「じゃあねー小夜、また明日!」
「はい。また明日」
校門の前、女生徒が分かれて別方向に歩き出した。その片方、黒々とした長髪をたなびかせた清楚な雰囲気の娘は、どこか急いだ様子で帰路を進んでいく。
数十分程歩き、彼女はとある一軒家で足を止めた。「明石」という表札が提げられてるその家の玄関に入り込み、声を上げる。
「ただいま」
「あら、おかえり。今日は早かったわね、小夜」
「うん、委員会の仕事が早く終わったから。部屋で勉強してるね」
母親といつものように会話を交わし、自室に入って鍵を掛ける娘。通勤カバンを置くと、今までの清楚な雰囲気が嘘だったかのように、どっかりとベッドに座り込んで笑みを漏らした。
「く、くくく。だぁれも気付きやしない。俺のことを明石小夜だって信じ切ってやがる」
粗野な口調で呟いて、上着を脱ぎ捨てシャツ姿になる娘・・・・・・小夜。まるで男のような振る舞いには理由があった。
一週間前。ある男が事故死した。車に轢かれ即死だった彼は、自分の惨い死体を眺めながら宙に浮いているのを自覚する。これは、まさか幽体離脱なのでは。そう思った男が辺りを確認すると、野次馬の群れとは別に、一人の少女が倒れているのを発見した。
(あれは・・・・・・)
高校生くらいだろうか、長髪を乱し仰向けで倒れている。事故現場を見てショックだったのだろうか。しかし、男が気にしたのはそこではない。彼女の体から、半透明な人型の物体が抜け出ようとしていることだった。
(ま、不味い!)
本能的に、男は少女に近付く。何が不味いか分からないまま、抜けかけている物体・・・・・・魂を押し込もうとした瞬間、男は少女の体に吸い込まれた。そして、気が付くとそこは病院。しかも少女の体になっている。見覚えの無い家族に泣きながら抱き着かれたりする中、少女になった男は脳から流れてくる記憶に圧倒されていた。
少女の名前は明石小夜。幼少の頃から生真面目で、成績はずっと上位。清楚で可憐な容姿もあって、誰もが憧れる華の女子高生、だった。事故現場に来る前、どうやら彼女は憧れている教師からセクハラを受けたらしい。肉体関係を迫られた小夜は恐怖と絶望からその場を逃げ出し、さらに男が惨たらしく轢死しているのを見てしまい心が壊れてしまったようだ。そのせいで抜けかかった魂を男が強引に戻そうとした結果、男の魂が小夜に入り込んだ状態になっている。
(ど、どうすればいいんだ・・・・・・。えぇっと、小夜、さん?いるなら返事してくれ!)
どれだけ心に問いかけても返事は無い。ショックな出来事のせいで心に傷を負った彼女の魂は、深い眠りについているようだ。
───かくして。車に轢かれ死んだはずの男は、本物の小夜の魂が目覚めるまで、彼女の人生を生きることになってしまったのだ。
「くくくく・・・・・・はぁ」
溜め息をつく小夜。記憶が読めるおかげで彼女のフリは出来るものの、罪悪感がすごい。どれだけ悪者ぶっても、それが晴れることは無かった。
(自覚は薄いけど俺は死んだらしい。今の俺は悪霊みたいなもんだしなぁ。早く体の外に出たいけど、方法も分からない。チクショウめ)
自身の死や小夜本人の意識が戻らない等、心配事が多すぎて女子高生ライフを楽しむどころではない。小夜は借り物の体で伸びをして、ベッドに寝転がる。
(いつまで続くんだ、これ)
死ぬ前も大した人生では無かったが、だからといって人の人生を奪う程まで小夜は落ちぶれていなかった。だからこそ、早く彼女の意識が戻ることを願っているのだが、方法が分からない。小夜の体を乗っ取ってから一週間、小夜はずっと頭を悩ませていた。
(・・・・・・げ、またか)
さらに。今の小夜にとって面倒なことが一つある。それは、小夜の体の性欲が非常に強いことだ。
記憶によると、中学時代からその傾向はあったらしい。彼女は必死に堪えたようだが、高校の進学と同時に我慢し切れなくなり、それから毎日自慰行為に耽っていたようだ。つまり、今の小夜も例外ではないわけで。
「うぅ・・・・・・すまん、小夜さん!」
小声で謝り、小夜はスカートをまくり上げパンツの中に手を突っ込んだ。既に濡れているおまんこに触れた途端、体がピクンと跳ねる。
「んっ、んぅ・・・・・・!」
小さく喘ぎ声を漏らしながら、もう片方の手で胸を揉む。シャツとブラジャー越しのおっぱいはそれでも柔らかく、死ぬ前の女性経験が少なかった小夜の精神はどんどん昂っていった。
「は、ぁ、柔らかい・・・・・・」
我慢出来ず、シャツもブラも脱ぎ捨てる。控えめながら綺麗な形の乳房が露わになり、つんと固くなった乳首を小夜はつまむ。痺れるような刺激に、おまんこが収縮した。
「あっ、んんんんっっ!」
うつ伏せになり顔を枕に押し付けて、喘ぎ声を押し殺す。家には母親がいる。バレるわけにはいかない。しかし、おっぱいを揉みしだく手の動きは止まらず、おまんこを撫でる指先はどんどん力が強くなってしまう。
「んんんっ、ふうぅ、んんんぅぅぅっ!」
にゅるり。人差し指がおまんこの中に入り込んだ。熱く、肉が絡みついてくる膣内が指に吸い付く。脳がバラバラになるような快感が這い上がり、全身から汗が噴き出す。
「んあああぁっ、駄目だって、これぇっ!」
小夜の体を好き勝手貪っている。今の小夜の罪悪感が膨れ上がるが、だからといって一度火の灯った情欲には抗えない。指先で膣内を擦り上げながら、おっぱいを揉みつつ乳首をこねくり回した。体の中の熱が凄まじい勢いで精神を焼いていく。枕を涙と汗、涎で濡らしながら小夜は快楽に翻弄された。
「んんんっ来るっんんんぅぅぅぅんんんんっっ!!」
絶頂の予感に、さらに手の動きが激しくなっていった。来る、来る、来る。来た。
「んんんんんんんんんんんんんっっっ!!」
枕で顔を圧迫し、おっぱいとおまんこをまさぐりながら小夜は絶頂した。股間からは透明な愛液が噴き出し、ガクガクと意志とは無関係に体が痙攣する。男の時からは想像もつかない快楽に襲われ、無様な格好のまま小夜の意識は吹き飛ばされた。
「・・・・・・ふぅ」
しばらくして。小夜は上半身を起こし、軽く息を吐いた。どこか晴れやかな表情は、先ほどまでと随分違う。
「ごめんなさい、巻き込んでしまって」
しとやかな口調。がらりと雰囲気が変わった小夜は、言い訳のように呟いた。
「でも、私はもう、私の人生が嫌だから。見ず知らずの貴方には、申し訳無いけど」
そう。憑依している男は、本来の小夜の意識は眠りについていると思っていたが、それは正しくない。意識がある上で、面に出ていないだけだったのだ。
「私は、ずっと心の奥底で見ていますから。明石小夜の人生、好きに使ってください」
この声は、男には届いていないだろう。それでも小夜は言う。まるで、懺悔のように。
「煩わしさも、面倒もあるでしょう。でも、その代わり、この体の快感は貴方のものです。存分に味わっていいんですよ」
懺悔のような様子とは裏腹に、小夜の表情には穏やかな笑みが浮かんでた。解放感と、快感の余韻が混ざり合った顔。
「ありがとう。名前も知らない貴方。これからも、よろしくお願いします」
独り言のように呟いて、小夜は再びベッドに体を預ける。そして、優しげな表情で目をつぶり眠り始めた。