考えても仕方がないことも、世の中あるもの。
意外と勢いでなんとかなるもんです。
〽️義理や人情守れるならば、恋は思案の外じゃない
どうしたもんだろうな、これは。確かにまあ、言ったは言ったさ。好きになって貰えなくても、私は大喜が好きだと。この気持ちを嘘にしたくない、不毛でも構わないと。それが大喜にとっても私にとっても、良くない事だと分かっている。それでも私は引き下がれない。
最初はそれこそ、期待していた。千夏先輩と付き合っている訳ではないんだし、告白して意識させればこっちにも気持ちが向くかもしれない。それが甘い見透しだと気が付いたのは、文化祭の時。キスしかけて噂になったのに「興味本意でそういう事を言わないでほしい」だもの、そこで段々と大喜の
「ごめん、雛とは付き合えない」
――わかっていたつもりだったのに、そうなるしか無いと知っていた癖に。なのに声を張り上げ感情を剥き出しにして、それはイヤだと我が儘をブチまけてしまった。なんて愚かなんだろう、私は。こうなる以外に、結論なんか有り得ないじゃないか。努力も我慢も、恋愛では無駄なんだ。頑張れば頑張る程に、醜く汚れてしまう。
そんな私に、菖蒲は寄り添ってくれた。必ずひなっちを助けて見せる、と言ってくれた。……長い付き合いでも無いんだけど、なんかやたら気合い入れたがるんだよね、菖蒲って。
そしてそして、確かに菖蒲は頑張ってくれたんだろう。だからこそ今私は大喜と一緒にいられるんだけど、いられるんだけど……うん。
なんで千夏先輩と更に菖蒲まで、同じベッドの上にいるんだろう。いや、本当に。
「ちーちゃんにお願いしてみよう!」
またバカを言い出した菖蒲に、私は溜め息を一つ。少しは頭を使ってくれないかな、この子は。手数は多いけど全然役に立たないというか、裏目にしか出ないというか。そもそも合宿の時だって、菖蒲が嘘吐いて二人っきりにしてくれたお陰で面と向かってフラれたんだしさ。まさか縁結びのジンクスが逆効果になるなんて、どうにも腑に落ちないんだけど。
まずそもそも、お願いしてみようって何さ。大喜を譲ってほしい、とか頼めと言うのだろうか。そんなの余りにも惨めすぎる、死んだ方がまだマシだ。好きな気持ちは確かに捨てられないけど、だからってそんな賤しい真似は出来ない。それにそうなったら、大喜の気持ちはどうなるんだ。アイツは千夏先輩が好きで、私なんか見ちゃいない。そこを無理矢理ねじ曲げてこっちを向かせたって、何の意味もない。
でもまあ、こないだは「いっそ襲っちゃおうよぉ」とか言ってたしなぁ。それに比べたらまだマシなんだけど、頼むからこっちの立場も――
「ひなっちひなっち、ちーちゃんと連絡ついたよー。いつもの喫茶店で待ってるってぇ」
……考えてはくれないんだな、このバカは。
私の都合なんか関係なく話は進まされてしまったし、呼んでしまったなら行くしかないか。ああ、まったく。
「さっき話した通りなんだけどさ、ちーちゃん。ひなっちとも友達なんだから、いのたの事どうにかなんない?」
なんだその雑な言い草は、と私は危うくお冷やを吹き出しかける。雑だ、何て言うかこの女は雑すぎる。
それに私たちは友達でもない、千夏先輩にしてみたら私なんかに気を遣う必要は本来ないんだ。この人の気持ちはもう分かっている、100%大喜が好きなんだと。どうやったって勝ち目はない、つくづくスタートの遅さが悔やまれる。中学時代に告白してればなぁ……。まあ時間は戻せないから、今さら考えたくないけど。
そんな私の顔をじっと見詰める事、数分。千夏先輩は手にしたスプーンをパフェグラスに置いて、口を開いた。
「んー……
「は……い?」
今度は飲み干した筈のお冷やが逆流しそうになり、変な声が出てしまう。いや、いやいや。いやいやいやいや、なんだその更に雑な言い草。別に私がどうしようと大喜の気持ちは変わらないからどうでも良い、っていう本妻の余裕とかそんな感じかこの人は。
ええい同居の事暴露してやろうかまったくもう、私がその気になれば追い出せるんだぞ。いやまあそれすると絶対大喜に嫌われるけどさ。
にしても、だ。この人どうなってるんだ、器が大きいというか底が抜けてるのか。余裕綽々なのかなんなのか、全く掴めやしない。
――と。
「それにさ、そういう事言ったら菖蒲ちゃんや渚もだしね。大喜くんが可愛いのが悪いんだけど、結構みんな手を付けてるじゃない」
ほえほえした顔で、千夏先輩はとんでもない事を言ってくれた。そして菖蒲が気まずそうに顔を伏せ、私は絶句する。
いや、ちょっと待てコラ。お前ら、待て。
「……だってさぁ、いのた可愛いんだもん……。ちょっとつまみ食いするくらい良いかなって……」
「渚も同じこと言ってたよ、そりゃまあ可愛いもん。私だって毎晩我慢してるんだから自重してほしいけど、多少は仕方ないよね」
仕方ないってなんだ、この大バカ先輩め。大喜は公衆トイレじゃないんだから、少しは考えてくれないか。
つまり、だ。私以外揃いも揃って、大喜を弄んでいるわけか。そんな安いエロゲーみたいな事をよくもまあ、私に気付かせもしないで出来たもんだ。ああでも「襲っちゃおうよ」は冗談でもなんでもなく本気だったんだなこのバカ。
どうしよう、馬鹿馬鹿しくて怒る気もしないわこれ。
正直言えば物を考える必要さえ無かった、という事。ただ一直線にぶつかれば良かったんだな、全くさ。
ただまあ、そんな事が出来る程私は勢い任せのバカにはなりきれなかった。悔しいけれど、このバカ二人に手を貸して貰わざるを得なかったのだ。
好きでいられればそれで良い、と満足できたのは最初のうちだけ。何もかも欲しい、大喜を愛したい、と思ってしまってからはもう止まらない。
私もやはり、バカなんだな。
そんなわけで今私は、こうやって大喜と同じベッドにいるのだ。どんなわけだ、と聞かれると困るけどさ。
まあ、うん。私だって興味はあったけど、実際こうなると結構大変なもんなんだな。まず人前に肌を晒すのがまだまだ一大事だし、他人の裸を見るのもやはり罪悪感が抜けない。更衣室で着替えるときだって可能な限り隠すし、周りは見ないようにするのがマナーだしね。たまに雑把なのもいてホイホイ脱ぐけど、あれはちょっと苦手。なのに、なあ。
服着たままじゃ出来ないのは分かるし、そういうモノだってのは理解してる。……千夏先輩たちのせいで多少は慣れたけどね、うん。先日ぶっつけ本番で失敗したら大変だから、と色々させられたのだ。
まさか大喜じゃなくて、千夏先輩とベッドインする羽目になるとは思わなかった。
あの時は当然のように二人きり、一糸纏わぬ姿を晒しあった。
「やっぱり新体操やってるからかな、引き締まってるよね」
「……先輩も思ったほど筋肉質でもないですね、バスケってもっとパワー系かと」
お互いこうやって身体を見せあうと、意外に似ていたのがビックリだ。片や激突上等のチームスポーツ、片や美を求める個人競技。方向性は全然違うのに、スタイルは似てるなんてね。
そんな事を思っていると千夏先輩は私に顔を寄せ――。
「んー……っと」
額にそっと、キスをした。その唇は一旦離れてそのまま僅かに高度を落とし、眉間へ。その次は鼻筋を下り、頬へと着地していく。
その瞬間の硬直を感じたのか、先輩は顔を上げて悪戯っぽく笑った。
「大丈夫だよ、唇にはしないから。……そこは大喜くんにして貰おうね」
そう言って貰えるのは嬉しいけど、先輩はそれで良いんだろうか。私がキスしても焼きもち一つ焼かない、でも大喜の事は好き。なんだか不思議な人だ、と思ったのを覚えている。
とは言えそんな余裕はすぐに無くなってしまったのだけど。なにしろ先輩はそこからどんどん、私の身体を
胸の先を舌先で弄び、脇を伝い下り、臍を舐め回し。優しくでも執拗に私を攻めるその動きは、きっと大喜にも向けられているものなんだろう。そう考えるとちょっと悔しい、って私はどっちの立場で悔しがっているんだろうか。それも分からなくなる瞬間が、その先に待っていた。
千夏先輩の指先が、すっと私の脚の間へと滑り込んできたのだ。
「ね、蝶野さん。自分でする時ってさ、
「え、あ……その、怖くて……まだ……」
普段は直に触るのもちょっと抵抗あるくらいで、机の角に擦り付けたりするのが精々。それにあんまり気持ちよくなるのは、怖い。だからじんわりと感じ出したらもう止めて、あとは余韻に浸るだけだ。世の中には色んな
だけど、でも。男の子のその、……オトコノコが入るようには馴らしておくべきなんだろうかなとも思ってたんだけどね。
「じゃーあ、ちょっとずつ解していくね。痛かったり嫌だったりしたら言ってね、すぐ止めるから」
千夏先輩はどこまでも優しくて、気遣いに溢れる人。だからこそ、身体を任せても大丈夫。
そう思って何度も夜を過ごしたお陰で、今はこうして怯まずに大喜と向かい合えるのだ。
……そうとでも思わないとやってらんないしね、実際。なにしろ折角の「初めて」なのに、二人きりじゃないし。て言うかさっきから大喜、菖蒲に弄られて気持ち良さそうにしてるし。まあ私は私で、千夏先輩に
ここしばらく先輩の舌から始まって綿棒、更に指を少しずつ入れて馴らして貰ったけど私はどうやら肉質が硬いらしくて、時間をかけて柔らかく解さないと痛くてダメ。少し間が空くと閉じちゃうようで、全く困ったものだ。困るようなことでも無い気もするけど。
千夏先輩の指先に押し拡げられて、私の内側が露になっていく。それを目の前で見ているからかそれとも菖蒲の手が余程気持ち良いのか、大喜のオトコノコはガチガチに張り積めて透明な汁を垂れ流していた。準備万端、という風体で。
「二人とももう大丈夫そうだね、菖蒲ちゃんも一旦手はなしてあげて。……じゃあ、行ってみようね」
私は千夏先輩に後ろから抱えられ、大喜も大喜で菖蒲に支えられて。そのまま私たちは少しずつ少しずつ、近づいていく。
やがて粘膜同士がくちゅりと音を立て、グッと太い部分が入ってくるのが分かった。大喜の身体が私の中に入ってくる、それが感じられる。
解して貰っていなかったら、裂けていたかもしれないな。そう思うほど猛る存在感に圧倒されかけた私の意識を、千夏先輩が引き戻してくれる。
「ほら、ちゃんと見て。大喜くんの、もうすぐ半分だからね」
言われて視線を向けてみればそこには確かに、オトコノコが埋まりつつある光景が。私がまるで自分から呑み込んでいるようでなんだか恥ずかしいけど、でも達成感が溢れてくる。あと半分、もう半分。もうじき大喜の全てが根本まで、私の中に納まるんだ。
大喜の背中ごしに菖蒲もそれを見つめ、嬉しそうな顔をしていた。こうやって見守られながらの「初めて」って、良いんだか悪いんだか。まあ――これはこれで幸福なんだろう、多分。
そして、そして。私と大喜の顔が触れ合うほどに互いが密着する、その瞬間が訪れた。
ごりん、とお腹の一番奥が押し上げられ、陰毛が絡み合う。大喜を全て受け入れた、私の一番奥へと招き入れた。完全に繋がった、その幸福感に包まれながら私たちは。
「ん……っ」
――初めてのキスを、交わした。
唇で、肌で、全てで大喜を感じる。私の全てを、皮膚越しに伝える。ただくっつき合っているだけで、狂いそうなくらいに気持ちが良い。
このままずっと、こうしていたい。そう思っていた私だけど、意に反して身体が動き出す。
無意識に動いているとかではなく、千夏先輩が私の腰を掴んで前後に揺さぶり出したのだ。
後ろに引かれると内壁がゴリゴリと抉られ、前に出れば子宮が圧迫されて快感が垂れ流される。その上菖蒲が大喜を動かさせるものだから、腰を叩きつけあう形になって更に強い衝撃で身体が芯から痺れてしまう。
「あ、あ……ぁー……っ」
逃げ場の無い快感の暴風にやられながらも、必死で意識を繋ぎ止める。
まだ、もっと。もっともっと、先へ。何処までも、高く。
そんな自分を追い込む何処か自暴自棄な快楽が遂に弾けかけた刹那、大喜の身体がビクビクと震えた。
「あ、そろそろかな。大喜くん、出ちゃいそうだよ。……良いよね?」
囁きかけるような千夏先輩の声を、頭ではなく心の奥で理解する。大喜が射精しようとしている、私と繋がったまま。それがどういう結果を
それで良い、それが良い。私は大喜を、愛しているのだから。大喜の気持ちがどこを向いていようが、それはどうでも良いこと。誰かを上回らなければ好きになってはいけないなんて、そんなルールは存在しない。好きだから、それだけが理由で良い。
「ぁ……いぃ、来て、このまま……!」
それが聞こえたのかどうなのか、一瞬の呻きと共に大喜の身体は大きく跳ね上がりその勢いで私の中へと濁流を迸らせていく。
熱い何かが染み渡っていく、それを感じながら私は天井を見上げて思う。メチャクチャで強引で馬鹿げたこの時間が、まだまだ続いて欲しいと。
「あ"ー……疲れたぁ……」
もう何時間絡み合っただろう、すっかり動けなくなって私たちはベッドに転がっている。
大喜がギブアップしてからは先輩と菖蒲が二人がかりで私を攻め始め、そして時間をおいて回復した大喜を三人で搾り取って。そんなこんなでベッドを見る影も無く汚し尽くし、楽しみ尽くした私たち。
まあ、先を考えると少し怖くもある。こんな歪な馬鹿馬鹿しい関係、誰かが正気に立ち返ったらその場でお仕舞いだ。それに日本は一夫一妻の国なんだから、このまま都合の良い状態ではいられない。……と言うかそもそも、
……でも今さら気にしても仕方ない、なるようになるさ。ならないようになった、とは聞いたこと無いし。
これからもまだ、日々は続いていく。きっと私はこの先もっともっと大喜を、そして菖蒲や千夏先輩のことも好きになるんだろう。真っ当ではない関係だけど、私たちはそれで良いんだ。
「まったく揃いも揃って、アホ面下げて寝てんだから」
こうも能天気でバカな、大好きな人たちの隣へと私も改めて横たわる。今は考える気力も湧かないし明日の事は明日で良い、今日はこれで問題ない。
きっと、多分。
思ったより長くかかりまして…。