『アオのハコ』
思えばいろいろあるけれど、でもまあなんとか上手くいくもの。
いつだって世の中そんなもの、意外と気楽に構えても大丈夫。
楽しい夜は終わらない。

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今週もまた遅れましたが、とりあえずは書けました。


果てなく続くアオい夜

 不埒な事を考えるものじゃない、本当に。こっちは目的があって住まわせて貰っているんだから、品行方正にしていないと立場が無くなってしまう。

 それは重々承知しているけれど、それでも気持ちに戸は立てられない。なにしろ我慢が効かない身体、こればっかりは仕方無い。

 だって大喜くん、可愛いんだもん。ちょっとからかうと真っ赤になるし、とにかく可愛い。そのせいで私はあれこれ悪い事考えてしまうんだ、私のせいじゃない。例え私のせいだとしても、そこを突かれると困る。本当の事でも言って良い事と悪い事がある、ってやつだ。

 だからそう、これは不可抗力というやつだ。大喜くんのベッドの下で息を潜めているのも、全てはそれ。何度でも言うけど、誰が悪いわけでもないんだ。

 さて、どうしようかな。

 

 切っ掛けはちょっとした好奇心というかなんというか、まあ興味本意の事。大喜くんが一人の時間をどう過ごしているか知りたかった、そんなものだ。

 ジャンプ借りたり色々と理由を付けては部屋へお邪魔してはいるものの、思ったより大分スッキリしていて人となりがわかる要素が見当たらない。実家から持ってきた私物で借り物の部屋を埋め尽くしている身としては、ああもシンプルでは落ち着かない気がするんだけど。……いやまあ二年で出ていく部屋で、こうも好き勝手してる私も大概非常識か。

 とは言え最近の私は大喜くんが気になっていて、あれこれと知りたいのだ。バド以外に趣味はあるのかとか、そういうの。それで急にどうこうとかじゃなく、話のフック程度になれば良いかな、くらいの気持ちだけれど。

 そんなわけで大喜くんがお風呂に行った隙を突いて入っては見たものの、……見たものの。

 ちょっと慎重になりすぎたか、特に成果も無いまま時間を無駄に過ごしてしまった。お陰で大喜くんが戻ってきた時にはまだ脱出できておらず、やむ無くベッドの下へと緊急避難を決め込んだのが現状です。分かりやすいですか。

 凹凸の少ないフラットな体型が幸いして気づかれてはいないものの、正直これは厄介すぎる。この状態からではどんな言い訳も出来ないし、下手をしなくても追い出されかねない。不味い、不味いったら無い。幸い大喜くんは眠りが深い子だから、寝静まったところを狙えばどうにか――。

 私がそう考えていた、まさにその時。

 顔の上でベッドの底板が、ギシリと音を立てた。

 思わず反射的に声を漏らしそうになるのをギリギリで堪えるも、胸の鼓動は爆音化していく。これは不味すぎる、危険だ。

 だけどその少し後、私は更に思い知った。本当に不味いのは、これからだと。

「……っ、ぁ……ぁっ」

 大喜くんの呻くよう声に合わせるように、ベッドがリズミカルに軋み出したのだ。その動きは明らかに普通ではない、激しすぎる。一体何が起こってるのか、一瞬警戒して。でも私はそれが何なのか、すぐに理解した。理(・)解(・)で(・)き(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)。

 いつだったか渚が言っていた、弟くんの「それ」を見てしまって気まずいやら気持ち悪いやらで大変だったと。腰かけたベッドを激しく揺らし、剥き出しの下半身で――オナニーをしていた、と。その時の微に入り細に入る嫌がらせみたく詳細な解説のお陰で、本物を見たこともないのにイメージでばかり詳しくなってしまった。姉の下ネタトークに使われる弟くんも気の毒だけど、そんなもんを聞かされる私も複雑だったな。

 まあ、だ。別に大喜くんだって、そういう事くらいするんだろう。私だってたまにはするし、ここは見なかった事にして忘れてあげるのが人の道。

 何も聞かない、察しない。終わったら手くらい洗いにいくだろう、そうしたらコッソリ戻ろう。

 呻きは喘ぎに変わり、軋むベッドとのセッションがどれほど続いたか。そこへヌチャヌチャと粘っこい音も混ざり、もう目の前で見せ付けられてるかのような錯覚に陥り出した頃。

 一際大きい喘ぎと共に、ガクンと一気にベットが深く沈み込んだ。……危うく鼻をぶつける所だったけど、私にはそれを怖がる余裕はない。だってその瞬間、確かに聞こえたから。大喜くんが小さく「千夏先輩」と呟いた事を。

 バレたのかと身構えた次の瞬間、隙間から見えていた大喜くんの足がフラリと動き出す。そのまま聞こえてきたのはドアが開かれる音と、下っていく足音だけ。私を引きずり出そうと言う意図は感じられない、予想した通りに手でも洗いに行ったのだろうか。

 怖々ベッドの下からズリ出て漸く、私は気が付いた。大喜くんが私の名前を口にした、その意味を。

「――、ぁ……」

 ベッドの上に残されていたスマホには、私の姿が映し出されていたのだ。

 

 部屋に戻って私は思考を整え、先程の光景を反芻している。考えなければならない、それは大切な事なのだから。

 練習中にフォーム確認で写真や動画はよく撮るし、他の部員がいない時大喜くんに頼んだ記憶もある。逆に私が撮ってあげた事もある、それは私たちにとっては日常の風景。

 でも大喜くんは今、……オナニーをしていた。私の写真を見て名前を呼びながら、していた。

 それは、……つまり。大喜くんは私をそ(・)う(・)い(・)う(・)目(・)で(・)見(・)て(・)い(・)る(・)ということなのだろうか。

「んー……ふむ」

 こんなガラッパチな、ワンパクでたくましい子を相手にそんな気になるとは思えない。私が男子だったら、どう考えても蝶野さんとかの方が良いと思うけど。その辺はどうもよくわからない、男の子って難しい。

 しかしこれは、どうしたものか。渚が言うみたいな気持ち悪さは感じないけど、今のままでは良くないな。

 このまま悶々とさせておくと、辺な方向にいきかねない。花恋も針生くんに「御預け」し過ぎて関係が拗れたことあったそうだし、思い詰めて夜中に押し掛けられたりしたら大変だ。それに欲望をもて余したままでいると、菖蒲ちゃん辺りが雑に押し倒しかねない。あの子そういうの好きだし、何よりも大喜くん可愛いんだもん。そんな事が起きて部活に集中できなくなられると、さすがに心苦しい。

 ちゃんとした形で発散させて、前向きにさせてあげないと。それは「良い同居人」としての勤めでもある、……んじゃないかな。それに私としてもそっち方面は、人並みに興味がある。大喜くん相手にそういう行為をするというのは、中々宜しいのではないだろうか。なにしろ可愛いからね、うん。

 さてしかし、今これからどうするわけにもいかないか。

 まずは眠って、明日改めて考えよう。灯りを消して思うのは、やっぱり大喜くんの事なんだけど。

 

 人間にはルーティンというものがあって、無意識にそれを守ろうとする。要するに身に付いた習慣は、そう簡単に変わらないということだ。

 前日とほぼ同じ時間、同じタイミング。私は今日もベッドの下で仰向けになっている。ただ昨日とは違い、すぐにでも出られるように場所を吟味した上で。

 ここから見える足の位置から大喜くんが座っている所が分かるし、それを基にして視界を計算するのは難しくない。団体競技をやっていれば、誰でも身に付く技能だ。

 そして集中してオナニーしているであろう大喜くんが、ちょっとした違和感なんかに気が付くわけはない。

 そっと顔を出して見やった大喜くんの視線は、恐らく私が映っているであろうスマホに釘付け。

 ――ここでもし私が……何(・)か(・)したら、どうなってしまうんだろう。そう思うよりも早く、身体は動いてしまう。

 ぬるりと全身で這いずり出し、音もなく忍び寄って。大喜くんが異変を認識したかしないかの刹那、私は躊躇いもせずに大喜くんのオトコノコを握り締めていた。

「っあ、……、せん……ぱいっ!? な、……んでっ」

 パンパンに張り詰めた硬い肉の質感と、指先に伝わる拍動。入り交じった体液の匂いは鼻がまがりそうな程に牡臭く、それなのに不快感を誘わないのが不思議だ。そのせいだろう、フラフラと導かれるように顔を近付け、私は――それを口に頬張っていた。

 舌が焼けるような粘っこく熱い汁の味、鼻に抜ける生臭さ。手よりも更に近い、粘膜が理解する脈打つ鼓動。舌でなぞると、まだ硬いメロンのような感触が伝わってきた。

 溢れる液体はすぐ口いっぱいに広がり、喉を犯しながら胃の腑へと落ちていくのが心地良い。もっと深くまで味わおう、そう思って陰毛が当たるくらい深く顔を埋め、顎に蒸れた肉の袋の感触を覚えながら更に吸い上げ始めたその時だった。

 ドクンと大きく大喜くんのオトコノコが震え、そして私の喉奥目掛けて何かが勢いよく迸った。

「ぐっ、ぇあ……ぷっ」

 それは口内が焼け落ちる程に熱く、ドロドロと絡み付く。きっとこれが、射精というものなんだ。噴き上がる濁流は治まる事を知らず、鼻から逆流してしまいそう。

 放出が止まって漸く口を放すも、尚その先端からはトロトロと白濁液が溢れ出してくる。元気で働き者なんだな、この子は。

 大喜くんのだもん、そりゃそうか。

「ね、大喜くん。……私の写真見ながらするのと、どっちが良かったかな?」

 ちょっと意地悪な事を言ってみると、息も絶え絶えな大喜くんの顔が羞恥に染まっていく。ああ、可愛いなぁ。

 もっと困らせてあげたくなってしまうのは、大喜くんが可愛いから。

 胃から上がってくる精液臭いげっぷを気付かれないよう鼻へ逸らしながら、私は更に問いかける。

「どうして蝶野さんじゃなくて、私なのかな」

 それは本当の意味での疑問点。だって大喜くんは蝶野さんに告白されていた筈だ、と言うか本人が私に宣言しに来たし。人が家族の事で大変だって時に、余計な事をしてくれたんだもん。さすがにあれは忘れようがない。

 二人はお似合いだし付き合っててもおかしくないわけで、なら蝶野さんの写真なり動画なりですれば良い話だ。

 それともそれが照れ臭くて、とかなのかな。そんな風に思いながら待っていると、大喜くんは真っ赤な顔で小さく呟いた。

「好き、だから……。千夏先輩が、好き……なんです……」

 

 嗚咽を漏らしながら大喜くんが言ったのは、私への好意。好きだからそ(・)う(・)い(・)う(・)事(・)をしたい、でもそんな事許されるわけがない。許されないとわかっているから気持ちいい、そんな矛盾した感情が渦を巻いてああなっていたのだと。

 いや、いや……うん。まさか、そんな。大喜くんが私を、私なんかを。手近な異性として発情していたわけでなく、私だからこそそうしたかった、と。

 そうなると、そうなると。話は簡単になってしまうかな、これは。

 私の目的と大喜くんの意思は合致し、同意が成立する。そうなればもう、躊躇う事もない。

「そっか、そうなのか。私としたいのか、うんうん」

 泣きそうな大喜くんを抱き締めて、私は微笑みかける。

 ならば、良いじゃないか。私も大喜くんには好意を抱いているわけで、拒否する気持ちはない。

 ムードも何もないけど、これはこれで私たちらしいかもしれない。

 ……それに、だ。さっきから身体が疼いて仕方がない、私の方こそ我慢できない。湿るどころか使い物にならないくらい汚れきったショーツを脱ぎ捨て、そのまま肉の裂け目を大きく押し開く。外気に触れることなどあり得ない部分がクチャリと音を立て、大喜くんに晒されていくのがゾクゾクするほど心地良い。

「じゃあ、さ。……良いよ、しようよ。私も大喜くんと、したいから」

 返事を待たないまま私は大喜くんへと覆い被さり、さっきの余韻か天井を向いたままのオトコノコへと自分を押し当てていく。指よりもずっと太く逞しいものが膣内を抉るこの感覚は、痛みよりもずっと心地好さが大きい。完全に腰を下ろしきった時にはもう、目の前がチカチカし始めていたくらいだ。

 お腹の中で内臓が押し上げられ、甘い圧迫感が子宮を揺らしていくのが分かる。ああ、なるほど。セックスって、こうなのか。そりゃ菖蒲ちゃんが男子をとっかえひっかえしてヤりまくるわけだ、これは一回知ったら止められなくなる。あの子小学生の頃からああだし、よっぽどだよね。

 気が付けば私はスクワットのように腰を上下させ、ゴリゴリと内壁を引っ掻かれる快感に身を任せてしまっていた。そして大喜くんも瞳に浮かんでいた困惑の色が完全に消え去り、囈のように私を呼びながらガクガクと腰を震わせ射精を繰り返し続ける。私の中はすっかり精液まみれ、きっと子宮どころか卵菅まですっかり埋まってしまっているだろう。それでも尚収まらず、行き場を無くした分がブジュブジュと接合部から溢れている。そうなっているのにまだまだ、二人とも止まらない。

 射精する瞬間の激しい蠢動が、快感に蕩けるその顔が、大喜くんの全てが愛しくて仕方無いのだ。だって可愛くて、可愛いから。もっともっと楽しみたい、もっともっと愛したい。

 それ以外の全てが曖昧になっていき、視界は白く澱んでいく。ただ一つ確かなのは、この瞬間の快感だけ。

 脳が熔け落ちる悦楽の夜は、終わらない。

 

「うー……身体重いなぁ……」

 お腹の奥で粘液がとぐろを巻いているような、そんな感覚が朝になっても残っていた。

 あの後ちょっと催して手洗いへ駆け込んだら結構な量の精液が溢れ出てきたのに、まだ入っているのだろうか。あの粘り気と量だから、それも不思議はないけれど。

 でもそれを休む言い訳には使いたくない、と私は今朝も体育館へと急いでいる。

 それにしても、一気に話が進んでしまったな。大喜くんが私を好きだなんて、考えもしなかったのに。しかしそうなると、これまたどうしたものか。この先猪股家にお嫁入り、なんて将来も有り得るんだろうか。

 ――いや、ちょっと待て。

「んー……と」

 立ち止まってヘルスケアアプリを起動し、私はカレンダー部分を注視する。

 数字の羅列を眺めながら計算する事、ほんの数分。

 そこから割り出されるのは、私の身体に関する周期というかそういうものだ。

「あー……、不味いかな……」

 どう見てもどう考えても、出てくる結論は同じ。今の私はどう考えても危険日、昨夜のあれで当(・)た(・)っ(・)た(・)可能性は捨てきれない……処かかなり大きいという事だ。

 これは、……これはさすがに不味すぎるかな。

 でもまあ、しかし。

「とりあえず、後で良いか」

 根が単純で楽天的な私だから、考えるのは苦手だ。先ずは朝練して、大喜くんが来たらそれとなく話してみよう。

 それでどうなるか、その時考えれば良いんだ。どうせ人間、なるようにしかならないんだから。

 さて、立ち止まっていても仕方無い。行こう行こう、真っ直ぐ行けば大抵どうにかなる。

 そんなもんさ、きっと。多分。

 

 

 

 


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