ディストピアにおける家畜の日常 作:家畜選抜AI
1話 居眠りの代償
(心地良いなぁ……)
窓から吹き込む春風に揺蕩い、俺は夢と現の狭間、微睡みの中にいた。
………………………
………………
…………
(「…………では本人も含めて反対意見がでなかったので、松本を性処理係に任命する。勇気を持って係に臨んでくれる松本に拍手!」)
――パチパチパチ……
(うぅ、煩いなぁ……気持ちよく寝てるっていうのに……)
「それじゃあ性処理係になった松本は私と一緒に職員室まで来るように」
「…………は?」
今日最後の授業、LHRの終わりがけ、目が覚めたタイミングで先生からとんでもない言葉が飛んできた。
(は? え? マジ……?)
若干寝惚けていた頭が一気に覚醒していく。同時に、目に映る景色が遠ざかっていく様な感覚に陥ってしまう。
(どういう事だよ……!?)
性処理係――それは名前の通り自らの身体を使い、他の生徒の性欲を解消する奉仕活動をする係である。
大抵の高校では専用の人畜を導入するため、この制度を採用している所はごく少数らしい。
大体は問題のある生徒を受け入れている学校(懲罰目的)や、人畜絡みで何かしら問題を起こしてしまった学校くらいだろう。
そしてこの学校の場合は、過去に備品として貸し出されていた人畜が壊されてしまった事があるらしい。そのせいなのか、国への人畜貸出申請が通らなくなってしまったという話だ。一応は公共の資産である人畜は、まぁそれなりに保護されているのだ。
そのため普通どの高校にも最低一台は設置してある人畜肉便器が、この学校には存在しないのだという。
このままでは若人の欲求が暴走し、性犯罪に繋がりかねないと教育委員会からの勧告があり、それに対して学校は性犯罪を防止抑制するために急遽この制度を導入したというのが過去の流れだ。
一応、係はクラスごとの役割であるため導入は自由。最初の係決めで必要ないと決まれば無くてもいい役職なのである。
――でだ、寝てしまっていた俺も悪かったのかもしれない……だがしかし、性処理係の制度がクラスで認可されるとは普通思わないだろう。
自分も選ばれれば使われてしまう可能性があるのだ。そのリスクを取ってまで普通賛成するだろうか?いやしない。
それなら通学路にでもある公衆便所を使ってから来ればいいだろうに……俺は使った事ないが。
拒否しようにも反対票を入れなかった事もあり正当性が薄い。そもそもこの学校に入学を決めた時点で校則について許諾したものととられるため、事実上拒否権など存在しないのだろう。
(俺の馬鹿野郎! なんで最後の最後に眠っちまったんだよ!)
入学式やらなんやらで緊張していた俺は、ここ一週間くらいまともに寝れていなかったのだ。
なんとか自己紹介やらオリエンテーションやらを乗り越えたものの、最後の最後に眠気に負けてしまったのだ。
終業の挨拶の後、俺は先生に連れられトボトボと教室を出ていく。
そんな俺の様子を見て数少ない数名の女子達は哀れんだ眼を向けてくれたが、幼馴染である和馬や同じ中学から一緒だった野郎共は皆爆笑していた。
(くそっ!覚えてろよテメーら!!)
連れて行かれた先……職員室に併設された個室にて担任と向かい合って座る。そして俺は、性処理係の制度について説明を受けたのだった。
制度の来歴や必要性は既に知識にあった通りの内容だった。そしてそれに加えて就労に関する詳しい内容や係になった人への特典なんかについても説明を受けたのだ。
先ず性処理係となった者は学校併設の寮で暮らすことになるみたいだ。それに際して、特典の話とも被ってくるが就労に対する報酬として学費や生活費の100%を支給される様だ。つまり係の持つIDを使えば学食もただだし校内の自販機類なんかも無料という事だ。更には係になった時点で無条件での進級及び卒業資格が付与されるらしい。かなりの優遇っぷりである。
だがそのかわり、クラスメイトに性処理を求められた場合はその希望に則り、できる限りの性奉仕を行わなければならないのだ。
一応は人畜扱いであるため国からの給金も支給され、その就労期間は卒業までの約3年間だ。
就労内容についてだが――むかし人畜肉体便器を破損させた反省もあって性処理係を保護するため、使用に際して多少の制限がかけられていた。
先ずは性処理係に対する一般的な性処理を超える乱暴な使用の禁止だ。被害を被った係の者は管理人に申し出る事ができ、認められれば該当する人物は性処理係使用権を一定期間停止される。
次に使用時間の制限だ。性処理係の就労時間は一般の生徒と同じである。具体的には登校時間である8時15分から部活動が終わり下校が完了する18時までである。それ以外の時間は係と相手の生徒、両者の合意があれば好きにしろといった感じである。ちなみに授業中の使用はできるだけ控える様にとの事だ。
行為に際してそれ用の個室も用意されているが、使用者が気にならないのであれば校内どこでもOKらしい。
なんだそれ……?
寮生活になる事もあっておふくろに連絡してみたが『あらあら拓海ちゃんも大変ねぇ〜……そういえば娘も欲しかったのよね。もしかして夢、叶っちゃった?』といった具合で悲しむ事はおろか同情する気配すら無かったのだ。むしろ喜んでやがる。
(そうだった……おふくろは昔から天然極まってたんだったわ……)
それにしたってさぁ……母子家庭のたった一人の愛息子なんだからよぉ、ちょっとは惜しんでくれてもいいんじゃねぇかなぁ!?
ちなみにこの高校の1年生は1クラ20名程度の2クラス、合計41名で、内訳は男子33名、女子8名である。元男子校な名残もあって、男子の割合が大きいのだ。そして一年生の過半数は、拓海や和馬を含めて地元の中学からの進学であった。
――とどのつまり拓海が性処理係に選ばれたのは、そいつらが面白がって結託し、拓海に表を集中させたのが原因なのだった。
ただただ面白そうだという、男子高校生特有のノリでこんな事をしたのであって、拓海を使おうだとかそんな気持ちは一切無かったのだ――今、この時点までは……。
遅くなってすみませんでした。
本当は直ぐに投稿するつもりだったのですが、投稿時のコピー・アンド・ペーストの操作を誤り本文消失。そして書いたのが一年くらい前だったので内容をしっかり覚えておらず復旧不能に……。
ということで最近考えていたこちらの話を先に投稿する事にしました。