父を喪い、母と弟妹のために炭を売っていた少年が麓の家で未亡人と出会う。
「炭治郎」
時は大正初期。奥多摩にある雲取山に小さな炭焼き小屋があった。そこで生まれた炭治郎は、病死した父の後を継いで、炭を売っている。
十三歳の炭治郎は、炭を売る支度をすると、母葵枝から呼び止められた。
「まぁ、顔を真っ黒になって…」
葵枝が手拭いで炭治郎の顔を拭うと、
「梅雨が入っているから、無理して炭を売らなくてもいいんだよ」
「でも、母さん。今日は籠一杯だけの炭を売るだけだから」
炭治郎は、これから雨が降ることは匂いでわかっている。生まれつき嗅覚が鋭い炭治郎は、あらゆる場面で非常に役に立っている。例えば、行方不明になった子供を探し当てたり、冤罪事件を解決したり、はたまた人の死を知らせたりすることもできる。
それでも炭治郎は炭を少しでも売ろうとしている。父が亡くなった後、一家の大黒柱として母と五人の弟妹のために、少しでも稼いで楽にしてあげたいと。
「兄ちゃん、花子も連れてって」
五つ年下の妹花子が、炭治郎の袖を引っ張って言うと、六つ年下の弟茂も僕も連れてってとせがむ。
「駄目よ、花子に茂。今日は雨が降るから一緒に売りに行けないの」
葵枝が花子と茂に諭すと、
「花子、お兄ちゃんに迷惑をかけないから」
「僕も」
「駄目よ。今日は荷車で寝泊まりはできないから」
「花子、茂。兄ちゃん、早く帰るようにするから」
炭治郎が花子と茂の頭を撫でると、茂が早く帰ってきてよと言い返した。ちょうどその時、二つ年下の弟竹雄がやってきて、
「竹雄はできる範囲で木を切ってくれ」
と頼むと、炭治郎は歩き出す。その後、一つ年下の妹禰豆子がやってきて、十二年下の弟六太を寝かしつけたところと言った。
父を亡くした実感がわかない六太は、毎日父のことを訊いてばかりでいた。
家族に見送られながら、炭治郎は山を降りる。麓より十里離れた町に着くと、人々が炭治郎の炭を買うために集まって、
「おぅい、炭治郎。こっちにも炭を売ってくれ」
「炭治郎、障子の張り替えを手伝ってくれてありがとう」
人々が炭治郎に声をかける。炭治郎は単に炭を売るだけなく、家の手伝いも積極的に行う働き者として愛されている。
「炭治郎、ちょうどよかった」
少年が割れた花瓶を差し出して、炭治郎に訴えてきた。
「母ちゃんが、俺が花瓶を割ったと責められて。頼むから証明してくれ」
炭治郎がクンクンと鼻を吸い込みながら嗅ぐと、
「これは猫の匂いだ」
「あら、そうだったの炭治郎?」
「ほら、そうだろう?母ちゃん」
人々が次々と炭を買っていき、あっという間に売り切れたところで、炭治郎は土産物を買って家に帰っていった。
翌日、炭治郎が籠一杯の炭を担いで山を降りた時に、雨が降り始めた。
降りる前は雨の匂いがしなかったのにー。
西の空から黒い雨雲がやってきて、炭治郎が麓の家に着くなり、雨がポツポツと降り始め、やがてザーザーと降ってきた。
参ったなー。
流石の炭治郎も突然の雨の匂いには嗅ぎ付けることができず、ただ雨がやむのを待つしかなかった。
麓の家の軒下で雨宿りをしていると、一人の女性がやってきた。長い黒髪を蝶の髪飾りで片方にまとめ、着物がびしょ濡れになっている。雨に濡れた黒髪と着物に貼り付いた女体から、微かにいい匂いがしてきた。
「うちに何かご用?」
鈴のような澄んだ声で炭治郎に問う。
「すみません。あの、雨宿りをさせてもらっていただけです」
「まぁ、それは大変。雨がやむまで中へ入ってください」
麓の家は、女性の自宅だった。その女性の名前は栗花落カナヲで、歳は十九。二年前に夫が病死して以来、ずっと一人暮らしをしている。
浴衣に着替えたカナヲが炭治郎に着替えを持ってくる。母や妹たちとは全く違う雰囲気を持つ大人の女性の薄着姿に、炭治郎は赤面しながら俯く。
その時、カナヲは無意識に炭治郎の下半身を見た。男の持ち物が小さいながら天に向かって勃起している。
「あらあら、お○ン○ンがかわいいわね」
カナヲが炭治郎の下半身に顔を埋めて脱がしにかかる。包皮の男根がピクンピクンと動いている。
「自ら動くなんて、悪い子ね」
と言いながら、カナヲは炭治郎の男根を包皮ごと口に含む。首を上下に動かしながら男根を扱く。
炭治郎は喘ぎ声を漏らした。下半身から電気が走り、脳内を駆け回る。
カナヲは夢中で炭治郎の男根をしゃぶり続けると、口内で大きくなっていく。
しばらくしていくと、炭治郎は絶頂を迎え、カナヲの口内で射精した。
「に、苦いわ…」
カナヲはうっとりとしながら、精液を飲み干した。炭治郎の意識がぼうっとなり、気がついた時には、
「その炭、全部買うわ。なくなったらまた売りに来てね」
カナヲが多額の炭代を支払ってくれた。外は雨がやんでいて、炭治郎は何のことかわからないまま、服の乱れを直して、代金を拾って帰った。
家に戻ると、多額の炭代に葵枝が驚いた。炭治郎が麓の家の未亡人に買っていただいたことしか話さず、お風呂に入った。
一人で風呂に入ると、炭治郎は下半身に目をやる。皮が剥けてきた男の持ち物は、小さくて短いが、形が大人のものになっている。手を握ると、軟体動物のようにふにゃふにゃしている。
こんなものをカナヲさんの口でー。
炭治郎はカナヲを思い出しながら、男根を扱く。
「あ…はぁ…」
脳内で電気が走り、神経を鈍くしていく。
駄目だ、手を止めなきゃー。
頭では嫌悪感を抱いているのに、男根を扱く手が止まらない。カナヲの口の暖かさ、唇の柔らかさ、舌の感触、そして彼女の体から放つ欲望の匂い。
意識がぼうっとなりながら、男根を扱いていく。手の動きが次第に早くなり、炭治郎が体を仰け反りながら射精した。
水面に浮かんだ精液に炭治郎は嫌悪感を抱いた。
俺はいったい何をしていたのだろうー。
それは子供から大人に変貌していく第一歩であることをこの時の炭治郎は全く知らなかった。
一月後ー。
炭治郎が遅い時間に炭を担いで麓の家に向かうと、カナヲが出迎えてくれた。
「来てくれたのね。今日も炭をいただこうかしら?」
炭治郎は風呂敷を一旦置いてから籠を下ろした。
「あの、この間は着替えを用意してくれてありがとうございます。お礼としてはなんなのですが、母が作ってくれたわらびの佃煮を持ってきました」
洗濯した着替えが入った風呂敷とは別の風呂敷を差し出すと、カナヲは「これは美味しそう」と言いながら、
「今日はもう遅いから、泊まっていくといいわ」
と炭治郎の手を握った。
炭治郎は赤面しながら「いいこと」を期待した。その「いいこと」とは、口淫より先のことだった。実は夜中に内緒で自慰をしているところを母葵枝に見つかり、全てを打ち明けると、葵枝は炭治郎を咎めることはなく、「自分の心のままに生きなさい」と諭した。
カナヲが布団を敷いて正座をすると、炭治郎はおそるおそると向かい合うように正座をする。カナヲが薄着をするりと脱ぐ。形のいいお椀型の乳房に炭治郎は固く尖った頂にしゃぶりつき、片方の乳房に手を掴みながら、押し倒す。
「あらあら…」
乳首にしゃぶり始めるなんて、まだまだ子供ねと思いながら、カナヲは二年ぶりの男に身を任せる。炭治郎の固い手、ぎこちない舌遣い、薄い胸板、小さくて短い男根。カナヲは手取り足取りで自分の感じやすい部分を教えていった。
炭治郎の男根が固くて大きくなったところで、カナヲは右手で陰唇を広げて挿入するように誘うと、炭治郎は「失礼します」と挿入する。
「カナヲさん!なんて温かい!」
「そのまま腰を振って!」
炭治郎は腰を前後に振ると、カナヲは甘い声を上げる。
「あ…あ…あ…あ…」
炭治郎の腰の動きが次第に早くなると、カナヲの手が炭治郎の背中にがっしりと掴んで、
「炭治郎君!」
「カナヲさん、もう我慢できない!」
「お願い、私のお腹の中に出して!」
炭治郎の腰の動きが一瞬にして強ばると同時に射精し、カナヲが首を絞められたような声を上げながら、強く抱きしめる。
炭治郎が「カナヲさんの[[rb:膣内 > なか]]が絞まっていて物凄いよ」と唇を重ねると、カナヲはそれに応えて舌を絡ませた。
それから炭治郎は月に一度に炭を運んではカナヲと肌を重ねることになった。
ある日は、湯船に浸かりながら交合したり、またある日は自慰行為を見せ合ったり、またある日は台所で交合したりしていた。
時が流れ、都市部を中心に開発が進み、ガスの普及によって炭の売り上げが年々減少していく。炭治郎の家も例外ではなく、炭焼きの他に内職を始めた。禰豆子を除く弟妹たちは奉公に出ていて、禰豆子は町の呉服屋の息子と祝言を上げていて、家にいるのは葵枝と炭治郎二人だけになった。
炭治郎は十七歳になった。赤みが含んだ黒髪が伸び、背も伸びた。葵枝から「父さんにそっくりになったね」と言われた。
「炭治郎もそろそろ年頃だから、一日も早く嫁を貰って孫の顔を見せておくれよ」
「母さん、その相手はもう決まっているよ」
炭治郎が籠一杯の炭を担いで、麓の家に向かった。
「今日はいつもより早いね?」
「カナヲさん、今日来たのは他でもない」
「楽しみだわ。さぁ、上がってらっしゃい」
炭治郎が籠を下ろすと、懐からちりめん生地の袋を取り出す。カナヲが「何かしら?」と受け取ると、中にはべっ甲の櫛が入っていた。
「これは?」
「カナヲさん、俺の妻になってくれないか?」
この時代、西洋文化が庶民にも浸透しつつある中で、櫛を贈る習慣は残っていた。女性に櫛や簪を贈ることは、求婚を意味している。カナヲは「それは受け取れないわ」と断り、
「これからはもう来ないで」
「何故だ!?どうしてこんなことを言うのですか!?」
「私はあなたの炭を買っていただけだから、もう来たら駄目だよ」
「何故これまで俺と関係を持っていたのですか?」
「寂しかったから、本気じゃないの」
炭治郎はクンクンと鼻を鳴らした。この人は嘘をついていると。炭治郎は激怒するなり、力ずくでカナヲを押し倒して、服を脱がした。
「何をするの、炭治郎君!?」
カナヲの抵抗を無視して、炭治郎はカナヲの両足を開かせてから怒張した男根を挿入しようとすると、
「うっ…う…」
涙がポツンと畳の上に落ちた。
「最低だ、俺…」
「炭治郎君?」
「あなたがそう思うなら、俺は諦めます」
炭治郎はちりめん生地の袋と籠を持って、その場を去った。涙を流しながら、炭治郎は家に戻り、部屋の隅で一人泣いた。
確かにカナヲと自分は歳が離れすぎている。しかも相手は未亡人だ。もし結婚したら世間体から何を言われるのか。カナヲが拒否したのは、未亡人の自分よりもっと相応しい女性と一緒にしてもらった方が炭治郎にとって幸せな選択になるのではないかという配慮だったことを匂いで察した。
そんなカナヲを力ずくでものにできなかったー。
炭治郎はひどく後悔した。
その翌日、麓の家を訪ねると、カナヲの姿がなく、手紙だけが残されていた。その内容は、探さないでくださいというたった一言だった。
四年後ー。
炭焼きの仕事を畳んだ炭治郎は、町で小料理屋で修業を積んで、暖簾を分けてくれた。母が作ってくれた料理と絶妙な火加減で炊き上げた白御飯が評判となり、軌道に乗った頃には年明けになっていた。
麓の神社で炭治郎がヒノカミ神楽を奉納する儀式に披露したことである。竈門家との縁のあるその神社では、元日の日没から夜明けまでに神楽を奉納して、一年の無病息災を祈る儀式が行われ、竈門家の当主または長男が代々受け継がれたヒノカミ神楽を披露することになっている。
神楽装束を着替えた炭治郎は、この日に集まってくれた参列者の前でヒノカミ神楽を披露する。この日のために禰豆子たち弟妹たちが帰ってきた。
町の呉服屋の息子と祝言を上げた禰豆子は三人の子供を持つようになり、竹雄は奉公先の手代に、花子は女工に、茂と六太は奉公先の丁稚になっていた。
肺までも凍りつくほど寒いなか、炭治郎は呼吸を乱すことなく、夜明けまで繰り返しながら神楽を舞い続けた。夜明けになると、神楽が終わり、竈門家総動員で煎餅を焼いて、参列者に振る舞う。
神楽装束のまま炭治郎が煎餅を振る舞うと、見覚えのある女性と会った。一つに纏めた黒髪に蝶の髪飾りをしていた。
「カナヲさん?」
炭治郎が声をかけると、女性がはっと目を開いて、
「炭治郎さん」
「久しぶりだね」
「炭治郎さんが炭焼きを畳んで、小料理屋を開いたと聞いて」
四年前、炭治郎に炭を買っただけと言って去っていった未亡人のカナヲであった。麓の家を売却したカナヲは、箱根の温泉旅館の女中として働いている。
「大人の男の顔になってきたね」
「カナヲさんも元気で何より」
「失礼ですが、ご結婚は?」
「未だに独り身です」
カナヲは驚いた。炭治郎のような真面目で気さくな男なら、[[rb:女子 > おなご]]の一人や二人いてもおかしくないのに、炭治郎は独り身を通している。その理由を訊くと、
「あなたのことが忘れられなくて。もしカナヲさんが新しい旦那さんと暮らしているのなら、俺は諦めて好い人を見つけます」
炭治郎は踵を返そうとすると、
「待って!」
カナヲの声に足が止まった。
「カナヲさん…」
「私も独り身なの。箱根で女中をしていたら、忙しすぎて恋をする暇がないし」
「それはそうですね」
炭治郎は鼻をクンクンと動かす。カナヲから独り身の寂しさの匂いを感じ取った。その寂しさは大人独特の寂しさが含まれている。
「カナヲさん、何故わざわざ箱根からこの雲取山の麓に?」
「気がついたら足が向いていた」
「それは俺に会いたかったのでは?」
「炭治郎さん、町には若くて綺麗な子がたくさんいるのに?」
「何を言っていますか?俺はずっと前から祝言を上げる相手はあなただと決めています。だから、自分を卑下しないでください」
「私みたいなおばさんでいいですか?」
「構わない。誰が何と言おうとも俺はあなたを一生守ります」
炭治郎がカナヲに頭を下げると、カナヲの目から涙が溢れ出して、
「こちらこそよろしくお願いします」
[newpage]
夜になると、炭治郎はカナヲにもう一つの儀式があるので参加してくれないかと誘った。
竈門家には代々受け継がれた儀式が二つある。一つはヒノカミ神楽で、もう一つはヒノカミの依り代である竈門家の当主または長男が、自分で決めた[[rb:女子 > おなご]]と交合することである。炭治郎の両親もこの儀式を経て、[[rb:夫婦 > めおと]]になった。
体を清め、白装束に身を着け、神社の御神体の前で互いに向かいあう。盃が入った御神酒を口につけてから、互いの唇を重ねる。
「むぅ…む…」
互いの粘膜が交換するように音を立てながら舌を絡ませる。炭治郎の唇がカナヲの顎から首筋を滑らせながら、白装束を脱がしていく。お椀型の乳房の張りは八年前と変わらず、乳首がピンと勃っている。
「はぁ…はぁ…」
炭治郎がカナヲの乳房に唇を寄せながら、静かに押し倒していく。
八年経ってもまだ子供ね―。
カナヲは初めて肌を合わせた時を思い出した。まるで子供に帰ったかのように炭治郎は乳房をしゃぶりつく。餅をこねるように両手で乳房を揉み、乳首を軽く歯を立てると、カナヲは甘い声を上げた。
「あぁ…」
炭治郎の愛撫に身を任せていくうちに、カナヲは神と一体している気分になり、様々な体位に応えていった。
儀式が夜明けまでになると、カナヲは体力をなくしてぐったりになった。
それから一月後、炭治郎とカナヲは祝言を上げ、いつまでも仲よく暮らした。
完