお話が、あるんですけど……」

 脳内データベースを検索すること、きっかり1秒。えーと確か、中等部の男子だな。バド部の練習に混ざってるのを見た気がする。高等部と中等部の部活はそれぞれ独立してるけど、夏に引退した中等部3年生が高等部の部活に見習いみたいな感じで参加するのは珍しくない……らしい。いのたもそうだったって聞いてるし。

 だけど、でも。モジモジとしたその仕草は、「部活の先輩」として菖蒲に声をかけた風には見えない。そもそも菖蒲マネージャーだし、先輩は先輩だけど別に上下関係を意識する間柄でも無いような。

「あの、……先輩は、その……。頼んだら、……さ(・)せ(・)て(・)く(・)れ(・)る(・)って聞いて……」

 恥ずかしそうに絞り出すその声に、菖蒲はやっと腑に落ちた。ああ、そうか。そういうこと、か。

 菖蒲は基本、人を拒まない。嫌いな相手じゃなければ、時間が許す限り「お相手」させてもらっている。それも何かの縁だし、そこから付き合い出す事も無くはない。愛で始まる関係もあれば身体で始まる愛もある、ってね。まあ大体一回限りなんだけどさ、こういう時って。

 付き合いたいっていう「好き」とえっちしたいっていう「好き」は別だから、その辺は気にしないけど。

 どっちにしろ、好きって思われるのは嬉しいから構わない。

「じゃーぁ、今から行こうねぇ」

 オドオドと不安そうな彼に笑いかけ、菖蒲は歩き出す。目指す先は、いつものホテルだ。

 

 チェックインするなり服を脱ぎ捨てて肌を晒すと、薄暗い部屋のなかでも分かるほど彼の顔が真っ赤に染まる。初々しい反応だけど、本当に初めてなのかもしれないな。興味はあるけど近くの女子にそういう事を持ちかける勇気がなくて、でもえっちなお店に行けるようなお金もなくて。それで菖蒲の噂を聞いたとか、そんなの良くあるし。菖蒲は人気あるんだよね、嬉しいことに。

「ほら、隠さないのぉ。菖蒲が気持ち良ーくしてあげるからねぇ~」

 まだ恥ずかしいんだろう、足の間を隠そうとする手。それを優しく除けてあげて、さあ――御対面だ。

 そこにあったのは可愛い顔に見あった薄い陰毛と、大きくなってもまだ先端が皮に隠れた恥ずかしがり屋のオトコノコ。まあ、中等部ならこれくらいだよね。

 皮剥いても良いかな、と聞きながら返事を待たずゆっくりと引き下ろしていく。……と。少し降りた所で僅かに抵抗を感じ、小さな声が漏れるのが聞こえてきた。どうやら、普段はこの辺までしか剥けないみたいだ。まあ、良いけどね。途中まで行けるなら真性じゃないから、すぐに直せる。

 皮の隙間に舌を捩じ込み、少しずつヨダレを中へと浸透させてあげる。溜まったカスのせいで皮が固まって、それで痛いんだろう。それを溶かしながら静かに引き下げていけば良い、こういう可愛い系の子は結構な確率でこうだから菖蒲は慣れてる。

 そうやっていくと程無く、ピンク色をした可愛い頭が露になった。こびりついていたカスはまだ取りきれていないけど、それもすぐキレイにしてあげるからね。

「あー……むっ」

 パンパンに張り詰めた新品のオトコノコを、菖蒲は根本までくわえこんだ。青臭くて舌に広がる、オス臭い味。それを味わいながら舌を縦横無尽に這わせていくと、味わいは段々と変わりだす。濃縮されたカスの味は減っていき、逆に苦味の強い液体が溢れてくるのが分かった。まだ射精には至らない、でも感じている証。オトコノコの流す透明な涙、それはとても――美味しい。

 もっともっと、と急かすように吸い上げていったその時。口の中に、濁流が流れ込んだ。

「ん、んー……んぅ……っ」

 粘っこく熱い、生臭くて舌に絡み付く大量の液体。迸る精液が菖蒲の口を充たし、喉を通って胃の府まで一気に駆け抜けていった。

 出すなら出すで、言ってほしいんだけどね。まあ初めてなら仕方ない、菖蒲も菖蒲で何も言ってないし。

 拍動が治まって放精が止まると、漸く菖蒲はオトコノコから口を離す。カスも放たれた精液も全部飲み干して。

「は……ぁ、元気にお射精出来たねぇ。良い子良い子」

 こういう時にあれこれ言うのも、やっぱり野暮。まずはいっぱい誉めて、自信を持たせよう。その方が御互い楽しいし、ね。

 

「ふぅ……あー……ぁっ」

 仰向けでベッドに転がり、股を拡げて一心不乱にオナニーする菖蒲。それを見ながら彼も、夢中でオトコノコをしごいている。息は荒く、動きは激しい。部活より真剣かもしれないね、これは。

 夕べさんざん弄られたし、初めての子に触らせるのはちょっとね。でも準備はしたいから、前戯代わりに相互オナニーというわけだ。菖蒲は男の子がしてるのを見るの、意外と好きだし。美味しそうだなあ、なんて思いながらオナニーするの気持ちいいからね。

 でも、そろそろ先へ進めた方がいいな。菖蒲はともかく、この子がそう長く続けられるとは思えない。さっき一回出してるし、次また出しちゃうと元気が無くなっちゃうかも。

 それは――ちょっと困る、かな。

「ね、……そろそろ、しようか。ここ、分かる?」

 グチャリと濡れた音で、中を見せ付けるようにオンナノコを手で拡げていく。内側を外気に晒すこの感覚は、いつだって興奮する。

 すぐに彼は手を止め、食い入るように菖蒲の中を見つめながら獣のように息を荒げだした。そうだよね、そうなるよね。菖蒲のここは、オトコノコを受け入れる場所。君のそれは、オンナノコを貫く場所。何だかんだ言ったって、それが人間の本質なんだから。

「そう、そのまま進んで……。真っ直ぐ、そのまま……っ」 

 菖蒲の手に支えられ、はち切れそうなオトコノコが菖蒲へとにじりよりそして。

 ずにゅり、とお腹の中へと食い込んだ。

 村岡くんより頼りないサイズではあるけれど、でも精一杯の「好き」が粘膜へと伝わってくるのが分かる。

 この瞬間は、いつだって誰だって気持ちいい。菖蒲を好きだって気持ちが、全力で感じられるから。

「入っ、……た、ね……。これでオトナ、だよ?」 

 それが聞こえているのか、いないのか。どっちにしても返事をする余裕なんか無いだろう、鏡張りの壁に写った光景を見るとそれが分かる。菖蒲の上にのし掛かり不格好に腰を振るその姿は、必死さに溢れとても可愛い。初めての男の子って、こういう所が良いんだよね。正直物足りないは物足りないけど、それも含めて情緒ってものだと思う。あまり深くまでは届かないけど、頑張って菖蒲を気持ち良くしようとしてくれている。それ自体が嬉しくて、愛しくて。

 ――ああ、良いなあ。

 感極まった、その瞬間。お腹の浅い部分で、オトコノコが激しく震えるのが感じられた。勢い良く放たれる精液が粘膜を焼いていく、その熱さは何物にも変えがたい。……まあ、もうちょっと頑張って欲しいなーとか思いはするけれど、さ。だけど。

「あー……出てるねぇ……。元気いっぱいだねぇ……」

 きゅっと抱き締めて頭を撫でながら、菖蒲はとりあえず誉めてあげる。言いたい事はあるけれど、最初であれこれ言われるとえっちが嫌いになっちゃうからね。

 初めてで多くを求めちゃイケないから、ここは黙っておこう。

 

 それで休憩をいれつつ三回くらいしてから、ベッドの上で色々事情を聞くことになった。どうやらクラスに好きな子がいるけど自分に自信がないとかで告白出来ず、どうにかして自信をつけたくて菖蒲の所へ来たんだとか。うんうん、男の子だねぇ。

 たっぷりえっちして心もオトナになれたみたいで、ラブホを出る時には最初のオドオドした様子が嘘みたいに晴れやかな顔になっていた。またね、と言って別れたけれど、きっともうこういう形では会わないんだろうな。結局名前も聞いてないし。体育館では会えるだろうけど、別にあれこれと関係が深まることは無いと思う。

 まあ、良いか。いつもの事だ。いつだって色んな人が菖蒲を好きになってくれるし、菖蒲もその人を好きになるから。

 でも最近たまに、思うことがある。一人だけをずっと好きでいるって、一人にだけずっと愛されるって、どんな気持ちなのかと。

 お姉と健吾はそんな感じだけど、でもまだえっちどころかキスもしてないんだよね。せっかく好き同士なのに。まあ、お姉は健吾のジャージ嗅いでえっちぃ顔してたりするから、興味がないわけじゃないんだろう。ただ躊躇ってるだけで。

 最近の菖蒲は遊佐くんが好きだけど、でも他の男の子とも遊ぶし告白されたら付き合う。それが菖蒲の「普通」だから。

 もし、もしも遊佐くんも菖蒲が好きだったら。何もかも理想通りだったら。菖蒲は遊佐くんだけを、一生好きでいられるんだろうか。

 ……どうだろうなあ、うーん。何処かで飽きたり飽きられたりしそう。

 今までも、そうだったわけだしなぁ。

 もう記憶は朧気だけど、最初の彼氏には菖蒲から告白した。スゴく悩んで、でも勇気を出して。案ずるより産むが易しとは言うけど、実際そんなもんだったな。それで付き合い出して、キスしてえっちして。

 楽しかったけど、でも――モヤモヤする事も増えていった。彼氏が出来てからどういうわけかモテるようになった菖蒲は、いろんな人から告白されるようになってしまった。好きになってくれる人は一杯いるのに、それを無視するのは辛い。だけど付き合っている人がいるのに、そんなのは良くないと思った、……思いはしたんだけど。

「別に断らなくても良いんじゃない?」

 俺もそうするから、と彼はそう言って笑った。菖蒲を独り占めする気はないし、自分も独り占めされたくない。御互い勝手にやっていく方が気楽で良い、そんな風に。都合の良い時に逢って、遊んでえっちして、それだけの関係で良いんだと。

 そういうものなんだろうな、と考えもせず菖蒲は彼の真似をしてヘラヘラ笑っていた。

 それが良いのか悪いのか、今になっても分からない。いつの間にか彼と逢わない期間がどんどん長くなり、もう顔も忘れてしまった。もしかしたら連絡先も、既に使えなくなっているかもしれない。

 忘れていないのは、たった一つ。誰かが向けてくれる「好き」を拒まない、好きになってくれる人を好きになろうとする姿勢。

 そうやって色んな恋をしていけば、きっと幸せになれるから。多分。

 

 

 いのたがひなっちを振って、しかもちーちゃんに告白しようとしている。そう知ったのは、つい先日。

 合宿が終わってからひなっちの様子がおかしいとは思っていたけど、まさかそんな事になっていたなんて。

 だけどでも、菖蒲はどうすれば良いんだろうな。ひなっちを応援するとは言ったけど、面と向かって振られたのをリカバリーする術なんか思い付かないしそれに。……それに、いのたが真剣ならそっちも応援してあげたい。ひなっち可愛いから次の男なんかすぐ見つかるだろうけど、いのたはその辺無理っぽいし。

 問題はちーちゃんに好きな人がいるって事なんだよねぇ、うん。それも結構ハイスペックぽいのが。

 そこを押していくとなると、よっぽど自信付けて一気呵成に攻めこませないと難しいだろうな。そうなるとなあ、やっぱりあの子みたいに童貞切って自信つけさせないといけないか。

 さて、忙しくなりそうだ。余計なことを考える暇なんか、無さそうだな。

 それで良い、それが良い。それが菖蒲の――幸福なんだ。そう思って進もう。

 迷って立ち止まるのは、怖いからね。




多分村岡くんは原作ではもう出番無いだろうなー、とは思います。

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