人はそうそう変われない。
変わらなくても良いけれど、それでも思うところはあるわけで。
まあそれもこれも、振り返れば思い出だから。
正直、最初は好きでも無かったな。遊佐くんを探してバド部のマネージャーになったんだし、言い方が一々腹立つから。まあそりゃ、菖蒲だって考えなしに雛っちを煽ってたかもしんないけどさ、でも迷ってる友達がいたら背中押してあげるでしょうよ。いのたと雛っちは絶対お似合いで、二人はくっつくべきだと思っていたんだから。
確かにそれで、雛っちを傷付けてしまったのは事実だけど。
キャンプファイアーのジンクスもあるし、邪魔物がいない状態で二人きりにしてあげればそれで話は進む筈だった。でもそれは、崖から突き飛ばすのと変わらなかったんだ。
いのたは雛っちをフッた、他に好きな人がいるから。その時には理解できない考えだった、軽い気持ちじゃないのは分かったけど。好きな人なんかあちこちにいるのが普通で、告白されたらとりあえず付き合うのが優しさ。そのあとで関係を深めるなり友達に戻るなり考えれば良い、菖蒲はずっとそうしてきた。思いが伝わらないなら諦めて次へ、が当然だから。
あんなにも慟哭した恋なんて、菖蒲は一度も経験がない。人に好かれるのは楽しくて、だから菖蒲は恋をする。好きになってくれた相手を好きになれば、それで丸く収まる。そんな風に――
その辺を反省したりしなかったり、菖蒲だってあれこれ考えるようになったんだけど、ねぇ……。あの陰険メガネと来たら、ちょいちょいイヤミ言いに来るんだもん。
それでよくもまあ、付き合ったりしようと思ったもんだ。
せっかく雛っちと遊びに行ったのに、元カレにウザ絡みされた。空気が読めないバカギャルのふりして慰める筈が台無しだ、まったくもう。
仕切り直しても微妙な空気は残ったまま別れ、菖蒲はそのまま今カレの所でイチャイチャ中だ。気分が乗らない時は、えっちに限るからね。……まあ今夜はどうも集中できないんだけど。
一人をあそこまで好きになる、ってどんな気持ちなんだろうか。菖蒲は今のところ遊佐くんが本命で、でもあちこちに彼氏が何人もいる。それで構わないってみんな言ってるし、たまーに集まってえっちしたりもするし。……それでか分かんないけど、彼氏同士でくっついちゃった事あったなぁ……。いやまあ菖蒲そういうのもキライじゃないけど、リアルBLよりは二次元がいいかな。
「ね、菖蒲さん、そろそろ……」
「ぇあ、うん良いよ」
催促されて我に返った菖蒲は壁に背を預け、脚を大きく広げる。男の子ってすぐ入れたがるんだよね、菖蒲はもっとベタベタしてたいけどまあ良いや。お預けしすぎて冷めたり、逆に暴発したりされても困るし。
ゆっくりと近付いてくる彼は真剣な顔、おもわず笑ってしまいそうになるけど我慢我慢。えっちの時の男の子ってデリケートだから、気を遣ってあげないと。ずにゅりと入ってくるその感触を味わいながら、そんな事を考えてみたり。
不器用だけど一生懸命腰を振る彼に合わせて喘ぎ声を上げながら、ふと思い出す。確か部活の時だったか、同じクラスのマナちゃんが言っていたっけ。――好きな人が出来た、と。そしてそれは目の前にいる、というか今は菖蒲の中にいる
菖蒲の考え方は、あんまり一般的ではないらしい。お姉にもそんな風に言われたし、あの陰険メガネも小バカにしてくるし。そうなると、やっぱり……バイバイしなきゃいけないかな。同時に何人もと付き合う、というのをマナちゃんが受け入れてくれるとは思えない。
えっちはするけどお互い深入りする間柄で無し、穏便に済む話ではあるんだけど。それでもやっぱり、少しだけお別れは淋しいんだよね。
とりあえず今のえっちが終わったら、お話ししよう。そうしよう。
「やー……上手く行ってよかったよかった」
菖蒲は体育館の外壁にもたれ掛かり、溜め息を一つ。彼と別れるのはスムーズに行ったけど、マナちゃんを告白させるのが大変だった。何て言うか焦れったい、好きなだけで良いとか迷惑になるかもしれないとか言って中々一歩を踏み出してくれない。菖蒲は片想いとか時間の無駄だって考えてるからとっととくっ付けたいのに、本人が及び腰じゃあ始末に困る。
どうにかこうにか話を付けるまで一週間もかかってしまった、全く疲れるったら。
しかしまあ裏方作業はキライじゃないし、縁結び役ってのはなかなか良いかもしれないな。
――と。
「あんまり人の事に首突っ込むもんじゃないと思うけどな」
フラッとやって来たメガネが余計なことを言いつつ、缶ジュースを菖蒲の手に握らせて来た。労いたいのかイヤミ言いたいのかどっちかにしてよ陰険メガネ。
コイツもコイツで雛っちとかいのたに余計な世話焼いてた癖に、何を偉そうに。
文句の一つも言ってやろうかと口を開こうとした矢先、メガネが言いにくそうに呟く。
「知ってる? 女バレの菊池先輩も、あの人好きだって。……さっきすごい不機嫌な顔してた」
え。ええー……それは、それは……ちょっと不味いか。
菊池先輩って確かマナちゃんと仲良いって言うか、よく面倒見てもらってる先輩だよね。そうなると、そうなるとやっぱり……暫くは荒れるかもしれないな。いや、間違いなく荒れる。同じ人を好きになった女子同士が、その縁で仲良くなるなんて有り得ない。絶対に対立する、周りを大きく巻き込んで荒れ狂う。修羅場は何度も見てきた身だ、遅れを取ったことなんかないけど。
「守屋さんは親切のつもりでやったんだろうけど、怒りの矛先が向くと厄介なことになるよ。早めに彼の連絡先消すなりなんなりして、知らぬ存ぜぬを通した方がいい」
「う。……何よ、心配してくれてんの?」
別に、見える範囲で刃傷沙汰とか御免だからさ。後ろ手をヒラヒラ振って去っていくメガネの背中を見送って、また菖蒲は溜め息を吐く。
面倒だなぁ、実際これは。
菖蒲はいつもこうなっちゃうんだよね、どういうわけか。女の子の友達は貴重だし、失いたくないのに。
菖蒲は男の子に好かれて、女の子に嫌われる。
こっちから声をかけた訳でもないのに男の子はすぐ寄ってきて「仲良し」になろうとする、それを見て女の子は大体嫌な顔をするんだ。尻軽とかビッチとか街の気軽な童貞捨て場とか、散々に言われたっけ。
でもそれって本当に、菖蒲が悪いのかな。痛む頬を撫で、一先ず血は出ていないのを確認して菖蒲は天を仰いだ。叩きつけられた先がプラゴミ置き場だったお蔭か、お尻や背中には痛みが残っていない。でも制服はだいぶ汚れちゃったな、お姉に怒られそう。替えあったかな。
マナちゃんと先輩さんに揃って怒鳴られ殴られ、今日はまさしく踏んだり蹴ったりだ。誰だよ女子は口喧嘩はしても暴力は振るわないとか言ったのは、少なくとも菖蒲の側には口より先に手が出る野生児ばっかだよ。まあ怒った女子に見境なんかあるわけない、ルール無用の残虐ファイトになって当然なんだけど。武器を使ってこなかった事だけが救いだな、とは言え運動部の腕力で思いっきり殴りやがってからに。
ああもう、全く締まらないったら。なんのための苦労だったんだか、全く以て……バカみたいだ。
「気を付けろって言ったつもりだったけどな」
ゴミまみれで尻餅をついたままの菖蒲にそう声をかけたのは、誰あろう陰険メガネ。
いやお前そこまで言ってないじゃん、と言うかこうなるって分かってたんなら匿うなりなんなりしろよ。そんなだから彼女もいないんだよメガネ野郎。……なんて言ってやりたいけど、そんな元気は残念ながら無い。
ただ黙って引き起こされてやるのが、精一杯。
「……心配してくれたの?」
「一応は。故意に殺しはしないだろうけど、うっかり死ぬかもしれないし。身近で殺人事件とか起きられると俺が困る」
それが憎まれ口なのかそれとも本心なのか、今の菖蒲に察する余裕があるわけ無い。
それでも、それでも。助け起こされたことは、嬉しくて――。
もしかしなくても、あそこで何かのスイッチが入ったんだろうな。
お互い罵りあったりするのは変わらないまま、気がつけば距離だけは縮まっていって。好きとか愛してるとかそんなのは一言も言わないまま、だんだん流れで関係は深まっていった。
そんなこんなで、今夜も菖蒲は笠原くんと一緒に過ごしている。……まあ、菖蒲自身は前とそんなに変わってないんだけどね。一度「笠原くんが嫌なら、もう他の子と
いずれは、だな。ゆっくり整理していって、最後の一人になってもらおう。
今はまだ、考えなくていいや。
メガネをひょいっと指先に引っ掛けて取り上げ、菖蒲は笠原くんにキスをする。メガネかけたままでキスするとどうもフレームが当たってね、うん。
そのまま押し倒しつつゆっくりと唇を滑らせて、舌を這わせながら少しずつ降下していく。えっちはやっぱり経験数の差が出るから、学校にいるときと違って菖蒲がリードする側だ。
それに菖蒲、男の子を攻めるの大好きだし。……こんなだからビッチとか言われるんだろうなあ。
指先で乳首を捏ね回したりしながら、唇はどんどん下へ。臍をほじくり脇腹を舐め下ろし、更にその先へ。
笠原くんの太股にキスをする頃には、すぐ側に聳えるオトコノコは既にガチガチに張り詰めていた。
こっちは持ち主と違って素直なんだよね、良い子良い子。
幹に手を添えて唇を先に押し当て、一気に覆い被せ――
「ぅぁ、あっ、あ――っ!?」
耐えかねた笠原くんが声高く喘ぎを上げるけど、菖蒲は舌を止めたりしない。これやられて我慢できる男の子なんて、一人もいないんだ。そこへプラスして幹をしごいていくと、指の腹に激しい脈動が伝わってきた。
でも、まだまだ。精液がかけ上がっているであろう輸精管を指で強く押さえ付け、今度は頭を激しく上下させていく。
喘ぎがもう悲鳴に近くなった頃合いになってようやく、菖蒲は精液を抑え込んでいた指を放し、そして――全力で吸い上げてあげる。
勿論これに耐えられる訳なんか、あるわけない。
「う"ぁ、出、……っ」
忽ち菖蒲の口は生臭い奔流に充たされ、それでも放精は止まらず喉の奥へと溢れていく。食道を汚され胃の府まで精液にまみれていく、それなのにどういうわけか幸せを感じてしまうのが不思議だ。
長い長い射精の終わりを舌先で感じ、名残を惜しんで尿道の中に残ってた分まで全部吸い付くしてから菖蒲はやっとオトコノコから口を放す。
さすがに疲れたのか、笠原くんはゼーゼーと乱れた息でベッドに大の字で転がるばかり。……かと思いきや。
「どんだけ……ヤル気だ……よ、そんなだか……ら、ビッチとか言われる……んだぞ」
息も絶え絶えのくせして、生意気に憎まれ口を叩いてくるなんて。そりゃ多少自覚はしてるけど、人に言われると心外だ。
菖蒲で童貞捨てたくせしてなにを偉そうに、そんなヤツには――お仕置きだ。
「うりゃ、……っと」
くるりと体勢を入れ換えて背を向け、菖蒲はベッドで仰向けになったままの笠原くんへとヒップアタックの要領で襲い掛かる。ちょうどその減らず口が、菖蒲のオンナノコで塞がるように。
ムームーともがく笠原くんの息遣いが入り口の襞に感じられ、思わず腰を捩ってしまう。ああやっぱりこれ好きだな、顔面騎乗ってやつ。される側は堪ったもんじゃないと思うし、実際興味本意で女の子としたときに試したら結構キツかったっけ。とにかく呼吸が辛いのが難。でもまあこれはお仕置きだから良いのだ。
とは言え、別にそこまで嫌がってもいないみたいだしね。だって口を塞がれ頭を押し潰されていると言う非常事態なのに、身体は悦んでいるもの。その証拠に、一仕事終えてだらしなく垂れ下がっていたオトコノコが、ムクムクと立ち上がり息を吹き返している。
スポーツやってる子はマゾが多いって言うけど、笠原くんもそうらしい。そういやいのたもドMらしいんだよね、ちーちゃんが言ってた。
まあ、それはそれとして、だ。
元気を取り戻したオトコノコを撫でながら、菖蒲は笠原くんの顔から腰を上げていく。にちゃりという水音は、きっと菖蒲のせいだろうな。
「んー、じゃあ今度はこっちにねぇ~」
膝立ちで移動しながら指先をオンナノコの内側へと滑らせて割り拡げ、天井を向くオトコノコへとあてがう。やっぱり味わうなら、こっちだよね。
体重をかけて腰を落とし、お腹の中を抉じ開けられる圧力を楽しみながら。菖蒲はゆっくりと、笠原くんの上へと着地していく。
ゴリゴリと膣内を抉られていく、心地いい掘削感。こうやって跨がるのが好きなのは、やっぱりその……ビッチなのかなあ。いやそれだとお姉もビッチになっちゃうか、あの人も大体跨がってるし。鍵くらいかけてからしてほしいんだよね、あのバカップルめ。
そんな雑念はさておき。
すっかり腰を落としきると、今度は前後にグラインドを混ぜながら小刻みに上下動を始める菖蒲。ぱちゅんぱちゅんと水音が響き、熱量は激しくなるばかり。耐え兼ねて射精が始まっても尚、動きは緩めてあげない。萎える暇なんか与えない、全力で攻め続けてあげる。生意気言う子は、限界まで搾り取ってやるんだからね。
お腹の中で暴れまわる精液、脈打つその衝撃が稲妻のように身体を駆け抜けていく。それでも菖蒲は止まらない、目の前が白く染まってもまだ腰を振り続ける。
まだまだ、もっともっと楽しもう。時間はまだまだあるんだから、壊れるまでやりまくろう。
楽しい時間は、終わらせたくない。
〽️金の屏風に墨絵の牡丹 中に二人の狂い獅子、なんて歌が有ったような無かったような。獣のように交わり続けて、もう何時間が過ぎただろう。さしもの菖蒲も暴れ疲れ、ベッドに寝転がる。笠原くんの手を繋いで、その体温を感じながら。
このままぽけっとしてても良いんだけど、間が持たない気がするのか笠原くんがぽつぽつと話し出す。
「そういや、さ。最近遊佐くんの事言わなくなったね」
うわ、うわうわ。この状況で言うか、それを。仮にも付き合ってる女にベッドの上で、他の男とどうなったとか聞くか。そういう所がメガネなんだよね、実際。
そりゃ一度は好きになった相手ではあるけど、もう良いじゃない。適当な理由をでっち上げて諦めたと答えると、ああそうと気の無い声が。聞いておいてお前は、本当にメガネのくせして無愛想なんだから。
まあ本当の所、一回告りに行って失敗したんだよね。一個上の兵藤って男バドの先輩と付き合ってて、そもそも女子には興味がないって言われてしまった。うんまあリアルにBでLな子だったのね、クールだけど可愛い系だからそうじゃないかとは思ってはいました。菖蒲はそういうの否定しないけど、笠原くんには黙っていた方が良いだろうな。男の子はデリケートですからね、ええハイ。……ああでも確か女子の間で、笠原くんがいのたを狙ってるとかそんな噂はあったな。まさかとは思うけど、そうなるとちーちゃんが荒れそうで怖いわ。
その辺はあんまり掘らない方がいい鉱脈だな、うん。やめやめ、地雷しか埋まってないわ。
――あ。そう言えば、そう言えば。
「そういやアンタもさ、昔好きだった子いたとか聞いたけどぉ。そっちはもう、良いわけ?」
雛っちが前にそんな話してたんだよね、相手に彼氏が出来たから諦めたらしいけど。でも別に一人の相手と一生添い遂げるわけでなし、探りかけてもし別れてたら再アタックとかあってもいいと思うんだよね。そりゃそうなったら、……そうなったら正直淋しいけどさ。でも大事なのは、本人の意思だし。
さてどう来るかな、と身構えてみるけれど。笠原くんはわざとらしく大きな溜め息を一つ吐いてから、菖蒲の眉間にズビシとチョップを一閃してきた。
「あにふんのよー!」
「……いや、まさかそこまでバカだとは思わなかったからさ」
なんなのよそれ、と菖蒲はコロンと転がって笠原くんにキスをする。
まあいいや、別に気にしなくていい話だ。何でもかんでも知り尽くせるほど、長い付き合いじゃないんだし。でもなんだかんだで一緒にいて楽しいんだよね。あれこれ言ったり言われたり、滑った転んだと大騒ぎ。それでもよくわからないまま、菖蒲たちの縁は繋がり続けている。
こういうのを、運命って言うんだろうかな。向こうもそう思ってくれていると嬉しいんだけど、な。