あるサイトでNTRビデオレターというものを扱った話を見て思いつきました。
宜しければ、ご一読ください。

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NTRビデオレター問題

「んほおぉっ!んふうぅ!うううんっ!」

「フ、フ、フ…そんなに私のモノが良いのか…怜。」

 

この人に怜と呼ばれた私は、とても満たされている。

この人の大きなモノが、私を貫き、私の中を、そして心をも満たしている。

「は…ハイッ!すごく…すごく、いいでしゅっ!…わたしの、なか…いっぱいに…いっぱいに…!」

 

私を満たしてくれているこの人は、私が去年まで通っていた高校の校長先生だ。

私が高校に在学していた時、私は校長先生に…この人に弱みを握られ、脅されて…犯されることになった。

「んひいぃぃ!イグッ!イグウウウゥーっ!」

 

初めのうちは、確かに嫌だった。

けれども、何度も…何度も何度も、この人に犯されているうちに、何度も何度も、絶頂に至るうちに。

「アヒイイィーッ!」

 

…私はこの人が私を犯してくれることに、絶頂を見せてくれることに感謝するようになった。

この人が私の弱みを握ってくれたことも、私を脅してくれたことも、今では運命だったと思う。

「あひぃやぁぁぁっ!イッちゃう!イッちゃうゥゥーッ!」

 

私は学校を辞め、今はこうしてこの人と愛し合うことに全力を注いでいる。

私は…本当に、とてもとても満たされている。

最高に幸せだ。

 

私とこの人は、月に一回、愛の営みを撮影している。

愛し合うこの人と私の姿を…ええと…恭太に、幼馴染みの恭太に見せてあげるためだ。

 

私には一つ年下の、恭太という幼馴染みがいる。

小さい時からずっと一緒で、その時はいつか自分は恭太と添い遂げるのだろうと思っていた。

そして、恭太も高校に進学した夏、私は恭太から告白を受けて、受け入れた。

それから恭太とセックスもした。

これが幸せ、と思っていたけど、この人…校長先生はそれは間違いだと教えてくれた。

「ひぎいぃぃぃ!」

 

この快感こそが、この絶頂こそが私の幸せ、私はこのために生きている。

恭太では…恭太の粗末なオチンチンでは、到底私を幸せにすることなんてできない。

「あ、あ…ま、また…イクッ!イくぅっ!」

 

…それでも恭太は、私の幼馴染み。

私の、幸せな今を、しっかり恭太に見てもらいたい。

幸せな私の姿を見て、しっかり自分を慰めてほしい。

 

「イヒィィィィ!ヒイィィ…イイイ…ッ!」

…何度目かの中出しを感じながら、私は最高の気分で意識を失った。

恭太…私を見て、ちゃんと自分を慰めてね…。

 

 

***********************

 

 

…スマホの画面で、褐色の肌の、体の大きな女が、正常位で男と交わっていた。

「ああ…ああ…良い…良いぞ……素晴らし、い……んんっ!」

「………。」

女には少し余裕があるようだが、男は黙って腰を振っていた。

男が女の中の感触に酔い、夢中になっていることが、その様子から見て取れた。

そして男は腰の動きを加速させていった。

「………。」

「ああっ!…そ、そんなに…私の中、が…良いのか…私を、犯せて…嬉しい…の、か…ウッ!」

「………。」

「わ…わかるか…?…お前の、モノを…咥え…こんで…んんっ!…私の、モノが…こんなに…悦んで…んんぅ!」

「………。」

「ふ、ふ…も、もう…何も…わからない…か…い…良いさ…そのまま…ケダモノになったまま…犯して…あっ!ああっ!」

「………。」

「ああああっ!い…イキそうだ!も…もう…ううっ!…中に…そのまま、中に、出してくれっ…イかせてくれ……あああ!アアア…ア…ッ!」

そこで女は声を絞り出して、肉体を仰け反らせた。

…イったようだ。

 

「お…お…。」

絶頂をじっくりと味わっているかのように女は声を漏らし、それから、ベッドの上に身を落とした。

大きな女に身を落とされて、ベッドが壊れそうだった。

無我夢中で女を犯していた男も、そのまま女の上に倒れ伏した。

 

少し間が空いて、画面外から小さな声が聞こえた。

何と言ったのかはわからなかったけれど…男はその声を聞いて、女の上で身を起こした。

画面が男に、男の顔に寄せられた。

 

その男は…恭太だった。

 

「怜姉…見てる?」

恭太が画面から、私に向かって言葉を掛けた。

「…僕にも、もうこの女(ひと)がいるから……。」

「…怜姉は、もういいよ…。」

 

…私は…もういいって…それって、どういう…。

 

「…だから怜姉の動画はもう要らない…もう送ってこないでね。」

そこで動画は終わった。

 

「ちょっと…恭太…一体…」

どういうつもりなの、と…思わずこの場にいない恭太に言おうとした時、スマホが私の視界から引き上げられた。

視線を上げると、そこにはさっきまで画面内で恭太に犯されていた女…艦娘・戦艦武蔵がいた。

 

ここはN駅の近くにある喫茶店。

この武蔵は、恭太からのメッセージを預かっていると言って、私をこの店に誘った。

武蔵は、私にも見覚えのある恭太のスマホを私に見せた。

この武蔵は恭太の名前を知っていたし、恭太のスマホを所持していた。

それにこの店には人目もある…。

メッセージを受けるだけならと思って、私は武蔵とこの店に入ったのだけど…。

 

武蔵は恭太のスマホを上着の内ポケットに収めて、私に言った。

「イヤホンを返してくれ。」

…私はワイヤレスイヤホンを耳から取って、武蔵に手渡した。

武蔵はイヤホンをケースにしまい、これも上着のポケットに収めた。

 

それを見てから、私は武蔵に言った。

「…一体、何のつもり、なの?」

 

「…何のつもり、とは?」

「こんな所でこんな動画を私に見せるなんて!恭太は一体何を考えているの!?それに、あなたも!」

 

「恭太のメッセージは簡明だ。」

「私という替わりが見つかったから、貴女はもう要らない。」

「恭太はこのメッセージを、言葉だけではなく、態度と行動・事実によって示した。」

「…貴(・)女(・)の(・)流(・)儀(・)に(・)合(・)わ(・)せ(・)て(・)、な。」

「それだけのことだ。」

 

「替わりが見つかったから、って…!」

「私の替わりなんかいくらでもいるって言いたいの!?」

「私が、私の替わりなんか人(・)形(・)のあなたで十分だって言うの!?」

「…恭太のクセにっ…!短小のクセにッ…!粗チンのクセにっ…!」

 

「………まあ、そういうことなのだろうな。」

 

「短小・粗チンで、私のこと満足させられなかったからって!仕返しのつもりなの!?やっぱり短小粗チンの恭太なんてクソだわ!捨てて良かった!」

「自分は替えの利かない、特別な…オンリーワン、だと?」

「そ、そうよ!あ…あの人だって、私は特別だって!最高だって!言ってくれてるんだから!」

私がそう言うと、不意に武蔵は右手を、そっ…と私の顔の前に伸ばしてきた。

 

手を上げてきたわけではない、単に右手を私の方に伸ばしてきただけだった。

そして一旦伸ばした右手を、ゆっくりと引っ込めて…武蔵は眼鏡の位置を直した。

私は、手の動きをつ(・)い(・)目で追って…武蔵と目を合わせた。

 

どういうわけか、私は武蔵の赤い瞳から、目を離せなくなった。

武蔵はそのまま、ゆっくりと、本当にゆっくりと話し始めた…。

「貴女は…恭太の…幼馴染み…だったのだな…。」

「…そして…恭太の恋人として…添い遂げると…誓ったのだったな…。」

 

「だ…だから、何?そ、そんなの…気の迷いよ、間違いよ!全く、あ、あんな短小粗チンに愛を誓うなんて、あ、あの時の私ったら、どうかしてたわ…!」

 

「…あの人とやらは…貴女を、特別だと…最高だと…言ったのだったな…。」

 

「そ、そうよ!?あ、あの人は、私を特別だって言ってくれた!ホントに、ホントに愛してくれてるんだからっ!」

 

「あの人とやらの言葉が…気の迷いや、間違いではないと…何故…言えるんだ…?」

 

「そ…それは…あ、あの人の、言葉、なんだから…ッ!」

 

「そう…貴女を特別だ、最高だと言ったのは…あの人とやら、だ…貴女じゃあ、ない…。」

「……あの人とやらの言葉が…気の迷いや、間違いではないと…何故…言えるんだ…?」

 

「だ、だって…あの人が…あの人が…言って、くれたから…!」

 

「貴女は…誓いの言葉を…違えた…。」

「あの人とやらが…後で言葉を違えないと…何故、言える…?」

 

「それは…!それは…!」

 

「何故だ…?理由は…?根拠は…?」

 

「……あ…ぁ…ぁ…。」

 

言葉…言葉…いや!言葉だけじゃない…!私には…私には…!

 

「あ、あの人は…言葉だけじゃない!私を!私を抱いてくれるっ!私を満たしてくれるっ!だから…だからっ!」

 

「…恭太も…私を…抱いて…いるが……私は…貴女の…『替わり』に…すぎない…。」

「……愛と言うほどの…情は、なくても………セックスは…出来る……。」

「あの人とやらが……貴女を…抱いたからと言って…それが…一体…何の…証明に…なる…?」

 

「何の…って…それは…あ、愛の…。」

 

「…恭太も…私を…抱いて…いるが……私は…貴女の…『替わり』に…すぎない…。」

「……愛と言うほどの…情は、なくても………セックスは…出来る……。」

「抱かれたからと言って…抱いたからと言って…そこに、愛が…あると…何故…言える…?」

 

「何故…って…。」

 

「何故言える…何故言える…何故言える…。」

 

わからない…わからない…。

…視界が、回る…気分が…悪い……吐きそう……。

私は……どうやら、この直後に…店を…出た、らしい…。

 

 

***********************

 

…顔色を白くした怜姉が席を立ってその場を離れた所で、動画は終わった。

「…こんな感じで良かったか?…恭太。」

こう言って、武蔵さんは僕に確認した。

 

ここは僕の家、この時、僕の前には武蔵さん…黒鉄武蔵さんが居た。

 

僕には、怜姉…怜という幼馴染みがいた。

怜姉とは、本当に小さな時からずっと一緒だった。

その頃から、僕は怜姉と添い遂げることになるんだろうな、と何となく思っていた。

そして高校に上がる直前の頃には、この「何となく」は「何となく」ではなくなっていた。

 

高校生になって最初の夏、僕は自分の想いを怜姉に伝えた。

怜姉は、自分も同じ想いで居たと言って…僕の想いを受け容れてくれた。

 

そのはずだった。

 

 

怜姉は、あの人…校長先生に弱みを握られ、脅され、弄ばれていた。

僕の知らない所で、怜姉は校長先生に何度も、何度も犯されて…次第に快楽に溺れていった。

僕は…マヌケだった。

僕がこのことを知った時には、もう何もかもが手遅れになっていた。

怜姉は…身も、心も、校長先生の物になってしまっていた。

 

僕と同じ想いで居てくれたはずの怜姉は、僕の想いを受け容れてくれたはずの怜姉は…。

…自分の身も心も、もう校長先生のモノなんだと、僕ではもうダメなんだと、僕はもう要らないと。

…僕の目の前で校長先生に犯されながら、快楽に蕩けきった貌で、僕にこう言い放った。

 

僕は校長先生と…怜姉から逃げるように、学校を辞めた。

でも怜姉は、僕を逃がしてくれなかった。

毎月一回、僕の所に動画が送られてきた。

校長先生と…怜姉が、自分たちのセックスを、僕に見せつける…見せつけるための動画。

動画の中で怜姉は、校長先生こそ男の中の男と讃えながら、校長先生のモノに貫かれていた。

動画の中で怜姉は、僕ではこれほどの満足は得られないと言いながら、絶頂に身を震わせていた。

 

怜姉を助けられなかった僕は、怜姉を満足させることも出来ない僕は…生きていてもしかたがない…。

 

 

「どうしたんだ、恭太?」

武蔵さんの声が、僕を回想から引き戻した。

「え…ああ、すみません、ちょっと…色々思い出しちゃって。」

「……そうか…それで、これが彼女と話をした顛末だが…これで良かったか?」

武蔵さんは、自分と怜姉との会見の様子を動画に撮って、僕に見せてくれていた。

「…わかりません…やり過ぎなような気もするし…手ぬるいような気もするし…。」

「すみません…僕が自分で復讐を望んだのに…今さらこんな態度で…。」

 

「復讐など不毛だし、間違っている。」

「確かにそれはよく言われることだし、私もこの言葉は間違ってはいないと思う。」

「だが人間は…我々も…常に実り豊かな道を歩いているわけではないし、常に正しい道を歩いているわけでもない。」

「不毛で間違った道でも、そこを通らなければ先へ進めない、ということだってあるさ。」

 

 

怜姉を助けられなかった僕は、怜姉を満足させることも出来ない僕は…生きていてもしかたがない…。

…そう思っていた時に、僕は武蔵さんに出会った。

 

僕は、武蔵さんを…「女」を、犯した。

快楽、ただそれだけのために、想いを共にしたはずの僕を切り捨てた「女」を、犯した。

体の奥底から、心の奥底から湧き上がる怒りを、憎しみを以て、「女」を犯した。

 

「お前は何も駄目ではない。」

…僕が犯していた「女」は、武蔵さんは、僕にそう言った…言ってくれた。

我に返った時、僕は…武蔵さんが、僕の悲しみを、怒りを、憎しみを、その肉体で受け止めてくれたことを知った。

何てことをしてしまったんだろう…。

でも武蔵さんは、こうも言ってくれた。

「生きていてもしかたがない、と思うくらいなら怒れ、憎め。」

「私は誰とでも寝る艦娘(おんな)だ、ある意味、私は怜姉とやらと同類だ。」

「だから、抑えきれない怒りや憎しみは、私の肉体にぶつけろ。」

 

怒りと憎しみは、確かに僕を蘇らせた。

武蔵さんは、僕の抑えきれない怒りと憎しみを、その肉体で受け止めてくれた。

そして僕は自分の怒りと憎しみを、抑えられるようになった。

 

抑えられるようにはなったけれど、怒りと憎しみが消えたわけじゃない。

いつまでも怒りと憎しみに依って生きていくわけにはいかない。

僕は怒りと憎しみにケリを付けたいと、武蔵さんに申し出た。

 

そして僕と武蔵さんは、怜姉が僕に送ってきた動画と同じような動画を、怜姉に見せることにしたのだった。

 

 

「これから後のことだが。」

…僕はまた過去を振り返ってしまっていたようだ。

武蔵さんの呼びかけが、僕を今に引き戻した。

「取り敢えず私に出来ることはした。」

「後は…彼女のことなど、早々に忘れることだ。」

 

「忘れること、ですか。」

「そうだ、具体的には…。」

 

「彼女が写っている写真や画像は、全て破棄しろ。」

「彼女から送られたメッセージ…メール、手紙や文書なども同じく全て破棄だ。」

「日記など付けていれば…これは出来ればでいいが、日記も破棄した方がいいだろうな。」

 

本当に具体的だった。

因みに、日記など付けていれば、と言うことだったけど、僕は日記を付けてはいない。

 

「それから、もう彼女とは連絡を取るな。」

「電話番号や、メールアドレスなど、お前への連絡先は全て変更しろ。」

「彼女からの郵送物は…開封せずに破棄すること。」

「受け取り拒否では、彼女の所に郵送物が戻ってしまうからな。」

 

この指示も具体的だった。

ただ、この指示には、ちょっと気になる所があった。

 

でも、何が気になるのか?

僕が考えを纏めようとしていると…。

 

「あの、武蔵さん…ちょっと、いいですか?」

 

同席していた母さんが、口を開いた。

 

 

 

私は、この黒鉄武蔵という艦娘を見ると、どうも複雑な気分になる。

 

息子…恭太には、怜ちゃんという幼馴染みがいた。

高校に上がってから、怜ちゃんと、恋人として付き合うようになったことも知った。

…恭太はハッキリとは言わなかったけれど、怜ちゃんと…その、セックスもしたようだ。

母親としては、ちょっと寂しい気分にもなったけれど、私もよく知っている怜ちゃんと結ばれたのなら…と、嬉しくも思っていた。

 

でもそれから程なくして、恭太は明らかに生きる気力を失った。

怜ちゃんと何かあったのかと思ったけど、私に心配を掛けたくないと思っていたのか、恭太は何も話してくれなかった。

 

…それから恭太は、さらに生気を失っていった。

あちこちに相談もしてみたけれど…どの回答も、決め手に欠けていた。

私は恭太の母親だというのに…生気を失っていく恭太を、ただ見ているしかなかった。

 

このまま恭太は、遠い所に行ってしまうのではないかという不安が現実味を帯びてきた。

そして恭太は…気力を取り戻した。

 

カラ元気とか虚勢とかではなく、本当に恭太は回復した。

一体どうしたのかと思っていた時に、私は黒鉄武蔵のことを、武蔵さんのことを知った。

 

恭太はその時既に、武蔵さんと何度もセックスをしていた。

あなたには怜ちゃんがいるでしょう?と、恭太を問い質した時に、私は怜ちゃんが…あの女が恭太を惨たらしく裏切ったことを知った。

あの女が恭太に送りつけていた動画も、その時に見た。

 

…なんて悍ましい!これが…これが、清純で、凜としていた、あの怜ちゃんなの…!?

 

武蔵さんはセックスを通して、恭太の悲しみ、怒り、憎しみを受け止めてくれたらしい。

そして武蔵さんは、自分は別に恭太の新しい恋人になったわけではない、とも言った。

「私は…誰とでも寝る艦娘(おんな)ですから。」

…武蔵さんは、こうも言っていた。

 

私は、この黒鉄武蔵という艦娘を見ると、どうも複雑な気分になる。

昔から知っている、清純で、凜とした怜ちゃんは、惨たらしく恭太を裏切った。

最近会ったばかりの、自分は誰とでも寝る艦娘(おんな)だと言う、ふしだらな武蔵さんは、恭太の命を救ってくれた。

 

私が今まで正しいと信じてきたことは、一体何だったのか。

私が今まで間違っていると信じてきたことは、一体何だったのか。

 

私は、この黒鉄武蔵という艦娘を見ると、どうも複雑な気分になる。

 

武蔵さんは、恭太が怜ちゃん…あの女との悪縁?を断ち切るために力を貸してくれた。

それは、あの女が恭太に送りつけてきたような動画を、あの女に見せつけ返すという策だった。

 

そして私と恭太は、その策の結果を確認していた…。

(武蔵さんは、あの女に見せつけるために撮影した動画の取り扱いには気をつけてくれていた。)

 

私も恭太と一緒に結果を確認していたのだけれど、少し引っかかった点があったので…。

「あの、武蔵さん…ちょっと、いいですか?」

 

「何ですか?」

武蔵さんは恭太に対してはタメ口で話すけれど、私に対しては丁寧語で話す。

 

私は武蔵さんに、見せてくれた結果について引っかかる点について問うた。

「これは…私が感情的になっているだけなのかもしれないんですが…。」

「…私には、ちょっと生ぬるく見えます。」

「この子の…恭太の想いを、あれだけ酷い形で裏切っておきながら。」

「それだけじゃなくて、あ、あんな動画を送りつけて…恭太を追い込むようなことをしておきながら…。」

「そのせいで恭太は、命を失うかもしれなかったのに。」

「その報いが、ちょっと気分を悪くしただけっていうのは…やっぱり生ぬるく見えてしまいます。」

「それと…。」

 

「私が恭太に、動画の中で『替わりが見つかったから、怜姉はもう要らない』と言わせたことについて、ですね。」

…武蔵さんは、私の心が読めるのだろうか?

 

「あ…そ、そうです、これじゃあまるで…。」

「…恭太が、ヤれるのなら相手は誰でも良いと思っているヤツに見えてしまいますね。」

やっぱり武蔵さんには、私の心が読めているようだ。

 

武蔵さんは、私に説明してくれた。

「私が恭太にこう言わせたのは、彼女の本心を見極めるためです。」

「どういうことですか?」

 

「むしろお母様の方がよくご存知の通り、恭太はそんなヤツではありません。」

「にもかかわらず…その、私とセックスをしながら恭太がこんなことを言ったら。」

「恭太は私に誑かされている、と考えるのが道理というものでしょう。」

「もし、ここで彼女が『恭太が本心からこんなこと言うわけない!』…とでも言っていれば」

「私も彼女への対応を考え直さなければならなかったのですが。」

「…実際に彼女が口にしたことは、恭太への罵倒でした。」

「ですから私も、当初の予定通り、プログラム通りに事を進めました。」

 

「プログラム?」

「金剛…私の友人の見立てでは、彼女はこのあと三ヶ月以内に、約七割の確率で……厄介な状況の当事者になります。」

武蔵さんは言葉を選んで、ずいぶん回りくどい言い方をした。

 

「厄介な状況って…。」

 

「先程私は恭太に、彼女からの通信・連絡は全て絶つように言いましたが…これは、厄介な状況の影響を避けるためでもあります。」

「それでお察しください。」

「確率は約七割で、確実というわけにはいきませんが…。」

 

私はこれで、厄介な状況という言葉が何を指しているのかを察した。

確実ではないと言うことだったけれど、武蔵さんがあの女にしたことは、決して生ぬるくはないのだということも理解した。

 

 

武蔵さんは帰り際に、恭太に問うた。

「恭太、お母様の前だが…私とのセックスは、どうだった?」

母親の私の前で何を聞いているのかと思ったけれど…私は恭太がどう答えるのかを見守った。

 

「…凄く、気持ち良かったです。」

「僕は…ただ自分勝手に、自分の気持ちを、武蔵さんの体にぶつけていただけなのに。」

「武蔵さんは、そんな僕の身勝手を受け入れてくれて…。」

「……この先、そんな機会があるかどうかわかりませんけど。」

「また、誰かと…セックスすることがあったら。」

「…僕も相手の気持ちを、受け入れるようにします…武蔵さんが、僕にそうしてくれたように。」

 

私はこの答えに、変(・)わ(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)た(・)け(・)れ(・)ど(・)も(・)変(・)わ(・)っ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)恭太の姿を見た。

 

「私は前に、お前は何も駄目ではない、と言ったが。」

「お前は駄目ではないどころか…本当に大したヤツだったのだな…お前自身が、思っている以上に。」

「お前はもう、大丈夫だ…色々な意味で、な。」

「縁があったら、また会おう。」

「そしてその時、恋人が居ないようなら…また、な。」

「…さらばだ。」

 

そう言って、武蔵さんは去って行った。

それから私も恭太も、この武蔵さんには会っていない。

 

 

***********************

 

 

僕が武蔵さんと別れてから、二ヶ月が経った。

僕は高卒認定試験合格を目指して、予備校に通っている。

 

武蔵さんは僕と一緒に居る間、セックスだけじゃなくて数学や論理学についての話もしてくれた。

そのおかげなのか、しばらく勉強というものから離れていたのに、予備校の授業にはあまり苦も無くついて行けている。

…と言うか、勉強が、学問が面白い。

僕は高卒認定試験合格を目指して勉強しているのだけど。

試験に合格することとか、テストで点を取ることとか、そんなことは「ことのついで」に過ぎないと思える。

 

僕は一度は諦めた人生に、生きることに、戻ってくることができたようだ。

 

僕たちの「復讐」に効果があったのか、怜姉からの連絡は来なくなった。

もちろん、怜姉から動画を送られてくることもなかった。

僕も勉強に、生きることに夢中になってきたので…この時まで本当に怜姉のことは忘れてしまっていた。

 

この時までは。

 

この時、ネットのニュースをふと見ると、殺人事件のニュースが出ていた。

殺されたのは、あの人…僕が通っていた高校の、校長先生だった。

そう、僕から怜姉を奪った、あの人だ。

ニュースによると校長先生を殺害したのは、同居していた若い女性…ということだった。

ほぼ現行犯で逮捕されたそうだ。

確かめようとは思わなかったけれど、十中八九、怜姉なのだろう。

 

僕は少し自己嫌悪を感じた。

何故って、このニュースを見た時、僕の感想は…。

「ああ、あの人…殺されたのか。」

…これだけだったから。

 

僕に生きていてもしかたがない、と思わせたほどの人が死んだというのに、僕の感想はこれだけだった。

かつて僕と愛し合っていたこともある人が、殺人という大罪を犯したのに、その人については感想も出てこなかった。

…と言うか、このニュースを見るまで、二人のことなど、僕の頭にはなかった。

 

自分でもこの反応は、ちょっと冷たすぎるように思えた。

 

そう言えば、武蔵さんは言っていた。

「不毛で間違った道でも、そこを通らなければ先へ進めない、ということだってある。」

…僕はこの時、不毛で間違った道を、通りきってしまったのだろう。

 

 

僕はパソコンの電源を落とし、母さんに「行ってきます」と言って、玄関を出た。


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