お父様、子供達はただの人間になっています。
セントラルに戻るのは久しぶりになる、暫くはこちらで過ごす予定なので軍の司令部に行き、マスタングに挨拶をすると以外だといわんばかりの驚きの表所・迎えられた。
友好とはいいがたいし、仲がいいわけでもない、だが、挨拶ぐらいの礼儀は多少は心得ているとスカーは思ったが、その不満を顔には出さなかったし、言葉にもしなかった。
そのまま宿に戻るかと思ったが、思いなおして後に立ち寄ったのは、ティム・マルコーの仕事場だ。
イシュヴァールで医者として働くといった彼がセントラルの軍医として働いていると聞いたとき、何故と思わずにはいられなかった。
気になって彼の元を尋ねたのは好奇心もだが、知人、知り合いの少ないスカーにとってマルコーは唯一、話しやすい気心のしれた人間というせいもあっただろう。
尋ねて来た自分の姿を見て、驚いたマルコーに何故、ここで働いているのかと聞くと、ここ最近、街にイシュヴァールの人間が移住してきたという。
移民、難民生活が長い為、適切な手当を受けられない者も多いと聞いて、マスタングが自分に声をかけたのだという。
だが、スカーは、その話を聞いて、それだけかと言いたげな顔になった。
他に理由があるんじゃないのか、疑問を口にするとマルコーは少し困った表情で、色々とあるんだよと濁すように口の中で、独り言のような呟きを漏らした。
何か面倒ごとに巻き込まれているんじゃないかとスカーは真面目な顔で尋ねたとき、突然、ドアをノックする音が響いた。
返事を待たずに入ってきたのは金髪の男だ、一瞬、誰だろうかとスカーが不思議そうな顔になった。
部屋の中に入ってきた男は、部屋の奥のベッドを確認するように見るとマルコーに向かってどこにいると尋ねた。
散歩だ、その言葉に男は、そうかと頷くと出ていこうとした。
「待ちたまえ」
ドアの前で振り返った男はんなにかと問いかけた、明らかに不満げな顔にマルコーは思い直したように何でもないと促した。
あれはフラスコのこびとか、男が部屋を出て二人きりになるとスカーは思い出したように尋ねた。
金色の長い髪と髭の姿、だが、先ほどの男には髭がなかった。
そうだと頷いたマルコーは、少し困ったような顔で、あの男は、ここで働いているといいながらスカーを見た。
その言葉にスカーは耳を疑った、
「賢者の石についてね」
「信用できるのか」
「あの男は人間だが、知識は本物だ」
奥歯にものが挟まったような、言いかけては黙りこむ様子に、これ以上はと思ってスカーは聞くことはしなかった。
セントラルは一週間ほどで用がすめば、あちらにつもりだった。
ところが、宿をとっていることを知ったマルコーは軍の宿舎なら無料だから、キャンセルしたらどうだと言ってきたのだ。
自費で泊まるつもりだったし、最悪の場合は野宿でもできるというと君も一応、軍に勤めているんだ、それに宿代の一部は税金だよと言われると自分が、ひどく悪いことをしているような気分になってしまう。
いや、多少なりとも罪悪感を感じてしまった。
宿をキャンセルした後、宿舎に戻るかと向かっている途中、ぽつぽつと雨が降り始めた。
空を見上げると雲は黒く、やみそうにないなと思い、走るかと思ったとき、声をかけられた。
振り返ると女が近づいてくる、見たこのない顔だ、と警戒したのは、もしかしてホムンクルスかもしれないと思ったからだ。
「わかりませんか」
頭に被っていた布をとると、そこから現れたのは白い髪だ、イシュヴァール人かと思ったが、女の知り合いなど数えるほどしかいないだけに、益々、怪訝な表情になったスカーに女は困った顔でミヤですと名乗った。
そのときになってスカーは初めて女が誰なのかわかった。
「傘、ありますよ」
女が持っていた傘を手渡すとスカーは首を振ったが、断られてしまった。
「駄目なんです」
そういって女は自分のお腹を見てくださいといわんばかりに軽くぽんぽんと叩いた、すると小さな声が聞こえた。
女と腹に抱えている猫が濡れないようにと隣を歩く巨漢の男の姿は晴れていたら見物だろう、だが、雨が降っていても、それは同じらしい。
「どこに泊まっているんだ」
すぐには返事が返ってこなかった、
「ブラッド、お父様が呼んでいるわ」
美女に呼び止められて、そうかと小さく頷いた後、どんな用だろうと尋ねた。
何故、そんな事を聞くのかとラストは不思議そうな顔をした
歳の差があまりない為だろうか、エンヴィーやグラトニー対するものと自分に対する彼女の態度は微妙なものがある。
「でも、よくなさそうよ、機嫌」
問いかけるような視線にブラッドは苦笑した、知っていて聞くのだろうと思いながら、だが、その場を立ち去ろうとすると呼び止められた。
「仲がいいのね」
その言葉に、はっとした。
「色々と助けて、面倒をみてあげているんでしょう、世間の大抵の人間は、あなたみたいな人のそばに女がいると色々と噂するのよ」
「噂、だと」
「軍の噂話をお父様が知らないわけはないわ、何も言わないのは自覚がないのか、認めたくないのかのどちらかしら」
「ラスト、一体、何を」
「あなたの、あんな顔が見れるなんて思わなかったわ、あたし」
「それを言うのかい、いや、私も君が、あんな顔をするとは思わなかったよ」
数日前の事を思いだした。
自分が彼女と街中を歩いているとき、偶然、会ったのだ、あのとき、彼女は自分の妹だとラストのことを紹介したのだが。
兄が自分に恋人を紹介してくれるなんてと彼女は笑ったのだ。
まさか、そんなことを言われるとは思わなかったし、声を上げて笑う彼女の笑顔を見るのも、それも、あのタイミングでは初めてはないだろうかと思ったのだ。
「女の人には優しくしてね、兄さん」
その呼びかけにブラッドレイは驚いた、そんな呼び方をされるとは思わなかったからだ。
だが、驚いたのは次の言葉だ。
「大事にしなくてはね、恋人なら」
「そう、見えるのかい」
「あら、違うの、それとも自覚がないのかしら、少なくともお父様よりは」
ほんの少しブラッドレイは考えこんだ、彼女、妹は自分に何が言いたいのかと、そんな疑問が顔に出たのかもしれない。
「ドクターには気をつけたほうがいいわ」
「医者、マルコーのことかい」
頷く彼女は、ああいうのが一番、厄介だったりするのよとしたり顔で呟いた。
「恋や愛って、大抵の場合、ままならないことが多いのよ」
自分よりも経験があるから、そんな事をいうのだろう、ブラッドは小さく頷いた。
「確かに、敵を知るよりも難しい、隣を歩いていても何を考えているか、わからない」
父上に会いに行くよ、するとラストは、気をつけてねと軽くウィンクした。
大阪コミックシティ123、体調を考えて参加は諦めました。
昨年末に寝込んでしまい、今は大分良くなったのですが。
会場までは:当日は公共交通機関でご来場くださいというメール新大阪からシャトルバスが出ていること、色々と考えて万全の体調で臨みたいと思いました。
三月にはハガレンの舞台もあるし五月、八月の大阪イベントには出たいと思います。