『アオのハコ』
休むのも立派な過ごし方、休日はそういうもの。
とは言え、なにもしないのもつまらない。
どうせだし楽しもう、二人ならそれが良い。

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また遅れたー……あう。


あるアオい休日に

 日頃は部活漬けだけれど、たまにエアポケットのような全休日があったりする。一寸前までは、それをもて余していたのが私だ。そもそもの時点で部活以外の事をあまり考えないし、何かしようにも仮住まいの身。あんまり大きな事は出来ないし、かといって一日寝ているわけにもいかない。由紀子さんに迷惑かけたくないし、居候としての矜持もある。とりあえず予定がある振りをして、特に何も考えないまま街をぶらぶらしていたっけ。

 まあ今は、そんな無為に過ごすことは無くなっている。

 大喜くんと過ごす休日は、いつだって心地良いから。

 さて明日は何処へ行こうかな、何をしようかな。

 

 

 私たちの関係が同居人から恋人に変わって、もう数ヵ月になる。

 普段はいつも通りに過ごすし、猪股家にいれば由紀子さんたちの手前自重せざるを得ない。そんなこんなであれこれ溜め込んで、欲求不満を爆発させるまで僅か一週間。土曜の昼練が終わってから大喜くんを誘って出掛け、そしてそのまま――路地裏で押し倒してしまった。

 驚きすぎて言葉を無くした大喜くん、その唇へとキスを落とす。熱く強く、愛を込めて。

 大喜くんは私のもの、誰にも渡さない。何もかも、欲しい。大喜くんのすべてを知りたい。

 自分の指先が大喜くんの肌を滑り、服の中へ入っていくのがまるで遠い世界の出来事のように思える。身体がもう、止まらない。

「先、……輩っ、だめ……です」

 ようやく意識が追い付いたのか、大喜くんは小さく抵抗の意思を示した。でもそんなのが、今の私に通じるものか。

 好きだから。

 愛しているから。

 言葉を抑え込むように唇を合わせ、舌先で大喜くんの口内を犯していく私。粘膜の接触が心地好くて、愛しくて止まらない。

 どれくらいそうしていたか、息苦しさを感じて漸く顔を上げた時。大喜くんは、さっきよりも尚小さくでも確かな声で呟いた。

「こんな所じゃ……だめです……っ」

 それを聞いてやっと私の蕩けた頭は、現状を正しく認識する。

 ここは大きな通りからは離れているとはいえ、天下の往来。そんな場所で恋人を組み敷いて、私は何をするつもりだ。

 ――これは、これは。

「……………………ごめん、ちょっと突っ走った」

 もし今鏡を見たら、まるでリンゴのように真っ赤な顔が見えるんだろうな。大喜くんの上から身体を退けながら、私はそんなことを考えていた。

 

 

 で。そのあとあれこれと謝ったり宥めたりしつつ大喜くんとその、……そういう事ができる場所へと行きまして。その日のうちに、二人で大人の階段を昇ったわけだ。さすがに色々と大変だったけどまあ、良い思い出だ。そう思わないとやってられないけどさ、うん。人前で服を脱ぐのは別に平気だけど、なにせ大喜くんがいるわけだ。いつぞやは特に何も考えずほいほい着替えてしまったけど、あの頃とは気持ちが違いすぎる。大喜くんも大喜くんで、やっぱりかなり恥ずかしがっていたな。

 それに、なんと言うか。大喜くんも男の子だなー、あと私ってガサツだなーとか色々と思い知らされた一日でした。

 痛いっていうよりは違和感が強くて、なんだか身体がフワフワして仕方なかった。

 ああ、思い出すと疼いて仕方ない。でもなあ、今日この欲望を発散してしまうと明日に響くかもしれないし。その辺男の子はいいなぁ、毎日でも出来るものらしいもん。まあ感じ方の違いとかは分からないけど、私としてはとりあえず体力も精力も温存しておいた方が気持ちいいと思うんだけどさ。

 まあ、良いや。一人でするより二人でしよう、それが一番だ。

 疼く身体を無理矢理横たえて、私は寝に入る。隣の部屋から僅かに聞こえた物音に、お休みなさいと返して。

 

 由紀子さんは、私たちの事に気がついているんだろうか。遅めの朝御飯を食べながら、そんな事を思ってみたりみなかったり。

 大喜くんはもう先に出掛けていて、時間差で私が合流する手筈になっている。連れ立って出掛けられないのは少し寂しいけど、でもまあこればかりは仕方がない。 

 でもいずれは、誰に憚る事もなく一緒にいられる関係になりたいな。その時には私、猪股千夏になっているんだろうけど。ああでも、大喜くんをお婿に貰っても良いかも。あーでも大喜くん一人っ子だし、由紀子さんたちが渋るかな。

 ――もし、もしも。今ここで「息子さんを私にください」とか言ったら、由紀子さんどうするかな。言わないけど、さ。うん。

 そして。

 何事もなく朝の身支度を終えて私は一路、大喜くんが待つ駅前へと向かった。

 ここから更に離れた所まで行って遊び、帰りは一旦どちらかが喫茶店に辺り寄り道。そして時間差で帰る、それがいつものパターンだ。

 暗くなれば大丈夫だと思うし一緒に買い物とか散歩とかもしてるけど、でも一応は同居バレ防止だ。

 さぁ、遊ぼう。遊んでそして、そして。……そういう事も、しよう。

 そんな予定通りと言うか適当にと言うか、思った通りに時間は流れていく。

 二人であちこち遊び歩き、ちょっと疲れてお昼を食べて。昼下がりの街を、口数少なく私たちは歩いていく。

 そろそろ、だな。そろそろ、だよね。

 少し歩調を速め、表通りから奥へと入る。目指す場所は、その先だ。

 大喜くんもそれは分かっているんだろう、握った手には熱さを感じる。

「大喜くん、――じゃあさ、行こうか」

「っ、……はい」

 赤い顔をして小さく応える大喜くんの手を引いて。私たちはい(・)つ(・)も(・)の(・)よ(・)う(・)に(・)ラブホテルへと入った。

 

 交わすキスは熱く激しい、まるで貪り合いだ。普段あまり出来ないから、こういう時にはついつい過熱してしまう。

 唇を合わせあったままお互いをまさぐりあう、この時間が心地良い。

 指先で大喜くんのオトコノコをなぞり、濡れた肉の質感を味わいながら愛撫していく。先端に開いた口を爪の先でカリカリと擦ったり、軽く握ったり放したり。その度に、合わさった口のなかで大喜くんが小さく喘ぐのが可愛らしい。でも大喜くんもされるがままじゃない、私を愛そうと懸命に手を動かしてくれる。

 今まで自分ではあまり弄ってこなかったし、正直どう触って良いかも分からなかった。だけど大喜くんの手が触れれば、それがどんなやり方でも快感が溢れてくる。大好きだから、それも当然なんだけどね。きっと大喜くんもそう思ってくれているだろう、こうやって気持ちよくなってくれているんだから。

 粘つく手をぬぐいもせず動かし続けていると、不意にオトコノコの奥から何かが沸き上がる感触がやって来る。

 ああ、来た来た。私はこれが何なのか、ちゃんと知っている。ここからどうすれば良いか、も。

 名残惜しいけど一旦唇を離し、私は大喜くんへと囁く。

「大喜くん、良いよ。このまま、……ね」

 その一言は大喜くんにとって楔になり、オトコノコはまるで爆発するように震えてそして。

 ドクンドクン、と私の手のなかで熱い濁流を迸らせた。

 白い粘液は手に収まらず、こぼれ落ちてはベッドを汚していく。ちょっと心苦しいけど、まあいいか。こういう場所なんだし。

 そっと手を離すと、それでもオトコノコは屹立を崩さない。元気元気で結構な事だ、うん。

「ん、……ちゅっ」

 まだ精液を噴き上げるオトコノコに、キス。キス、キス。唇も舌も大喜くんの味に染め上げられ、青臭い薫りが鼻を突く。美味しいとはまだ思えないけど、大喜くんのだから。

 この人の全てを愛したい、そして私の全てを愛して欲しい。

 

 開いた脚の間に大喜くんの頭を挟み込む、なんだか不思議な光景だ。持ち主としてはどういう理屈か分からないのだけど、大喜くんはこうやって私(・)を見るのがすごく興奮する――らしい。それも、深ければ深いほど良いらしい。手で割拡げて私の中を見つめるその姿は、何て言えば良いのやら。これから自分が入る場所とは言え、そんなに凝視しなくても良いのになあ。男の子って、変わってるな。

 やがて興奮もピークに達したのか、大喜くんは荒い息を吐きながら身体を起こし、コンドームの包みに手をかけた。

 大喜くんは自分で着ける派というか、私が着けてあげようとすると暴発しちゃう子なんだよね。申し訳なさそうな顔も、それはそれで可愛いんだけど。

 前に渚が言ってた、口にコンドームくわえて着けるっていうのも試してみたいけど無理だろうなぁ。そもそも私が不器用って言うか雑だし。歯で穴開けそうで怖い。

 まあ、それは置いといて。

 毎度の事ながらおっかなびっくり腰を進める大喜くんに合わせるように、私も少しずつにじりよる。待ちきれないみたいで恥ずかしいかもだけど、ただ受け入れるだけっていうのは性に合わないしね。

 ぐちゅりと音を立てて先端が触れると、ゴムの被膜越しでもその熱さが伝わってくるのが分かる。そのまま硬く張り詰めた肉の塊に圧搾され、私の内側は大喜くんの形になっていく。何度しても、この快感は全く薄れない。どれくらい時が過ぎようと、多分一生涯そうなんだろう。

 大喜くんも大喜くんできっとそう思っている、そうであって欲しい。……まあ、顔を真っ赤にして腰を振る姿をみていると、それ以外の可能性なんか考えられないけど。

 大喜くんは上手なのか下手なのか、私のは他所に比べて良いのか悪いのか。そんなのは、知ったことじゃない。今この瞬間が、気持ちいいから。

「あ、先……輩っ、ごめ……なさぃ……出……っ」

 謝ろうとする大喜くんを抱き締め、良いよと笑ってあげる。謝ることなんか何もない、大喜くんは私を愛してくれている。

 ――だから、来て。

 次の瞬間、お腹の中で一際大きく惷動が瞬いた。コンドームで阻まれて尚、精液の圧倒的な存在感がそこに溢れて止まらない。それを感じているだけで、脳が焼き切れそう。瞼の裏には稲妻が閃き、一瞬一瞬毎に身体が絶頂に追い込まれていく。

 長い長い余韻の果てに大喜くんが身体を離していくと、私の中からパンパンに膨れたコンドームがズルリと抜け落ちた。

 それでもオトコノコはまだまだ上を向いて、もっとしたいと自己主張している。勿論私だって、それに応える事吝かではない。

「ん、大喜くん。……もう一回、しようか」

「は、……はいっ」

 

 使用済みのコンドームをベッドの脇に並べて、私たちは手を繋いだまま天井を見上げている。何戦もして体力はもう使い果たし、口を開くのも億劫なくらいの倦怠感が身体を覆っている。まあでも、それ以上に愛情の方が強いのだけれど。だからこそ、繋いだ掌は離さない。時間ギリギリまでこうしていよう、急いでシャワー浴びてサッと帰り支度すればすぐ済む。余韻は大事だ、本当に。

 にしても、だ。視線を横に向けて改めて思うのは、大喜くんの放った精液の多さだ。男の子って、すごいなあ。こんなに出るなんて、大喜くんは頑張りやさんだ。もしこれが直接私のなかに注がれたら、と考えるとちょっと怖いけど。

 いつかはそんな事もしちゃうのかな、するんだろうな恋人同士なんだから。

 私が栄明を卒業するまで、一年と少し。長いような短いような、そんな期間だ。それが過ぎたら、大っぴらに付き合える。やりたいこと、全部出来る。だけど今の不自由な時間も、私は嫌いじゃない。

 なんにせよずっとずっと、一緒にいたいな。そうなって欲しい。

 

 楽しい休日が終わって、朝が来て。私は今日も、早起きして登校だ。大喜くんも少し遅れて来るんだけど、今はこうして一人で朝練中。

 今週は土日も部活、次のデートまではまだまだある。その間、頑張ろう。大喜くんがもっともっと、私を好きになってくれるように。

 邪念混じりではあるけれど、放り投げたボールは正確にリングを射抜いていく。さすが私、なかなかやるもんだ。

 ――と。

 体育館の外から走ってくる足音が聞こえたのを合図に、私はボールを拾おうとした手を止めて髪をかきあげる。少しくらいは見た目に気を使ったって良いだろう、好きな人と二人きりの時間が来るんだから。

 さぁ、来なさい大喜くん。一緒に朝練して、鍛えあおうじゃないか。

 明日も明後日もこの先も、好きで居続けられる事を願って。

 

 

 


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