西の国での依頼は順調に終わっていた。
依頼主は豊かの街に住まう貴族。西の国の貴族にしては魔法使いに偏見が少なく、依頼の御礼に、と夜の晩餐会に招待してくれた。それまでの時間、晶はラスティカに街を案内してもらうことになった。
「賢者様のエスコート役を仰せつかるなんて光栄です」
多くの貴族が集まる晩餐会と聞いて、クロエは衣装作りに篭ってしまった。新しく作るまでの時間はないから、手持ちの衣装のアレンジをしてくれるという。シャイロックはワインの買い付けに、ムルもそのおともについて行ってしまった。
晶はラスティカに声をかけた。「よければ、街を案内してもらえませんか」と頼めば、ラスティカは、「はい、喜んで」と二つ返事で晶の手を取ってくれた。優雅で柔らかな彼の仕草は、男の晶でも時折ドキドキしてしまうほどに魅力的だ。
「今日はどちらへ御案内いたしましょう。どきどきする場所? はらはらする場所? それとも、ぞくぞくする場所がよろしいですか?」
「なんだか怖そうな場所のラインナップですね。前にムルに『どきどきする場所』に連れて行ってもらった時は、ナイフを持った人に追いかけられてしまって」
西の魔法使いは面白いものが大好きで、命の危険をともなう『どきどき』でさえ、愉しんでしまう。
「そういう幻影から逃げる迷路のようなお店でした」
「ああ! 聞いたことがあります。いかにも、彼が好きそうだ。おや、賢者様はあまり得意ではないのですね」
元の世界でもお化け屋敷に積極的に入ろうとしたことはない。ムルと訪れたどきどきする場所を思い出して青褪める賢者に、ラスティカは微笑んだ。
「では、ほんの少し趣向を変えた『どきどきする場所』へ御案内いたしましょう」
「あの、ラスティカ。この、服は……っ」
「ああ、なんて素敵な姿だろう。賢者様に似合うと思っていました」
ラスティカに連れて来られたのは魔法使い向けの店だった。思い思いの衣装に着替えて、束の間の変身を楽しむ場所だとラスティカから聞いていた。
着替える衣装をラスティカに任せ、案内された個室に二人で入ると、その瞬間に晶の衣装は用意されたものに変わった。
フリルのついたシャツに、丈の短い黒のワンピース。ワンピースの肩口は膨らんでいて、袖は短くなっている。その代わりのように肘まである黒い手袋が嵌められていて、白いエプロンとコントラストを作っていた。エプロンの上には更に、ボンテージに似たコルセットが着けられ、前面で交差したリボンにきつく締められていた。ヘッドドレスまで頭についている。
まるで、メイド服だ。
普段、魔法舎の手伝いをしてくれているカナリアが着ているものとは違う。ワンピースの下は多重構造の柔らかなスカートで膨らんでいるところや、丈が短いところなど、実際に家事をするメイドの服ではない事だけは分かる。
「(これは……まるで、イメクラ……!)」
「恥じらう姿もとても愛らしい。さあ、こちらに」
ラスティカが指を鳴らすと、豪奢な内装の机の上にティーセットが現れる。ラスティカは二人がけの長椅子にゆったりと腰かけ、晶を招いた。
大きめの長椅子だった。ラスティカの横に座る余裕もある。けれど、ラスティカは長椅子の中ほどに腰かけていて、座る隙間を作っている風ではない。手を伸ばされた晶は戸惑う。晶はこの衣装で、ラスティカは部屋と同様に貴族のような豪奢な衣装になっている。ここで招かれるとすれば、アレだ。ラスティカの膝と顔を交互に見て、不安の混じった視線を送るとラスティカがくすりと微笑んだ。
「小鳥のように可愛いらしい賢者様、ここは魔法使いが愛玩する相手を伴って訪れる店。どきどきして張り裂けそうになるほど、胸の高鳴る時間をあなたに与えましょう」
ラスティカは椅子から立ち上がり、賢者の手を取って、恭しくその甲に口付けた。
胸の高鳴る時間、って。
それよりも、愛玩って。
にこりと微笑むラスティカに、ここで聞かなければ流されてしまいそうな危機感を覚えて、晶は先に意味を問おうとした。
「愛玩、って、――……」
けれど、微笑んだラスティカの顔が近くにあると気付いた時には、唇に触れるキスを与えられていた。魔法使いの男の唇は、触れてすぐに離れ、代わりのように細長くたおやかな指が唇に当てられて、言葉を封じられる。
「あ……、…………」
言葉を封じた指の先には、優しい微笑みがあった。
問わずにいる事を楽しめと言われているようにも思う。けれど、ラスティカの笑顔には、そんな含みもなさそうで、晶だけが後ろめたく感じているようにも思えてしまう。
賢者の晶が戸惑ううちに、ラスティカは晶の腰を引き、長椅子に座ってその膝の上にメイド服の晶を横抱きに乗せた。
「ああ、やはり、この方が賢者様のお顔がよく見えます」
膝の上に抱き上げられると、自然、二人の顔も近づいた。
貴公子然としたラスティカの、その整った顔に目が奪われ、晶の視界はラスティカでいっぱいになってしまう。柔らかな榛色の髪、色素の薄い肌、すっきりして見えて彫りの深い鼻梁。瞳は吸い込まれるような深い海の色をしていて、そこに晶の顔を映していた。
ラスティカもまた、こちらを見ているのだと思うとどこか恥ずかしくなって、晶はそっと目を逸らす。ラスティカはくすりと笑って、賢者を呼んだ。
「賢者様」
ラスティカは、視線を戻してとも、何も言わなかった。ただ、賢者と呼んで、顎に指を添えて持ち上げ、顎の端にキスをする。
また、キスだ。今度は唇ではなかったけれど。
優しく触れるそれを無碍に突き放すこともできず、どうしたら、と悩んでいるうちに、次は頬へと唇を寄せられる。ちらりと見れば、目線が合って、ラスティカの微笑みに目を奪われる。
目蓋が閉じたと思えば、次に動いた唇が触れたのは晶の唇で、触れると同時に少し吸われて、戸惑ってしまう。
「ダメです、ラスティカ」
晶は向き合う胸と胸の間に手を差し込み、弱くラスティカの胸を押し戻した。
「ダメですか?」
しょんぼりと眉尻を落とす色男に、晶は、うっ、と言葉を詰まらせる。ラスティカのこの顔相手にはどうしても弱くなる。賢者は罪悪感をおして、男に訴えた。
「……ラスティカには花嫁さんもいるのに、俺がこんなことをしていいのかって」
行為を続けるにしろ、罪悪感が晶のうちにあった。
けれど、ラスティカはその優しさをもって首を横に振る。
「賢者様のためなら構いません。ここではあなたを喜ばせる賢者の魔法使いとして振る舞いましょう」
ラスティカの華やかで優しい微笑みは、すべてを許容するようなおおらかさがあった。晶がダメと思っていることも、平気なことのように思えてしまう。
「どきどきなさっているでしょう?」
「それは、なっていますけど……」
ラスティカは自身の胸にあてられた晶の手を取ってゆっくりと指先に触れ、指を弄ぶようにして手放して、それから、晶の胸に手のひらを押しあてた。
平たい胸の上に押しあられた手に、晶はその下で繰り返す鼓動の音を意識してしまう。普段の鼓動の早さなんて意識したことはないけれど、今のそれはきっといつもより早い。
ラスティカはどきどきする場所に案内してくれると言った。だから、ここに連れて来られた。ラスティカは何をする場所か、分かって晶をここに連れて来ている。
ラスティカの意識では、これは浮気のうちに入らないのだろう。賢者の魔法使いとして、賢者を喜ばせるために、晶をどきどきさせているだけなのだから。
魔法使いは心で魔法を使う。約束を破ると魔法が使えなくなってしまう。魔法使いにとって、婚姻の時の愛の誓いも約束と同等のものだ。
ここで、こんな事をしては浮気になると説得するのは、逆に悪手かもしれなかった。ラスティカが浮気を自覚してしまったら、彼は魔力を失ってしまう。
晶が考えるために目を伏せると、誘われたと思ったらしいラスティカが口付けを落とす。びっくりして視線を向けると、ラスティカの方も驚いた顔をして、向き合う顔にくすりと笑った。おや、と、目を見開いてから、微笑みに頬を緩ませ目尻を下げるまでの変わりようが柔らかく、晶はその様子に見惚れていた。ややあってから恥ずかしさに気付いて目線を逸らす。頬が熱く感じた。
胸に当てられていた手が持ち上がって、頬に添えられる。大切な宝石にでも触れるようにそっと添えられ手に晶は戸惑い、熱が伝わらなければいいと願っていた。
ラスティカは優しく賢者を呼んで、恭しく唇に唇で触れる。先程は唇を吸った口は、今度は舌を出して晶の閉じた唇を舐めた。晶は口を開けなかった。けれども、向きを変え、ちゅ、ちゅ、と柔らかく何度も口付けを繰り返され、触れる度に舌が舐めていくのに絆されて、何度目かには口を薄く開いていた。
「ん……ぅ、」
舌が入り込んで、晶の口の中に触れる。
ラスティカの舌は晶の口に入り込んでも、強引に貪ることはしなかった。挨拶をする紳士のように唇の裏側に触れて、一度、離れ、再びの口付けで晶の口がゆるく口を開いた時に晶の舌に触れた。濡れた舌と舌が絡んで、軽く吸われて、どきどきしている間にまた離れてしまう。
元の世界にいた頃から恋人というものを持ったことのない晶にとって、舌まで入るキスは初めての経験だった。唇に触れるキスだって、ほとんど経験がない。
ラスティカの与えるキスは触れた舌の先からとろけてしまいそうになる。どきどき、させてもらう以上に、熱が上がってしまう。
「あ――……、ん、ン、は……ぁッ!」
息が切れて、晶はラスティカの肩に手を掛ける。
紳士は呼吸を忘れた晶が、息を整えるまで離れて待ってくれた。背を支えていた手が、落ち着けるように背をさすってくれる。
「ああ、大丈夫。ゆっくりと息をして」
だんだんと落ち着いてきた頃に、ごめんなさい、とラスティカを見れば、安心させるように笑って、首を伸ばして額にキスが与えられた。頬から降りていた手は、宥めるように晶の胸に添えられ、晶の意識の外で更に下へと降りていく。
腰のコルセットを通り過ぎて、スカートに覆われた足へ。
その股間へ。
「……!」
するりと触れられて、はじめて、晶は自分がそこを反応させてしまっていたことに気付いた。ラスティカは優しく、スカートに隠れた小さな盛り上がりを撫でる。
「賢者様のここも気持ち良くなっておいでだ」
「あ、……すみません! 魔法舎だと、どうしても、その、」
ヌきにくくて。
知らず、溜まっていたのかもしれない。元々、そんなに性欲を覚える方ではなくて、あまり、不便のように感じたことはなかった。だが、賢者として暮らす中で、そういった性欲を解消することを後ろめたく思っていたのも確かだ。
言い訳のように口にして、何を話しているのだろう、と、急に恥ずかしくなる。ラスティカが流してくれたら、と一縷の思いで口を噤むも、晶の思いに反して、ラスティカは晶の言葉を重く受け止めてしまった。
「それはいけない。僕でよければ、お手伝いしましょう」
「えっ、あの、」
手伝うって、どんな。
混乱して、問いかけそうになる。問いかければ、口に出して答えてくれるに違いない。僕の手であなたの陰茎を擦りましょう。そんなことを口に出させてはいけない。慌てて、言葉を飲み込む。
「自分で、やります」
晶は先に宣言して、メイド服のスカートを捲った。
多重構造のスカートは黒のワンピースの下に何重かの柔らかなレースのスカートが仕込まれていた。慣れないそれらをまとめて捲るにも苦労する。無理にまとめて捲ったスカートはお腹の上で膨らんだ塊になって、晶の手が股間にたどり着くのに邪魔をする。なかなか掴めず泣きそうになる晶の手に、ラスティカの手が重なった。
「賢者様はそのまま、裾を持ち上げていてください」
ラスティカの手が、裾を持ち上げられた晶のスカートの中にたやすく入り込む。横抱きにされた身体だ。ラスティカの手の方が、スカートの中のそれに触れるのはたやすかった。
晶からでは見れない、下着に指をかけられ、膨らみ押さえつけられていたそれが自由になる感覚がある。白いレースのショーツがするりと足から抜かれて長椅子の下に落とされた。
「ふふ、まるで幾重もの花びらに包まれて隠されためしべのようだ。蜜蜂は花びらの奥に隠されためしべの蜜壺から蜜を集めるのだと聞いたことがあります」
ラスティカは晶のそれに触れることすら喜ぶように話す。
いいのかな、と理性が泣きそうに訴えてくるが、この状況ではどうしようもない。
「これから、僕の指先は蜜蜂になりましょう」
「あ、あ、直接、触らない、で、ください。その……、せめて、一枚、被せて……」
「そうですか? 賢者様が仰るのなら」
なけなしの訴えを優しい男は受け入れてくれた。掴み損ねていた一枚で包んで、ラスティカは晶に触れてくれた。布越しは変わりないが、ショーツに抑え込まれているときよりは、触れる感覚が心地よい。何より、ラスティカの指は優しかった。彼がチェンバロに触れるように丁寧に晶のそれに指をかけ、柔らかに擦ってくれる。自身での自慰行為も慣れていない晶には、優しく触れられることが心地良い。ゆっくりだけど、吐き出せそう、と夢見心地に思った。
晶をゆるく擦りながら、ラスティカが歌うように吐息をこぼして、晶の頬に口付けをする。くすぐったくありながら、どこかぞくりと背筋を駆け上るものを感じて、晶は身を竦めた。なんだろう、と考えている晶にラスティカの追撃の口付けを受け、めしべの芯をするりとするラスティカの指が蜜を垂らす先端へと滑っていくのを感じて、再び、ぞくりとした波を受けた。
「(もしかして、こすられながら、キスされると、ぞわぞわする?)」
これは、こわい、ぞわぞわだ。
本能が告げている。
理性はあまりそれを受けない方がいいと判断した。
「ラスティカ、……その、触れられている時に、キスされると……、」
「僕の蜜で、賢者様がめしべを育てたのなら、もっと与えてみようかと。失礼。本当は、あなたとのキスを楽しみたいのです」
キスで精液が上がってきたなら、もっとキスされることで射精は早くなるかもしれない。キスで感じている『ぞわぞわ』はどう考えても性感だ。多分、キスされた方が早く済むのは正しい。
「(早く、終わらせた方がいいのかな……)」
ゆるく、ずっと、触られている、方が。
きもち、いい、のに。
「(……? 何を、考えて――……)」
晶は湧き上がった思いをかき消すように、小さく首を横に振る。そして、それを気取られないようにラスティカの胸に縋って、唇を差し出した。
「あ……、そう、ですね。早く終わった方がいいと思うので……、キスをしてくれますか」
ラスティカは一瞬、悲しそうな顔をしたけれど、唇にキスを与えてくれた。誘うように開いた唇に舌が入り込んで、晶の舌を絡め取る。ちゅくちゅくと舌先を遊ばれている間に、股間のそれの先端をこりこりと指先で擦られると、あまりにぞくぞくとして、先走りがどぷりと滲み出た。包むスカートが晶の先走りを受け止める。ラスティカは濡れた布に気付いているだろうか。罪悪感と背徳感がない混ぜになり、晶の舌にラスティカの味を覚え込ませていった。
「……ンッ、あ……ぅ。イきそう、です」
甘やかな悲鳴を上げた晶にラスティカは、はい、と頷く。ラスティカの指は先端から離れて、めしべの芯を手のひらで包み、大きく扱き上げた。陰嚢に溜まっていた精液が迫り上がるのを感じて、晶はラスティカの胸に縋った。
「……っ、もう、でる、のでっ」
離してください、と。
頼み込む声に、ラスティカは手を止め、晶のめしべの先端を指で押さえ込む。驚いたのは晶だった。先端の鈴口を人差し指で堰き止められ、更にカリに親指と中指を回されて絞められてしまった。
これでは、出ない。
「ど、どうして……」
慌てて手を伸ばす賢者を宥めるように、ラスティカは賢者の耳に口を寄せた。落ち着かせるためか、耳たぶを唇で食んで、息を吹き込む。
「賢者様。ここの衣装には……」
「ひあっ」
晶はたまらず甘い悲鳴を上げた。
「この時間を楽しむための仕掛けがあるんです。あなたのお腹を締め付けているコルセットのリボンは、あなたの理性の紐として編み込まれています」
鈴口を押さえつけていた指をゆっくりと離される。射精の波は過ぎていて、解放されたところで出口をから外に出る勢いを掴めずに、そり立つめしべの中で劣情は渦巻く。苦しいけれど、晶はラスティカの言葉を聞かなければならなかった。
「……じゃあ、このリボンが解けたら……」
「交差のひとつひとつ、ゆるめる度に賢者様の理性もゆるんでいくでしょう」
めしべから離れた指が、コルセットを絞めるリボンに触れる。
「これが結ばれている限り、賢者様には理性が残る。今、この時間だけは賢者様に快楽を貪ってほしいのです」
ラスティカの指が、一番下でちょうちょ結びにされているリボンの端を拾い上げる。ラスティカが何をしようとしているのか、晶はすぐに察した。
「これを解こうと思うのですが、よろしいですか?」
晶は震えるように首を横に振った。
それを紐解いてしまったら、どうなるか、分からない恐ろしさがあった。さっき、ずっとラスティカの膝の上で、いけないところをいじられたいと思った自分がいた。そんな自分を否定できなくなってしまうような、そんな恐ろしさがあった。
「大丈夫です。では、ひとつゆるめるだけにしましょう」
理性はちゃんと残ります。
告げて、ラスティカがリボンの端を引く。
「待っ……、――……?」
ちょうちょ結びが解けて、股間に近い一番下の交差がゆるめられる。
その瞬間は感じた恐怖は、しかし、ゆるめられた後でも何も変わらないように思える思考に薄れていった。ラスティカの膝の上でゆるく扱かれるだけの時間をダメだと思う理性はまだある。
「……そんなに、変わらない?」
「ちゃんと、理性が残っているでしょう?」
ラスティカがにっこりと微笑む。
その笑顔に晶は安心した。
けれど、賢者は気付いていなかった。リボンをゆるめてはダメだと思っていた理性が、既にゆるんでしまっていることに。
ラスティカは微笑んで、晶の耳元に口付けた。
晶はくすぐったさに身を竦ませて、はふ、と口を開く。舌を絡めるキスをねだる時と同じ開け方をしてしまい、慌てて閉じれば、耳たぶを舐めれて、鼻から甘い吐息が漏れた。
「(俺、……さっきより、甘えた声出してる)」
紐が解かれてからだ。
ラスティカは晶のくすぐったそうな声を楽しむように、耳たぶを舐めては食んでを繰り返している。それはそれで、気持ちいいのだけど。
刺激されるたびに下半身が疼いて、たまらない。
甘える声がゆるんでしまっているのだから、と、晶を膝の上に抱く男にねだってしまう。
「その、……こすって、くれませんか」
「ええ、もちろん」
ラスティカは楽しげに答えて、晶の太腿に手を添わせた。するりと入り込んでいく手が晶を握る。二本の指で挟まれ、するりと扱かれるとぞくぞくとした波が晶の腰を揺らした。
吐息を漏らして、晶はラスティカの服を掴む。
ラスティカは微笑んで晶の頬にキスをして、再び、根本から強めに擦り上げた。
「アッ、ぁ、あ、……イっちゃ、……――ッ」
限界まで導かれて、あと、もう、ひと刺激、こすって欲しくて、吐息を震わせたところに、耳たぶを甘噛みされた。
やわらかな痛みが刺激となって、晶は射精した。
びゅく、と飛び出た白濁が薄布の裏地を汚す。
「とても素敵です、賢者様。僕の手で高みに昇る賢者様を特等席で見ることができました」
急速にやってくる恥ずかしさは、いわゆる賢者モードというものなのか。褒めるラスティカに気恥ずかしさを感じながらも、スカートの下地、一枚を残した己の理性によくやったとねぎらいを送る。びくびくと震える晶の雄は、久しぶりの射精が収まらず、まだわずかな劣情を漏らして跳ねていたからだ。触れているラスティカには分かるだろうけど、視覚的に見えないことに感謝した。
「賢者様に祝福のキスを」
贈らせてください、と告げるラスティカに頷く。
当然のように唇へと重なったキスは舌同士を絡める深いものになった。
「ぁ、ぅ、……――んんッ」
舌を吸われて、じゅる、と滲んだ唾液をかき混ぜられる。ラスティカのその舌の甘さにとろけている間に、晶のそれに添えられたままだった手がゆるゆると動き出し、尿道に残った白濁を吐き出させるようにゆっくりと布越しのそれを扱きだす。
「あ、……ぁっ」
ぴゅく、ぴゅく、と跳ねていた残精が、ラスティカの指によって、とろりと導かれていく。あまりの気持ちよさに晶は目を剥いた。
ラスティカが気付いて、目線をくれる。晶は浮かんだ涙を手の甲で拭って、大丈夫です、と告げた。
「しゃ、射精、しながらのキスが、きもち良くて」
「でしたら、もう少し楽しみましょう」
良かった、とラスティカが安堵の吐息を漏らす。
心配させてしまった。申し訳なさが募って、晶はラスティカの手を止められずにいた。尿道に最後のひと雫までもう出てしまって、晶のそれは硬さを失っている。
それでも、ラスティカのキスは気持ちいい。
昂ぶりは落ち着いてきて、ぞくぞくするような波は来ないけれど、その分、与えられる口付けに愛しさが増す。晶が、一旦、落ち着いているのはラスティカにも分かっているようで、キスの雨を顔中に降らした後に、ラスティカは晶に少し頭を伏せるように促した。
「失礼、」
晶の背に回っていた手が、ワンピースの留め具に伸びて、そのホックを外していく。晶が伏せた肩を戻すと、ワンピースの襟ぐりが弛んでいった。もともと広い襟ぐりで、コルセットまではほとんど下のフリルシャツが見えている。エプロンも胸周りは羽のようなフリルの肩紐が脇から肩にのびているくらいだ。本来、女の子が着るもので、平べったい晶の胸でなければ、膨らみが強調されるものだっただろう。
残念ながら、晶の胸は平たいのだが、そんなことを気にすることもなさそうに、ラスティカはフリルのシャツのボタンを上からひとつひとつ外していき、けれど、はだけさせないまま、服の上に唇を落とした。
唾液をシャツに滲ませ、濡れたそこに舌を這わせる。
「(あ、乳首、……っ)」
エプロンの肩紐を避けて、ワンピースの下に隠れていたそこをじゅるりと吸う。男だから、そんなところに感じるはずがないのに、そこを舐められている羞恥心が、ぞわぞわとした何かを引き出していく。
「(おちんちんと、いっしょの、触り方……!)」
股間に触れてもらう時に、せめて一枚被せて、と願ったのは晶だった。今、シャツ越しに舐められている乳首も同じ触れ方をされている。
どくん、と何かが高鳴って、晶は下半身に再びの熱を感じた。
「(また、勃っちゃう……!)」
「……アッ、ま、また、また勃っちゃ、……ッ」
考えがすぐに口から出てしまっている。
聞き咎めたラスティカが肩ごと頭を持ち上げ、晶を見つめて問う。
「賢者様はここを弄られるのがお好きですか?」
「そんな、ことは……、っ」
弄られる晶の様子を見定めるように、ラスティカは晶を見下ろしたまま、濡れたシャツ越しの乳首に手を添わせて、ごく小さい突起を指の腹で転がした。布越しの感覚は、鮮明でないのに擽られるような感覚がして、晶の吐息に熱を与えていく。
けれど、乳首に触れられて、むずむずとするのは。
股間を触れられている気分になるからだ。
「ちくびを、触られてると、……あそこを触られている気分になって、……っ」
「あそこ?」
「あ……、ええと、その……『めしべ』、に」
口に出すと、晶の欲望が明確な像を結ぶ。
「また、さわって、欲しくなって。むずむず、して……」
「おや、すみません。祝福を与えていたつもりが、賢者様を焦らしていたのですね」
晶の頬は羞恥に赤く染まる。
焦らされて、いた。いや、勝手に焦れていたのは晶の方だ。乳首を舐められて、指先で触れられて、股間の性器に触れられたくなるなんて。
ぎゅっと閉じた目の端に涙を滲ませた晶の浅ましさを赦すようにラスティカの唇が晶の目尻に触れる。それから、ラスティカは肩ごと自身の頭を持ち上げて、震える晶を見下ろして、くすりと微笑んだ。
たくし上げるようにして晶が掴み、吐精を導かれる中でぐちゃぐちゃにしたメイド服を、見下ろされる視線が恥ずかしい。恥ずかしいはずなのに、晶はスカートの下で反応する『めしべ』に気付いていた。胸に添えていた手が下ろされ、スカートの中へ潜り込んでいく。これから触れられるのだ。
再び触れた内側の薄布は、一旦、手を放してから冷えて、ごわごわと固まっていた。
「おや、これでは」
また、それで包むには、少し感触が悪い。
散々、汚したのは晶だというのに、汚れたそれで包んで欲しくなくて、晶はどうしよう、と途方に暮れた目をラスティカに向けていた。
ラスティカは晶を安心させるように微笑んだ。
「直接、賢者様に触れる許可を」
直接。
ラスティカの指先が、直接、触れる。
花嫁を持つ人に、直接、性器を触れられる。それはいけない。でも、行為は、もう始まっている。理性の紐はもうゆるんでしまっている。
晶はごくりと唾を飲み込んだ。
触れられるだけ。指にシゴいてもらうだけ。
布越しに弄られていて、もう、一度は射精を導かれている。
「はい。直接、さわって……くだ、さい」
晶は欲情に勝てず、ラスティカに願った。
そんな晶にラスティカが応じる。
「はい、賢者様」
ごわごわに固まった布を押し退けて、剥き出しになった晶のそれをラスティカの指が触れる。ラスティカの指先は絹のような柔らかさがあった。けれど、けして布の感触ではない、肌同士の吸い付きがあって、晶の欲情と指先の熱が触れ合って溶け合う温度があった。布越しのように包まれる感覚でなく、指のしっかりとした感触があって、晶はラスティカに触れられているのだという感覚を強くおぼえずにいられなかった。
「あ……、んん……」
ラスティカの指は布越しに触れていた時と同じように柔らかな触れ方をしてくれた。ゆっくりとした曲を弦楽器で奏でるように、するり、するりと触れて、もどかしくもラスティカのペースで晶を導く。
まるで、ラスティカに奏でられる楽器にでもなった気分だった。とろけそうな気分でゆったりと、時折、込み上げる射精感を拾って甘い声を上げる。
「賢者様」
名を呼ばれ、晶はラスティカを見る。
微笑みと共に蜜が口から与えられ、晶のめしべがぶるりと震えた。めしべを奏でるラスティカの指がきゅうっと一気に根元から搾り上げて、カリ首を締め付けた。
さっきよりも溜まるのが早い。
「――あ、あ、……射精したい、だしたい、ですッ」
一度、射精したからか。自分の手でやった時はこんなに早くしたくなったことはない。晶自身でやった時はだいたいなんとか吐精した一度目だけでだいぶ疲れてしまって、二度目に挑んだことすらなかった。
晶はラスティカを見る。
ラスティカに触れられているから。
こんなにも。
「よほど、溜まっていらしたようだ」
晶の送った情欲の視線すら、爽やかに受け止めて、ラスティカは微笑む。晶はねだるように腕を回してラスティカの袖を引いた。
ラスティカは晶の願いを跳ね除けない。
重なる唇に晶は安心を覚えて、ラスティカの手の中で再び果てた。
「――……あ、アッ」
二度目の射精の後も甘やかなキスが続いた。一度目よりも深まる口付けに、晶はラスティカの奥にあるものを薄っすらと感じ取っていた。
「ラスティカ、は」
だから、落ち着いた後に聞いてみた。
「その、……俺ばっかり、きもち良い思いをしているので、」
ラスティカが気持ち良くしてくれたのだから、ラスティカにも気持ち良くなって欲しいと思う。晶が着ているのはメイド服で、それがまた、晶だけが気持ちよくなっていいものではないと晶に思わせた。
襟口を開かれ、リボンも緩められ、スカートもくしゃくしゃになったメイド服で、晶は上目遣いに問う。遠回しな言葉だったけれど、ラスティカは察してくれたようで、言葉をくれる。
「……賢者様が触ってくださる?」
「その……、ラスティカが、良ければ……」
晶がそれを口にすると、ラスティカは花がほころぶように微笑んだ。
うっとりと笑みを浮かべた蒼の瞳に、晶は欲情の色を見た。
まずは膝の上から退かなければ、と立ち上がり、晶はくしゃくしゃになっていたメイド服の裾を軽く叩いて直し、それから、床に腰を落として、長椅子に座るラスティカの膝の間に陣取った。
軽く直した裾は床に広がったが、上半身は乳首をいじられた時のままに着崩れている。上から見下ろせば、ボタンを外したシャツの隙間から素肌が見れる。この崩れた具合が、どれだけラスティカを喜ばせるかは分からないけれど。
期待の目で見上げれば、ラスティカは晶に微笑んで、まず、貴族服の上着を脱いだ。脱いだ上着は魔法の力でふわふわと浮いて、衣紋掛けに収まっていく。晶の目は退場していく上着を追ったが、それが定位置を見つける前にラスティカの股間に視線を戻された。ラスティカの手がベルトを緩ませ始めたからだ。
くつろがせた下衣からそれが取り出されて、晶の前に置かれる。目の前のラスティカのそれに、息を飲み、こっそりと晶はコルセットの理性の紐をひとつ、ゆるませた。
ラスティカを喜ばせたかった。
己のそれとは、やや大きさの異なるそれに晶は怯んだ。けれど、怯んでいたら、ラスティカを気持ち良くはさせられない。最初の交差をゆるませられたとはいえ、理性の紐の交差はまだ半分以上ある。ふたつめくらいなら大丈夫。自身のものでない男性のそれに触れる理性をゆるませるだけだ。
理性の紐をゆるませ、晶は目の前のそれに顔を近づけた。両手で包み込むように触れて、匂いに気付いて、クン、と鼻を鳴らす。ラスティカがまとう上品な香りに混じって薫る、雄の匂いに晶はごくりと唾を飲み込んだ。
ラスティカでも、雄の匂いはするのだ。
自分のものとは違うが、そこの匂いだ分かる匂い。汗のにおいがこもったような、少しだけすえた匂いがラスティカの纏う香りに混じって、ひどく上品で、ひどく劣情を掻き立てられるものになる。
じっとりとしてはいるが、濡れていないそこを無理に擦られるのはラスティカも痛いだろう。晶はふと、ラスティカがまず晶の乳首に唾液を落としたことを思い出した。
そして、ラスティカのそこの匂いに、晶の口には『蜜』が溜まっていた。
「今から、俺の舌は蜜蜂になります」
ラスティカの指が蜜蜂になったように、晶の舌が蜜蜂になればいいのだ。ゆるんだ理性はラスティカの雄に舌を這わすことも是とした。
舌の上に溜めた『蜜』を亀頭に垂らし、そこから広げるように晶は舌を這わせていった。丁寧に筋を舐め、支えるように持った竿を指でゆっくりと擦る。鼻先に近づくとラスティカの匂いが強く感じられた。晶は舐める合間に匂いを強く感じるように鼻先を擦りつけ、腹の下に渦巻くような欲情を感じていった。
「ああ、少しもどかしいけれど、本当に蜜蜂に舐められていたら、こんなもどかしさがするかもしれないね。蜜蜂さん、僕のおしべから、たんと種を集めていって」
股間に乗り出した晶の頭を撫でてラスティカは言う。褒められ、優しく頭を撫でられ、理性が狂いそうになる。こんな場所で、メイド服をぐしゃぐしゃにして、花嫁がいる男のそれに鼻を擦りつけて舐めているのに。けれど、ラスティカの雄も、晶の奉仕に反応して、ラスティカのそれも徐々に上向きに持ち上がってきていた。
「キモチ、良いですか?」
「もちろんだよ」
「口の中に射精しても良いですよ」
おしべの頭に口付けて、晶はラスティカに問う。
元の世界でそういう仕事があることも、口の中に射精する行為があることも知っていた。かつての晶はそれが生きる世界とまったく別の世界のことだと思っていたが、いま、異世界に来ているのは晶である。
口の中への射精くらい、なんてことのないように思えた。けれど、言ってすぐに、なんてことを言ってしまったのだろうと急に恥ずかしくなって、晶は顔を赤くした。照れ隠しに口を閉じ、鼻先から離して指で大きく擦り始める。
ラスティカはそんな晶にくすりと笑い、頭を撫でていた手を晶の頬の側まで下ろした。貴公子の綺麗な指先が輪郭をなぞって、唇に触れる。
晶はそっと唇を開いて指を招いた。指先だけ含んだ口で、甘えるようにちゅっちゅっと指先を吸って、上目遣いにラスティカを見る。
「蜜蜂さん、あーん」
ラスティカは自身の口を開けて、晶に口を開けるよう促した。晶は素直にそれに従う。
目を薄く閉じ、舌を大きく出して歯を隠す。
むにゅりと舌の上に乗せられたのは指よりも太いそれで、晶は咥え込むように口を閉じ、じゅう、とそれを吸い上げた。ぴゅく、と先走りが口蓋に滲み、むせ返るようなラスティカの雄の香りが鼻腔に溢れる。晶はうっとりと目を開け、ラスティカを見る。舐め始めた時より、少し、大きくなっている気がする。がんばれば、ラスティカの精液もこの口に吐き出してもらえないだろうか。
晶は亀頭から舌を滑らせるように男を舐め、それから、もっと欲しいとねだるように亀頭にキスを繰り返した。
「可愛らしいですね。賢者様のおくちで、僕のおしべはこんなに育ってしまいました」
口で男のそこに触れることに抵抗感はなかった。
理性の紐をゆるませたからだろう。いつもの晶では考えられないけれど。ぴちゃぴちゃと舐めて、がんばってみようと大きく口を開ける。理性の紐をゆるませただけでこんなことができるのだから、自分には素養があったのかも知れなかった。
男のそれを舐めて、咥えて、悦ぶような性癖が。
元の世界の半端な知識が、男のすべてを飲み込むほどに咥えることもあるのだと教える。けれど、深めに咥えたところで咽喉の奥でむせ返りそうになり、晶はラスティカに困ったように目を向けた。
「無理に咥えようとしないでいいんです。あなたの苦しむ姿は僕も望みません」
「ごめんなさい、ラスティカ。俺、咥えられなくて」
「いいえ、賢者様。口よりも咥えて欲しいところがあったので丁度良かった。強制的に咽喉を開かせる道具もありますが、あいにく今日は用意していません。試すのは今度にして、今日は別の快楽を追いましょう」
ラスティカは言う。
慰めの言葉に優しさを感じて、晶はこくりと頷いた。別のやり方があるなら、その方が、ラスティカに喜ばれるなら、それでいい。
頷いてから、ふと首を捻った。
口よりも咥えて欲しいところって、どこだろう。
「賢者様、こちらへ」
ラスティカは晶を立ち上がらせて、部屋の奥にあるベッドへと導いた。天蓋付きの大きな寝台だった。大人ふたりが寝ても余裕があるサイズは貴族のそれを窺わせる。晶はそれを背景セットだと思っていた。
先に晶をベッドへと上がらせ、ラスティカは緊張する晶の頬にキスをする。そうしてから、そっと晶を押し倒して、晶の膝を持ち上げた。
「あの、これって」
ラスティカが何をしようとしているのか、どこにラスティカを咥えさせようとしているのか、ここまで来て分からないほど無垢ではない。
男のそれをひとが咥えられる場所なんて、口以外にはひとつだろう。知識だけはある。
「きたない、んじゃ」
おそるおそる言えば、ラスティカはこともなげに言った。
「洗浄は着替えた時に終わっていますよ」
あの、部屋に入った一瞬で。
「(俺は、用意されてたんだ)」
つくづく、ここはそういう場所なのだろう。
魔法使いが愛玩する相手を伴って訪れる場所。
愛玩。――晶はラスティカに愛されるために連れて来られたのだ。
「理性の紐をゆるめましょう」
「……っ」
ラスティカはメイド服の晶を見下ろし、その腰に巻きつけられたコルセットに指を伸ばした。
「怖がらないで、半分だけにしますから」
晶は震えた。
理性の紐をこれ以上解くのも怖いが、晶に受け入れさせるのに半分で済むというのも怖い話だった。
「(――……半分で、受け入れられるようになっちゃうんだ)」
晶が返事をするのも待たず、ラスティカは理性の紐の交差を解いていく。
もっとも、晶も抵抗はしなかった。
ラスティカは賢者の魔法使いとして、賢者を楽しませるためにここに晶を連れてきた。理性はまだ半分残っている。
「(だから、だいじょぶ……)」
ラスティカが紐を解くたびにドキドキとして、ここがそういう場所だと晶に受け入れさせる。もう二回も吐き出したはずの晶の芯が再び熱を持ってくるようだった。
ラスティカは半分まで紐を解くと、何かを招くように指を動かした。サイドテーブルの引き出しが開き、中から何かがふわりと浮き上がる。やがて、ラスティカがの手に収まったそれは小さな卵のような形をしていた。
「それは……」
「賢者様、これは『熟した果実の蜜のたまご』というんです」
大きさはうずらのたまご程度だろうか。
薄っすらとピンクの色をしたそれは、晶に己の世界の別のものを思わせた。いけない場所に触れさせ、振動を楽しむもの。
「元は魔法で作られた菓子で、人肌で温めると殻が割れて蜜が溢れるんです。賢者様、甘いものはお好きですか?」
「は、い……」
「良かった。舌で甘いものが好きなら、きっとこちらでも気に入りますよ」
そう言って、ラスティカは卵のひとつを口に含んだ。
卵を飴玉のように口の中で転がしながら、ラスティカは晶に四つん這いになるように促した。どこに卵を与えるのかを察して、晶は何重ものスカートのひだを後ろ手にたくし上げた。下着は長椅子で落としたままだ。ガーターベルトをつけただけの剥き出し男の尻がラスティカの前に差し出される。
「ありがとうございます、賢者様。ああ、まだ誰も触れたことのない未開の洞窟だ。あなたの初めてになれる栄誉を感謝します」
あらわになった股間にラスティカの気配がする。
膝立ちの太腿を抑えられ、背に触れるようなぞわりとした感覚とともに、窄まりに濡れた硬いものが押し付けられる。
卵はラスティカの口の中で温められ、やや柔らかくなっていたようだった。唾液を垂らされ、つぷりと押し込まれるままに小さいそれを晶の窄まりが飲み込む。
「あ、――……!」
本来、排泄に使う場所に押し込まれたそれの違和感に震えていれば、ラスティカの手が晶の『めしべ』に触れた。
既に二度もラスティカに導かれたそこは、優しい手の感触を覚えており、軽く擦られただけで期待にぶるりと震えた。
同時に押し込んだ卵を、更に押し込むようにラスティカの舌が窄まりに触れる。これまで生きていて、誰に見せたこともないような場所を舐められている感覚に、晶はどきりと胸をざわつかせ、無意識のうちにたまごを締め付けていた。
強く感じる異物感。
出したい、と無意識に思い、入り口近くで力を込めた。
ぶちゅり。
「あ、あひっ」
途端に、たまごが割れていた。
割れたたまごから、言葉通りの蜜が溢れて、晶の直腸を満たし、勢いが余ったものは肛門から跳ねるように漏れいでた。
「ああ、ひとつめが潰れましたね」
顔にかかった蜜を厭いもせず、ラスティカは上気した頬で微笑んだ。
「ひとつめ……?」
「けれど、これで入れやすくなりました」
ラスティカの指は更なるたまごを呼び寄せ、蜜の溢れた口にひとつ押し込んだ。先に温められずに与えられたたまごはまだ硬く、冷たさもあった。けれど、蜜に濡れたそこは軽い抵抗感だけで容易にたまごを吸い込んで、晶のそこを押し開いていく。
「すべてが砕けたら、賢者様のここが熟します」
「すべて、って。……これ、ひとつ、じゃ」
「ええ。僕が入るためには、奥まで熟させないと。いくつ要るかな?」
ラスティカはいくつかのたまごを重ね、己のそれと背比べをさせていた。思わず振り返った晶が見て、ざっと、4個か、5個か。すでに晶にひとつ入れていることを忘れて、ラスティカはすべてを掴み、晶のそこにひとつずつ押し込んでいった。
「ひとつ、」
「あ、ひ……ぅ、」
ピンクのたまごが押し込まれ、先に入っていたたまごがぐちゅりと奥へと押し進む。蜜が溢れた内側は熱を持ったように熱く、じくじくとして、たまごの圧迫感をおかしな感覚に変えていく。
「ふたつ、」
「……っ、……ァ、だめ、」
『みっつめ』を押し込むラスティカの空いた手が、そろりと『めしべ』に触れていく。反射のように晶はりきみ、感覚に反して内側に送り込まれるたまごの感触に、ぞくぞくと背筋に痺れをはしらせた。『めしべ』を擦られて、ぞわぞわとするような感覚と、内側を擦られて感じる痺れが混じり、晶は混乱する。
「みっつ、」
「うう……っ、」
更に奥は、最初に割れた蜜も届いていない場所だった。拓かれる感触が強く、息が詰まり、苦しくもなる。なのに、下腹部は熱を持って、たまごが中で擦れるたびにじくじくとした震えを内股に伝えるのだ。
これ以上、入れたら。
「だめ、もう、入らない、です」
「そうかな?」
晶が首を振って訴えるのを聞かず、ラスティカの指は、半分、埋まりきれずに『口』の外に出ていたたまごを押し込む。押し込まれ、ぐちゅり、と内側のたまごがナカで大きく動く。擦られる肉壁に、手を添えられただけのめしべが震えて、先走りを放った。
「ァ、――……ッ」
ぞくぞくと背筋から伝わってくる痺れに、肩を支えていられず、晶はその場に突っ伏していた。たまごが詰まったお尻はラスティカに見せるように膝立ちで持ち上げたまま、頭だけ伏せた形になっている。
恥ずかしい格好をしている自覚はあった。
けれど、晶を撫でるラスティカの手が優しいから。
「よっつめを入れるのは少し待ちましょう」
「……は、ひっ」
『めしべ』ごと腹をさすられ、晶は声にならない悲鳴をあげた。依然として内側は熱く、異物を押し戻そうとする肉壁の締め付けに、たまごが屈する。ずっとあったたまごの圧迫感が、ここにきて和らいでいた。
一度、たまごを潰している晶には分かる。
奥のたまごから熱に馴染んで、今にも割れそうになっているのだ。
「賢者様。この蜜のたまごは、違う名前でも呼ばれるんですよ。おなかで潰れた蜜は、肉の壺を蕩けさせ、そこを柔らかくします。柔らかくなった肉は男を好んで受け容れる」
「あ……、ぅ。割れちゃう、割れ、ちゃ……アッ」
「だから、別名『淫乱のたまご』とも呼ばれるんです」
ラスティカの言葉は右から左に抜けていった。
ぐちゅ、と腹の奥でたまごが弾け、甘い蜜が溢れていた。熱い。思うと同時に連鎖的に残りのみっつのたまごが弾けて、晶の直腸を蜜が満たす。
「アッ、だめ、出ちゃ、」
溢れる気配に、晶は出口となる穴を締め付けるように力を込めた。失敗して、びゅるっ、とお尻の穴から透明な蜜が勢いよく漏れる。まるで粗相したような感覚に羞恥を覚えた。
「甘くて馨しい、いい香りだ。賢者様のここが熟すのももうすぐでしょう」
けれど、粗相も気にせずにラスティカは言う。
お尻から漏れたのは、たまごの蜜だ。
ラスティカはなんて言っただろう。
――別名、『淫乱のたまご』とも呼ばれているんです。
聞き流していた声が急に蘇って、晶は濡れた内側を意識した。蜜が溢れて、熱くなって。なのに、そこには何もない。
苦しさまで感じていたたまごだったのに、なくなると物足りなくなっている。何か埋めるものが欲しくて堪らず、晶は切なく吐息を漏らした。
「よっつめが入りそうだけど、入れていいかな?」
「……っ、ぁ、……だいじょぶ、です……」
ベッドのシーツを握り、伏せたままの頭をこくこくと動かしてから、それではラスティカに伝わらないと口に出す。声にした言葉は、ひどく甘えた声色を帯びていた。
「あ……っ」
蜜を垂らした口はあてがわれたたまごをするりと飲み込む。柔らかくなった肉壁をまだ硬い卵が押し入っていく感覚から、わずかな快楽を拾って腰を揺らす。
入れられたたまごはひとつ。
もっと、おなかをいっぱいにして欲しい。
「……もっと、」
晶はねだるように声を上げたが、ラスティカの手には、もう、たまごがない。
「困ったな。賢者様にねだられるままにたまごをあげたいのですが、次の順番待ちをしているのは僕のおしべなんです」
「あ……、」
「よっつめのたまごはまだ割れてないけど、賢者様はこれが欲しいですか? 中でたまごとぶつかっちゃうかも」
ラスティカが体勢を変えたのが晶にも分かった。晶の持ち上げた腰を掴まれ、蜜を垂らした口に押し当てられるものがある。
ソファで晶が咥えたものだ。舌に残る先走りの味に、晶はごくりと唾を飲み込む。濡れそぼった穴を竿で擦られて、晶はとうとうその時が訪れるのだと期待した。
「は、い。ラスティカの、……挿入れて、ください」
その時を待ち望んでいた。
おなかで潰れた蜜は肉の壺をとろけさせ、やわらかくなった肉は男を好んで受けいれる。
晶は、肉の壺になったのだ。
淫乱のたまごをおなかで孵らせて、淫乱になってしまった。
「賢者様のお望みの通りに」
ラスティカはゆっくりと晶の蜜壺にそれを埋めていった。
「……っ、ぁ、」
たまごよりも太くて質量のあるそれが蜜にとろけた晶の中を割り開いていく。蜜がなじんだ肉襞は、思ったよりも容易にラスティカを呑み込んだ。雁先がこすれると内股がびくびく震える箇所を抜けて、更に奥まで。
『よっつめ』のたまごがぐぐっと奥へと押し進められ、溢れるような蜜もまた更なる奥へと滲んでいくようだった。
「っは、ぁ、おれ、ラスティカ、に……」
「はい。あなたの中に僕が入っているのが分かりますか?」
「は……いッ」
晶は肯定とともにこくこくと頷いた。
たまごは、まだ、殻の硬さがあり、冷たさがあった。
今、晶に埋め込まれたものは、人体の柔らかさがあり、人の肌の熱さがあった。
たまごより、ずっと、ずっしりと感じるそれに晶は腰から砕けそうなほどの快楽を感じていた。じくじくと震える『めしべ』の先端からは先走りの蜜が溢れ落ちている。もう触られてもいないのに。
ラスティカに犯されて、晶の身体が喜んでいるのだ。
「(はじめて、犯されてるのに、……こんな、)」
キモチいい、なんて。
埋めたままの体勢で、ラスティカの手が優しく腰を撫でて、そのあまりの気持ちよさに晶は震えた。
ぎゅう、と無意識に内側を締め付け、晶はラスティカのこぼれる吐息を聞いた。
「ラスティカ……ぁ、」
一度、奥を突いてから止まっていたラスティカの腰が動き出す。退いていく腰の動きに晶が切なさを覚えたのも一瞬で、すぐに引き返して、たまごをトン、と押し込んだ。トン、トン、と突かれる度に少しずつ奥まったところにズレていく感覚に晶は疑念を抱く。
「……ッ、ラスティカ。あ、……あの、……っ」
「はい、なんでしょう、賢者様?」
「……まだ、全部、はい、……っ、入って、ない……、んアッ」
熱杭に叩かれていたたまごは、次第にその熱に溶けて、晶の奥で割れて弾けた。どろりと溢れ出る蜜に濡れて奥が熱を帯びる。
「ああ、よっつめが割れたね」
歌い出すような声が聞こえる。
「これで奥まで入りやすくなったかな」
たまごが奥に入り込んでいくのは、押しても押しても、ラスティカのそれが届くからだ。もしそうなら、まだ、ラスティカには入りきれてない部分があるのではないかと思った。晶が問いかけようとした言葉の答えは、身をもって教えられた。
「よいしょ、と」
一度、入っていたものが抜かれ、ラスティカが伏せていた晶の片脚を軽々と持ち上げる。捲り上げてくしゃくしゃになったメイド服のスカートの下から、白のハイソックスに包まれた晶の脚が上方に掲げられ、開いた脚の間にラスティカが再び『おしべ』を沈ませた。
ずるりと内側が一気に擦られていく感覚に晶は揺れる吐息をこぼす。一気に擦られたその先に、より深いところを抉られて、めまいがするほどの快楽が晶を襲う。
「ア――……、ぁ、……ッ」
靴はベッドに上がる時に脱いでいた。持ち上げられた足の先がラスティカの腕かどこかに触れるたびに脱いでいて良かったと思う傍ら、不格好に持ち上げられている足の存在に恥ずかしくなりもした。晶からは見えない痴態だ。想像だけで恥ずかしく、繋がるところからの甘い痺れと羞恥があいまって、晶の雄が震えていた。
「ん、……ふぅ、……ん、ンぅ、」
恥ずかしい格好というだけで、イキそうになってる。
そのことへの恥ずかしさが、晶の口を噤ませた。
シーツを掴んでいた手を口元に寄せ、吐息が漏れるのを防ぐ晶にラスティカはそっと諭す。
「賢者様、声を聞かせてください。麗しく庭園に咲いた花が夜露に濡れたようなその声を」
「ン、……ぁ!」
ラスティカは無理やり口を開かせるようなことはしなかった。ただ、小さく腰を揺らして奥を擦り、それから、リズムを変調させるようにして左右に揺らし始めただけだ。
「あっ、あッ! ひァ……!」
たまごの蜜により敏感になった内側のいたるところを擦られ、内側を擦られる悦びに目覚めさせられる。
リズムは、都度、変わっていった。
拡げられたと思えば、今度はゆっくりとしたペースでずるっと中ほどまで引き抜かれ、深く腰を埋められた。ストロークの度に内側が擦られ、身体の奥の方を突かれ、晶も声を抑えることができなくなっていた。
「あッ、アッ、ラスティカの、きもちイイ、ですっ」
「賢者様のここも具合が良い……!」
入り口から溢れた蜜がぐぽ、ぐぽ、といやらしい音を立てている。けれど、それが気にならないくらい、晶の咽喉から甘い声が漏れていて、晶の羞恥を次第に麻痺させる。
突かれるたびに腰が揺さぶられ、コルセットのリボンも自然とゆるんでいった。
「アッ、ひァッ! イ、く。俺、イっちゃう。おなかのおく、擦られて、ドキドキして、キモチ、よく、て!」
「ああっ、良かった。……ふ、僕も達してしまいそうだ」
「イって、ください。イ……ッ、あっ、ラスティカ、ラスティカぁ……!」
淫らな声を上げる晶にラスティカが微笑む。
こんなに、晶はぐちゃぐちゃになっているのに、ラスティカは悠然として、ペースを保ったままに抽送を繰り返す。
どうにか、イって欲しくて。
晶が求めているのと同じ分、求めて欲しくて。
理性をなくしたままに、晶はぎゅうぎゅうと締めつける。その一瞬、ラスティカの吐息が、ふ、と詰まり、晶はこくりと喉を鳴らした。
ラスティカを乱した。
もうまともな考えもまとまらない、とろけた頭が喜ぶ。
もっと、と欲しがって、ぎゅうと締めたところで腰を引かれ、空振ったと気を抜いたところに、いつもより強く、ラスティカの先端がねじ込まれた。
「あッ、あ゛ッ、ア――……ッ!」
ぐり、と強く、奥を穿たれ、晶は快楽のままに声を上げた。『めしべ』の先端から白濁色の蜜が噴きあがる。
ぎゅう、と締まった内側に、たまらずラスティカも声を漏らし、熱のこもった吐息とともに晶の奥で蜜を迸らせた。
「イっちゃい、ましたぁ……」
「僕も。とても気持ちがよくて達してしまいました」
ずるりと、精を吐き出したそれを抜かれて、持ち上げられていた足を下ろされる。
余韻は覚めやらず、晶はクッション代わりの枕に頭を埋め、両手でシーツを強く掴んだまま、しばらく小刻みに腰を震わせていた。剥き出しの腰から下をラスティカの前に放り出したまま。
メイド服の袖は脱げかけ、捲りすぎたスカートはもう腰の位置より上に来ている。スカートを押さえていたはずのコルセットも、紐がすべて解けて腰から浮いて、かろうじて引っかかっているようなものだった。
「ああ。全部、解けてしまっているね」
見下ろしたラスティカが囁く。
「あ……」
言われて気付いて、晶は晶は伏せていた肩を起こし、自身のお腹に目を向けた。
理性の紐は完全に解けてしまった。
晶はこくりと唾を飲み込んだ。
理性が残っているなら、ここで止めることを考えた。いくら、賢者の魔法使いとして、賢者を慰めるためにラスティカがしてくれたこととはいえ、こんなキモチ良さを味わったら、与えられる快楽から晶が抜け出せなくなってしまう。
だから、もうこれっきりと断って、早くお店から去るべきなのだ。
「ラスティカ」
けれど、理性のない晶は、ラスティカに膝を撫でられ、両膝を左右に広げられても抵抗をしなかった。お腹を仰向けにして、まるで飼い主に心を許した猫のようにされるがままでいた。犬はこんな開脚ができないから晶は猫だ。
「あ……、んっ、くすぐったい、です」
メイド服を着た晶と貴族服を着たラスティカ。まるで飼い主と飼い猫のようだった。ラスティカは猫を愛でるように晶の内腿を撫で、飼い猫はくすぐったさに笑いながら、しどけなく腰をくねらせた。
ラスティカはそれを捕まえるように晶の腰の横に手を置いて、ラスティカの股関のおしべを晶の股間に置いた。精を吐き出して、少し力が抜けている晶のめしべに重ねるようにして。触れ合う熱があれば、晶のそれもむくりと反応しだす。
「まだ、……萎えてないんですね」
「はい」
ラスティカは眉尻を下げ、笑った。
「賢者様は、こういった行為も初めてなのでしょう? 魔法舎でひとりで触れられるのも躊躇っていたと仰っていたのに。僕に犯されるのは怖くありませんでしたか?」
「ラスティカは優しくしてくれましたし、最初のうちは躊躇いがありましたが、初めてのことがドキドキに変わって、俺もキモチ良くなってしまって……」
「それは良かった」
理性があれば、言葉を詰まらせているようなことがすらすら口から出る。さすがに初めてでここまで感じてしまうのはおかしかっただろうか、と不安になったが、ラスティカに微笑みで返され晶は安心した。
言葉を交わす間にもラスティカのそれと晶のそれは触れている。ラスティカの指が2本を包み込むように触れ、ゆるゆると撫でていた。
重なると、ラスティカのそれと晶のそれの大きさの違いが否応なしに分かってしまう。何百歳と年上の男の人のそれ。それが入っていたのだ、晶の中に。
「僕も賢者様のお姿にとても興奮してしまいました。まだ、醒めないくらいに」
押し当てられるラスティカのそれは硬く、晶のそれも熱を持ち始めている。さっきまで、内側にあったそれに触れて。
「賢者様。もう少しだけ、付き合っていただけますか? お疲れのようでしたら、このまま挟んで慰めていただけませんか?」
挟んで。足の間に? 晶はまじまじと考える。元いた世界では、素股と呼ばれていた行為だ。足の間のラスティカの熱いそれを挟んで、射精してもらうのだ。
それも晶にとっては初めてになる、けれど。
晶はきゅうとお腹の深いところが疼くのを感じていた。
触れられている『めしべ』ではなくて、たまごを挿入れられて、男を誘う蜜壺にされた、晶の内側だ。
「あの、……お尻の、ほう、使ってください」
晶は片足を自身の手で持ち上げて腰をずらし、ラスティカのおしべを己と触れ合うそこから足の付け根の方に導いた。
そこに、蜜を垂らした晶の肉壺がある。
「はしたないメイドの雌穴、いっぱい使ってください、御主人様」
すり、と蜜口を擦り付けて、そこに引っ掛かるラスティカの男を感じて、晶は頬をほてらせる。
「そういうお店ですよね、ここ。ラスティカが選んで、連れてきてきてくれたお店だから、俺……、『使われたい』んです」
「おや。賢者様はそういう遊びがお好きですか?」
「……あきらって、呼んでください」
ご主人様がメイドを様付けで呼ぶのは変だ。
晶はねだるように告げた。
ラスティカは微笑み、優しい声でその名を呼んでくれる。
「あきら」
ぞくりと甘い痺れが背筋を駆け抜ける。
晶は咄嗟に己のめしべを握り込んだ。
ピュッと先端から精液が迸る。
「……――ッ、呼ばれただけで、イっちゃいそうでした」
咄嗟に添えた手は、抑えようとしたのか、促そうとしたのか。理性は働いていないから、多分、イきたがってのことだ。晶は甘い痺れの余韻に身を浸しながら、そう思う。
ラスティカはそんな晶を見下ろして微笑み、歌うように続けて名を呼んだ。
「……晶。あきら、」
「――アッ、」
また、晶のめしべが跳ねた。ゆるく添えた手の間から、腹の上のスカートのひだを汚すように白濁が飛び散る。
「そんなに達していたら、あきらがバテてしまうよ」
「でも、嬉しいんです、」
もっと、呼んで欲しい。名前を呼びながら、おしりの穴にラスティカのおしべを挿入れてもらったら、どれだけキモチよくなれるだろうか。
甘えるようにラスティカを見上げる晶に、ラスティカは少しだけ困ったような顔をした。けれど、一瞬、曇った表情もすぐに笑顔に変わる。
「理性がなくなってしまっているね。そうだ、」
ラスティカはめしべに触れていた晶の手をそっとベッドの上に移動させ、晶のめしべを無防備にしてから呪文を唱えた。
「《アモレスト・ヴィエッセ》」
コルセットから抜け落ちたリボンが浮いて、晶のめしべに巻き付く。根本と陰嚢のつなぎ目を締めつけ、交差を作りながら竿を雁首の下でリボンが結ばれた。
「うん。これで簡単には射精しないよ」
「あ、あ、……俺、っ!」
再び、交差が編まれたリボンに、晶の理性が戻る。
「(はしたないメイドの雌穴、とかっ)」
誘うように両脚を開いて、腰をくねらせて。晶は理性をなくした間にやったことを思い出して、羞恥に顔を赤くした。
足を引いて、離れようとした晶の身体を、そっとラスティカが押さえ込む。
そして、晶の身体の上で優しく囁いた。
「あきら」
「ンッ、あ!」
理性が戻っても、名前だけで反応しそうになる身体は変わらない。耳から入ってきた声が幸せに変わって心に響く。リボンに根本を抑えられ、精液こそ出なかったけれど、下腹部がキュンとしてイきそうになっていた。
イっちゃダメ、と射精感をやり過ごして、内側に波が残るのを感じる。足に触れる手は優しく、逃げようとした足を押さえられても、なすがままに股を開いてしまう。
「使わせてもらうけど、いいかな」
改めて、問われる。
優しい言葉だった。晶に理性を取り戻させて、ちゃんと判断させようとしてくれている。
「(押し当て、られてる。つんつん、って、されて、おれの、おしりの穴もぱくぱくしてる。ラスティカの、……おちんちんを、咥えたくて)」
理性はなくしていたけれど、ラスティカに使われたいと思ったのは本心だ。理性をなくしていたからこそ、本心が出た。
「(ラスティカには花嫁さんがいる)」
花嫁を持つ男に犯される。
けれど、これは、メイドのご奉仕で、プレイの一環だ。男同士でもある。理性をなくして、一度、繋がってしまった。遊びでもこんなことをしては不義理だと、ここで晶が拒否したら、それらの前提がすべて覆って、ラスティカが魔力を失ってしまう。
それなら。
理性をもって、晶は頷いた。
「は、い……。使って、ください……!」
「ありがとう、晶」
柔らかく盛り上がった窄まりに、ぐっと『おしべ』が押し込まれる。入ったところの肉壁をラスティカの先端で抉られる感覚に、晶は全身をビクビクと震わせた。
「(挿入れられた、だけで――……!)」
二度目、なのに。けれど、二度目、だから。
ラスティカの、男の味を覚えてしまっている。
「は……っ、へぁッ!」
また、吐精しそうになる感覚をやり過ごして、硬くなるめしべの快感に酔う。痺れる感覚が足のつま先まで駆け抜けて、晶の腰を浮かした。
ラスティカと晶と、二人で向き合って繋がるには、腰の位置を高くする必要があった。晶はラスティカに足を引かれるままに身を丸めて腰の位置を上げ、ラスティカを受け入れた。
「アッ、あっ、そこ、だめっ」
体位が変わって、内側を擦られる位置も変わった。浅いところの膨れた一点を抉るように突かれて晶は悲鳴を上げ、射精できないめしべを震わせた。
「ここが、君のイイところなんだね」
「だめ、だめ……ぇ! イっちゃ、イっちゃいます、ひぁァッ」
「大丈夫だよ。さっき、イけないように結んだから」
後ろから犯された時も、もしかしたら何度か擦られていたかもしれない。意識して突かれると、強く快楽が駆け抜けて、イきたいという欲求を強く抱く。根本を抑える理性の紐がなければ、衝動のままにびゅくびゅくと射精していただろう。
けれど、出ない。ガチガチに硬くなったそれを震わせながら、射精感をやり過ごすしかない。じくじくとした痺れは射精できないそこから腹の奥に、脇から胸に伝わって、全身を絶頂に浸していく。
「アッ、あアッ! ダメ、です。……イけないのに、キモチ、良すぎて……っ」
「そう? じゃあ、もう少し奥に行こうか」
「ひあぁぁああぁァ――……ァ!」
ぐちゅりとラスティカの先端が深く捩じ込まれる。
「ここくらいなら、どうかな?」
奥を突かれるということは、そこまでがラスティカで埋まるということだ。硬い肉のおしべが柔肉を押し拡げて、イイところも全部擦られていく。
深いところを突かれて、晶はそのキモチよさに目を白黒させた。つま先まで快楽に満たされて、戻ってこれない。ピンとつま先を張ったまま、晶は喘いだ。
「あひえ……、ぁッ、ァ、ひぇ――……」
ラスティカの進入が一旦止まって、内側を擦られる刺激はないのに腰がびくびくと跳ね続けていた。絶頂が続いて、降りられなくなっている。
「あきら」
優しい声に晶の身体がびくりと跳ねた。
声は、同じくらいに優しい手を伸ばして、晶の乳首をつねった。
「ァッ!」
「乳首をつねるとよく締まるね」
新たな刺激にぎゅうと引き締まった内側が、ラスティカの熱量を晶に伝える。ラスティカの太くて硬いそれが晶の蜜壺をいっぱいに占めていた。
貫かれている。
晶は熱に浮かされた瞳で目の前の顔を捉えて、その優しく紳士な顔立ちの男が己を貫いているのだと改めて認識した。
「ラスティカ」
「(おれ、ラスティカと、つながって、)」
晶をこんなにもキモチ良くさせているのはラスティカで、ラスティカを昂ぶらせて受け止めているのも晶だった。
「あきら、」
「――ぁ、ひッ」
呼ばれて、晶は返事にならない喘ぎ声を返した。
「動いていいかな」
晶はこくこくと頷いた。それが伝わったかどうかは分からない。その前から晶の身体はだらしなく跳ねていたから、顎の少しの動きなんて、紛れていただろう。ただ、晶の内側が嬉しさに溢れてラスティカを締め付けていたから、ラスティカはそれを返事と受け取ったのかもしれない。
ぎゅうと絞られた肉壁の中をラスティカが腰を揺らして抉っていく。始めは小さく、徐々に大きく腰を打ちつけられて、晶はその度に絶頂の中の絶頂を味わった。
よっつめのたまごが割れた先を突かれた時は、咽喉を反らし、頭の中まで真っ白にしていく快楽に貫かれた。
「アッ、あっ、イく、イくっ、イけない、のに、キモチよくて、アッ、ひぅッ」
「奥も好き?」
「すき、すきっ、ラスティカ! ァッ、すき、です!
「――……ッ、あきら」
晶のめしべはもう男として機能していない。射精したい衝動が抑えられすぎて、快楽を受け止めて下腹部に逃すことしかできなくなっている。快楽が生まれるのはその下腹部だ。お腹の中を擦られて、何度もイって、晶はもう女の子のようだ。
「(雌穴って、)」
そういうことだ。
理性は警鐘を鳴らしているのに、晶は逃れられないでいる。
理性が、もたない。
きもちイイ、にずっと押し潰されている。
「あきら、あきら、……っ」
「――アッ、アッ、ひ……ぅッ!」
ちかちかと視界に輝く星に逆らえない。
名前を呼ばれて、奥を突かれるたびにイってしまっている。けれど、出せない。縛られて、感覚の鈍くなった陰茎から熱が吐き出せず、吐き出せない熱は、お腹の中で渦巻いて、長く、晶をイかせ続けた。
イき続けているのに、ラスティカの声は晶を呼んで。
「ああ――、あっ、あ゛、ひあッ、ァアッ!」
「……イく、よ。晶も、一緒にイこう」
ラスティカの指が晶の股間で揺れるリボンの端を引く。同時に最奥に精子を注がれて、晶はひときわ高く甘い声を上げた。
「ア――ッ、あ゛っ、ひ、ぅ……」
するすると紐が解かれ、自由になって、一気に吐き出せると思った精液は、すぐに溢れ落ちなかった。ナカでイきすぎたのだ。ラスティカに注ぎ込まれるままにぐちゅぐちゅと奥を突かれて、何度目かでぷしゃりと晶は精を吐き出した。
吐き出し始めた劣情は、栓が抜けたように止まらず、ラスティカに引き抜かれた後も晶のめしべは力なく揺れて、とろとろと白濁をこぼし続けていた。
抜かれて、下ろされた腰の上、理性の紐は再び解かれてしまった。ぴゅくぴゅくと先端を跳ねさせて、こぼれ落ちる精液はまるで壊れた理性の滓ようだった。
「いっぱい、僕の種を受け止めてくれたね。晶」
「あ……、ラスティカの種……、んッ」
ぐったりとベッドに身を投げ出していた晶を引き上げ、ラスティカがその身を抱き締める。ラスティカの手が優しくお腹を撫でた。
その行為が、まるで子どもの誕生を待つ親のようで、晶は少し後ろめたく思ってしまった。雌穴になったとはいえ、晶のそこは子どもを孕む器官ではない。ラスティカの蜜種が注がれたとしても、子どもは作れない。
「俺が、女の子だったら……、ほんとに子宮が、あったら良かったんですけど」
理性がないままに呟くと、ラスティカはとろけるような笑みで晶に応えてくれた。
「つくることもできるよ」
「えっ」
彼は魔法使いだった。
魔法使いは、好きな人に合わせて性別を変えることもできるという。ならば、好む相手を作り変えることも可能なのだろう。
「《アモレスト・ヴィエッセ》」
ラスティカが呪文を唱えると、晶の身体は子宮を持つ身体に変わっていた。
「子宮、できちゃった……」
呆然とつぶやく晶にラスティカは問う。
「晶はここにもいっぱい注いで欲しい?」
「はい」
晶からもラスティカを抱き返し、その唇に口付ける。三回目の交わりは、いっぱいのキスから始まった。
子宮へ愛の蜜を溢れるほどに注がれた晶に、ラスティカが囁いた。
「晶。僕の愛しい人。……こんなに愛しい君は僕の花嫁に違いない」
「ラスティカ、遅いよ〜〜! もうそろそろ晩餐会が始まっちゃうところだよっ」
「ごめん、ごめん、クロエ。久々に身も心も燃え上がるような楽しい時間を過ごしていてね、時間を忘れてしまったんだ」
「おや、情熱的ですね」
夕暮れ過ぎに貴族の屋敷に戻ったラスティカを迎えたのはクロエだった。クロエ、シャイロック、ムルの三人が、賢者と賢者の魔法使いたちに与えられた部屋で彼を待っていた。
「もう〜! そろそろ探しにいこうかって話してたんだから。でも、その前に帰ってきてくれて良かった。おかえり、ラスティカ」
「ただいま、クロエ。ありがとう、待っててくれたんだね」
クロエはマイペースなラスティカの答えに溜め息を落としながらも、おかえりと告げる。そして、ラスティカの背に回り、きょろきょろとあるべき姿を探した。
「あれ、賢者様は? 一緒じゃないの?」
「おや、いらっしゃらないのかな?」
「ラスティカが街を案内するって一緒に出て行ったんだよね? えっ、賢者様が戻ってきてないなら探しに行かなきゃ!」
慌てるクロエをよそに、どこからともなく宙返りして現れたムルがラスティカの鳥籠を指差して訊ねた。
「ねえねえ、ラスティカ。その鳥籠に居るのは誰? 君の花嫁?」
「ええ、僕の花嫁です」
クロエはそこで初めて、空のはずの鳥籠に捕えられた存在に気づき、再び、慌てた声を上げた。
「ええ〜〜ッ! ど、どこで捕まえてきたの?」
「あは。クロエが色んなことに驚いてる」
ムルはおかしく笑うが、クロエにとっては鷹揚に構えていられないことだった。誰かを鳥にして捕まえてきたラスティカ自身がのほほんと微笑んでいるから、尚更だ。
クロエの師匠、ラスティカには花嫁と思った相手を鳥籠に捕らえてしまう悪癖があった。ラスティカは彼なりに本気で花嫁を探しているのだが、花嫁の姿も声も覚えていないので、彼が幸福を感じた時にそれを与えてくれた相手を花嫁と思ってしまう。
「ラスティカ。残念だけど、その人は花嫁じゃないと思うんだ。帰してあげなきゃ……」
「クロエ、そんな悲しい顔をしないで」
子供の頃からラスティカと一緒に旅をしてきたクロエだが、ラスティカの花嫁のことはクロエも何も知らない。花嫁として連れてきた相手を否定もできないのだが、これまでの悪癖からして、間違っている可能性が大きいのではと思ってしまう。
躊躇いがちに告げるクロエに、シャイロックが涼やかな微笑みを見せる。
「そうですよ。悲しいことを考える前に花嫁を見つけた祝福をしましょうか。お祝いの言葉を伝えたいので、その方を一度外に出していただいても?」
「ありがとう、シャイロック。おいで、僕の花嫁」
ラスティカは素直にシャイロックに感謝し、鳥籠を開けた。
「どうする!? 人じゃなくて、手のつけられない凶暴な魔獣だったら!」
「ええ!? ちょっと待って……! ああっ、もう鳥籠は開いちゃっている!」
はらはらとクロエが、わくわくとムルが見守る中、鳥籠から飛び出した小鳥がその場で変化する。
彼らの前に現れたのは、彼ら賢者の魔法使いをまとめる賢者その人だった。
「け、賢者様!」
「……あはは。すみません、ありがとうございます」
賢者に手を差し伸べたのはシャイロックだった。
シャイロックの手を取って、晶は礼を言う。
晶には、鳥籠の外で彼らが交わしていたやり取りが聞こえていた。
シャイロックの花嫁への祝福もだ。
「賢者様、大丈夫? 真っ青な顔をしてるよ」
「クロエ、賢者様は少しお疲れのようです。残念ですが、屋敷の主人には賢者様の欠席をお伝えしましょう」
「はい……、頼みます」
晶はさっと自身を見下ろし、服が元に戻っていることに安心していた。いつもの服だった。くしゃくしゃになって、晶自身の精液でさんざん汚れたあのメイド服のままだったら、恥ずかしい姿を見せていた。
ラスティカに何度も突かれて腰砕けになった下半身にはまだ力が入りにくく、晩餐会に出ることは難しいかもしれないけれど。クロエは『長い時間、ラスティカに鳥籠に入れられて疲れている』ように見えているようだ。
「そんな。でも、無理して晩餐会に出ても苦しいだけだよね。賢者様はゆっくり休んでて。おいしいケーキが出たら、取り分けてもらって持ってきてあげるね」
「ありがとうございます」
クロエの優しさに晶は心から礼を言った。
西の魔法使いたちが晩餐会に出ていった後、晶は寝かされたベッドの上で、ひとり、お腹をさすった。
着る服を元に戻されても、そこに注がれた蜜はそのままだ。
理性の紐も、もう戻らない。
晶はうっとりとお腹をさすり、ラスティカを想い瞼を閉じた。
十月の後、賢者はラスティカの鳥籠の中で卵を産んだ。
卵から孵った小鳥はやがて成長し、数百年のその先まで魔法舎に響くチェンバロの音色に合わせて、その歌声を披露し続けたという。