※この作品はR-18です。

ネタBOX R18   作:ヤン・デ・レェ


原作:BLACK LAGOON
タグ:R-18 オリ主 色々
ネタBOXのR18版。増えるかは知らん。

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「BLACK ONE」BLACK LAGOON

 

 

 

「手をあげな!」

 

海に浮かぶ船という動く孤島の甲板上で、新人商社マンである岡島緑郎の受難は始まった。魚雷艇から飛び乗ってきた露出の激しい格好で両手に拳銃を構えた女が英語で降伏を求めてきた。緑郎は何の躊躇いもなく両手を上げて降伏を体全体で示した。

 

「それでいい。従えば手荒な真似はしねぇ…」

 

銃口を自身に向けながら告げられた女の言葉に緑郎は疑問を抱いたが、反論は彼には大き過ぎるリスクだった。

 

彼が会社から言い渡された仕事はとあるブツを安全に運ぶことである。世間一般に社外秘にあたるこれらの情報を欲しがる者も多い。何かと物騒な世間だ。彼も覚悟はしていた。

 

しかし、実際に銃口を突きつけられてみると会社のことなど頭から吹っ飛ぶものだ。彼は素直に荷を渡した。あぁ、終わったな俺の社会人生活…と彼は心の中で泣いた。

 

「おい!お前も手を挙げろ!」

 

あぁそういえば今日は途中で人を拾ったんだった。振り切れた緑郎は今日拾った釣り人を思い出していた。そこそこの体格の、しかし随分優しそうな顔の男だった。彼はなんでもロアナプラでは有名な釣り人らしく、今日は少し遠くまで釣りに出たところ波に飲まれてしまい漂流していたそうだ。ロアナプラといえば恐ろしい世界の悪が集う犯罪の都のことだ、彼のような人間が生き残れる場所だとはとても思えなかった。麦わら帽子の男が女に襟元を掴み上げられているのを見た緑郎は少しの間だったが知り合った人間がこれからいよいよ殺されてしまうのかと目を瞑った。

しかし、彼の予想は当たらなかった。

 

「ッ!?な、なんでアンタがここに居るんだ!」

 

女の叫び声は意外の感情を露にしており、咄嗟に緑郎は振り向いて件の男のことを伺った。

 

「?」

 

しかし、男はというとキョトンとした顔で驚く女性を見つめており、何が起こったのか理解している様には見えない。

 

「あっ、あたしだよ!!覚えてる??レベッカだよ!」

 

緑郎はさらに驚きを重ねた。先ほどまでの威圧的な態度は何処へやらシージャックに来たはずの女が抱きつくような勢いで麦わら帽子の白タンクトップ姿の男に詰め寄っているのだ。

 

「…おい!レヴィ!何モタモタしてんだっ!早くしろ!人質一人に時間がかかり過ぎだ!お前らしくもねぇ…」

 

「ダッチ!!あたしが話してたヒーローが遂に見つかったんだよ!!ほら!見てくれ!!」

 

緑郎は何が起こっているのか理解できなかったが、新しい人物の登場で少しずつ話が見えてくることになった。いかにも軍にいましたという風貌の屈強な黒人が大きな回転拳銃を片手にタラップを上がってきた。ダッチと呼ばれたこの男はこの女…レヴィに人質を一人用意するように言いつけていたらしい。

たしかに、真っ昼間にシージャックを敢行するのだからプロのハズである。しかし、彼らの仲間でありかつ先鋒を任されたはずの女は仕事も忘れて麦わらタンクトップ男を抱きしめながらダッチという男の前に紹介している。警察か軍が来るまで続けて欲しいものだ。

 

「ヒーロー?アメリカでの話しか?…おい!おいおい!コイツァまたどういうことだ⁉︎」

 

「?ダッチどうした?そんなに怯えんなよ、パパは優しいから安心しろって!!」

 

「……おいレヴィ!てめぇどういうこった!この人が船に乗ってるなんて情報に無かったぞ!!…??パパ?おいなんだ!?そいつはまたどういう冗談だ!それも説明しやがれ!」

 

腕時計を確認した黒人は女の話を少しなら聞いても問題無いと判断したのだろう、腕を組んで例の男の顔を覗き込んだ。しかし、覗き込んでから10秒も経たぬうちに彼は後退りしつつ、女に説明を求めた。

 

「だから!この前も話しただろうが!あたしをクソ親父から救ってくれたのがこの人なんだよ!だからこの人がヒーロー何だよ!」

 

「おい!余計に話が見えねぇぞ!どうしてドンがここにいるかってことを俺は聞いてるんだ!」

 

言い合いを始めた二人を見て好機だと考えた船員が少しずつ二人から離れていこうとしていたが、ノールックで哀れな彼の足元に鉛玉を放った女は黒人の追及を流しながらこう締めくくった。

 

「あーあーあー!!うるっせぇ!今はそれより人質だろ?…ならお前にする。来いよ?パパと同じジャパニーズだろ?ま、断っても連れて行くけどな。」

 

どうやら自分の命運もここまでのようだ。魚雷艇へ乗せ替えられた緑郎は遠い目で離れゆく地平線に浮かぶ輸送船の黒い影を眺めていた。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

あの後、緑郎は例の男とともに魚雷艇に乗せ替えられ、そこで温いビールと湿気った煙草を嗜んでいた。

例の男の名前はミフネダというらしい。日本語で話しかけた緑郎へ外見通りの優しい声でそう答えた。

 

彼はビールを好まないらしく、また煙草も吸わないと言ってレヴィ…会話の中に出てきたレベッカという名前で呼びかけたら銃床で殴られたのでそう呼んでいる…から執拗にシガーキスを迫られても断っていた。

 

彼らの、シージャック犯の言葉を分析するに今緑郎の正面の席で麦わら帽子を脱いで、腰から下げていたタオルで顔の汗を拭っている男は何かしら彼らとの関係性があるようだった。特にレヴィは彼に相当の恩があるらしく人が変わったように懐いている。また、ダッチという黒人はミフネダに対して恐れにも似た感情を露わにしていた。プロである彼らが感情を露わにするほどの大物…には見えないが、この男には何かあるようだ。

 

「?」

 

「いえ!何でもありません…」

 

じっと見つめていたことに気づかれたようだ。緑郎からの謝罪に気にした素振りを見せず、むしろ僕のことを見て楽しいのかと疑問に思うような、不思議がるような顔をしている。

とても悪人にも大物にも見えない…緑郎の素直なミフネダへの感想だった。

 

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

その後、緑郎は会社から切り捨てられ命まで狙われる事態となった。ガンシップまで持ち出す古巣の本気度に彼は、ならもっと護送に金を使えよ!と毒づいた。最終的に魚雷艇の魚雷を使って追ってを撃退した緑郎は、曲がりなりにも犯罪者へ手を貸し、挙句人殺しにも加担したことになった。

 

彼は生きていてもマトモな生活に戻れるとは思っていなかったし、初めて感じた高揚の正体に自身への親和性を見出していた。

 

彼は日本へ戻らないことに決めた。男は岡島緑郎の名前を捨ててラグーン商会の新人水夫ロックへと生まれ変わったのだった。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

新たな門出を祝うための酒席はダッチ達が仕事の後の一杯を少し豪奢にしたいがためにも設けられたものだったが、ロックはこの遠慮のない距離とならず者特有の言外の緊張感に昂りを覚えていた。彼には見所があったようである。

 

しかし、いつも酒の席では一番騒がしいはずのレヴィがここに来て一度も汚い言葉を使わないのである。

むしろ何処か育ちの良さすら感じさせる、言うなれば良くも悪くも強がりで悪ぶっている様なチンピラのように行儀が良いのだ。

 

「パパ…お酒飲めないんだったよね!…じゃあさ、これからあたしと一緒に二人で甘い飲み物を出すところに行かない?今ならまだ開いてると思うからさ?ね?」

 

…ロックは婚期を逃した女が自分よりも若い男に熟れた女の魅力を教えてやると迫っている様を幻視した。しかし、彼がそう思うのも無理は無い。ここロアナプラでは舐められるということは死を意味する。一等の拳銃使いとして二つ名まで持っているレヴィが舐められる様な隙を見せることなどある訳がない…そう思っていた周囲のお客連中もまたロックと同じように目を見開き、口をぽかんと開けて幻を見ているような表情の者ばかりであった。

 

レヴィの迫る勢いの提案に、何となく何処かへ行こうと言われていることに気づいたミフネダは首を上下に動かして承諾の意を示した。

 

喜ぶレヴィとわからんがニコニコしているミフネダ。レヴィが立ち上がったミフネダの腕に自身の腕を絡ませたことで、衆目はより一層幽霊を見たかのように呆然の面持ちを示した。

 

二人の一挙手一投足を横目に見守りつつ、ウィスキーのグラスをカタカタと震える手で握っていたダッチの姿など知らない。

 

レヴィとミフネダが店を出ようと扉に手をかけた時、扉が向こうから一人でに開いた。いや、一人でに開いたというより入り口の両脇に控えた屈強な男達が手で押しのけたというのが正しいか…さておき扉は開き、新たに入店したのは燕脂のスーツとスカートに身を包んだ妖艶な美女だった。

 

彼女の入店に先ほどまで幽霊を見ていたように呆けていた店内の空気は一変、ミフネダを除く全ての男達が椅子から腰を浮かせ、警戒を露わにした。

 

レヴィは女の登場に驚きつつ、どうしてこの場に現れたのかを疑問に思った。彼女の疑問はレヴィが腕を絡めていない方の手を目の前の女が取ったことで解消された。

 

「…行くぞ、ミフネダ。ボリスを待たせてある。レヴィ、彼からその手を離せ。」

 

女は顔に刻みつけられた痛ましい火傷の跡から想像されるように好戦的な人物だとこの街の人々から認識されていた。しかし、ミフネダの手を握った彼女が浮かべたのは一本背負いを繰り出す前の凶暴な笑みでは無く、初心な令嬢が浮かべるようなはにかむような優しい笑みであった。男はというとボリスという名前に反応したのかウムウムと頷き、レヴィの手を握り直した。レヴィも状況を把握し切れていなかったがミフネダが彼女の手を離さずに握り直したことに快を示した。彼女は

 

対して火傷の女は自分の命令を実行しなかったレヴィに対してのみ不満を示しており、彼女の手を握り直してから車へ向かおうとする男へはこれっぽちも非を感じる様子はなかった。

 

車のドアが閉められ排気が空気を汚す音とともに周囲の緊張は溶けた。

 

「はぁぁぁ〜……出たよ…ドンの気まぐれが…」

 

「まったくだ…勘弁して欲しいが、こればっかりは指図出来ねぇ…レヴィも全くどうして度胸があるもんだぜ…」

 

グッタリとカウンターに突っ伏したダッチとエンジニアのベニーにロックがずっと疑問だったことを問いただした。

 

「…ドン?それにあのミフネダって人は何者なんだ?あとあの女性も…入ってきただけで緊張感が高まってた…」

 

ロックの質問に対して心底面倒くさそうな二人は、しかし新たに入った物好きの水夫の命のためにも話してやることにした。もう一つ大きなため息を吐き出してから彼らは話し始めた。

 

「…お前さんの言ってるミフネダの旦那は困ったことに外見とは正反対のヤベエ人だ。あの人のことを一言で表すとしたら、歴戦のドンって奴だろうな。」

 

「同感だねー。…勘違いはしない方がいいから補足だけど、あの人自体は物凄く温厚なんだよ…物凄く寡黙でもあるけどね…問題はあの人の周りさ…とにかくビッグネームがうじゃうじゃ集まってるんだ。」

 

「元はと言えばこのロアナプラだって寂れた街に過ぎなかったんだが、あの人が移住してからは天下の悪が集う犯罪の都に大変身だ。笑っちまうぜ。最初に入ってきたのはホテルモスクワ!そんで三合会!…その後はいくつかの勢力が入ってきては消え、入っては消えって感じだな。」

 

「そうだね、ここロアナプラでは強さが法律だから強い組織には逆らうなってことを覚えておいた方がいいよ。特にあの二つには要注意さ。それで…とにかくミフネダさんが大物だってことは理解できたと思うから、さっきの女性について教えてあげるよ。」

 

「…あの女性はバラライカ。コードネームってやつだね。彼女が何者かってことなんだけど、彼女はさっき言ったこの街の支配者の一つ、ホテルモスクワのロアナプラでの頭目さ。」

 

聞かなければよかった。とロックは思った。自分から首を突っ込んだ手前ここで引き返すのも気分が悪い。納得するまで聞いてしまおうと思った彼はベニーにミフネダとバラライカの関係性を問う。

 

「!?…それじゃ、あのミフネダさんとバラライカさんの関係って…ムグ!?」

 

しかし、彼の質問は途中で背後に回ったダッチにより口が塞がれたことで中断された。

 

「おっとと…ロック、それ以上は知らなくていい。今のままが一番いい緊張感を持ったままここで生きていける限度だ。わかるな?逆鱗には近づかねぇのが一番だろ?」

 

ダッチに言い聞かせられるように問われてしまい、ロックは頷くしかない。彼は同意をロックから取り付けたと見てその屈強な肉体による拘束から彼を解放した。

 

「よし!物分かりがいいことは大事だからな。そういうことでこの話はやめだ。もう帰って寝るぞ。」

 

「えぇ?美容を気にする様には見えないけど?」

 

食い下がるロックを放ってダッチとベニーは足早に酒場を出て行ってしまった。ロックはこれ以上は何としても答えてくれないだろうと納得して疑問を飲み込んだ。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

ロアナプラの中心部に一際目立つ建築物があった。ホテルモスクワの事務所…というより要塞といって差し支えのない巨大な総鉄筋コンクリート建築のロアナプラ支部の本拠地である。

 

そこの最奥には最も頑丈かつ豪奢に作られた一室がある。この部屋は設計図にも描かれていない隠し部屋であった。その部屋に続く全ての通路に厳重な警戒体制が24時間敷かれている。部屋に通じる道もそもそも一つしか作られておらず其れすらも頭目の寝室、バラライカのテリトリーの最奥に設置されていた。この部屋の存在を知っているのはバラライカの信頼する直属の部下の中でも極々一握りである。

 

そんな情報秘匿と死守を尽くすこの部屋に何があるのか?それを知るものは更に少なく、ホテルモスクワ内にも片手の指の数で足りるほどしかいない。

 

では彼らは何を秘匿し、何を護っているのか。その答えは今その部屋で絶賛行われているある儀式に由来している。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

今日はあまりついていない。釣りに出かけたのに渦に飲み込まれて危うく死ぬところだった。こんな目には二度と会いたくない。親切な日本人に会うことができたのは幸いであった。服装が麦わら帽子とタンクトップだったのはすこし照れてしまったが。

 

助けてもらったのに早々にシージャックに遭遇した。散々だ。しかし船に上がってきた女の子に僕は見覚えがあった。…レベッカに似ている気がする。しかし!僕は英語が得意ではない。何十年と接して来たつもりではあるが、多少読めたり話したりする以外はとても難しくてできないのだ。だから彼女から早口でネイティブスピーキングされても追い付いていない。…何となくで生きてきた報いというやつだろうか?

 

船に乗せられた。彼等の向かう先もロアナプラらしい。何だ、レベッカに似てる君はレヴィって言うのか。名前までそっくりだな。でも君たちが悪い人たちじゃなくてよかったよ。銃を突きつけられたとはいえ家に送ってくれるんだから。ありがとう!あと、ロック君はやはり日本人なのか…何だか懐かしいね。前に帰った時はとんでもない目にあったから暫くあっちには帰りたくないけど…あっ、煙草もビールも結構です。

 

結局いつもの様にソフィが迎えにきてくれた。車に乗ってすぐにレヴィちゃんは降りると言い出してしまった。ごめんねと謝ったら彼女は機嫌を直してくれた様だった。安心。彼女の事務所の前で下ろしたから家の人も驚いていたみたいだ。ダッチ君はサングラスが似合ってるね。

 

レヴィちゃんが降りた後はソフィとずっと手を重ねていた。

彼女には心配をかけてしまったな…ごめんね。またしてもトラブルに巻き込まれてしまった。こんなつもりではなかったのだけれど。今日の夜に頑張れば機嫌を直してくれるかな?

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

「かくして今日も僕はソフィを抱きにきてしまった訳だ…」

 

ミフネダ…ドンは着慣れないバスローブを脱ぎ落とした。彼が恥ずかしげもなく脱いだのを見てからソフィ…バラライカもバスローブを脱ぎ去った。

 

「…私の前以外で私をソフィと呼ばないでくれ。冗談でも、貴方以外に名前を呼ばれたくはない…」

 

 

それ以降の彼らは何も言葉を交わすことはない。それはいつしか形作られた二人の間での掟の様なものであった。

彼女の肉体には戦火がそのままに刻まれていたが、女としての魅力を損なうどころか寧ろ危険な妖艶さを纏っていた。彼女よりも背の低い男を包む様にした自分の中に閉じ込めた彼女は、両腕でまずは男の体を抱きしめる。互いの体温を吸い合せる様に長く深く抱きしめ合った。一糸纏わぬ生まれたままの姿でいるというのに寒さなど微塵も感じない。二人の間には互いの心臓の鼓動だけが響いていた。

 

瞳を閉じて彼女はいつもこの時間を作られた自分から本当の自分へと意識を切り替えるために使う。本当の自分はソフィーヤ…彼にだけソフィと呼ぶことを許している名前だ。作られたバラライカという自分から逃れる様に、まだ行為の前戯にすら及んでいないのに彼女は男の背中に爪を立てる。彼女から全てを奪ったものは戦争だが、それがきっかけで目の前の男とも出会った。この男と同じ様な男も、この男以上の者も決していないと彼女は断言できた。男は決して死ななかった。決して負けなかった。決して恥じなかった。誰よりも彼女の女を滾らせる存在だ。

 

ミフネダとの思い出をこうして振り返ることで、彼女は少しずつであるが自分を取り戻せるのだ。男の首に顔を埋めて息を吸う。男の体からは捻りのないボディソープの香りがした。だが彼女を狂わせるのはその香りではない。彼が自分と香りを確かめられるほど近く身体を合わせているという事実が彼女を狂わせるのだ。そしてすぐ下、彼の背中に目を向ければ彼女の美しく整えられた爪に傷付けられて血を滲ませていた。赤い血が彼女をより深く男と結びつけてくれる。命を賭して暴れ回ったアフガンの地で彼女は重傷を負った。夢を叶えられないと知ってからは尚のこと自分の肉体には頓着しなかった。だが、死に瀕した時にそばに彼がいないと怪我より先に寂しさに殺されそうだった。勲章なんか要らないから、私は夢を叶えたかった。単なる代替手段に過ぎないのだ。でも貴方にも褒めてもらいたかった。死に際に彼女を担ぎ上げた男は彼女の最も求めていた存在だった。ミフネダがなぜ紛争地にいたのかわからない。しかし、結果的に彼女の命に別状はなかった。火傷で醜い傷跡が残ったと、自分の中の普通の女らしさを諦めようとた彼女は彼から求められた時涙を流さずにはいられなかった。背中の上で揺られる。自身の血が男の肩や背中を滴り落ちる。男の手は決して話すまいと自分の身を抱いてくれている。彼女は死んだはずの自分を彼の前でだけ生き返らせてやれる。死と暴力に沈めてしまわなくて良い、今だけは太陽の元を生きていた自分で居られる。彼女は一際強く息を吐くと顔を上げた。

 

立ったまま抱き合っていた二人はベッドの上へと向かった。男はいつもの様に女に背を向けた。彼女は自分が男の背中につけた傷を慈しむ様に撫でてから鮮やかな赤色の舌で唾液を塗り込む様になぞり始めた。戦火によって浴びた血を、愛する男の血で雪ぐ。彼女の中で何か折り合いをつけなければならなかった。人を殺めることに何の感慨も抱かない様な人間だったとしても彼女を受け入れようとするならば、男は黙って痛みに耐えるだけだ。彼はそれを選んだ。何度も、何度も、自分でつけた傷を癒す様に彼女は男の体に背後から抱きつきながら舌を動かす。スルスルというこそばゆい感覚と熱い液体が傷に染みる痛みに顔を顰めそうになるが努めて穏やかに表情を保つ。

 

5分程度で彼女の傷は一時の安寧を得た。静かに後ろを振り向いた男の顔を、瞳の色がガラリとかわった彼女が両手で押さえ込んだ。口の中を歯肉から歯の一本一本まで貪る様な激しいキスは彼女が舌を男の舌と重ね合わせて味わう様になると少しずつ落ち着いていった。穏やかになったのではない、深く深く舌の柔らかさや唾液の味、歯の形を味わう様に変わったのだ。音が激しく響いていたキスは荒い呼吸と唾液の激しい交合に静かなものよりも淫靡な印象を抱きがちだが、静かなキスは冷静な頭で愛するものとの淫行を見つめながら互いが互いを味わう音が、まるで音が舌の動きを再現している様に感じていくのだ。互いの心音を頼りとする様な静寂の中で強い女との間に銀糸を引き、燻る様な情欲を煮込むことができる男は尚更に幸運であろう。

 

自身の腹に熱を主張する彼の固く太くそそり立った男根の存在感に気が付いた彼女がそれを無視するはずもなく、性格の苛烈さを感じさせない柔らかな手による緩々とした愛撫が始まった。男は女との口での交わりを続けつつも彼女の秘所へと無骨な指を伸ばした。彼女の男根を扱く手が早まったのを感じながら、男は秘所の濡れ具合を確かめる前に腿や腹部にも残る傷を指で優しく舐りながら少しだけ強く彼女の舌を吸った。彼女の目は平時からは考えられないほどのあどけない怯えと、悪戯好きの恋人に対しての愛しさで潤んでいた。傷を恐れられるのは嫌だ。傷を慈しんでくれることが堪らなく愛しい。どうか貴方だけは愛してくれ。彼女の口は未だ男と繋がったままだったが、男は彼女の心の声が聞こえた気がした。

 

女に逸物を扱かせながら、男は彼女の秘所へ侵入した。指で優しく押し開いて行く。彼女の肉膣はすでに男を受け入れるための準備を終えていた。女の瞳も期待にギラついていた。しかし、男は彼女のいつもの強い姿を思い浮かべると指を抜くことなく深くまで沈めた。か細い声で鳴き、男根を扱く手が止まってしまった。男は彼女の変化など御構い無し指を動かし始めた。女は腰を引いて快楽を逃がそうとするが男は彼女の体を離さない。言葉で反論しようとするであろう口は塞いである。涙が目尻に溜まっているが、男はそれが見たくてやったのだから彼の思う壺であった。女の中はきゅうきゅうと男の指を締め付けてきた。指を動かすほどに愛液が止めどなく溢れていた。女の手は完全に止まり、また男の背中へと伸びていた。甘える様な声を漏らしながら男に抱きつき、時折ビクビクと痙攣する彼女の反応に男は大満足であった。その後も男はしばらく女の膣口を指でなぞったり、緩急をつけて深いところを掻き混ぜたりした。その度に彼女は咬み殺した声で甘く鳴き、男を睨みつけることなく瞳をただただ蕩けさせた。

 

長く続いた愛撫に彼女の体はくにゃりと柔軟にしなってベッドへ倒れ込んだ。体力に自信のある彼女だったが、性に関してだけは拳銃を持つだけで疲れた何だというこの男に勝てる気がしなかった。彼女は幼い頃から純情に真っ直ぐに生きてきた。その過程で挟んだ戦争は彼女の生き方を変えこそしたが、決して彼女からこの男への一途な想いを奪うことはできなかった。彼女は長時間自分の体に指や舌を這わせて遊んだこの男に全く怒りが湧かないどころかやはり愛しく思った。人の体はオモチャじゃないと叱ってやるつもりだった彼女の毅然としていた瞳は、今度は彼女の胸にむしゃぶりつき始めた彼の幸せそうな瞳を目にしてからすっかり目尻を下げてしまっていた。

 

「そろそろ挿れてほしい…貴方がほしい…私のままでいさせてくれ…」

 

自分が優しい表情を浮かべていることを想像した彼女は、少し陰の差した顔で彼の耳に口を寄せると懇願した。彼女は気丈な態度だったが、その目には涙が浮かんでいた。幼さは彼女にとって懐古では無く弱さゆえの無力感や恐怖を呼び起こしてしまうらしい。彼女が男の体を自分の体に抱き寄せる。もとから密着していた二人の体はまた隙間がない様に混じり合った。彼女の頭を背伸びをする様にして胸に抱く。胸のあたりが少し湿るのを感じた。すぐに彼女の奥へと欲望を吐き出すのも悪くはないだろう。しかし、今は彼女に甘えることを許すべきだろう。男は優しく大きな少女の頭を撫でた。軍隊なんて男社会で成り上がる胆力も才能も、人を惹きつけるカリスマも外見的な魅力も、今では武力と財力もあるのだろう。彼女は完璧だ。完璧に欠けていた。戦争に顔が焼かれても、誰かを助けて評価されなくて悔しくないわけない、苦しくないわけがない。強い女だというのは誰の理想なんだい。君の理想なのかい。男のかける言葉は断片的だが彼女の隙間を埋めるように降り続けた。目尻の赤い彼女に戦地から戻ってきた恋人にする様な熱烈なキスを何度も落とす男。彼の振る舞いをくすぐったく感じながら心地よさげに受け入れる彼女には先程の陰の差した表情はなかった。彼女と見つめ合ったまま、男は腰を彼女の秘所の入り口に擦り付ける。クチュクチュと軽快で粘着質な音が聞こえた。女が肯き、男は腰をゆっくりと進めた。

 

強い女であろうとする彼女は案外優しくてゆっくりとした行為を好んだ。掃いて捨てるような荒々しさを彼に求めたことはない。彼女は自身の快感に歪む顔や、心からの悦びを訴える甘い声を自分に腰を振っている男以外には見せたことがない。少しでも見ようとか関心を買おうとかしたヤツは一人も生かしておかなかった。文字通り二人だけの世界を作り上げるために彼女はここにこの部屋を作った。完全防音かつ高い居住性を兼ね備えた部屋だ。この部屋の中で殆どのことは賄える。運動だって今二人でしているように交われば良いのだ。いくらでも交わりたいと彼女は願う。自分が歳を重ねても美しいことなど理解している。理解していなければ愛しい男に体を抱かせるわけもない。不満足を与えるくらいなら死にたかった。彼がそんなことを口に出すことはないが…それでも彼女は自分の爪先から心臓の鼓動までを彼女のお気に入りで埋め尽くしたかった。未だに改善点は多いが、自分を気持ちよさそうに犯している男の姿を見た彼女は病みつきの快感と安らぎを覚えていた。彼女の体は魅力的だ。豊かな胸に程よく肉がつき張り出した臀部は柔らかく男を包む包容力と子供をよく産めそうな本能に語りかける艶やかさがある。鍛え抜かれた肉体は彼女の豊かな肉を引き締めてよりメリハリのついた体に見せる。傷の残る体だが目を離し難い魔力があった。彼女は体の傷を魅力に変えられる様に努力を怠らなかった。彼女は心身共に女として常に最高の状態を維持していた。男は彼女の体に身を預けながらゆっくりと腰を動かす。彼女の豊かな柔らかい胸に鼻を押し付けてその甘い香りを味わう。彼女は微笑みながら男の頭を撫でる。パチュパチュと水音が音きくなってきた。男の腰はゆっくりとだが勢いを上げている。彼女も穏やかに笑いながらも荒い息を男と交わしていた。

 

男に限界が来た。彼女は男の頭を上に向けさせ唇を交わす。舌を動かし互いを味わう。上の口でも下の口でも激しく交わりながら彼女は男の絶頂を待った。パンパンと遠慮のない腰振りが始まった。我慢していたであろう男の動物の雄の様な欲望の発露に、彼女の子宮はグツグツと男の精液を待ち侘びて震えた。早く早くと彼女は口から出そうになるのを我慢して男の口内に粘ついた唾液を流し込む。彼女は目に火が散る様な錯覚を覚えた。ビュー…ビュー…ビュルルル……ビュー……。大きく引かれた男根が強く深く彼女ほ腹の奥へ叩きつけられたかと思えば、止めどない射精が始まった。彼女はフルフルと体を震わせながら男の腰を自分の足でくいくいと引いた。余さず私の中に出せ、と言うように。彼女は熱い息を吐くと男の口から口を離した。汗だくの二人はそのまま体を寄せ合って眠った。男はまだまだいけると意気込んでいたが、女は満足だった。腹の奥に溜まった男の精の始末をどうしようか真剣に悩んだ彼女であった。




書きたいものがあったのだが、果たしてR18で書けば俺は満足できるのか?という問いに答えられず、結局連載投稿にできなかった。

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