「ご主人様~! エッチしよ~!」
ある日、アスナはそう言って突撃してきた。この珍事をきっかけに先生と生徒の関係は大きく変わっていく。

ブルアカのアスナと先生がえっちなことをするSSです。アプリ版に準拠し、先生の性別表現はあえて曖昧にしています。「成人男性」か「ふたなりの女性」、そのどちらともとれるようにしていますので好きな方で想像してください。
女性上位ですが一応純愛です。

この作品はpixivに投稿したものの転載です。
(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18996543)

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一之瀬アスナのWonder Love

「ご主人様~! エッチしよ~!」

 

「――ぶッ!?」

 

 口に含んでいたコーヒーをPCのディスプレイに向かって派手に噴射する。眠気覚ましにと淹れたものだったが、もはや不要だろう。

 

「いきなり何言い出すの!?」

 

「何って……、ご主人様とエッチしたいだけだけど???」

 

 私の突っ込みに、彼女は頭上にクエスチョンマークを浮かべる。どうやら聞き間違いではなかったようだ。

 突拍子もなく爆弾発言をするこの問題児の名は『一之瀬アスナ』。床に付きそうなほど伸ばしたアッシュグレーの髪に、吊り目がちなセルリアンブルーの双眸がアンニュイさを漂わす妖艶な美少女だ。顔立ちもさることながらスタイルも非常に良い。167センチという女子にしては高めの身長に加え、なによりもその“豊満な胸”が目を惹く。メイド服の開け広げられた胸元にこれでもかと長くて深い谷間が形成されており、歩くたびにふよふよと揺れていて、いつも目のやり場に困ってしまう。

 ディスプレイに飛沫した焦げ茶色をハンカチで拭き取りながら、私は「冷静になれ」と自身に何度も言い聞かせて気分を落ち着かせると、改めて眼前の生徒に向き合った。

 

「……ねぇ、アスナ。キミは自分が何を言ってるのか、ちゃんと理解してる? 単なるからかいや冗談で言っていいことじゃないんだからね?」

 

 平静を取り戻した私が諭すように言うと、アスナは蛾眉を八の字に顰(ひそ)めた。

 

「も~、冗談じゃないもん! ご主人様とエッチしたいの!」

 

「……うーん」

 

 アスナは怯むことなく果然と主張する。私は慎重に言葉を選んだ。

 

「えっとね……、アスナはどうして私とエッチしたいと思うの? よほどの理由があるんだよね?」

 

「うん! あるよ! 『エッチすれば仲が一気に進展する』って、この前読んだ雑誌に書いてあったから!」

 

「……うん?」

 

「だから私、ご主人様ともっと仲良くなりたいからエッチしたいんだ!」

 

 彼女の話を聞いて合点が行った。そして困った。ほとほと困り果てた。要はいつもの行き当たりばったりな“気まぐれ”なのだ。

 このアスナという子は、普段から脈絡のない思いつきで行動する悪癖がある。彼女が所属するミレニアムサイエンススクールのエージェント組織『C&C』の他のメンバーたちも、アスナの気まぐれに振り回されていつも大変な目に遭っていると聞く(彼女の生来の幸運体質により何故か毎度のごとく結果オーライとしてうまく収まってしまうのだが)。

 とはいえ買い物に付き添ってだとか、遊園地に連れて行ってだとか、そういった可愛らしい頼み事ならいくらでも請け負うが、さすがに今回のは容認できない。

 そもそもの話、我々は先生と生徒の間柄だ。私は先生として生徒たちを正しく導く責任があり、またシャーレ唯一の大人として彼女らを守らなければならない立場にある。それを自ら反故にするなど言語道断。なにより他の生徒たちにも示しがつかない。

 私は『可愛い爆乳JKに手を出せるチャンス』という“ふしだら”な発想をかなぐり捨て、彼女を説得する方向へ舵を切った。

 

「――あのねアスナ。別にそういう考えが間違っているとは思わないよ。……けれど、雑誌に書かれていることが必ずしも正しいとは限らないんだよ?」

 

「え~? でもぉ……」

 

「アスナの気持ちはよくわかったよ。私もアスナの『仲良くなりたい』という考えには大賛成。仲良くなる方法は何も一つじゃない。これから一緒に、二人でゆっくり考えていこうよ? あ、そうだ。この前アスナが食べたいって言ってたデラックスパフェのあるカフェにこれから一緒にどう? 別に仕事が溜まってる訳じゃないし、今日はもう切り上げるよ」

 

 私の口から“デラックスパフェ”という単語が出た瞬間、アスナは爛々と目を輝かせた。

 

「え! いいの!? やったー!」

 

「じゃ、決まりだね。早速行こうか」

 

「うん!」

 

 まさに色気より食い気といったところか。すっかり『パフェが食べたい』という気持ちにスイッチが切り替わっている。これでこの一件は有耶無耶にできたはずだ。

 少なくとも、そのときはそう思っていた。だがこの日の出来事をきっかけに、私とアスナの関係が大きく変わっていくということを、私は知る由もなかったのである……

 

 

*

 

 

「……ご主人様ぁ……♥ んっ♥ っ♥ あっ♥ もっと……もっとぉっ♥」

 

 ほんのりと赤らんだ白磁の肌に熱い雫が滴る。絹のような滑らかな感触のそれにそっと指を這わせる。ずっと触っていたい、その感触に私は夢中になった。私が執拗に指で責めると、その都度彼女の美しい背中が弓なりに撓(しな)り、ビクビクと痙攣していた。

 

「アスナ……すきだよっ!!」

 

「ご主人様っ♥ 私も……っ♥」

 

 互いに気持ちを確かめ合い、興奮は最高潮に達する。

 私は痛いほどに腫れ上がった股間の肉槍を下着から開放し、露呈したそれを……

 

◆

 

「――ハッ!?」

 

 突如として意識が覚醒する。辺りを見渡せども、あられもない姿のアスナはもうどこにも居ない。どうやら硬い事務机を枕にうたた寝していたようだ。ここは紛れもなくシャーレにある私専用の執務室だ。

 

「うわー、また見ちゃったよ……」

 

 恥ずかしさのあまり、涎で汚れた書類に再び顔を埋める。

 例の一件から一週間、私はほぼ毎日のようにアスナの夢を見るようになっていた。内容にある程度ばらつきはあるものの、ことごとく共通するのは『淫夢』であるということ。

 夢は当人の深層意識にある欲求が反映されるものだというのが通説。なれば、アスナと淫らなことをする夢を頻繁に見ることが一体何を意味するのかは火を見るより明らかだ。

 

「最低だな……私」

 

 自分はアスナのことを“一人の女の子”として意識しているのだ。そしてあわよくば、彼女を抱きたいと思っている。それが先生としてあるまじき感情であることは重々承知している。

 だがあの日、純真無垢なあの子が無邪気に口にした“甘い誘惑の言葉”を思い出すたび、芽生えた劣情が徐々に大きく育っていくのがわかった。

 あれからアスナは自分のしでかしたことの大きさも露知らず、何事もなかったように私と接している。一方で私はというと、目が合うたびに心臓の鼓動が早まり、彼女のことしか考えられなくなっている。すれ違い様に香る彼女の匂い、気分によってコロコロと変わる豊かな表情、時折自分へと向けてくる熱い視線攻撃、そしてC&Cでも指折りの戦闘力をもってして、硝煙とコンクリートのなかで美しく力強く戦う姿。今まで意識したこともなかったことまで意識するようになった。

 

「これもう完全に好きになってるじゃん……!」

 

 驕りかもしれないが。私が想いを伝えれば彼女はきっと喜んで受け入れてくれるだろう。だがそれはおそらく許されないことだ。

 ともに前線に立って生徒たちの指揮を執ることで、彼女らの力を普段以上に引き出すことのできる先生はシャーレにとって非常に重要な存在だ。キヴォドスのパワーバランスの一角を担っているといっても過言ではない。そんな自分が生徒ひとりに深く入れ込み、特別扱いしていたらどうなるか?

 もしも、それがゆくゆくはキヴォドス全体の秩序の崩壊へと繋がるのならば、もはや私個人の問題では無くなってしまう。なにより、そうなったらきっとアスナ自身の心に大きな傷痕を残す結果になってしまうかもしれない。

 ――だったら、この煩悩はどう解消すればいいのか。

 夢で見たものをそのまま想像しながら慰めようとも考えたが、いくら夢想の中とはいえ純粋な彼女を自ら積極的に穢すのは引け目を感じてしまい、結局思い留まって今日まで過ごしてきた。

 

「あーーー! もう! どうしたらいいんだ!?」

 

「……せ、先生? どうかしたんですか?」

 

「えっ!?」

 

 いつの間に目の前にいたのか、堪らず絶叫する私を引き気味に見る黒髪ツインテールの少女の姿があった。

 彼女はアスナと同じミレニアムの生徒『早瀬ユウカ』だ。本来はミレニアムの生徒会『セミナー』の会計であるが、故あってシャーレの事務仕事を手伝ってもらっている。

 

「あ、いや、その……。あはは、実は仕事が難航してて……」

 

「? そうですか? 今はお手すきですし、よかったら私も手伝いますから。あまり無理はしないでくださいね?」

 

 騙しているようで気が引けるが、アスナの件で集中できず事務処理が滞っているのもまた事実だった。

 

「いつもありがとうユウカ。それで、なにか用なの?」

 

「シャーレに用事があって来たのですが、それとは別件でネル先輩から言伝を頼まれてまして」

 

「ネルから?」

 

 『美甘ネル』はアスナの所属するC&Cならびにメイド部の部長だ。日頃の大雑把な作戦行動によって生じた破壊活動による損害費用を膨らませるC&Cと、毎度その尻拭いをすることになるユウカとはかなり折り合いが悪いと聞くが、そんな彼女をわざわざ介してくるなんて一体どんな要件だろうか。

 

「『話があるから放課後、キヴォドス二丁目三番街のデミーズに会いに来い。あとモモトークはちゃんと見ろよ』……だそうです」

 

 そう言われてハッとする。机に置かれたタブレットからモモトークを開くと、多数の未読チャットの中にたしかにネルからのものがあった。ユウカからの言伝と全く同じ文面が打ち込まれている。

 

「……うわっ、もう放課後の時間になってるじゃん! 急いで行かなくちゃ」

 

 ふと時計の針を見やると既に16時過ぎを示している。ネルが約束の場所で待ちぼうけしているはずだ。

 私は目の前にある書類の束をそのままにして、慌てて身支度を済ませる。そんな私の様子にユウカは呆れたように溜息をついた。

 

「先生、そこにある山積みの仕事はどうするんです? また徹夜するつもりですか?」

 

「うん! そのつもり!」

 

「……はぁ。しょうがない人ですね。できるかぎり私も手伝っておきますから」

 

「ごめん! いつもありがとう!」

 

 ユウカにはいつも助けられてばかりだ。セミナーでの仕事もあるだろうに、いつも徒に負担をかけてしまうことになって申し訳なく思う。

 

「この埋め合わせはいつか必ずするからね!」

 

「いいから早く行って下さい。ネル先輩を待たせると怖いですよ?」

 

 不敵に微笑みかけるユウカに感謝しながら、私はシャーレを後にした。

 

◆

 

「……おっせーぞ」

 

 キヴォドス三番街を走り抜け、ようやく件のファミレス『デミーズ』にたどり着く。普段からろくに運動をしていないので、すっかり息が上がってしまった。

 

「ご、ごめん。遅れちゃって……ぜぇはぁ」

 

「まぁいいけどよ。疲れたろ、食えよ」

 

 机にどっかりと両足を組んで載せ、仏頂面でふてぶてしく座っているネルは、注文したと思しき皿に盛られたフライドポテトの一つを摘み取り、こちらに差し出してきた。私は「ありがとう」と言って頂戴し、息を整えて口の中に運ぶ。ほどよい塩味。まだ温かくホクホクしてて美味しかった。

 

「まぁ、とにかく座れよ?」

 

「うん」

 

 ぶっきらぼうに促され、彼女の対面の席におずおずと座る。私はウェイトレスを呼んでコーヒーを一杯だけ頼んだのだが、終始怯えた様子で注文を承っていた。

 原因はおそらくネルだろう。メイド服にスカジャンを羽織った個性的なヤンキーファッション、猛禽類のように鋭く獰猛な目つき、小学生かと見紛うほどに小柄だが、ひと睨みで標的を震えあがらせるその威圧感は大人顔負けどころか、まるでヤクザのごとき貫禄がある。

 

「それで話って?」

 

「ああ。ちょっと待ってな」

 

 そう言ってネルはスマホを取り出して素早く操作すると、液晶画面を見せてきた。そこに映っていたのは、なにやらガラが悪そうな女子生徒の写真。

 

「コイツはまぁまぁ大物のチンピラでよ。ウチらのシマでテロを企ててたクソヤローでもある」

 

「そうなんだ。……それが?」

 

「あたしらは昨日、コイツを掃除(はいじょ)するようセミナーから依頼されて、そんでアジトを襲撃しに行ったんだが……」

 

 ネルは一旦区切ってからフライドポテトをひと摘みし、咀嚼し終えてから続く言葉を紡いだ。

 

「――アスナがとんでもねぇドジ踏んじまったせいで逃しちまったんだ」

 

「え? そうなの?」

 

「逃したのはマトにするからいいとして、問題はアイツの方だ。確かにもともと変なヤツだったが、この頃は輪をかけて変っつーか……」

 

「変……、もしかして“調子が悪い”ってコト?」

 

「多分な」

 

 ネルは険しい表情で首を縦に振る。同じメイド部としてずっと行動を共にしている彼女が言うのだから本当なのだろう。

 

「表面上はなんでもないように振る舞ってるが、ここのところ明らかにミスが目立つんだよ」

 

「……」

 

「――随分シリアスじゃねぇかよ。なぁ先生? “心当たり”があるんじゃあねぇのか?」

 

「そ、それはっ」

 

 ある。大アリだ。

 アスナの不調の原因。もしかしたら“あの一件”が関係しているのかもしれない。私は念を入れてネルに確認する。

 

「……ちなみに、いつ頃からなの?」

 

「目に見えてひどくなったのはここ数日だが……、なんとなく一週間前ぐらいにはその兆候があった気がするぜ」

 

「――っ!」

 

 間違いない。やっぱりアスナは“あの一件”で自分の頼みを有耶無耶にされたことをずっと気にしてるのだ。

 キヴォドスの生徒はもれなく超常の力を振るう神秘的な存在であるばかりに感覚が麻痺しがちだが、彼女らが多感な年頃の女の子であることに変わりは無い。アスナだってそう。能天気に見えても、その内面は普通の少女なのだ。私からすれば突飛に思える言動だったとしても、当人にとっては真剣な告白だったのかもしれない。それを無碍にされたとしたら何かしら思うところはあるはずだ。

 

「先生、教えてくれよ。アスナとなんかあったんだろ?」

 

 私はネルに打ち明けるべきかどうか悩んだ。

 これは私個人の問題だし、なによりアスナのプライベートにも関わるもの。みだりに他人に言いふらしていいものではないはずだ。

 言い淀んでいる私に、ネルはどこか遠くを見つめるように言った。

 

「……これはもうアンタらだけのナシじゃねぇ、あたしらC&Cの問題でもあるんだよ。たしかにアイツは何考えてるかわからねぇし、そのときそのときの気分で好き勝手やりたい放題して、あたしたちを散々振り回すバカだけどな。……それでも、あたしたちの大切な仲間なんだよ。動揺してミスを繰り返すほどの深刻な悩みを仲間が抱えていて、それを解決してあげたいと想うのは余計な世話か?」

 

「ネル……」

 

 私はネルの真摯な言葉に根負けし、これまでの経緯を包み隠すことなく話すことにした。

 まずアスナが『ご主人様~! エッチしよ~!』と言って執務室に入ってきたことを伝えると、彼女は食べていたフライドポテトを吹き出した。そして全てを話し終えると、渋い表情のまま片手で顔を覆うのであった。

 

「……マジかよ」

 

「マジです」

 

「そ、そうか……。なんつーか、藪をつついたら蛇じゃなくて戦車が飛び出してきたような気分だぜ」

 

「あはは……」

 

「まぁ、なんにせよ。アスナの様子がおかしいのは、十中八九そのことが原因だろうな」

 

「……私もそう思うよ」

 

 アスナが実際にどう考え、思い悩んでいるのかはまだ分からないが。ネルも私と同じ推論に至ったようだ。

 

「で? 良いか悪いかは置いといて、実際のところ先生はアスナの事どう思ってんだ?」

 

「え?」

 

「もちろん恋愛的な意味で、だ。どうなんだよ?」

 

「それは……」

 

 言葉に詰まる。気持ちはとっくに固まっている。けど、それを誰かに伝えるのは憚られた。

 

「先生」

 

 しかしネルは真剣な眼差しで私の答えを促す。私は彼女のその真剣さに応えるよう気持ちを吐露した。

 

「私は……アスナのことが好きだ。ほぼ毎日彼女とのエッチな夢を見るぐらい……」

 

「えー、そこまでかよ……」

 

 ネルは引き攣った顔で距離を置こうとする。

 

「……そ、そうだよね。一回りも年下のJKに発情する大人なんてドン引きだよね……あはは」

 

「い、いや! いいんだよ! アンタのガチさは今ので十分伝わったからよ!」

 

「ガチドン引きってコト……!?」

 

「……だぁああ! めんどくせぇなオイ!!」

 

 ネルは突然、机に強烈な踵落としを食らわせた。

 私はもちろん、周りの客や店員も彼女の出した派手な音に驚く。中には怯えて店を出ていく者もいた。

 

「もっと自分の気持ちに自身持てよ! 先生と生徒? 年の差? ンなもん関係ねぇ! テメェがアスナを好きになっちゃいけねぇ道理なんかねぇだろ!」

 

「あ、あるよ! 私はキヴォドス唯一の先生だから! 君たちの潜在能力を引き出せる私はキヴォドスのパワーバランスの一角を担っているんだ! そんな私が生徒一人に肩入れでもしたら、巡り巡ってキヴォドスの秩序の崩壊にも繋がってしまうかもしれないんだ!」

 

 私の必死の訴えに、ネルは納得したかのように猛りを引っ込めた。

 

「たしかにそうかもな」

 

「でしょ!? だからっ……私がどんなにアスナのことを好きでも、この気持ちは封印しないといけないんだ……っ。彼女と、このキヴォドス全ての生徒たちを天秤にかけることなんてできないんだから……」

 

「――けどよ先生。そんなことになるなんて一体いつ誰がどうやって“そう決めた”んだよ?」

 

「え?」

 

 彼女の意外な答えに、私は鳩が豆鉄砲を食ったようになる。

 

「たしかに先生の考えは間違っちゃいねぇと思う。だがよ、世の中っつうのは常にままならねぇとあたしは思ってんだ。最善を尽くしたつもりが最悪の事態を招くこともあれば、悪手を打ったはずが理想的な結果を産むこともある。あたしが“それ”に気付いたとき、あたしは自分がやりたいように生きることにしたんだ。気に入らないヤツはぶっとばす、朝起きるのがだりぃ日は遅刻する、暴れたくなったら暴れまくる」

 

「ネル……」

 

「先生はもう十分あたしらの為にスジを通してくれてる。だからよ。“少しぐらい”の我儘が許されてもいいじゃねぇかよ? それでも……アスナと先生が恋仲になることで何かヤバいのが引き寄せられたのだとしたら、そんなバカヤローはあたしが全員ぶっ飛ばしてやるッ! 仲間と先生には指一本触れさせやしねぇッ!」

 

「――っ!」

 

 小さな体躯で力強い啖呵を切るネルにひたすら圧倒された。私は心地よい脱力感とともに小さく笑った。

 

「はは。生徒にそこまで気を遣わせちゃうなんて、世話ないよね」

 

「全くだぜ」

 

「……ありがとう。ネルのおかげで吹っ切れたよ」

 

「そいつは何よりだ。アスナと先生が揃って調子悪いとこっちも迷惑なんだよ」

 

 やや口は悪いが、ネルのその言葉から温かみが感じ取れる。

 

「私、用事が出来たから失礼するね! お礼といっちゃなんだけど、ここは奢っとく!」

 

「お、サンキュー」

 

 そう言うと、ネルは年相応に顔を綻ばせるのであった――

 

◆

 

「ふっ。やれやれ世話が焼けるぜ」

 

「――などと言いつつ、確かな達成感と安堵を得る部長なのでしたーぱちぱち」

 

「!? アカネ!? それにカリンも!? て、テメェら!? いつからそこに居やがったコノヤロー!?!?」

 

「実はネル先輩が来る前からこの後ろの席に二人で座っていたのだが……、もしかして気付いてなかったのか?」

 

「部長はともかく、先生も案外抜けてますからねぇ」

 

「ぐっ……! ま、まさかさっきまでのやり取り全部……!」

 

「はい。仲間のために熱くなる我らがC&Cのリーダーの勇姿……ごちそうさまでした♪」

 

「う、うおおおおおおおお!! テメェらの頭の中から黒歴史(黒い染み)をCleaningしてやる!! 覚悟しやがれぇえええ!!」

 

「ちょ、部長!? 不味いですよ!?」

 

「ここで暴れたらまたユウカの説教だぞ!? いいのか!?」

 

「構うもんか!! クソッタレぇえええええ!!!」

 

 ――後日。「そちらの生徒が店の中で突如銃を乱射しはじめ、破壊の限りを尽くした」と、オーナーの苦情がミレニアムサイエンススクールに入り、セミナーの財政とユウカの胃にダメージが蓄積したのはまた別の話……

 

 

*

 

 

「――アスナ……どこいるの?」

 

 ネルと別れてからというものの、いの一番モモトークで連絡を取ってみたが一向に既読が付かない。それだけなら“ただスマホを見てないだけ”で済む話だが、今のアスナはおそらくメランコリックになっているはず。他のC&Cのメンバーにも聞いてみたが、誰も現在の彼女の所在を把握していないらしい。

 ――もしやアスナの身に何かあったのではないか?

 

 私はそんな虫の知らせとともに、アスナの行きそうな場所を片っ端から探していた。

 

「……あ! アスナっ!」

 

 キヴォドス四番街にある公園で、ひとりベンチに座って呆けているアスナの姿を見つけた。私は急いで彼女の元に駆け寄ろうとしたが――

 

「……てめぇ、知ってるぞ。一ノ瀬アスナだな?」

 

「!」

 

 不穏な気配に気づいて足踏みし、とっさに物陰に隠れて様子を伺う。

 すると不良生徒と思しき集団が公園に侵入し、ベンチに座るアスナをまたたく間に包囲した。彼女らを率いるリーダー格らしき者の顔には見覚えがあった。さっきネルに教えてもらったミレニアムへのテロを企てた人物であり、アスナが取り逃がした相手だ。

 

「まさかこんなところで会うとはなァ!」

 

「ボス! コイツ今一人ですぜ! しかも銃も持ってねぇ!」

 

「へぇ? そいつは好都合だ。てめぇらメイドのせいで長年温めてたテロ計画がオジャンになっちまったんだ。ちょうど良い憂さ晴らしになるってもんだ」

 

(まずい……!)

 

 彼女らの言うように普段携帯しているはずのアサルトライフルが手元に無い。その上アスナは現在本調子でなく、自分が危機的状況に置かれているにも関わらず上の空なほどだ。このままではどんな目に遭うか分からない。

 

「――やめなさい! 君たち!」

 

 私は勇気を振り絞り、不良生徒たちの前へ躍り出た。この状況、この場でアスナを救えるのはおそらく私しかいないだろう。

 

「あん? なんだ?」

 

「すっ込んでろ!」

 

「……いや待て。コイツは」

 

 手下たちが野次を飛ばしてくるなか、リーダー格だけは冷静に私の素性を見極めたようだ。

 

「これはこれは。シャーレの先生じゃねぇか」

 

「え? マジですかい?」

 

「こりゃあツイてるぜ。コイツとメイドを引っ捕らえて揺すれば、ミレニアム相手でも怖くねぇ!」

 

 リーダー格の言葉に周囲の部下たちも勢いづく。相手は子供とはいえ、れっきとした武装集団。対してこちらは茫然自失としたアスナと非力な一般人の私。その戦力差は歴然だ。しかし、ここで臆すればアスナを守ることはできない。私は手の震えを押し込め、毅然と立ち向かった。

 

「一応君たちのために言っておくけど、今しがたC&Cに連絡したばかりなんだ。――あと1分もしないうちに“彼女”がここへ来る」

 

「……なに?」

 

 私の言葉によって、リーダー格の顔に明らかに動揺の色が見えた。

 

「彼女って、もしかして……ネル!?」

 

「やべぇっすよ! あんなイカレメイド、アタシらじゃあ到底叶わねぇ! ボス! 早くトンズラしましょうよ!」

 

 ネルが来ると分かった途端、部下達はすっかり怯えきってしまった。彼女らがアジトを襲撃して来たときのことがよほど堪えているらしい。

 

「お前ら慌てるな! コイツのハッタリって可能性もある! こんな願ってもないチャンス、逃す手はない! それにこのまま人質にしちまえばヤツとて迂闊に手出しは出来ねぇはずだ!」

 

「……本当にそれでいいの?」

 

「ど、どういう意味だ!」

 

 私は精一杯の虚勢を張り、リーダー格に詰め寄った。

 

「君たちが私を捕まえ、人質にした時点で君達の敵はもうミレニアムだけはなくなるってことを理解してる?」

 

「なんだと……?」

 

「私が捕まったと知れたら、もはやミレニアムだけの問題じゃなくなるってことだよ。シャーレ、トリニティ、アビドス、ゲヘナ、その他諸々。私はキヴォドスの各方面と繋がりがあるんだ。そんな私が人質にされたとしたら、それら全てを敵に回すことになる。仮に首尾よく遁走に成功したとしても、キヴォドスの敵となった君らには、もはやどこにも逃げ場は無くなる。これからどうすればいいか……少し考えれば分かるよね?」

 

「ぐっ……」

 

「時間は無いよ。あと数十秒もしない内に――」

 

「くそ! 急げお前ら! 逃げるぞ!」

 

「へい~っ!」

 

 そうして不良生徒の集団は脱兎のごとく公園から逃げ出していった。

 アスナと二人きりになった途端、緊張の糸が途切れて地面にへたり込む。

 

「よ、よかった。上手くいったあ……」

 

 リーダーの言う通り“ハッタリ”だった。事前にC&Cへの連絡などしていない。今にして思えば危ない橋を渡ってしまった気がするが、何事もなく穏便に済んだので結果オーライだろう。

 とはいえ、彼女たちをこのまま野放しにしておくわけにもいかないから、ネルたちへの連絡はちゃんとしておくことにした。

 

「あれ……? ご主人様?」

 

 モモトークを操作していると、ようやっとこちらの存在に気付いたのか、虚ろな声でぼんやりと話しかけてきた。

 

「アスナ……、無事でよかった……」

 

「……? 無事? どうして?」

 

「どうしてって。たった今襲われかけてたんだよ?」

 

「ふーん? そうなんだ?」

 

 アスナはまるで他人事のように言う。彼女の様子が変であることはいよいよ持って明白だ。

 

「ひとまずここから離れよう」

 

「……」

 

 急いで移動するよう促すが、アスナは一向に動かない。……いや、動けないといった方が正しいのだろうか?

 

「大丈夫?」

 

「ごめんねご主人様。なんだかぼーっとしちゃって」

 

「……わかった。それじゃあ私がおぶってあげる。ほら」

 

「ん」

 

 背を向けて屈み込むと、アスナはすんなり身体を預けた。長身である彼女は想像以上に重いが、泣き言など言ってられない。

 

「よし! それじゃあ行くよ!」

 

 そうして私は彼女をおんぶしつつ、安全な場所へと急行するのであった――

 

◆

 

「や、やっと着いた……ひぇ……筋肉痛確定……」

 

 やっとこさシャーレの自室までアスナを運び終え、彼女の体をベッドに横たえる。今日一日で立て続けに慣れない肉体労働をした疲れのあまり、アスナの隣で大の字になって倒れ込んだ。

 何も自分ひとりでシャーレに連れて行く必要などなく、ミレニアムの誰かしらに連絡して後を託そうとも考えた。むしろ、この重労働を考えれば普通にそうすればよかった。

 けれどそうしなかった。なんとなく、今のアスナを他の人に任せたくはなかった気がするのだ。

 

(でもこれって普通にお持ち帰りだよね。幸い誰にも見られなかったけど……)

 

「……」

 

 そんな自分の境遇などいざ知らず、アスナは相変わらずぼーっとしていた。

 改めてこれからのことを考える。アスナを自分の部屋に泊めるのか。アスナが何を悩んでいるのか分かりきった上で相談に乗ってあげるべきか。それとも、このまま自分の本当の気持ちを話すべきか。

 無数の選択肢が提示されるなか、真っ先に思いついたのは……

 

「お腹空いた?」

 

 彼女はコクリと小さくうなずく。

 アスナは放課後から行方知れずになっていたという。現時刻は20時15分、それまで何も口にしていないはず。食べ盛りの子には相当堪えるだろう。

 

「ちょっと待ってて。今何か作ってくるから」

 

 私は疲労で軋む四肢に鞭打って冷蔵庫へ向かう。たしか冷凍のチキンライスがあったはず。卵の在庫もあるし、せっかくだから“アレ”を作ってみることにした。

 

「――うん、できた。おまたせ」

 

 炒めた冷凍チキンライスをやや半熟気味の卵で包んで皿に盛り、ケチャップを線描きしてから机に置いてみせる。殆ど冷凍食品のお粗末なものだが、自家製オムライスが完成した。普段自分のことをご主人様と呼ぶメイドの女の子にオムライスを作ってあげるのも少し奇妙な感じもするが。

 

「食べる?」

 

「んー……」

 

 興味を示しているのは視線で分かるが、一向にベッドを離れる様子はない。

 

「……しょうがないなぁ」

 

 このままでは埒が明かないので、私はオムライスの乗った皿とスプーンを手に取り――

 

「はい、あーん」

 

 オムライスをスプーンで掬い、彼女の唇の前に差し出した。

 

「あーん」

 

 素直に開かれた口の中に、できたて熱々のオムライスを運ぶ。なんだかペットに餌付けをしているようで不思議な気分だが、今のアスナがしっかり食事を摂れる状態であることが分かって安堵する。

 彼女はモグモグと静かに咀嚼し、やがてそれを呑み込むと――

 

「――おいっしー!!」

 

 今まで朦朧としていたのが嘘のように、ぱぁあっと明るい表情を見せた。

 

「こんな美味しいオムライス初めて食べたよ!」

 

「そう? よかった」

 

「もっと食べさせてー! ご主人様!」

 

「もう、自分で食べなよ」

 

 そう言いつつ、私はアスナが元気になったことが何よりも心から嬉しくて、思わず小躍りしそうになるのを抑えながら、彼女にせっせとオムライスをあげてやる。

 貪欲な雛鳥のように一口、また一口と吸い付くし、あっという間に一人前分を平らげてしまった。

 

「ごちそーさまーっ」

 

「お粗末様でした」

 

「えへへ、ありがとうねご主人様」

 

「どういたしまして。おかわりいる?」

 

 満点の笑顔を浮かべる彼女を見て、つい気を良くした私はそのまま自分の分もあげようとしてしまう。

 

「だめだよ。それはご主人様の分なんだから」

 

 今度はアスナがオムライスをスプーンで掬い、こちらに差し出してきた。

 

「はい、ご主人様♪ あーん♪」

 

「え? 私は……」

 

「あーん♪」

 

 自分で食べられる、と断っても彼女はなかなか諦めてくれない。テコでも動かないその意志の強さに折れ、私は渋々口を開いた。年下の女の子から食べ物を口に運ばれる気恥ずかしさに悶えつつ、手作りオムライスを賞味する。

 

「ん……美味しい……」

 

 作りたてだからだろうか、あるいは疲れているからかもしれないが、すこぶる美味であった。特に卵の熱加減は我ながら上出来である。

 

「はい! どんどん食べてねーご主人様」

 

「あはは、ありがとね」

 

 毒を食らわば皿まで。私は開き直ってアスナの“ご奉仕”を享受することにする。やがて完食し終えると、いろんな意味で満たされた気分になった。

 

「ごちそうさまでした」

 

「美味しかった? ご主人様?」

 

「うん、まぁまぁだったね」

 

「よかった!」

 

 アスナは自分で作ったわけではないのに何故か誇らしげだ。けれど、そんな彼女が今は愛らしく思える。

 

「それにしても、アスナが元気になってよかった」

 

「ご主人様のオムライスのおかげだよ!」

 

「うん……そっか。……ごめん、アスナ。私ちょっと横になるね……」

 

 安心して気が抜けたのに加え、疲労と慢性的な寝不足、そして胃に血流が下ったのもあってか、ひどい眠気が襲う。来客が居るにも関わらず、私は耐えきれなくなりベッドに向かった。

 

「時間遅いけど、一人で帰れる? ネルたちに迎えに来てもらう?」

 

「大丈夫! 今日はご主人様の部屋に泊まってく!」

 

「……そう。ちょっと30分ぐらい……仮眠するね……」

 

 私は微睡みの瀬戸際でタブレットを操作し、30分のアラームをセットするとベッドに横たわった。すると瞬く間に眠りへと誘われ、私の意識は深く沈んでいった。

 

◆

 

 ふと、目を覚ました。

 眩い陽光がカーテンの隙間から差している。いつもの自室で朝を迎えた。今日もまた新しい一日が、キヴォドスでの仕事をこなす日常が始まるのだ。

 

「……ん?」

 

 いや、何か違う。致命的な違和感を憶える。ぼんやりとした頭で寝る前の記憶を手繰り寄せた。

 

「たしか……私は……仮眠を……?」

 

 徐々に思い出してきた。昨夜色々あってアスナをこの部屋に招いた。そして睡魔に耐えられず、アラームをセットして仮眠した。だがアラームで起きた覚えがまるで無い。それどころか、どうやら私はそのまま熟睡してしまったらしい。目覚まし時計で時間を確認すると、既に9時を回っていた。

 寝すぎた反動だろうか、体がやけに重い。起き上がろうにも両腕を動かすと激しい痛みが奔る。案の定、昨日アスナをおぶって運んだせいで筋肉痛になったようだ。しかも温かくて柔らかい感触に包まれている。

 

「え? 柔らかい……ナンデ?」

 

 今自分は“柔らかい重み”にのしかかられていた。それこそが最も大きな違和感の正体だった。

 

「――あ、ご主人様。起きたんだ」

 

「アスナ!?」

 

 体にのしかかっていたものの正体。それは大事な一生徒であり、私の想い人でもある一ノ瀬アスナだった。起床するとアスナが私のベッドにいて、体の上に重なっている。それだけでも驚天動地の大事件だが、もっと驚くべきなのはその姿だった。

 

「ちょ、なんて格好してるの!」

 

「んー、これ? 他に着るものが無かったからご主人様の借りちゃった♪」

 

 彼女は私のYシャツを羽織っていた。それ以外“何も着ていない”。いわゆる『裸Yシャツ』というやつだった。

 

◆

 

――遡ること十二時間前。

 

「……ご主人様、起きないなー」

 

 仮眠をとると言ってベッドに倒れてから30分、アラームがけたたましく鳴り響いているものの、先生は未だに起きる気配がなかった。

 部屋に一人取り残されたアスナは先生が起きるのを待ち、暇を持て余していた。

 

「うーん。ま、いっか! シャワー浴びちゃお」

 

 しかし、待ち続けるのに飽きてしまったアスナは気持ちを切り替え、先生の部屋に併設されているシャワールームへと向かった。

 そこで一日の汚れを落とした。床に着くほど長い髪を洗うのに、先生のシャンプーを大量に使いつつも、ほどなくしてシャワールームをあとにする。

 だがそこでアスナはある問題に直面した。

 

「……着替えが無いや」

 

 シャーレには手ぶらで来てしまったので、当然ながら自分のパジャマはない。先生に訪ねようにも泥のように眠っている。着てきたメイド服と下着は後先考えず洗濯機の中に放り込んで回してしまった。

 

「なんか着るものないかなー?」

 

 アスナは風呂上がりの産まれたままの姿で、クローゼットの中を探し回った。そこで見つけたのが先生の白シャツである。

 

「……ちょっとブカブカだけど、うん! いいかも」

 

 サイズが合わないので袖の丈は余っているが、そこが却って可愛かったので気に入った。ボタンを全部留めれば下も隠れる。ただ胸がキツかったので第一、第二ボタンは外した。

 

「このシャツ。ご主人様の匂いがする……。なんだか落ち着く……、私も眠くなってきたなぁ……」

 

 そうしてアスナは当然の権利とばかりに、ベッドで横たわる先生の隣で寝転び、そのまま朝を迎えたのである――

 

◆

 

「――と、いうことなんだ!」

 

「あー、そっか。着替えのこととか考えてなくてごめ……じゃなくてっ!」

 

 思わずノリツッコミをしてしまったが、今はコントをしている場合ではなかった。

 朝寝坊してしまった時点で問題だが、そもそもアスナと密かに一晩過ごしたのをシャーレの子たちにどうやって釈明するのかも考えなくてはならない。そしてなにより、このままでは本当に色々とマズい。

 繰り返すがアスナは今、私のYシャツ以外何も着ていない。ブカブカな着こなしでモデル体型が隠蔽されているが、豊満な二つの果実だけは“はちきれんばかり”に胸元を押し拡げている。ボタンを二個も外すことでようやっと収まっているようだが、それでも普段のメイド服ではゆとりをもって“たゆん”と解放されている胸が、窮屈な谷間を作っている

 そんな痴態を見せつけながら、アスナの素肌が薄い生地一枚を隔てて私に覆いかぶさって密着しているのだ。堪ったものではない。

 

――アスナとえっちしたい。

 

 邪な感情がふつふつと込み上げてくるのを私は理性で必死に抑え込んだ。

 

「と、ところでさ、アスナ。私、普通に寝坊しちゃったんだけど。早くシャーレに一報入れて、すぐにでも職場に戻らないといけないんだよね……」

 

 私は至って冷静に、大人として今やるべきことをアスナにも自分にも提示した。この役得すぎる状況を切り捨てるのは惜しい。あまりにも惜しいのだが……。シャーレからすれば、今の自分は外出したきり音信不通となっているはずなので、まずは彼女らを安心させるのが先決だ。

 

「それなら大丈夫だよ! もう連絡しといたから!」

 

「え? そうなんだ」

 

 意外だった。今までの彼女の印象からして、そういう配慮はできないタイプかと思ったのだが、案外しっかりしているのだろうか。伊達に三年生ではないということらしい。

 

「うん。『ご主人様は今日一日アスナのご奉仕デーなのでお休みです』ってモモトークで連絡しといたから!」

 

「……へ?」

 

「あと、さっきユウカが部屋の前に来てたけど、私がちゃんと事情を話しておいたよ! でもユウカ、なんだか顔色が悪かったけど大丈夫かなー?」

 

 ――前言撤回。

 アスナ……キミって子は……!

 

「な、なに勝手なことをーっ!?」

 

 私は慌ててタブレットを取り、訂正を入れようとしたが。

 

「あっ、だめだよ!」

 

 アスナにタブレットを奪われる。すかさず取り返そうとするものの――

 

「返して! ……い”っ!?」

 

 腕を振り上げようとして激しい筋肉痛に阻まれてしまう。

 

「ほらー! ご主人様は昨日あれだけ頑張ったんだから今日はお休みだよ!」

 

「うう……溜まってる仕事が……」

 

「だーめ!」

 

 優しく叱られてしまい、なんだか逆らう気が失せてしまう。

 ……とはいえ、この両腕の状態じゃあ事務仕事の効率もすこぶる落ちるだろうし、そもそも連日寝不足が続いていたところに昨日の肉体的激務で完全にノックアウトされてしまったわけで……。

 皆が許すならば、今日一日ぐらい休むのも吝(やぶさ)かではないかもしれない。

 

「……わかった。でも、私からも皆にちゃんと事情を話させてもらうからね?」

 

「うん! それじゃあ昨日いっぱいご主人様に色々してもらったかわりに、今日はアスナがたっくさんご奉仕してあげるからね!」

 

 私が観念すると、アスナは満足げにタブレットを返してくれる。モモトークで「突発的な休暇を貰いたい」という旨を説明すると、皆思いの外理解を示してくれた。これでひとまずは心置きなく休める。

 

「――それで? ご主人様は何がしたい? どんなことして欲しい!?」

 

 ひとまず後顧の憂いは断ったが、現在進行系で起きている最大の問題が未だ聳え立っている。

 

「ねぇねぇ! ご主人様っ!」

 

 そう、アスナはさっきからずっと私の上に馬乗りになったままなのだ。裸Yシャツというあられもない格好で。

 しかも兎のように跳ねながら無邪気な笑顔を浮かべ、私に「どうして欲しい?」としきりに訪ねてくるのだ。

 

「ご主人様~!」

 

 生尻の弾力のある柔らかい感触が下腹に何度も振り下ろされる。ブラを付けていない爆乳がたゆんたゆんと揺れ動いて、今にもシャツの中からまろび出そうだ。

 

「? ご主人様?」

 

 私は懸命に抗い、そして迷っていた。

 何者にも邪魔されない空間と時間。無意識に過激なアピールを繰り返す好きな女の子。

 すぐにでも襲いたい。けれど、彼女の先生としての責任感や倫理観が“決断”を躊躇していた。

 言葉を紡ぐ余裕すらない私がしばし口を結んでると、アスナは寂しげな表情で訴えてきた。

 

「……ご主人様ぁ」

 

――兎は寂しいと死んじゃうんだよ?

 

 そんな声が聞こえてくるようだった。

 刹那、私の頭の中で張り詰めていた“一本の糸”が途切れた。

 

「……したい」

 

「え? なになに?」

 

 細く絞り出した言葉を、私は今一度放つ。

 

「アスナとエッチしたい」

 

「……え?」

 

 アスナはきょとんとしていた。

 無理もない。私も口に出してから、自分が非常識なことを言ってしまったことに気付いた。

 

「いやその、違う! これは」

 

「――いいよ。私も……先生とエッチしたいな♥」

 

 

*

 

 

「あ、あのさ……言い出した私が言うのもなんだけど、どういう意味か分かってる……?」

 

「うん。分かってるよ? 好きな人同士でするキモチイイコト……だよね?」

 

 そう言ってアスナは妖艶に微笑む。今の彼女は一週間前の時とは明らかに何かが違っていた。

 

「この前、ご主人様にエッチしたいって言ったあと、色々勉強したんだ。インターネットで調べたり、ユズの持ってる『エロゲ』を借りてプレイしたり!」

 

「それは若干知識の偏りがあるような……」

 

「だから、ご主人様の方から“したい”って言ってくれて、すっごく嬉しかった!」

 

「アスナ……?」

 

「それってさ! つまりご主人様“も”好きってことなんだもん! 私はご主人様とエッチしたい。ご主人様も私とエッチしたい。私たち『リョーオモイ』ってことなんだよね!?」

 

 アスナは嬉々として語り、セルリアンブルーの瞳を熱く潤ませていった。

 

「ねぇ先生……教えて? 私のこと……好き……?」

 

 白い頬を紅潮させたアスナは甘えるように尋ねた。

 天真爛漫で無垢なあの彼女が、こんなにも乱れた姿を晒し、淫靡な雰囲気を纏っている。そのギャップに戸惑いを覚えた。

 けれどそれ以上に私は、狂おしいほどに一ノ瀬アスナに夢中になった。

 

「私は……アスナのことが……好きだっ!」

 

「……! 先生……♥」

 

 ついに私は一線を越えた。もう後戻りはできない。

 でも後に戻る必要はない。戻りたくなんかない。彼女を、アスナを手放したくなんかない。

 私とアスナは自然に引き寄せられ、気がつけば唇を重ね合っていた。

 

「……ん……ちゅっ……ちゅ……♥」

 

 ふんわりとした感触があてがわれ、アスナの甘い香りが鼻孔をくすぐる。

 積極的に迫ってきたものの、慎重で、拙くて、触れるだけの優しいキスだった。唇が接触する都度、アスナは小さく愛らしい嬌声を上げている。私はそんな彼女の年相応な背伸びがたまらなく愛おしくて、ちょっぴり意地悪をしたくなった。

 

「……んっ……っ♥ んっ!? っっ……♥」

 

 私は彼女の口のなかに、無理矢理に舌をねじ込んでみせた。

 最初こそ異物の侵入に驚き、身体が僅かにぴくりと戦慄いたものの、すぐさま受け入れてくれた。

 

「っ♥ ……じゅっ♥ んっ♥……ぢゅるっ♥」

 

 やらしい水音を立てながら口腔のなかを満遍なく舐め取り、存分にディープキスを堪能する。アスナはされるがままに私の舌使いを享受し、ひたすら甘い吐息を漏らした。

 

「じゅっ……♥ ちゅっ♥ ……ぬるっ♥ ちゅるっ♥」

 

 次第に彼女の方からも積極的に舌を使うようになる。私のを迎え入れ、絡めたり、向こうから私の口の中に侵入させてきたり、互いの舌と唾液がぐちゃぐちゃに混濁する濃密なものへと変わっていく。

 性行為に関する知識を仕入れたと自負していた通り、やり方は概ね理解している。それに存外に巧い。私の方も段々と気分を高めさせられていった。

 

「ちゅっ♥ じゅ……ちゅっ♥ ……っは♥」

 

 十分愉しんだ私たちはどちらからともなく顔を離す。唇と唇の間に銀のアーチが掛かり、別離を惜しむよう残った。

 

「ぁ……先生……♥」

 

「アスナ……」

 

 しばし見つめ合うと、私は激痛に耐えながら両腕で優しく抱き寄せ、彼女もそれに応えるよう体重を預ける。

 スーツ越しからも伝わるアスナの爆乳の重み、ほどよく鍛えられた弾性と柔性を兼ねた太ももの肉感、汗ばんだ女の子の匂い。それらが私の興奮を煽り、やがて下半身の局部に熱が集中した。

 

「? なんか、ご主人様の股間に硬いのが……これって」

 

 欲望の隆起に気づいたアスナの問いに私は無言でうなずく。すると彼女は途端にソワソワし始めた。

 

「見てもいい?」

 

「いいよ」

 

 アスナが私の股の前へまで後ずさるのを確認すると、すかさずベルトを緩めた。……が、ベルトを外して置いてから私はようやく大事なことに気付く。

 

「……そうだ。昨日から身体洗ってなかったんだった。ごめん、先にシャワーを――」

 

「だめ」

 

 しかしアスナは私の言葉を遮る。

 

「え? でも待って」

 

「ここまで来てもう待てないよ~。……このままでいいよ。ご主人様♪」

 

 そうしてアスナの方からズボンのボタンを外しにかかった。

 

「ちょ、汚いから!」

 

「アスナはC&Cのメイドだよ? ご主人様のこともキレイにするんだから♪」

 

「――っ! まったく……君って子は」

 

 何が何でもキャストオフを強行するアスナの前に観念する。それにただでさえ腕が不調な状態、重火器を軽々と扱える彼女らに腕力で抵抗できるはずもなかった。

 

「あとこうして……ご主人様の服って意外と簡単に脱げるんだね! それっ!」

 

 大して手間取ることもなく、ズボンとパンツもろとも一挙にずり下ろされ、股間が暴かれることとなった。

 

「……あっ♥」

 

 拘束から解放され、雄々しく張り詰めたペニスがブルン、と顕になった。

 赤茶色に充血しパンパンに腫れ上がったソレは、己の存在意義を誇示するかのように反り勃っている。

 

「すごい……おっっきいー」

 

 アスナは心底関心した風に私のブツを至近距離でまじまじと見つめた。

 

「大丈夫? 臭くない?」

 

「ううん。むしろ……ご主人様の濃い匂いがして……なんか……変な気分になっちゃうかも……♥」

 

 アスナまるで酔いが回ったように顔を赤らめる。目をとろんと蕩けさせ、ますますペニスに夢中になった。

 

「ねぇねぇ、触ってもいい?」

 

「ど、どうぞ」

 

 私の了承を得ると、アスナはそっと剛直に手を伸ばす。そして割れ物を扱うかのごとく慎重に竿を片手で握りしめた。

 

「わ……すごっ……硬い……。それに熱い……♥」

 

「っ……!」

 

 普段手袋で隠れている白魚の指が肉棒に触れる。細く、ひんやりとした感触に、得も知れぬ悦が伝搬した。

 今、私のブツがアスナの指に包まれている。そう考えるだけで心臓が早鐘を打った。そんな私の様子に、無垢な彼女は心配している様子だ。

 

「ご主人様? 大丈夫? 痛い?」

 

「大丈夫だよ。ちょっとドキドキしてるだけ」

 

「ご主人様。ドキドキ……してるんだ。私もだよ!」

 

「なんでそんな嬉しそうなの?」

 

「だってご主人様と同じって嬉しいんだもん!」

 

 アスナは両目を細め、無邪気そうに破顔した。

 ――ああ、なんて愛おしいんだ。そんな情愛が胸の昂りはさらに強め、そのまま快楽へと繋がっていった。

 

「そういえばエロゲによると、この『おち○ぽ』を握ったまま擦るとキモチイイとか?」

 

 そう言うやいなや、アスナはいきなり上下にゆっくり動かしはじめた。

 

「……どうご主人様? キモチイイ?」

 

「あっ……っ……」

 

「あれ? なんだかさっきよりも大きく硬くなってる? それにビクってして……なにこれ! おもしろーい!」

 

 アスナは初めて触れるペニスに興味津々といった様子だ。

 速度もやテンポもバラバラの気紛れな動きで上下に擦ってみたり、敏感な亀頭部を執拗に掌で撫で回したり、ふっくらとした睾丸を揉んでみたり、片手で、あるいは両手を使ってみたり。まるで新しい玩具を与えられた子供が無遠慮に弄ぶかのようだ。

 本人は無自覚でやっているのであろうが、それら変化に富んだ動きは“技巧”に値するものだった。

 

「あ! なんか先っぽからヌルヌルしたのが出てきたよ!? ヌルヌルして動かしやすい♪」

 

「っ……! それ、……やばっ」

 

 鈴口から分泌される粘質な我慢汁が、アスナの細指によって竿全体に満遍なくまぶされていく。それによって扱きが円滑になり、加速度的に快感が増していく。私はいよいよアスナの手コキによって与えられる悦によって思考が侵され、抵抗と拒絶の意志が薄まってゆく。そうして自らの肉欲を甘んじて受け入れることで躊躇いの枷が緩まり、絶頂への階段を駆け足で上り詰めることとなった。

 

「あっ! ご、ごめんっ! アスナ! もう出るっ!!」

 

「え? 出るってなにが?」

 

「っっ!! ああああっ!!」

 

 とうとう間に合わなかった。アスナが純朴な疑問を呈したその瞬間、私の意識はホワイトアウトした――

 

――びゅるるるうっ♥びゅるうううっ♥びゅるるる♥

 

「きゃっ!? えっ、えっ?」

 

 とてつもない解放感とともに肉棒の先端からドロドロの白濁が噴出する。

 それらは不躾に撒き散らされ、油断していたアスナの顔に容赦なく飛沫していった。

 

「……」

 

「はぁ……はぁ……ごめん! 大丈夫!?」

 

 射精が収まり、飛んでいた意識が戻ってくる。思わぬ形で顔射されてしまったアスナは、あまりの突然の出来事にフリーズしているようだった。

 

「ねぇ、ご主人様。これってもしかして……?」

 

 アスナは開口一番、顔にこびり付いた液体について尋ねる。私は正直に答えた。

 

「……精液ってやつ、かな?」

 

「ってことはつまり……、これがご主人様の赤ちゃんのもと?」

 

「う、うん……」

 

「そっかー、これがご主人様の……。……へぇ、……ふーん♥」

 

 アスナは私のザーメンを指で掬い、意味深に微笑んだ。歳不相応に妖艶な表情を作る彼女に、ゾクゾクとした震えが背中に奔った。

 一週間より前の彼女では絶対見せなかった一面。あの一件をきっかけとなって、アスナの性への関心が強まったのだろうか。あるいは私がそうなるよう変えてしまったのかもしれなかった。なんにせよ、私はそんな彼女の変貌ぶりすら心を奪われていた。

 

「あっ、いっけない。ご主人様のをキレイにするんだった!」

 

 しかし打って変わって、いつものようなとぼけた様子に戻る。温度差で風邪を引きそうだが、この程度で風邪を引いていてはこの気分屋ラッキーガールの相手など務まらない。

 

「いや、もうここまで来たら関係ないんじゃないかな……。それに今は私よりアスナの方が汚れてるよ?」

 

 私は筋肉痛に耐えて手を伸ばし、傍に放置されているズボンのポケットからハンカチをなんとか取り出すと、彼女の顔を拭いてやった。

 

「ふぐふぐ。ご主人様ありがとー! ……って、ご主人様が私をキレイにするんじゃんなくて、私がキレイにするのー!」

 

「ええ……」

 

 アスナはぷんぷんと可愛らしく怒る。正規のメイドではないのだが、なぜか時折メイドとしての奉仕の矜持を発揮するときがある。

 

「綺麗にするっていってもどうするの? シャワーでも浴びる?」

 

「うーん……、あ、そうだっ!」

 

 アスナは何かを思いついたようで、おもむろにYシャツのボタンを開けはじめた。

 

「? そんなとこ開けてどうするの?」

 

 彼女の豊満な胸を最前線で抑えているのは第三ボタンだ。だが、何故かその一つ下にある第四ボタンを開けた。これでは胸を曝け出すこともなく、ただ隙間が二箇所になっただけであるが……

 

「『エロゲ』のなかでメイドさんがやってた“せーえき”で汚れたご主人様のを拭き拭きする方法をやろっかなって!」

 

 アスナは私の股座に重々しく乳房を載せて俯せになり、未だ硬度を維持している肉棒を掴むと、第四ボタンの隙間へと誘導する。

 

「もしかして……パイズリ?」

 

「そうそう! それそれ! 私のって大きいからできそうだし、ご主人様のでやってみたかったんだ♪ じゃ、いっくよー?」

 

 そう言うやいなや、下乳が狭くひしめきあう中にペニスを挿入する。

 表面を纏う精液が潤滑油となり、呆気なく彼女の爆乳へと根本まで呑み込まれてしまった。

 

「……こんなもんかな? あっ♪ ご主人様のおおきいの、見えなくなっちゃった♥」

 

「うわっ……アスナのおっぱいの中に私のが……!」

 

 柔らかく熱を帯びていて、キツすぎず、かといって緩すぎない。真綿で首を絞めるかのような絶妙な感触。豊満な乳で肉棒を挟まれる鮮烈な“初体験”に酔いしれた。

 

「どお? ご主人様? 気持ちいい?」

 

「なんというか……不思議な感じかも。気持ちいいけど、ふわふわするというか」

 

「ふーん? そうなんだー。えっと、このあと手で挟んで、上下に動かすんだよね!」

 

 アスナは独り言をつぶやきながら手順を確認し、両サイドから乳房を寄せるように掴んで谷間を深くすると、ゆっくりとストロークを始めた。

 Yシャツの中にキツキツに収まった二玉の肉メロン。その柔らかさとハリのある厚みに左右から圧迫されながら扱かれ、私は快楽に身悶えた。

 

「あっ、これヤバいかも……気持ちいい」

 

「ほんと? へー! おっぱいに挟まれて擦られると気持ちいいんだー。エロゲとおんなじだ♪」

 

 アスナはこちらの反応の良さに確かな手応えを感じ、嬉々として乳扱きのテンポを少しずつ早める。彼女の爆乳が往来する都度、張り詰めた白シャツの向こう側に埋まっている肉棒が歓喜に打ち震えていた。

 

「ふきふきー♪ ご主人様のふきふきー♪ ふきふき綺麗にしちゃうねー♪」

 

 アスナは思い出したかのようにゴキゲンな即興ソングを披露しながら、豊満な乳房を上下に捏ね続ける。

 彼女の暢気な歌とは裏腹に、絶頂したばかりで敏感な私の肉棒に重く、熱く、柔らかく、そして甘い官能が絶えず押し寄せてくる。私は情けない声を上げながら彼女の“奉仕”を堪能した。さらなる官能を得ようと無意識に背筋を反らし、股間の剛直を彼女の巨大マシュマロの中にグイグイと押しつけてしまう。

 

「あれ? なんかおっぱいがヌルヌルしてきたよ? もしかしてさっきご主人様の先っぽから出てきたのと同じのかな! ふふっ♪ ヌルヌルでパイズリがやりやすくなった♪」

 

 アスナの言うように、乳扱きの感触に変化が起きる。若く瑞々しい肌触りと精液のサラッとした水気だったのが、ローションで薄く塗りたくったような、より粘着質で滑らかなものとなる。さっきの手コキのときと同じように鈴口から溢れた我慢汁が谷間に広がっているのだろう。

 

「よーし! もっともっとふきふきしちゃうよー!」

 

 これ見よがし張り切ったアスナはパイズリの速度を上げていく。

 

「んしょ……よいしょ、ほい」

 

「っ! あっ! ……ッ!」

 

 これまでの優しく撫で回すようなものから一転し、上下に跳ねるようになっていった。柔らかく重い双丘を持ち上げては、落とすように下に叩きつける、といった一連の動作をひたすら繰り返していく。

 おっぱいが私の下腹に落ちると、たぽんと肉をはたくような鈍い音と、我慢汁で谷間を摺り合わせる湿った音が同時に鳴り響き、シャツ越しの乳肉の表面が波打つように震えていた。

 

「んっ、っ……よいしょっ! あれ? ご主人様? 少し苦しそう?」

 

「っ! やばっ! ごめっ! でるっ! でそうっ!」

 

「あ! 出るんだ! ご主人様の赤ちゃんのもと♪」

 

 アスナの扇情的なパイズリによって甘くどろどろに追い詰められた私は、本日二度目の絶頂が迫っていることを確信する。私の言葉を受け、彼女は妖しげに目を細めた。

 

「……いいよ♪ アスナのおっぱいに……出しちゃえっ♥」

 

「っっ!!!」

 

 彼女のその一言によって心臓が破裂する勢いで鼓動が早まる。私は天にも昇るような悦楽とともに理性が弾けた――

 

――びゅるるるっ♥ びゅるるるっ♥ びゅるううううっ♥

 

「わわっ! ご主人様のがおっぱいの中でビクビクしてるっ!? あっ♥ 熱いのが染み込んできてる……っ♥♥」

 

 甘い痺れとともに、アスナの爆乳にザーメンを存分に吐き出していく。

 パイズリによる絶頂。しかも先生として面倒をみるべきはずの生徒に一方的にされながら。未だかつて経験したこともない未知の倒錯感。私はそんなセンセーショナルな悦楽に骨の髄まで蕩けそうになりながらも、止まらない欲望の解放に身を任せていた。

 

「はぁ……はぁっ」

 

「お疲れご主人様♪ 気持ちよかった?」

 

「うん……。すごく気持ちよかったよ……」

 

「わーい! やったー!」

 

 そう言ってアスナは無邪気そうに喜び、肉棒を谷間から開放した。すると連戦によって硬度を失った私のブツが姿を現す。精液でドロドロに汚れ、尿道に残った残滓が鈴口から漏れ出ていた。

 一応掃除という名目があったものの、私の私物であるYシャツは大きな染みだらけだ。肉棒もかえって前よりもひどく汚れてしまっている。だがアスナは当初の目的など忘れ、私を気持ちよくできたことにいたく満足しているようだった。

 

「うーん、なんだか谷間がどろどろしてて落ち着かないなー。――これ、もう脱いじゃお!」

 

 アスナは唐突にYシャツのボタン留めを順番に外してゆき、勢いよく脱ぎ捨てた。

 

「……っ!?」

 

「ふーっ、解放感ー♪ あれ? ご主人様? どうしたの?」

 

 なんの躊躇もなく、アスナは産まれたままの姿を私に披露する。私はしばらく言葉を失った。

 透き通るような白磁の肌、無駄のないくびれた腰回り、それでいてほどよい肉付きの太腿と尻。彫像のごとき神々しい女体美に溜息すら出てしまう。そしてなによりも、私のシャツから解き放たれた一ノ瀬アスナの“たわわに実ったふたつの果実”に視線と心を奪われた。彼女の小顔よりも面積に勝り、表面に白い粘液がへばりついているそれらの頂点には、健康的な桃色の突起が可愛らしく主張していた。また重力に従って垂下しているものの型崩れはしておらず、綺麗なお椀型を留めていた。

 初めて目の当たりにするアスナの裸に私は夢中になった。二回の絶頂を経てクールダウンしたはずの思考と下半身に、再び熱が注がれるのをたしかに感じる。

 

「? ご主人様のおち○ぽ、また大きくなってきたっ!?」

 

「ごめん……アスナの裸があんまりにも綺麗だったからつい……」

 

「え? そうなんだ……えへへ」

 

 私の言葉を受け、アスナは珍しく照れた様子で顔を赤くする。

 

「……ねぇ、先生」

 

「ん? なに?」

 

「せっかくまたおっきくなったし……、私……先生のを……挿れて、してみたい……」

 

 彼女は熱に浮かされたような表情でおずおずと言った。

 それを聞いたとき、心臓がひときわ強く高鳴る。さっきまでの戯れの性交渉とはワケが違う。いわゆる“本番”というやつだ。

 

「……うん、いいよ」

 

「っ! 本当!?」

 

 少し迷ったが、私は彼女の願いを聞き入れることにした。正直ここまであられもない行為をしてしまったのだし、いまさら本番を躊躇することもないだろう。毒を食らわば皿まで、だ。

 

「でも、ちゃんと避妊はするからね」

 

「ひにん?」

 

「アスナが妊娠しないようにするってこと」

 

「どうやって?」

 

「私のブツに薄いゴムを被せるんだ。そうすればアスナの中で射精しても大丈夫でしょ?」

 

「……ふーん」

 

「たしかまだストックはあったはず……。ごめんね、ちょっと取りに行きたいからどいてくれる?」

 

 キヴォドスに着任してからというものの、業務に忙殺されるあまり使わず仕舞いだった避妊具の保管場所を思い出す。そうして上体を起こそうとするのだが、アスナは一向に動いてくれない。

 

「えっと、アスナ? どうしたの?」

 

 痺れを切らした私が尋ねると、彼女はおもむろに口を開いた。

 

「私、このまましたいな……」

 

「え?」

 

「道具を使ってするなんて、なんかエッチっぽくない。エロゲでも『気持ちよくないから』って使ってなかったよ?」

 

「……うーん」

 

 やはりエロゲの偏った知識は純真無垢な彼女に悪影響を与えたようだ。ここは大人である私が矯正せねばなるまい。

 

「別にゴムを付けてもちゃんと気持ちいいセックスはできるからね? それに万が一妊娠でもしたら、大変な思いをするのはアスナ自身なんだよ? いっときの感情に流されて人生を棒に振るようなことは先生として看過できません」

 

「でも、ご主人様と私はもうキモチイイことしたよ? 好きな人同士だよね?」

 

「そ、それは……」

 

 アスナの言葉に詰まってしまう。

 確かに教え子にここまでさせておいて、いまさら先生面で諭すのは筋が通ってないかもしれない。そもそもヘイローを持つ神秘的な存在である彼女らが果たして子種で孕むかどうかも分からないが、それでも妊娠のリスクとなれば話は違ってくるはず。なによりも彼女自身の今後の人生に関わることだ。

 

「私はアスナのことを想って言ってるんだよ? アスナが……キミが好きだからこそ大切にしたいんだ」

 

「そうなんだ! でもね、私だって先生に負けないぐらい先生のことが好きだよ! だから……先生との赤ちゃんができちゃっても……私はうれしいなっ♥」

 

「っ!」

 

 そう言ってアスナは一点の曇もない満面の笑みを浮かべる。

 それはおそらく一ノ瀬アスナの心根からの言葉だった。私のアスナを想う情にも押し負けないほどの力強い愛が、胸の奥まで貫いたような気がした。

 なればこそ、私は大人として、先生としてではなく、“一人の人間”として彼女の想いに応えてやらねばならないのではないだろうか? “一人の女の子”の心を奪った責任を取らなければならないのだ。私は改めて彼女と最後の一線を越える覚悟を決めた。

 

「まっ、それにどうせご主人様は私に叶わないし、力付くで無理やりしちゃうだけだし♪ 強引にされるのがキモチイイってエロゲでも言ってたしね♪」

 

「……」

 

 とはいったものの、やはりアスナがくせ者であることには変わりなく、この恋路はキヴォドスの治安よりも前途多難に満ちているかもしれない……

 

「それじゃあ、このまま生でしよっか。でも私がイきそうになったらすぐ抜くからね?」

 

「うん!」

 

 ひとまず保険をかけ、彼女に横になるよう指示するが……。

 

「……あれ? まさかこのまま挿入するの???」

 

「? え? そうだけど?」

 

 アスナは私に跨ったまま、剥き出しになった私の剛直をなんの躊躇もなく自らの秘所へ誘おうとしている。

 

「いやいや、だめだよ。アスナは初めてなんだから私がリードするって」

 

「アスナはご主人様のメイドだから。私がご主人様を気持ちよくしてあげたいな」

 

「いやでも……」

 

「“騎乗位”っていうんだよね? やり方はエロゲでいっぱい見たから大丈夫! 私、なんでも最初から上手くこなせるタイプなんだ! パイズリだって上手く出来たし♪」

 

 根拠に乏しいその自信の強さは、おそらく彼女の幸運体質から来るビギナーズラックによるものかもしれない。

 とはいえ、上手くいかなかったり失敗したりしたら、その時は私が主導権を取り戻してフォローしてあげればいいだけの話だ。どのみち彼女の意志と力の前に抗えないのには変わりない。

 

「……ここに挿れるんだよね? 先生?」

 

「合ってるよ。挿れるときの角度にも気をつけね」

 

「う、うん」

 

 ああは言ったものの、私に確認を取りながら辿々しく慎重に肉棒を掴んで挿入を試みている。初めてのセックスともなれば、さしものアスナでも多少は緊張するようだ。

 

「ご主人様? なんかニヤニヤしてない?」

 

「ああ、ごめん。いやね、アスナでも緊張するんだなって」

 

「っ! もー! ちょっとは緊張するよ! だって大好きな先生と初めてエッチするんだもん」

 

 しかしアスナは「でも」と続ける。

 

「なんだかソワソワと落ち着かない感じがするというか、緊張とは違うドキドキがあるっていうか……なんかよくわからないけど!」

 

 アスナは息を少し乱しながら、双眸を熱く潤ませていた。おそらく“ムラムラする”というやつだろうが、名前をつけられない感情として処理しているところが純粋なアスナらしく、可愛らしいと思えた。

 そうこうしているうちに、綺麗な紅色の花弁に私のグロテスクなペニスが押し当てられる。

 そこは既に愛の蜜で湿っており、亀頭の先端にねとりと温かい粘液が滴った。

 

「先生……いくよ?」

 

「うん」

 

 了承すると、彼女はゆっくり腰を下ろしていった。

 

「っ! いっ!」

 

「大丈夫?」

 

「うんっ、平気だよ! ちょっと痛いけど……徹甲弾に撃たれるのに比べれば全然平気!」

 

「そ、それはさすがに分からないな……」

 

「とにかく大丈夫! ……っ……んっ……!」

 

 途中引っかかったものの、初めてにしては比較的スムーズに挿入が進み、いよいよもって根本まで剛直が彼女の蜜壺へと呑み込まれた。

 

「……っ! はいっ……たっ♥ あはっ……♥ すごい……先生ので……お腹がいっぱい……♥」

 

 アスナは挿入を果たした達成感に恍惚と浸っている。その一方で私はというと、存外に余裕がなかった。

 膣壁を無数に覆う肉襞が熱くうねるように複雑にペニスに絡みつき、その刺激だけでも達してしまいそうになるほど強烈な快感を与えてくる。女性と致した経験はあるが、それでも随分前の話だし、ここまで気持ちいいものだった憶えがない。それほどにアスナの膣内の具合がイイのか、あるいは単に身体の相性が抜群なのかもしれない。

 

「それじゃあ動くよ?」

 

 アスナは私の返事を待つまでもなく、逸る気持ちのまま腰を動かし始めた。

 

「っ……こう……かなっ。んっ! ……ぁっ」

 

 アスナは私の腹部に両掌を置いて上体を支えながら、アヒル座りに畳んだ足と細い腰を使って慎重に上下する。

 

「大丈夫……、そのままゆっくり……アスナのペースでいいから」

 

 彼女の初めてのセックスを静かに見守るなか、次第に痛みから快楽へとシフトしていったのか、強張っていた目元をとろんと蕩けさせ、くぐもった声を上げはじめる。

 

「っ! ……んんっ♥ ……あっ♥ ……っっ♥」

 

 初めて聴く彼女の悩ましい喘ぎ声に、私はどうしようもなく劣情をを煽られた。思わず下からガンガンに突き上げたくなる衝動に駆られるが、ぐっと堪えて彼女の感じやすい箇所をさり気なく探りつつ、ピストンを補助する程度の腰使いに留めていた。

 

「はぁっ……♥ あっ♥ んっ……ん♥ はぁっ♥ んっ♥」

 

 徐々にだが、彼女の腰の動きが速まる。私の肉棒を秘所に抽挿させるのに積極的になり、二玉の肉メロンが彼女の動きにあわせて大胆に揺れる。私も私で、火傷するほどに熱くてヌルヌルと締めつけてくる彼女の腟内(ナカ)の感触を愉しみつつ、少しづつストロークをつけてみた。

 

「っっ! んっ♥♥」

 

「……ここがいいの?」

 

「ぅんっ、いま……すごく……きたっ……♥」

 

 アスナの弱点を見つけた私は、筋肉痛に耐えて彼女の太腿をつかみ、腰をグイと押しつけるようにその角度と位置を重点的に突いた。

 

「ああっっ♥♥ んっっ♥ やっ……♥ やだぁっ♥ 先生……っ♥ だめだよっ♥♥」

 

 私が腰で叩くたびにアスナは泣きつく子供のように嬌声をあげる。自分の腰使いひとつで思うがままに喘がせているという征服欲を満たされ、気を良くした私は肉欲を抑えきれなくなり、下から遠慮なくピストンして責めてしまう。

 

「アスナ……っ!!」

 

「ああ、あ、ああっ♥ やっ♥ んんっ♥ ――もうっ♥ だめーーっ!」

 

「……いっ!?」

 

 ところが、されるがままだったアスナは突然、私の両手をガシッと掴んでベッドに抑えつけ、覆いかぶさるように押し倒した。

 両腕に奔る激痛によって目が覚めると、彼女の整った顔立ちが目と鼻の先にある。生暖かい吐息が鼻にかかった。

 

「ご主人様は頑張っちゃだめっ! ご主人様のメイドである私がご主人様を気持ちよくするのっ」

 

「え、えっと、ごめん?」

 

 アスナは真っ赤に染まった困り顔でぷりぷりと私に怒った。

 例のごとくメイドとしての矜持を謎に発揮しているのだろう。ここで意地になっても仕方がないので、私はひとまず彼女の意志を尊重することにした。

 

「……うん、わかった。アスナ……私のこと気持ちよくしてくれる?」

 

「! うん! もちろんだよ! ご主人様♪」

 

 そうして機嫌を取り戻したアスナは、私に覆いかぶさった体勢のまま改めてピストン運動を再開させるのだった。

 

「んんっ♥ でもっ……おかげでコツ……わかったかもっ♥」

 

「えっ?」

 

「さっきの……ご主人様みたいにすれば……いいんだよね……♥ ふふっ♥」

 

 なにやら要領を得たらしいアスナは妖艶に笑い、腰を振り始めた。

 

「っ♥ あっ、んっ♥ っ♥ ……あっ♥」

 

「くっ……ううっ!」

 

 さっきまで慎重になっていたのが嘘のように、アスナは貪るようにピストンを繰り返して私を責め立てる。彼女の尻がリズミカルに振り下ろされ、その都度私の股間に柔らかい重みが叩きつけられる。肉と肉がぶつかる原始的な音が鳴り、彼女の秘裂からは粘液質の淫靡な水音が漏れ、艶やかな声が自室に響き渡っていた。

 

「どおっ? ご主人様……っ、きもち、いいっ?」

 

「アスナっ! きもち……いいっ!」

 

「えっへへ♥ ご主人様がっ……もっっと、きもちよくなれるトコ……どっこかな~♥」

 

 アスナはさっきの意趣返しとばかりに、単調なピストンのなかで探り探りにいろんな動きを織り交ぜはじめた。

 挿入角度を前後にズラしたり、くいっと腰を捻らせてツイスト運動を加えてみたり、本当に初めてとは思えないほどのテクニシャンぶりだ。行き当たりばったりのマグレと揶揄されることもあるアスナだが、ここぞというときに発揮できるこの類稀な器用さがあってこその幸運なのかもしれない。

 

「ッッ!」

 

「……あっ♥ へぇ~? “コレ”なんだぁ♥」

 

 敏感な亀頭部が膣奥の壁に擦りつけられたとき、私は思わず本気の喘ぎ声を漏らしてしまった。その決定的瞬間を見逃さなかったアスナは、にやーっと口角を尖らせて目を細め、私に耳打ちした。

 

「――先生の弱いとこ……みーっけ♥」

 

 とろけるように甘い囁き声が鼓膜を通して脳に浸潤し、背筋にゾクゾクとしたものが駆け巡る。特に意識せずやったことなのだろうが、私はこの子のナチュラルボーン小悪魔ぶりが末恐ろしくなった。

 

「先生っ♥ いっぱい、いっっぱい気持ちよくしてあげる……っ♥」

 

 そうして好機とばかりにアスナはピストンを止め、根本まで深く咥え込んだまま抑えつけるように腰をグラインドさせた。

 彼女の腰使いは実に巧みで、亀頭の先を的確にグリグリと柔襞で愛撫してくる。たちまち私は悦楽に悶え、歯を食いしばって射精感に耐えるので精一杯になった。

 

「くっ! っ! ああっ!」

 

「あっっ♥ これ……イイっ♥ すきっ♥ 先生のと私ので……深くキスしてるみたいっ♥ んっ♥」

 

 彼女は私の上で下半身を激しく淫らに捩らせながら、情熱的に抱きしめてくる。スーツ越しにアスナのおっぱいが強く押しつけられる極上の感触に昂ぶりつつ、二つの身体が一つに溶け合う錯覚にどうしようもなく愉悦を憶えた。

 

「先生……っ♥ ああっ♥ 先生……先生っ♥」

 

「あ、アスナ……っ!」

 

 先生、と彼女は縋るように連呼し、美しい貌をだらしなく蕩けさせている。もはや『ご主人さまを気持ちよくさせる』という目的も忘れ、肉欲のおもむくままに腰を動かしているようだった。

 

「せんせ……っ♥ っ♥ せんせいっ♥ やだっ♥ んっ♥ なんか……きちゃうっ♥ やだぁっ♥ あ、あ、ああああっっ♥」

 

「アスナっ!! 私も……もうっ!」

 

 アスナも私も限界を迎える。

 しかしながら、避妊具を付けてない私がここで絶頂してはならない。今すぐ抜き取らねばならないのだが……。

 

「ごめっ! 出そう! だから、はやく、抜いてっ!」

 

「んっ♥ ああっ♥ せん、せっ、せんせいっ♥♥ せんせいぃっ♥♥」

 

 しかしながら、結合部からしどどに溢れる愛液を狂ったように掻き混ぜ、口をだらしなく開けて涎を垂らし、肉欲に支配された虚ろな眼差しを浮かべる今の彼女に私の声は届かない。

 力で敵わない彼女に押し倒され、深々と合体したまま逃げられないこの状況。焦燥感と忌避感に苦しむが、その後ろめたさとは裏腹に本能は『彼女の膣奥に精を放ちたい』と私をひたすら誘惑していた。

 

「だめっ♥ あっ、あっ、あああ、ああああっ♥ っっ♥ ~~~~~ッッッ♥♥♥♥♥」

 

 アスナは私よりも先にオーガズムへ達した。

 目端に涙を溜めた双眸を閉じ、唇をキツく縛り、声にならない悲鳴をあげる。背中が弓なりにしなり、全身がビクビクと痙攣していた。

 すると膣内の締めつけが急激に強まる。無数の肉襞がうねるようにざわめいて、ペニスをねっとりとしゃぶりあげた。

 

「――っ!!」

 

 極限まで追い詰められていた私が、それに耐えられるはずがなかった。あえなく絶頂へと導かれ、甘い痺れが下腹部に集中した――

 

――びゅるううううううっ♥ びゅるうううっ♥ びゅるるううーーーっ♥

 

 ガクンと腰が落ちる感覚とともに、己の存在全てを放出する解放感に酔いしれる。

 最奥まで穿たれたペニスがドクンドクンと力強く脈動しながら白い欲望を吐き出し、膣内に存分に充填していった。

 

「っぐっ……はぁ……はぁ……ああ……」

 

 ――やってしまった。

 極楽の射精を経て、冷静になった頭でまず思い至った。

 私は流されるままに教え子とセックスをしたどころか、無責任にも中出しをしてしまったのだ。

 後悔。というよりも、彼女の人生を歪めてしまうのではないかという不安が苛んだ。

 

「せん、せい……っ♥ ……すごい……きもちよかった……それになんだかすごくしあわせ……せんせいとのエッチ……さいっこうだよっ」

 

「アスナ……」

 

「先生っ♪ すき……っ♥」

 

 ごめん、と言おうとしたとき、アスナはぎゅっと寄り添ってきた。

 こんな自分のことを純粋に慕ってくれているそのひたむきさに、私はほんの少し救われる。彼女のピュアな想いを謝罪の言葉で濁してしまうのは気が引けた。

  

「……私も好きだよ」

 

 私も彼女に倣って飾らない言葉で返し、愛でるように頭を撫でてあげた。そうしてアスナはいつも見せてくれるような屈託のない笑顔を浮かべるのであった

 

 

*

 

 

「わーっ、また中からご主人様のがいっぱい出てきてるよーっ!?」

 

「今のうちにちゃんと全部出しとこうね。中途半端に残ってると、あとでまた出てきて困っちゃうから」

 

「はーい♪」

 

 全てが終わったあとの昼下がり。私とアスナは二人揃ってシャワールームで身を清め合っていた。

 アスナが言うように、彼女の膣内からは白濁液が溢れている。せめてアフターピルを服用できればいいのだが、生憎そのようなものは持ち合わせていなかった。今後またこういうことがあるのであれば、備えておくべきかもしれない。

 

「ふーっ、さっぱり!」

 

「さすが最新式、しっかり乾いてるね。ちょうどいいからこのまま着ちゃえば?」

 

「うん! そうする!」

 

 シャワーから上がって髪を乾かし終えたアスナは、昨夜から放置されていたメイド服や下着やその他諸々の衣類を洗濯機から取り出す。それらの複雑な着用手順をテキパキとこなし、あっという間にいつもの見慣れたC&C所属エージェントの格好となった。

 

「朝食は食べそびれちゃったけど、これから何かお昼食べに行かない?」

 

「んー」

 

 逡巡している様子の彼女の返事を待つ傍ら、行為で汚れてしまったスーツの上着を洗濯機へ放り込んでボタンを操作していると、アスナは私の腕にしがみついて言った。

 

「ご主人様の作ったオムライスが食べたい!」

 

「え? 昨日と同じだけどいいの?」

 

「また食べたい!」

 

「うーん……まぁいっか。待ってて、チキンライスの在庫はまだあったし」

 

「わーい!」

 

 私のお手製がよほど気に入ったらしく、作るのを了承するとアスナはぴょんぴょんと跳ねて嬉しさを表現した。大したものではないとはいえ、ここまで喜ばれるのなら悪い気はしない。

 私は台所に立ち、昨日と同じ要領で二人前のオムライスをサクッと作り終えると、テーブルで今か今かと待ち侘びる彼女の元へと運んだ。

 

「はい、お待ちどうさま」

 

「美味しそう♪ いただきまーす!」

 

 アスナは手と手を合わせると、さっそくスプーンで焼き卵の表面とチキンライスを掬う。白い湯気が立ち昇る熱々のそれを頬張ると、途端に両目を輝かせた。

 

「んーっ! やっぱりおいっしー♪」

 

「ふふ、よかった」

 

 私の作ったオムライスを美味しそうに頬張る彼女を眺めていると、なんだかこっちまで嬉しくなってしまう。何気ない日常の幸せっていうのはきっとこういうものなんだろう。なんて、しみじみと思うのであった。

 

「それにしても、どうしてこんなに私のオムライスを気に入ってくれたの? アスナってオムライス好物だったっけ?」

 

「えっとね、実はね、前に行ったメイド喫茶のオムライスがすごく美味しくて、それで私もあんなオムライスを作って、ご主人様に食べさせてあげたいなーって思ったの!」

 

 しかし彼女は「それで自分で作ってみたんだけど……」と表情を曇らせた。

 

「同じ味がなんとなく出来たんだけど、作り方を全然憶えてなくて……。一生懸命思い出そうとしてたら、いつの間にか“一週間”も経ってたんだー。……でも先生が作ったオムライスがメイド喫茶のオムライスよりも、ずーーっと美味しくかったの!」

 

「へー、そっかぁ。そんな“一週間”も。……ん?」

 

 私は彼女の口から出た『一週間』という単語が猛烈に引っかかった。

 

「一週間……一週間前ってたしか、アスナが『エッチしよう』って私の部屋を突撃してきた頃だよね?」

 

「うん? あー、そういえばそうだね!」

 

 昨日ネロの相談を受けたとき、アスナの異変は一週間ぐらい前から始まったと聞かされた。だから私はアスナの誘いをやんわりと断ったことが彼女の不調の原因だと推察した。

 そのはずだったが……。

 

「えと……アスナさん? 実は昨日ネロから『最近アスナの調子が悪い』って相談されてね? 現に昨日のアスナは様子がおかしかったと思うんだけど……。もしかして“オムライスの作り方が思い出せない”のが原因だったって……コト?」

 

「うん! ずーっと思い出そう思い出そうと頑張ってたんだ。でもご主人様のオムライスを食べたら、どうでもよくなっちゃった♪」

 

「へ、へぇ……そうなんだ……あ、あはは……」

 

 ――つまり、アスナは私に拒絶されたことを思い悩んでいたわけではなかった。ネロと私のあの苦悩と問答は完全に取り越し苦労だったのである。

 

「あはは……あは」

 

「ご、ご主人様? 大丈夫? あーん?」

 

 全身を襲う虚脱感のままにテーブルに突っ伏すと、アスナは心配そうに自分の分のオムライスをスプーンで差し出す。私は差し出されたそれを半ば自棄気味に食べた。

 

「……それにしても、ご主人様とエッチできてよかったな!」

 

「え?」

 

「だって前よりもすっっっごく仲良くなれた気がするんだもん! これからもいっぱいエッチして、いっぱい仲良くなろうね! ご主人様♪」

 

 そう言ってアスナは、心の底から幸せそうに微笑んだ。

 一ノ瀬アスナは個性豊かなキヴォドスの生徒のなかでも、とりわけ一癖も二癖もある女の子だ。馴れ初めの経緯も普通ではなく、これからも彼女の不思議な恋に振り回され続けるかもしれない。

 それでも私は、彼女だけが持つこの“特別な輝き”を、ずっと傍で見守っていたい。そう思わずにはいられなかった。


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