そんな彼女とベルを、ダンジョンは淫靡な『罠』を仕掛けて待ち構えていた…
どうかあたたかい目で見てやってくださいませ。
夕暮れ時の大通りはいつもと同じ、大勢の人であふれていた。
その中をリリルカ・アーディに支えられてベル・クラネルはふらふらと歩みを進めていた。
「ちょっとあれ…リトル・ルーキーじゃないの?」
「あらま…えらい事になってるわねぇ」
「すごい…全然リトルじゃないわうちの旦那より立派♪」
群衆、特に女性たちの好奇の視線に羞恥を感じていたのは、意識の朦朧としているベルよりもむしろリリルカの方だった。
完全に油断していた。事前にギルドから注意喚起もなされていた。
なのに…あなどっていた。たかがキノコの胞子、ベル様がその程度の代物に耐性がないわけがない。
そんな思い込みを、そのキノコはあっけなく打破してしまった。
仮称『ボッキノコ』…強力な催淫効果と精力増強をもたらし、冒険者たちから正常な判断と理性を奪う。ダンジョンが創り出した悪意と淫靡さを伴うトラップだった。
『よう、リトルルーキーじゃねぇか』
何度か聞いた事のある声…アンダーリゾートでベルに卑劣な手段で絡んできた、あの男だ。
モルド・ラトロー…あれから和解を経てベルとは懇意になったようだが、やはり冒険者特有の胡散臭い匂いのする男に、リリルカは心を許す気にはなれなかった。
「うおっ、こりゃ…やられたな、ボッキノコに」
慰めと哀れみが半分かそれ以下、嘲笑は間違いなく50%以上…そりゃ年頃の男の子が股間収まらないビンビンギンギンなまま歩いていたら見てて面白いでしょうけどねリリだって状況が状況じゃなきゃじっくり拝んでいたいものですよ!
「まあそっちはともかく…お嬢ちゃんは大丈夫なのか?」
「は?」
「いや、噂じゃあよ…あのキノコが効くのは男だけじゃなくてどわぐはぁ!」
俊足音速光速、この瞬間リリルカの右足はベルのそれを超えて的確にモルドの金的を破壊寸前にまで追い込んでいた。
「公衆の面前で乙女になんて事言うんですかこのセクハラ中年!リリは大丈夫です、この通り理性保っているでしょうが!」
「ぐぅおおお…理性保ってねえじゃねえか…つかつえぇぇぇ…」
股間を抑えてうずくまるレベル2を尻目に、リリルカは再度ベルを連れて歩き始めた。
『大声でなんて事を…そんなの…そんなの…』
大丈夫なわけないじゃないですかぁ!
ボッキノコ…最初の報告が男性だった事からそう呼ばれてしまっているが、モルドの言う通りなのだ。
このキノコの胞子は女性にも作用する。
五感全てが制圧され、異性の体臭だけで興奮状態に陥り、耐性スキルが無い初心者なら歩く時の足裏の刺激で理性を危うくしてしまうほどに。
ただ…女性冒険者たちはその事をギルドに報告したがらない。
当然である。自分が淫らに乱れる状況を、ギルドの職員に事細かに赤裸々に報告するアホなどいるはずもない。
いるとすれば、ロキファミリアの脳天気無乳アマゾネスぐらいなものだろう。
彼女なら全ての事象を英雄譚のごとく雄弁に面白おかしく楽しく陽気に語る事だろうが。
「ふわぁ!」
まただ…先ほどから何度も、ベルの左手はリリルカの胸を目指してにじり寄ってきている。
劇薬にも等しいソーマの酒の経験のおかげで、かろうじて理性は保ててはいるが…鋭敏になった今の体にこの攻撃はあまりに刺激が強すぎる。
どうにかベルの手を掴み胸から遠ざけるものの、下ろされた手は今度はリリルカの最も重要な部分の探索に向かって進行を始める…その繰り返し。
『もう、もう〜!意識ほとんど無いのにオスの本能だけなんでこんなに残るんで…あっ、ダメですベル様…やめ…やぁっ…』
大急ぎで路地裏に駆け込む…大丈夫、誰もいない。
いくらダンジョンの罠のせいだとしても、大衆の行き交う大通りのど真ん中で少女の下半身をまさぐるベル・クラネルの姿など晒すわけにはいかないのだ。
…という建て前を掲げ、リリルカはホームとは違う別方向に足を向けた。
『も、もう私自身が限界です…こんなに強力だとは…ボッキノコ…伊達じゃないですこの名前…おっぱい、先っちょが…し、下も…こ、こすれる…ぅ…』
相変わらずベルの手はリリルカの体を…いや、状況は変化していた。
上着のボタンとボタンの間、装甲の隙間…捕食者はそこに気づいてしまったのだ。
『ひっ…うう…』
気休め程度の衣服の防御を失い素肌への直接攻撃を受け、さらに固くなった淡い桜色の蕾からリリルカの全身に、脳髄に電撃が走り続ける。
視界が次第に白くなっていく…ダメです!
ここで私まで墜ちてしまったらベル様がどうなる事か!
明日のオラリオ新聞の見出し
『リトルルーキーご乱心!サポーターの小人族と悦楽の路地裏大衆見守るアウトドア星空の下ご満悦な夜を本紙独占スクープ!』
冗談じゃありませんよ〜!
歓楽街の裏通り…目的地はそこにあった。
「つ、着きました…ご休憩…一時間9500ヴァリス…た、高い…」
油断したばかりにこの出費…痛い、痛すぎる。
ああでもこの後もっとすごく痛くて恥ずかしくてえっちでいやらしい事しちゃうんだ…9500ヴァリス…ベル様と…9500ヴァリス…ベルしゃま…しゅごい、こんなに…かっちんち〜ん…
こんなの…ヘスティア様には…見せられな…
『あっ…う…うあぁぁぅああ…!』
リリルカの刹那の思考は、捕食者の指先によって遮断された。
最後の砦の小さな布を易々ととくぐり抜けてきたそれは、あふれんばかりの蜜に潤う泉を細部に至るまで探索し、深淵の入口を探りあてようと粘膜の洞窟をかきわけて進んできていた。
ボッキノコ…その名に恥じぬ振る舞いを、男性器に相当する感覚器官に構造の限界まで成しているのが、こすれ弾かれ、気が遠くなるような快感を携えて感染者であるリリルカの体に遠慮する事なく伝達されてきていた。
『あう…9500…ヴァリス…』
かすかに残る理性が待ったをかけている…が、制御を失ったリリルカの指が赤く点灯するルームボタンを押すのを、止める術はもはや残されていなかった。
カラン…と鍵の落ちる音にベルがわずかばかりの反応を見せたが…本能に支配された肉体を取り戻すほどの力はそこにはなかった。
…続く…かも?