若い二人はどうなるか、きっとこうなる日は来るさ。
二人並んで寄り添って、滑って転んで何とかなるさ。
楽しい日々は、終わらない。きっとずっと、終わらない。
思えば、子供の浅知恵だったのだ。
バスケを続けたいという事だけで、家族との生活を捨ててまで日本に残ろうとする訳がない。それを必死で繕って、見ないようにしていた。バスケ以外を考えてはいけない、バスケで結果を出すことだけが私の全てなのだと。
――そんなわけ、ないだろう。私は最初から、好きだったんだ。大喜くんを、好きだったんだ。
私を見てくれていた、支えてくれていた。日本に残る理由はバスケだけじゃない、大喜くんから離れたくなかったんだ。
猪股家を出る機会も理由もあった、だけどそれを選ばなかった。大喜くんと一緒にいたいから。
それに気が付いて私は、
蝶野さんへの配慮も居候としての矜持もかなぐり捨てて、ただ真っ直ぐに。私は大喜くんへと想いを伝え、そしてそれを
我ながら強引で身勝手だけど、でも我慢なんかもう限界だったんだから仕方がない。
まったく、私と来たら。こんなだからユメカに当て擦りされるんだろうな。あの子とにかく口悪いから、とにかく言い方が酷いんだ。
だけど、でも。私は今、幸せだ。
「千夏先輩、ちょっとそこ座ってください」
雪舞う12月の空の下で告白を終え、ふわふわした感じで帰宅して暫し。まだ気持ちは浮わついたまま、大喜くんの部屋で私は正座させられている。
何だろうな、一体。こうして二人きりになったんだ、もしかして色々と関係を進めようと言うんだろうか。大人の階段をかけ上がる時が、来てしまっているのかも。うーん、期待はあるけどちょっと怖いな。最近部活以外じゃ厚着だから、あれこれお手入れサボってるし。それに階下には由紀子さんたちがいるわけで、さすがにちょっと不味いと思う。この寒空だし、追い出されるのは勘弁だ。
ああでも男の子は一回
そんな事を想いながらソワソワしていると、大喜くんも私の前へと正座する。お互いこうやって向かい合うのって、なんだか可笑しいな。だけど大喜くんは真面目そのものの顔で、私も思わず背筋が伸びそうになってくる。
「えーと、ですね。俺も千夏先輩が好きです、それはさっきも言った通りに。――でも」
一瞬目を伏せ、そして大喜くんは真っ直ぐ私を見詰めた。
「俺たちはまだ子供で、
…………え"?
大喜くんは一体、何を言っているのか。それを理解するまで、たっぷり一分を要した。私の頭なんかそんなもんだ、負荷をかけないで欲しいんだけど。
私が期待する事、それを「まだ早い」という理由でお預けにすると。そう言っているわけだ、大喜くんは。
「多分自覚ないんでしょうけど先輩、前からやたら触ってくるしずっと視線がイヤらしかったです。何て言うか俺、先輩に喰われそうでちょっと怖かったんですよね」
ぬ。ぬぬぬ。ぬー……、まさかそんな。私がそんなえっちな女だと言うのか、失礼な。
いやまあ、そりゃ触ってたけど。可愛いなぁ可愛いなぁ、良い子良い子ー、ってしてただけだ。他にもお風呂上がりの火照った姿を見ようとタイミング見計らってジャンプ借りに行ったりするし、筋トレしてる所を微笑ましく見てたりもするけど、あれもそれも「親戚のお姉ちゃん」的な視点だ。変な意味では、……無い筈なんだけど。筈なんだけどなあ、うん。少なくとも大喜くんからしたら、そうは思えなかったようだ。
「正直に言いますと、俺だってしたいですよ。でも今ここで盛り上がる訳にはいきません、お互い我慢しましょうね」
それは、それは――正論だ。私たちには、するべき事が山ほどある。それをかなぐり捨ててしまうなんて出来ない、いや出来てもしたくない。私のために全てを擲つ大喜くんを、果たして好きでいられるか。大喜くんは夢を放り出してしまった私を、好きでいてくれるだろうか。そう思うと、そら恐ろしい。
好きでいるために、好きでいてもらうために。最後の一線は、守らなければいけない。
理屈では分かるし、大喜くんを困らせたくはない。
「じゃあさ、何処までなら許してくれる? 例えば、……キスはしちゃダメ?」
大喜くんに触れたい愛したい、大喜くんに触れられたい愛されたい。それを圧し殺して生きられる程、私は器用ではないんだ。
一気に進めなくても良い、でも止まったままでいたくは無い。
正座のまま拳を握って待つこと、数分の後。
私と大喜くんは、ぎこちなく初めてのキスを交わした。
季節は流れ、夏休みも終わろうと言う8月の末。私たちは一年前に一夜を過ごした、あの民宿を訪れている。
まだ敗北の傷も癒えないまま、蝶野さんが告白したと知り。先輩が早めの引退を決めて副キャプテンとしての責を負う事になった、あの頃。追い詰められて追い詰められてどうしようもないまま、良くない事と思いながら私は大喜くんにすがったのだ。自分から線を引いておいて、近付いてはいけないと言っておいて、私と来たら。
こんな見下げ果てた先輩にも、大喜くんは優しかった。何も聞かず誕生日を祝ってくれた、それだけで私は救われて。救われてそして、改めて気が付いた。私はこの人を、好きなのだと。17歳になって最初の朝陽を浴びて、そう確信したのを覚えている。
そしてこの夏、私たちは揃ってインターハイ出場を果たした。とは言え理想通りの結果とはいかず、栄明女バスは惜しくも全国制覇を逃して二位に終わり大喜くんは遊佐くんに競り勝てず涙する事になってしまったけれど。でも大喜くんにはまだ、来年がある。――そこに私は寄り添えないのが、辛いな。
栄明を卒業した後は、家族の所へ合流しなければならない。それはもう私の意思ではどうにも出来ないし、そもそも日本に残った事自体がワガママだったのだ。これ以上お母さんたちを困らせるのは、胸が痛む。薄い胸とは言え、だ。
「千夏先輩、お疲れさまでした」
「ありがとう、大喜くん」
私はこれで引退、ウインターカップは後進に任せる。結果はどうあれ、もう私は完全燃焼しつくしたから。それに、それに。
責任は全て果たした、ここからはもう自由にしていいだろう。ずっと我慢したんだから。
大喜くんも私の考えを察したのだろう、少し顔が赤い。
そう、私がここに来たのは想い出に浸る為でも労って貰いたいからでもない。
「大喜くん。私はまだ、我慢しないといけないかな? 私は大喜くんとその……キスより先、全部したい」
もう良いはずだ、ここまでずっと堪えてきたんだ。大喜くんにもっともっと好きになって欲しいから、全力で頑張ってきた。別れの日まで恙無く一緒にいたいから、交際を周囲に悟られないよう必死で努力した。
これでもまだ足りないというなら、私はもう破裂する。
「……そう、ですね。俺も千夏先輩と、……したいです」
異性の裸と言うものは、物心ついて以来見たことは多分無い。あってもお父さんくらいだろう、恐らくは。異性に自分の裸を見せるのも、きっと同じ。
これからする事を考えれば脱ぐのは当たり前なのだけれど、でも結構恥ずかしいものなんだな。いくら大好きな人相手であっても。
身体を寄せあってキスをして、そして大喜くんを掻き抱く。その肌は熱く、ほんのりと赤く染まっている。私もそうなんだろうな、と思うとなんだかおかしい。そしてまま、私たちはお互いをまさぐりあう。触れたことの無い場所を、そして触れられたことの無い場所を。
「んー……と、さ。
「え、あー……どう言ったもんでしょうかね……」
大喜くんのその、……オトコノコを撫でながら聞くけれど返ってくる言葉は歯切れが良くない。まあ大喜くんも大喜くんでおっかなびっくり
手の中で震える熱い肉の塊を指先でなぞりながら、その形を少しずつ脳裏に描いていく。さすがにまだ、見るのは怖いな。でもガチガチに張り詰めた感触と指に伝わる鼓動は、十分すぎるほどの存在感を放っていた。
こんなにも硬く大きいものが、これから入ってくるのか。そんな事を考えようとした矢先、脚の間から快感が上がってきて思考を澱めてしまう。大喜くんの手は当然私の意思とは無関係に動き回り、油断すると内側にも食い込みそうだ。こういう触り方はまだしたことがなかった、今度自分でもしてみようか。
とは言えそれはもっとあと、明日以降の事。
今はこっちに集中だ、うん。
「えっと、これくらいで良い……かな。あんまり触りすぎると良くないんだよ、ね?」
と言うか一旦手を離してくれないと、私の方が持ちそうにない。気持ち良いのはスゴく良いんだけど、今日はそれだけじゃダメなんだ。
布団を汚すのは心苦しいし後で寝られなくなるから、とりあえずバスタオルを何枚も重ねた上へと私は腰を下ろす。聞いた話だと凄く
脚を開いたまま身体を背中側へと倒し、僅かに上半身を起こしてみる。……ちょっと腹筋辛いかな、これ。途中で止まるのって意外とキツい。腕で支えないとダメか。
でもこうすると、脚の間に大喜くんが見えてなんだか可笑しいな。大喜くんからは私の穢い部分が全部見えているわけだし、可笑しがっている場合でもないけど。
ここから、だ。これから大喜くんが、私の中に入ってくる。一つになる、セックスを――する。
心臓の高鳴りは収まる事を知らず、上気した頭からは刻一刻と冷静さが失われていくのが分かる。それはきっと大喜くんも同じだろう、手で反り返ったオトコノコを支えながら、ハァハァと荒い息を吐いているから。……実際見るとエグいなー、あれ。大丈夫かな、裂けたりしないかな。
――と。
「あの、先……輩っ。えと……何処に、……その……入れたら……?」
大喜くんの興奮と困惑が入り交じった声が、私の理性を僅かに揺り戻した。そうか、そりゃそうか。大喜くんだって、初めてなんだから。
ちょっと待ってね、と私は身体の支えを左腕に一任し、右手をそっと自分のオンナノコへと持っていき――。
「ん、……どう、かな。見える……よね?」
くちゅりと音を立てて、そこを割り拡げた。外気にまず触れない部分を晒している、大喜くんに私のこんな場所まで見せているという背徳感が凄まじい。
勿論一人でこんなことした事はない、考えたこともない。それでも私の手は、口は、まるで大喜くんをリードしようというかのように動いていく。
「ここ、真ん中……辺り……。穴……がある、から……そこぉ……」
自覚はしてなかったけど、どうも私は
何度か上滑りしながらも大喜くんの先端は私の粘膜を捉え、ゆっくりと進み始めた。指さえ入った事がない場所を、メリメリと抉じ開けて。
「……っ、ぁ……」
痛い、とは思う。でももしそんな事を言ったら、優しい大喜くんはこれ以上しようとはしないだろう。もしかしたら泣いて謝るかもしれない。
そんな風にはなりたくないから、少しだけ堪えて意識を膣内に集中させる。そして私の中にいる、大喜くんの分身へと。
焼けた鉄の棒のような、でも優しい凶器。これをいとおしいと思えるまでには、何回か経験を重ねないとダメなんだろうな。だけど、でも。それでも尚大喜くんへの愛情は増すばかりだ。
必死なその表情も、ぎこちない愛撫も、何もかもが可愛くて愛しい。ああ、堪らないな。これからまだまだ私は、大喜くんを好きになる。きっとそれは、終わることがない。この命が尽き果てる、その時までは。
いつしか痛みは和らぎ、お腹の奥からは快感が膨れ上がり始めている。これがはぜたら、私はどうなるんだろう。その期待から大喜くんに合わせ、知らない間に腰を揺すっている自分がいる。
深い深い部分を抉られ、引っ掛かれ、押し込まれては浮き上がる。そんな瞬間瞬間は、気が狂う程に気持ち良い。
視界は歪み息も絶え絶え、切れ切れに喘ぎを漏らしながらも私は――確かに感じていた。お腹の中のオトコノコが、激しく震えるのを。
それがなんなのか、気が付いたのは刹那の後。
「んぁ、……ぅぁ……あぁ……っ」
ドクンドクンと拍動が弾けると共に、身体の一番奥へと何かが注ぎ込まれていく。大喜くんの射精を受け止めている、それを認識した瞬間、私の意識も白く蕩け出していた。
ああ、良かった。私はちゃんと、大喜くんを気持ちよくさせてあげられた。私一人だけ気持ち良いなんて、不公平だから。
その満足感だけを抱いて、私は目を閉じる。幸せすぎて、死にそうだ。
「汚れるもんだねえ……」
「汚れましたねぇ……」
お互い疲れ果て、内風呂で身体を洗ったのは良かったものの。部屋は惨憺たる有り様になっていた。どうにか布団は無事だけど、意外な位に汚れが飛んでいる。それにバスタオルには、結構目立つ量の血痕まで。こりゃ痛いわけだ、うん。
ちょっと多めにお金出した方がいいかな、心付けとかそういう名目で。
それにしても、だ。
「あー……気持ち良かったぁ。ありがとね、大喜くん」
「何よりです、千夏先輩」
布団の中で顔を見合わせて感謝しあう、それがどうにも幸せだ。これを今日限りにはしたくない、もっともっと愛したい愛されたい。その思いもきっと同じだろう、私たちは似た者同士なんだから。
だからそう――、言ってしまおう。こういうのは、歳上から行くのが筋だし。
「一年半、お互い我慢しよう。来年の春までに親を説得するからさ、大喜くんが卒業したら……結婚しよう」
「――はい。それまで浮気しないでくださいよ、先輩」
なんだとこんにゃろう、と顔をむにむにしながら私は思わず笑ってしまっていた。笑いすぎて涙まで流しながら、それでも。やっぱり似た者同士の私たちだから、大喜くんも同じように泣き笑い。
たったの一年半、それっぽっちの我慢なんて楽勝だ。その先にある二人の、いや
そう、大喜くんはまだ知らない。私は大体毎月の一週目終わり辺りから生理が始まるから、今は所謂危険日なのだということを。驚くだろうなぁ大喜くん、卒業して迎えに来た私が子供抱いてたら。まあ当たるとは限らないから、可能性の話なんだけど。
もうじき18歳になって初めての夜明けが来る、そんな時間に二人横たわって笑いあう。この瞬間の幸福が、これからも続きますように。願わくば残りの人生すべてが、幸福に包まれますように。
そう祈りながら、大好きな人を抱き締めて。私はただ、幸福に浸っていた。
「来年の今日、一時帰国してまた泊まろっか?」
「自分で一年半って言ったことくらいは覚えてて下さいよ、千夏先輩」
「むー、風情がないなぁ。まったく、しょうがないパパで困りまちゅねー」
「え。あのどうして自分のお腹と喋ってるんですか千夏先輩、そしてなんでニヤニヤするんですか千夏先輩、千夏先輩千夏先輩」
今回は真っ直ぐイチャラブになりました。