アンジェリーナは悩んでいた。ドクターに恋していながら一歩踏み出すことができない自分に対して。
そんなドクターに近づくチャンスを逃した彼女に、ホルハイヤが近づいた。
ホルハイヤ×安心院。なんでも許せる人向け。
アークナイツ四周年記念イラストのホルハイヤ・安心院・ケーちゃんのイラスト見た時「ちょっとこの安心院えっちな顔してない? おいホルハイヤお前何した」って思ったら湧いて出てきてしまったぜ。
オペ×オペ百合NTRもたまにはいいかなってね!!
ちなみに女ドクターです。
アンジェリーナは壁に背中を預けて、目を伏せていた。
影のかかった薄暗い通路の縁まで聞こえてくるのは、穏やかな会話。ロビンと、ドクターの。
どうやら今度の休日に、ふたりで新しく放映される映画を見に行くようだ。食事や観光の話も出ていて、声が弾んでいるのがよくわかる。
「それじゃあ、決まりだね。本当は、クロージャとか、ニェンとか、ウィスパーレインも呼びたかったけど……」
「予定が遭わないのは仕方ないさ。私も中々休みが取れなくて……すまない、ロビン」
「ううん。忙しいのは私もだし。……今回は、ドクターとデートできるから」
少し照れたロビンの声が、アンジェリーナの胸を抉った。
合わせた両手の中で、くしゃっと紙の悲鳴が聞こえる。映画のペアチケットが潰れてしまったのだ。
タイトルは、ドクターとロビンが見に行く約束をしたものと同じ。
ふたり分の足音が遠のいていく。今から追いかけて、全て聞かなかったふりをして、映画に誘おうかとも考えた。
ドクターなら、三人で見に行こうかと言ってくれるだろう。ロビンとも一緒に映画を見る仲だし、邪険にはされまい。
けれど、ドクターとデートが出来ると口にしたロビンの声音を無視して出て行けるほど、アンジェリーナは器用ではなかった。
―――デート。ドクターと。
―――ロビンも……やっぱりドクターのこと……。
ロドスのみんなは、ドクターが好きだ。
Wのような者もいるにはいるが、それでも概ね彼女のことを好意的に受け入れているオペレーターがほとんどだと思う。
中には、男女問わず恋している者もいるだろう―――アンジェリーナが、そうであるように。
誰かと話していて、この人もそうなんだな、と思うたび、アンジェリーナの心を不安が締め付ける。
この人がドクターと正式にお付き合いを始めたら? そうでなくとも、もし自分が告白した時、自分じゃない誰それが好きなんだ、と言われてしまったら。
そんなことを考えて、足がすくんでしまう。思い切りたい反面、はっきりさせたくない自分がブレーキをかける。
今回、ロビンのデート発言を、ドクターは否定しなかった。それだけで、もしかして、という言葉が重い足枷になるのだった。
通路の影から出ることも出来ず、ただふたりがどこかへ行くのを待つばかりのアンジェリーナ。その首筋を、固くて、細くて、しなやかな何かが、ツツッとなぞった。
「ひ、むぐぐっ!?」
「静かにしないと、あのふたりにバレてしまうわよ」
麻薬を溶かしたシロップのような囁き声が、すぐ耳元でした。
突発的な危機感に呼吸が詰まる。目だけを動かして声のした方を見ると、宝石のような淡青色の瞳がこちらを見つめていた。
光と影のあわいにも似たグレーの髪から、肉厚の翼が一対。淑やかな顔立ちを引き立てる空色のルージュが印象的な女性が、いつの間にか至近距離に立っていた。
「しーっ。大丈夫、安心して。私はホルハイヤ―――最近、ロドスに訪れたばかりなの」
アンジェリーナは視線を落とす。
突如現れたリーベリ女性の服には、確かにロドスの社員証がつけられている。使われている顔写真も一致する。
とりあえず密航した工作員ではないらしく、少し胸を撫でおろしたアンジェリーナは、ホルハイヤの腕を二度タップした。口元から手が離れ、息が自由になる。
壁から顔を出すと、ドクターたちは既に去ってしまったようだった。バレて覗き込まれていたらどうしようかと心配していた反面、気付いてほしいなんて図々しい気持ちがあったことも自覚する。
ドクターが自分に気付いて、映画に誘ってくれたらなどと小狡い夢を見る自分に溜め息を吐いていると、ホルハイヤがくすくすと笑みをこぼした。
「落ち込むぐらいなら、割り込んでしまえばよかったのに」
「そんなこと……って、別になんでもないよ! なんか変な勘違いしてない!?」
「勘違いだったかしら?」
振り向いて抗議するアンジェリーナの耳元に、ホルハイヤは再度口元を寄せる。
アンジェリーナは戦慄した。二歩分ほど離れていたのに、気付いたら密着されている。近づかれた瞬間を目視できなかった。
相手の緊張を指先から感じ取りながら、ホルハイヤは裂けるような笑みを浮かべて耳打ちした。
「あなた、ドクターのことが好きなんでしょう? 性愛の対象として」
「せっ……!?」
あまりにも直球な一言に、アンジェリーナの顔がボンッと赤くなった。
半分、図星ではある。ドクターに恋しているのは事実だから。けれど、性愛とは―――。
ホルハイヤは熱くなったアンジェリーナの頬を撫でる。
「可愛いわね。純真で、奥手で……でも、それでいいのかしら? あなたがそうやって手をこまねいているうちに、ドクターは違う誰かの手を取ってしまうんじゃない?」
「……それは」
先の一幕が胸を刺す。俯くと、ホルハイヤの肩口に顔が当たった。
気付けばアンジェリーナはホルハイヤに抱き止められ、赤子のように髪を撫でられている。
リーベリ人には珍しい、固い鱗に覆われた尾がゆらゆらと波打つのを眺めていると、ホルハイヤが言った。
「そうね、ドクターをあなたのものにする方法、教えてあげましょうか」
「え……」
「それほど難しいことではないわ。想いの丈をぶつければいいだけだもの。けれどあなたは、その方法を知らないでしょう? ねえ、アンジェリーナさん?」
―――ドクターを、あたしのものに……?
心臓がひときわ大きく脈打つとともに、アンジェリーナの脳裏に様々な光景が浮かぶ。
それらは全て、ドクターの横顔。自分以外の誰かに向ける、様々な表情。
もしかして、あの表情を、全て手に入れられるのだろうか。ドクターを、独り占めできるかもしれない?
ずっと心の底で待ち望むだけだった願いが、空気の入った風船のように膨らむのを感じた。
ホルハイヤはアンジェリーナを解放すると、くるりと背を向けて数歩歩く。
「知りたければ、ついてきて。じっくりと教えこんであげるから」
肩越しに見えたものは、悪魔の微笑み。
鋭い犬歯を覗かせて、毒を滴らせるように笑う彼女に、アンジェリーナは臆した。が、それ以上に、胸の奥で膨らんでいた感情が、震える足を前に出させる。
ぎこちなく後に続いてくるアンジェリーナの姿を確かめ、ホルハイヤは通路の闇へと紛れていった。
「ここ、ホルハイヤ……さんの部屋?」
「呼び捨てでいいわ。それか、お姉様でも」
からかうように言いつつ、ホルハイヤは尻尾の先で電灯のスイッチを押した。
連れてこられたのは、オペレーター用宿舎のひとつ。来てから日が浅いという言葉とは裏腹に、部屋はたくさんの本であふれ返っていた。
鼻をつく、カビとインクの混じった香り。古い本が多いせいだろうか、そこは住処というよりも、歴史ある図書館や威厳あふれる書斎といった印象が強い。
アンジェリーナは一瞬内装に気を取られ、気が付く。いつの間にか、ホルハイヤの姿が消えていた。
「ホルハイヤ……?」
「ここにいるわ」
出会った時と同じように、耳元から声。
一体いつ背後に回ったのか、問いかける間もなく、ホルハイヤの手がアンジェリーナの服の中を素早く這い上がり、敏感なところをつねり上げた。
「っ~~~~~~~~~~~~!?」
「あら、意外と……。これは、案外早く済むかもしれないわね」
突然の所業に顔を赤らめ、瞠目するアンジェリーナ。羞恥によって呼び起こされたパニックのまま腕を振り回そうとするが、それよりも早くホルハイヤはアンジェリーナの服の裾をまくり上げ、尻尾で吊り上げるようにして脱がせてしまった。
上半身を下着一枚の姿に変えられると同時、ルージュと同じ空色のネイルを施した指がアンジェリーナの両乳首をつねり、引っ張り、こねくり回す。ワンアクションごとに膝が笑い、体から力が抜けていく。
「んっ、嫌っ、どこ触って……ぅうんっ!」
「あなたの弱いところ❤」
乳輪を軽く引っかき、乳房全体を愛撫して、くすぐったさを溜めた乳首を指三本で引きまわす。
ぞくぞくぞく、と背筋を駆け上がり、うなじを掻きむしる未知の感覚に、アンジェリーナは腰が砕けそうになった。
足が内股になり、ぷるぷると振動する。半ば背中を預けられる形になったところで、ホルハイヤはアンジェリーナごとベッドの上に倒れ込んだ。
足を絡ませて動きを封じ、アンジェリーナの耳を軽く
舌先が肌を撫でる感触に怖気を感じながら、アンジェリーナは上擦った声を上げた。
「な、何……? なんなの!?」
「そう怖がらないで。ドクターをものにする方法を教えてあげるだけだから」
「これが、一体何にっ……あっ!?」
「なるわよ。ドクターも、あなたと同じ女だもの。例えば……」
尻尾がアンジェリーナの背中からボトムスの内側へと滑り込む。股座をすり抜けた尾の先端がショーツに潜り、その先に秘められた最も敏感な部分の頂きを突きまわした。
「こことかも、ね?」
「きゃんっ!? あっ、ゃ、やだぁっ!」
アンジェリーナは捕まったオリジムシのようにもがき、のたうち回った。
自分でさえあまり触れないウィークポイントを、尻尾の先端がつつき、舐り、弄ぶ。そのたびに股間の奥にまでビリッとした信号が送られ、理性を狂おしく攻撃してくる。
他人に触れられたことのない場所、大切な人にのみ許すものと教わった部分を無遠慮に責められ、アンジェリーナは泣き叫んだ。
「放して、やめてよぉっ! そんなとこ、やぁぁぁっ!」
「だ、め❤」
ホルハイヤは無慈悲に言い放つと、秘芯の皮を尻尾で器用に剥いて根本を締め付ける。
アンジェリーナは声にならない悲鳴を上げ、拘束の中でのけ反った。そこへ乳首をカリカリと引っかき乳輪を撫でまわす甘い刺激が混じり合って、壊れた信号機のように脳の中で点滅する。
必死に首を振って流れ込んでくる電気信号を振り払おうとするが、秘部にまとわりついた固い鱗がゆっくりと蠕動して、アンジェリーナの忍耐を軽く上回る刺激をなだれ込ませた。
さらには、股座を通った尻尾が蟻の門渡りや菊座、秘所にもこすりつけられる。
いよいよパニックに陥り、過呼吸になりかけるアンジェリーナの鼓膜へ毒を注ぐように、ホルハイヤが呟いた。
「あなた、思ったより敏感なのね。結構ひとりで遊んでいたりするのかしら。ドクターのことを想いながら? ふふ、健気で可愛いわね」
「ドクター……、ドクター……っ!」
ペットとして販売される鱗獣のように口をパクパクさせながら、アンジェリーナは掠れた悲鳴を上げた。
思慕と仄かで幼い欲、失恋への不安が、混乱のるつぼとなった頭に飲み込まれていく。
微かなそれを逃すまいと手繰り寄せ、涙の滲む目を閉じて凌辱に耐えようとしたところで、次の毒が滴り落ちた。
「ドクターはあなたを助けには来ない。だって、彼女はあなたのものではないもの」
「……!!」
平時なら、照れたり、怒ったりして言い返せるような一言が、心に一筋の亀裂を入れる。
鋭く息を飲む音を聞いたホルハイヤの笑みが、ますます深まる。
「もしドクターがあなたの恋人だったなら、姿の見えないあなたを必死で探し回るでしょうね。でも違う、そうはならない。あなたが手をこまねいているから。それとも……ドクターのことを想いながら私にこうされる方が、気持ちいいのかしら?」
「ち、ちがっ、そんなこと……んああぁっ!?」
「いいのよ。今日は私が代わりに愛してあげる。溺れるような快楽を、教えてあげる。怖がらないで、身をゆだねるだけでいいの。ドクターも同じようにしてあげれば、きっと可愛く鳴いてくれるわ。今のあなたみたいに、ね」
ホルハイヤは尾を濡らす蜜の感触に舌なめずりをした。
思考力も判断力も、慣れない快楽の前に奪われた少女の理性が溶け崩れていくのを感じる。
悪くない。お遊びにしては、いい具合の手ごたえだ。
人食いの怪物じみた笑みを浮かべると、ホルハイヤは尾を秘芯から外す。乳首を強めにつねってアンジェリーナを快楽で捕えつつ、蟻の門渡りを這いずらせながら先端を引き、とろとろと熱く透き通った蜜を溢れさせる恥部へと狙いを定めた。
乳首を責め立てる巧みな手技に翻弄され、嫌々と首を振っていたアンジェリーナは、次の瞬間両目を大きく見開いた。
「あ゛っ……―――――――――――っっっっっ!?」
「奥までは行かないであげる。今日のところは、だけど」
鱗を肉襞にこすりつけ、襞のひとつひとつを、まるで弦楽器をつま弾くように弾く。それ自体は大した刺激ではないが、大きな精神的ショックに晒されたアンジェリーナは目を白黒させた。
「やっ、あっ……あぁ、ぁ……!?」
「流石にこっちは……といったところかしら」
ホルハイヤの尾から逃れようと、太ももはぎゅっと合わさり、ほんの微かな身じろぎが起こった。
しかしそれは結局、限界が近い哀れ少女の、最後の抵抗に過ぎない。
―――初めての子には、刺激が強すぎたかしら。
―――なら、そろそろ一区切りね。
尻尾の先を円盤状に丸めたホルハイヤは、片手を乳首に据えたまま、もう片方をクリトリスに向ける。
アンジェリーナはこひゅー、こひゅーと掠れた息を吐きながら、怯えたように呟いた。
「やめ、ひぇっ……もうむり、あたひ、だめだからぁっ……!」
視界は涙で霞み切り、もう色の判別もろくにできない。
ふらふらと首を振りながら哀願するアンジェリーナへの解答は、耳に為された甘噛みと―――これまでの全てはお遊びに過ぎないのだと嘲笑うかのような、激烈な快感だった。
丸められた尾の先が肉襞に押し付けられ、ごりごりと強く刺激する。
秘芯を摘まんだ指はきゅっ、きゅっ、とひねるように動き、ギリギリ痛みにならないラインを責めた。
加えて、胸全体を撫で、優しく揉みしだき、乳首も先端を軽く押さえてマッサージする。
三段階に分かれた波状攻撃は、壊れかけたアンジェリーナの理性を砂の城のように打ち砕いた。
「~~~~~~~~あ゛ぁ゛っ! ふあぁぁぁぁ! あーっ! あ――――――っ!」
体を大きくのけぞらせ、びくんびくんと激しい痙攣を繰り返す。
激しく絶頂し、蜜壺から愛液を噴き出す体を、ホルハイヤは優しく、しかししっかりと抱きしめて放さない。じたばたと暴れる少女の体は容易く封じ込められてしまっていた。
アンジェリーナは快楽に翻弄され、振り回されながら泣き叫ぶ。
「やだっ……こんなのやだぁぁぁぁぁ! ドクター! どくたぁぁぁぁぁぁっ!」
「ふふ、ふふふふふふ! 本当にあの人のことが好きなのね。どう? 愛しい人のこと想いながら、別の誰かに好き放題虐められる気分は。悔しい? 恥ずかしい? それとも、屈辱的? でも……とっても気持ちいいでしょう? 病みつきになっちゃうくらいに」
暴れたお仕置きとばかりに、責め手が徐々に強まっていく。
短い逢瀬のうちに見抜かれた敏感な部分の、特に弱いところを嬲られ、アンジェリーナの嬌声がオクターブを上げた。
半開きになり、がくがくと痙攣する口元から涎があふれ、瞳孔がキュッとすぼまっていく。
ホルハイヤは仕上げとばかりに丸めていた尻尾の先を解き、一番良い反応を示したところを尖った先端で抉り込んだ。
同時に乳首とクリトリスもつねり上げる。
トドメを刺されたアンジェリーナは掠れた吐息をこぼし、派手に潮を噴きながら体を震わせ、やがてホルハイヤの指が離れるとともにぐったりと動かなくなった。
「ぁ、ぁ…………っ」
光を失った瞳が涙で濡れる。
打ちのめされながらも、快楽の余韻に締め付けられる少女を仰向けに寝かせ、ホルハイヤは覆いかぶさるようなポジションをとった。
秘部に刺さったままの尻尾が引きずり出され、透明な糸を引く。
少し粘り気のあるそれが細くなり切れたところで、ホルハイヤはアンジェリーナの頬を撫でた。
「いい反応だったわ。それなりに楽しめた」
「もぅ……やめて……こんなの、ぃゃ……」
「お願いにも作法があるでしょう?」
長い尾がうねりながらふたりの体の間を這い進み、べとべとに濡れた先端をアンジェリーナの顔に押し付ける。
彼女にはもう、その液体がなんなのか考えるだけの余裕は残されていなかった。
ホルハイヤはごちそうを前にした捕食者のような、とびきり邪悪な笑みを浮かべて命じる。
「“どうかもう許してください、ホルハイヤお姉様”」
アンジェリーナは絶頂の余韻を細く鋭く貫く氷の針にも似た恐怖心を感じ取る。
目をつぶり、助かりたい一心で、ここから逃れたい一念で、与えられた言葉を口にした。
「どうか……もう、許してください……ホルハイヤお姉様……!」
「よくできました」
頭を撫でられ、アンジェリーナは胸をなでおろす。直後、その表情が凍り付いた。
いつの間にか顔から離れていた尻尾が、再びアンジェリーナの蜜壺へと突き込まれたのだ。
「な、なんで……!? どうし、て……!」
「あら、私はお願いの作法を教えただけよ。それを受け入れるかどうかは、私次第」
アンジェリーナの羞恥と性欲に赤らんだ顔がみるみるうちに青ざめていく。
己の昏い嗜虐心が満たされながらも、さらに昂っていくのを、ホルハイヤは自分の口角の動きから察した。
「夜は長いわ。レッスンもこれからなのだし……しっかり、覚えてちょうだいね?」
「い、や……!」
涙目で首を振るアンジェリーナが、甲高い悲鳴を上げる。
それは積み上げられた本の隙間を超えることなく、ベッドの中へと呑まれていった。
数日後、アンジェリーナから報告書を受け取ったドクターは、直筆のサインを入れて頷いた。
「これで今回の任務は完遂だ。お疲れ様、アンジェリーナ」
「う、うん……」
俯いたアンジェリーナの耳がぺたんと垂れ、ドクターの手のひらを受け入れる。
優しくて暖かい手。幼少のオペレーターたちがそうであるように、アンジェリーナもこうして褒めてもらうのが好きだ。
けれど今は、なんとも言えない後ろめたさがもやもやと胸にわだかまる。
黙って撫でられていると、ドクターが不意に問いかけた。
「ところで……何か、あったのか?」
「へっ!?」
思わず顔を上げると、ドクターは不思議そうな目でこちらを見ていた。
「いや、最近、なんだか元気がないように見えたから。君の笑顔を、あまり見られていない。……問題があるなら、遠慮せず……」
「な、ないっ! なんでもないから! それじゃあたし行くね、お疲れ様!」
「え……? あ、ああ……」
返事を待たずに踵を返し、執務室を飛び出していくアンジェリーナを、ドクターはきょとんとした顔で見送る。
速足で逃げ出した少女の脳裏には、数日前に受けた恥辱の記憶が何度も蘇っていた。
ドクターを自分のモノに出来ると嘯かれ、愚かにもノコノコとついていった後のこと。散々辱めを受け、もはや前後不覚に陥ったアンジェリーナに、ホルハイヤは囁いた。
“どうだったかしら? あなたがこれをドクターにすれば、彼女はあなた無しではいられなくなる”
“身を以って思い知ったからわかるでしょう? 後は今夜のことを引きずらなければいいだけ”
“忘れられるなら、だけど”
悪意に満ちた囁きは、未だ耳にこびりついて離れず、快楽と共にリフレインする。
あれ以来、ドクターの姿を見るたびに、秘所がじわじわと熱くなるようになってしまった。そんな自分が恥ずかしくて、ドクターとあまり目を合わせられない。
だがそれ以上に嫌だったのは、ドクターを想いながら凌辱されたあの夜を、心のどこかで求めている自分がいることだった。
羞恥、快感。追い詰められた心はドクターに縋りつき、それが背徳感と性感を強く結びつける。
ドクターを陰から覗き見て、ホルハイヤに好き放題された夜に思いを馳せながら、自室で己を慰めた日には、自己嫌悪で頭がいっぱいになった。それが次の快楽を呼ぶのだと、翌日知った。
執務室を飛び出した勢いが徐々に弱まり、やがて通路をとぼとぼと歩き出す。
―――打ち明けられるわけない。
―――こんなあたしを、知られたくない!
頬と両目が熱くなる。その理由を考えるのは、思春期の少女にとって、とても恐ろしいことだった。
やがて足を止めたアンジェリーナの首に、横合いから伸びた縄のようなものが絡みついた。
否、縄ではなく、尾。持ち主など、言われずともわかっている。
「今日もだめだったの? 奥手でいじらしくて……可愛いんだから」
細く暗い通路の奥で声がする。舌なめずりの音さえ聞こえてきそうだ。
アンジェリーナの竦んだ足が、ぐいと引かれてそちらへ踏み出す。
リード付きの首輪のように絡みついた尻尾に逆らうことができないまま、アンジェリーナは暗がりの中へ引き込まれていく。
それが堕落と、己の恋への裏切りであると知りながら―――。