その足柄―――黒鉄足柄は、俺にとって特別な足柄だ。
俺は仕事柄、よく艦娘に接する。
知り合った艦娘の中には、足柄も何人かいる。
だが、黒鉄足柄…彼女は俺にとって唯一無二の足柄だ。
その場に何人足柄がいても、俺は彼女を見分けられる。
そのぐらい黒鉄足柄は、俺にとって特別な足柄なのだ。
彼女が俺にとって特別になった切掛は、ほんの些細なことだったと思う。
俺の彼女に対する感情が、彼女に伝わったのも、ちょっとした偶然からだった。
それから程なくして俺と彼女は、そういう仲になった。
女を知らないわけじゃなかったが、やはり彼女は素晴らしかった。
彼女とそういう仲になってから半年ほど経った。
彼女について、確かめなければならないことが出て来た。
俺はそれを確かめるために、彼女の勤め先にして住所である海神警備・岩川台営業所に赴いた。
足柄の宿舎…。
「あら、いらっしゃい。」
彼女は笑顔で俺を出迎えた。
「それで、急にどうしたの?」
彼女は俺を宿舎の居間に通した。
居間は和室、俺が卓袱台の傍に腰を下ろすと、彼女も俺の傍に腰を下ろした。
この日、妙高さんたち…彼女の姉妹は不在だった。
ここに居たのは俺と彼女の二人だけ。
俺は確かめなければならないことを、彼女に尋ねた。
君は上司と…提督ともカラダの関係を持っているのか?
…と。
「提督とセックス?してるわよ?」
「昨日も、ケダモノみたいにヤりまくったわ。」
目の前が暗くなった。
彼女は、俺を裏切っていたのか?
俺の胸中に、暗く、重苦しい感情が生じ、渦巻いた。
嫉妬…憤怒…そして憎悪。
醜く、穢れた情念が俺の理性や良心を侵蝕した。
「許せない?」
足柄が俺に問うた。
挑発しているのか!?
俺は足柄を睨み付けようと、顔を上げた。
だが足柄は、俺より先に俺を見据えていた。
足柄の目は…異様な光を帯びていた。
足柄は俺に顔を近づけた。
目は異様な光を帯び、肌からは異様な熱を感じた。
「許せない…のよね?提督ともヤってる、私を。」
足柄は…興奮していた。
足柄はさらに俺に迫った。
俺は…床に背中をつけていた。
「私を許せないというのは…あなたが、私を自分の女だと思っている、ということなのよね?」
「そう思ってくれているってことで、いいのよね?」
足柄は歓喜していた、そして…俺に欲情していた。
足柄は、床に背をつけた俺の体に自分の体を押し当てた。
…息が苦しい。
何だ?この息苦しさは…。
「じゃあ、わからせて。」
!?
「私があなたの女だってこと…私のカラダにわからせて頂戴。」
やはり息が苦しい。
この息苦しさは…そうだ…足柄の色香なんだ…。
足柄の…噎せ返るような…色香だ…。
理性が…良心が…崩れていく…。
理性を失った俺は、足柄の色香に誘われるまま、憤怒と憎悪に駆り立てられるように足柄の肉体を貪り、犯した。
何度も何度も、俺は足柄の中に放った。
何度も何度も、足柄は上り詰めた。
俺が足柄の中に放つ度に、そして足柄が上り詰める度に、俺の中に渦巻いていた暗く重苦しい感情は薄れていった。
足柄の肉体は、穢れきった俺の心を浄化していった。
足柄の中に放てることが嬉しい。
上り詰める足柄は美しい。
嫉妬も、憤怒も、憎悪も、全てが消え去った。
そして全てを出し切った俺は意識を失い、眠りに落ちた…。
「最高…素晴らしいわ…。」
目を開いた俺に、彼女はこう言った。
「足腰が立たない…動けない…ううん、動きたくない。」
「すっかりあなたに打ちのめされてしまったわね。」
俺は憤怒と憎悪のままに彼女を犯し、陵辱していたはずだ。
しかし彼女は、心からの喜びを口にした。
俺も全てを出し切り、起き上がることもできなかったが、心だけは充実していた。
彼女は憤怒と憎悪に荒れた俺を受け容れただけでなく、求めてもくれた。
彼女は本当に俺のことを想ってくれているようだ。
そんな彼女が本当に提督とも、俺以外の男ともカラダの関係を持っているのか?
彼女は答えた。
「ただの友達であっても、ただの
「お互いに少しでも好きって気持ちがあって、お互いに受け容れられるなら、セックスはするの。」
「それが
「だから私は提督ともセックスするし、
ここまで言うと、彼女は俺を強く抱きしめた。
艦娘は人間より力が強い。
締め付けられた俺の体は悲鳴を上げたが、彼女の肉の柔らかさは、その苦痛を和らげてくれた。
「だから放したくない、離れたくない相手とも、あなたとも当然セックスするのよ。」
「提督や
俺を解放して、彼女は話を続けた。
「
「戦争ではなく、恋をしようって意味なんだけど…うちでは誰かと揉めるぐらいなら、喧嘩するぐらいならセックスしましょって風に解釈されてるわ。」
「ねえ、わかってる?…あなたも既に、この掟を受け入れているのよ。」
「…あなたは…提督とも寝ている私を許せないと言って、私を犯したわ。」
「提督とも寝ている私と、喧嘩するのではなくて、セックスをしたのよ。」
「そして何度も何度も私をイかせて、打ちのめしてくれた。」
「おかげで、もう足腰が立たないわ。」
「あなたは私のことを好いて、抱いて、悦ばせてくれた。」
「あなたは私のことを憎み、犯して、打ちのめしてくれた。」
「あなたはすっかり
「これはあなたが
「そう受け取っても、良いのよね?」
彼女は俺に問いかけたが、彼女の目は「ダメと答えたら、あなたの喉笛を食い破ってやる」と語っていた。
艦娘の所に人間が来る、人間が艦娘の所に行く…という言い方には、(提督以外の)人間が艦娘と添い遂げるという意味が含まれている。
正式な法規や制度があるわけではないが、そういう慣習は確かにある。
どこの鎮守府でも、艦娘の居住地区はこの慣習があることを前提に設計されているし、規則も設定されている。
数日後、俺は岩川台営業所の敷地内、空いていた宿舎…アパートの一室に引っ越した。
彼女…足柄も、新しい俺の部屋に居所を移した。
俺と暮らすようになってからも、彼女は提督や同僚の艦娘たちとセックスしている。
その一方で、彼女は「あなたからの罰が欲しい」と言って、俺を求めてもくる。
…俺からの罰が欲しいと言う割には、彼女の求めは激しい。
行為の度に、俺は彼女に搾り取られてしまう。
搾り取られると言ったが、俺も彼女の中に欲望を吐き出すことには、強い喜びを感じている。
彼女は何人かの艦娘と
だが彼女は、俺と提督しか男を知らない。
俺と暮らすようになってから…と言うより、俺と付き合うようになってから、提督とのセックスは控えるようになったとも聞いた。
(控えるようになっただけで、止めたわけではないが。)
…彼女は浮気でふしだらな
ふしだらでありながら通すべき筋を通す彼女に、俺はすっかり魅入られてしまっている。
俺は狼の巣穴に引き摺り込まれ、身も心も、倫理観さえも喰らい尽くされてしまったようだ。
こうして俺は今日も、彼女を貪り、彼女に喰らい尽くされている。