『死ぬほど洒落にならない怖い話』の姦姦蛇螺(かんかんだら)が女子高生とまぐわう話
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姦姦蛇螺(かんかんだら)×女子高生

 中学生の時、よく当たると有名だった隣町の占い師のお婆さんに「もう忘れなさい」と言われたことがある。

 

 暖簾のようにぶら下がる幕を腕で押し上げ、店内に入った直後の出来事だった。

 彼女は指の先までしわしわな手のひらで私の両手を包み込み、畏怖の宿る瞳を向けてこう言った。

 

「この子には今を生きる権利がある」

「あなたももう忘れてしまいなさい」

 

 その気迫迫る表情を今でも時々思い出す。暖房の入った暖かな室内にも関わらず、彼女の手がひどく冷え切っていたことも。

 

 なにを忘れなければならないのか。私(・)は(・)なにを忘れているのか。

 

 

 

 その日から、頻繁にある夢を見るようになった。

 

 俎上の魚のように、私の目の前には見知らぬ女性が横たわっている。彼女の瞳からはとめどなく血の涙が流れ、まるで私を責め立てるようにこちらを睨みつける。

 

 夢の中の私は、性別すら違っていて男だった。

 

 太く逞しい腕が掴んだのは、やけに手のひらに馴染む刃物。包丁だろうか。

 チリチリと胸の奥が焦げつくような微かな痛み。嫌な予感がした。

 

 私は手に持った刃物で、まるでノコギリか何かで木材を切るかのように女性の左腕を切り落とした。女性の口が大きく開く。悲鳴だったのか、私への罵詈雑言だったのか。音までは聞こえない。なのに、無性に両手で耳を塞ぎたくなった。なにも聞いていたくない。

 

 ――嗚呼、如何して。

 

 こんなにも痛くて苦しいのに、私は彼女の腕を切り落とさずにはいられないのか。私は彼女の左腕を胸に抱きながら泣き崩れるしかなかった。

 

 夢はそこで終わることもあれば、続くこともある。

 

 続いた先でも私の両手は決まって血に濡れていた。私の足元に彼女はいない。その代わり、別の人間が倒れていた。それも複数人。年齢も性別もバラバラな男女が、あの日と同じ刃物を手にした私の前で倒れている。

 

 どうやら私は狂気にのまれているらしかった。

 

 相変わらず声は聞こえないが、喉の震える感覚だけははっきり伝わってくる。私は血まみれの両手を天に翳し……わらっていた。

 やがてだらんと全身の力が抜け、握っていた刃物が手からこぼれ落ちそうになる。

 

 暫くして、私は彼らの腕を切り落とし始めた。以前彼女の腕を切り落とした時のようなぎこちない動きではない。あくまで機械的な作業として淡々と。

 

 最後には、それらを麻布(まふ)で包んで荷車に載せた。車輪は二つ。ハンドルを持ち上げ、道をなしていない山道を登っていく。

 

 やがて私はひらけた場所に辿り着いた。

 

 さわさわと風が木の葉を揺らす音。つるつるとした立派な大木が空を覆い隠している。

 私はここを知っている。私が彼女の腕を切り落とした場所だったから。

 

 小さな穴を掘り、そこに小さな木箱を埋めた。

 

 彼女の美しく長い黒髪が入った箱は、すぐに土を被って見えなくなってしまう。

 箱全体を覆っていた五秒奉書は彼女が生前髪を束ねていたもので、彼女の髪を束ねるのは私の役目だったこともある。

 

 私は箱を埋めた場所に、麻布で包んだ無数の腕を抱えながらごろんっと横になってみた。

 木々の隙間から空が見える。ぽっかりとあいた闇を埋めるように、星々がうたっている。

 

 そして、私は夢を見た。夢の中で夢を見たのだ。

 

 さらりと目の前で美しい黒が揺れる。白磁のようになめらかな肌が私の頬に触れた。

 

 ――彼女だ、とすぐに分かった。

 

 私はみっともなく泣いて、縋りついて、彼女に許しをこうた。どうか許してくれと。愛していたんだと。だというのに……裏切ってしまった。

 

 なぜか彼女の顔は真っ黒に塗りつぶされていてはっきりと見えない。

 彼女の顔が近づいてきた時に、やっと赤く艶々とした唇を視認できたくらいだった。

 

 柔らかな唇が私の唇に重なる。

 甘噛みするように啄んでいたかと思えば、にゅるりとした熱が侵入してきた。

 突然のことに思わず身を捩って離れようとしたが、背中に回ってきた彼女の腕にしっかりと抱きしめられていて動けない。

 

 私はここでおかしいと思った。

 

 彼女に腕はない。すでに私と彼らが切り落としてしまったからだ。

 それなのに、私の背中に回ってきた腕は一つや二つではない――五つだ。

 

 その場に押し倒されたが、彼女の腕がクッションになったのか痛みは感じない。私に馬乗りになってきた彼女の上半身が、ちょうど雲間から顔を出した月明かりに照らされ、その幻想的な美しさに目を奪われる。

 

 形のいい乳房が彼女の動きに合わせて揺れるたび、思考の一部が痺れるかのようだった。

 

 私の知っている彼女とはかけ離れた姿。……変わり果てた姿。いつの間にか私の頬は濡れていた。再び私に顔を寄せようとしていた彼女の動きが止まる。私はそばに落ちていた刃物を手にとって懇願した。懇願したことは覚えてる。何を言ったのかまでは……忘れてしまった。

 

 黒いモヤでしかない彼女が何を思っているのかも分からない。

 

 私はそのまま己の心臓に刃物を突き立て――――夢はいつもここで終わる。

 

 

 

「それって欲求不満なんじゃないの」

 

 ショートホームルームを終え、次の授業の準備をしながら、隣の席の友人に最近よく見る夢の話をしてみた。返ってきた言葉がこれである。人間、痛いところを突かれるとつい反論したくなるもので、私はムッと唇を尖らせた。

 

「だからって同じ内容の夢を何度も見る? しかも人を殺したり、びっ……美女とまぐわうところだったり……最後は自殺だよ?」

「まぐわうって言い方……あたしに聞かれても分かんないよ。自分のことでしょ」

「うっ……そうだけど!」

 

 友人は私の肩に腕をのせ、にやりと笑みを浮かべる。

 

「中学の時に一緒に行った占い館で『忘れろ』って言われたじゃん? 前世の記憶だったりして」

「……そうかも」

「冗談のつもりだったんだけど」

 

 友人は呆れたように肩をすくめた。

 

「次の授業、アンタの列からじゃなかった?」

「あっ」

 

 慌てて机の中から教科書とノートを引っ張り出す。担当の先生は教科書の内容を生徒に音読させる人で、私のように人前で発言するのが苦手なタイプは、事前に心の準備をしておく必要があるのだ。

 

「君待つと吾が恋ひ居れば…………」

 

 幸い、今日は短い恋の歌を詠むだけで済んだ。私が着席すると後ろの席の男の子が立ち上がり、次の歌を詠み上げる。

 

「…………なる人を恋ふとて」

 

 頬杖をついて窓の向こうを見つめた。初夏の独特な匂いが鼻腔をくすぐる。

 

 思えば、夢の中の私が死んだ時も、これに似た季節だったような気がする。

 

 

 

 夕方。室内履きからローファーに履き替えて校門をくぐった。私の通っている高校は、家から電車とバスを使って二時間かかる場所にある。

 

 校門のすぐ目の前にあるバスの停留所。

 時間通りにやってきたバスは思ったより空いていて、私を二十分ほどかけて駅まで送り届けてくれた。

 

 駅の改札でICカードをかざす。電車が駅に入ってくる直前に鳴る音が聞こえてきて、早足に階段を駆け降りた。

 

「はぁ……はぁっ、は…………」

 

 ギリギリでなんとか滑り込んだ。

 走りにくいローファーに加えて、今日はテスト前だからと通学鞄に大量の教科書を詰め込んでいる。正直死ぬかと思った。

 

 だいぶ大袈裟なことを考えながら息を整え、一番近い席に座る。膝の上に置いた鞄がずっしりと重い。ガタンゴトンと揺れる車内。忙しなく移り変わる景色。心地よい振動もあって、私は鞄を抱きしめた状態で眠ってしまった。

 

 

 

 目を覚ました瞬間、やらかしたと思った。深い眠りに落ちていた感覚。絶対に目的の駅を乗り過ごしている。

 

 電車の扉が開くと同時に鞄を両手で抱えたままホームへ飛び出した。

 

「え?」

 

 ホームの駅名標に書かれているのは、全く見覚えのないもの。急いでポケットから携帯を取り出して調べると、どうやら逆方向の電車に乗ってしまっていたようだった。

 いくら慌てていたからといっても限度がある。

 

「嘘でしょ。次の電車が二時間後って」

 

 不幸は重なるものらしい。

 閑散とした駅には私以外の人はおらず、電車も来ない。二時間も駅のホームで待ちぼうけできる自信もなかったので、とりあえず外に出てみることにした。

 

 改札を出る際に表示された金額にギョッとしたものの、なんとか払える金額で安心した。

 

 こじんまりとした駅から出る。そこには、いかにもといった田舎の風景が広がっていた。私の住んでいるところも十分田舎だと思っていたけれど、ここはさらに上をいく。

 

「…………あれ、あの山って」

 

 駅を出て振り返った先に、それほど大きくない山があった。見覚えがあるなんてものじゃない。あの山だ。何度も何度も夢で見た、彼女と私(・)がいた山。

 

「あ……ああ」

 

 目が離せない。だって私は。彼女が×××で×××して。

 

 私は駅のコインロッカーに鞄を預け、携帯と財布だけを持って山に向かった。

 精神と肉体が切り離され、自らの意思では動いていない感覚すらあった。

 

 手入れを欠かさなかったローファーが土を被り、岩などで削られようとも、私は構わず進み続けた。

 

 知っている。私はこの道を知っている。記憶にあるよりも人が通りやすいように整備されているが、確かにこの道だ。

 

「うっ……はぁ、は……はぁっ」

 

 己の体力のなさが恨めしい。くるぶしの辺りまでずり落ちてくるソックスを上げるだけでも体力が奪われていく感じがする。

 

 ――なんだか、山に入ってからずっと誰かに見られているような。

 

 言葉にし難い感覚だけれど、それは妙に湿度のこもったじっとりとしたもので。不思議と不気味さは感じられない。心のどこかでは怖いと思っていながら、高揚しているような……矛盾だ。

 

 山の中は薄暗く、携帯の明かりを頼りに進むしかない。ひんやりと冷たい空気が私の肌を何度も撫でつけていく。

 

 森に入ってからそろそろ四十分になるといった頃、巨大な柵が見えてきた。

 

「なにこれ……」

 

 どう見ても異常だった。

 ただの山の中にこんなものがあるとは思えない。中に入らせない……いや、中のものを出さないようにするかの如く、厳重なものだった。

 

 森に入ってから度々感じていた気配がより一層濃くなる。なぜか体の奥が疼いた。

 

 そっと柵に触れる。携帯と財布と非力な私の腕だけで破れるものでもない。なのに、私には妙な確信があった。ほとんど力を入れることもなく柵を押す。柵はぐにゃりとゴムのように曲がり、なんとも呆気なく私を柵の内側へと招き入れた。

 

「××××××」

 

 私を誘うような甘い声が頭に鳴り響く。柵の内側に広がるのは、先ほどと変わらぬ景色。

 

 再び三十分ほど歩いた先にそれはあった。遠目に反対側の柵が薄らと見える場所。

 

 麻布を巻かれた奇妙な木が五つに、何も巻かれていない木が一つ。それらには注連縄(しめなわ)が張られていて結界を彷彿とさせた。中央には賽銭箱のようなものが鎮座している。

 

 私は何かに取り憑かれたように縄の内側へと足を踏み入れた。頭のどこかで警告音のようなものがひっきりなしに鳴っているが、もう止まれない。

 

 経年劣化によるものか、箱の状態はあまり良くなさそうだ。つつ、と人差し指と中指で箱の表面を撫でるように触れる。

 

 箱の裏側には家紋のようなものが描かれていた。どうやら箱は裏側からしか開かないらしい。裏側の板を取り外し、中を覗き込む。

 

 中には液体の入った変わった形の容器に、マッチ棒のように一部の先端が赤く塗られた爪楊枝が置かれていた。

 それだけでも異様だったが、さらに問題なのは爪楊枝の並びに意味が含まれているように見えることだった。形でいうなら、カタカナの『ハ』が二つに、反転した平仮名の『く』が横に並んでいる。爪楊枝同士が触れる四箇所のみが赤く塗られており、その下には和紙のようなものが敷かれていた。

 

 私は謎の液体が入っている容器を手に取ってみた。鼻に近づけて匂いを嗅いでみる。無臭だった。軽く揺らせばたぷんっと表面が動く。

 

 何を思ったのか。

 

 私はペットボトルに似た容器を口元に持っていき、上に傾ける。

 とろみのある液体が喉を通り過ぎた瞬間――ひどい吐き気がした。

 

「う……げ、げぇっ……!!」

 

 箱に当たらないよう、地面に向けて吐く。昼食で口にしたものが胃からせり上がってくる。

 

「はっ……はぁっ……」

 

 くるしい。きもちわるい。

 

 しゅるっとセーラー服にリボンのように結んでいたスカーフを解いた。

 できる限り裏地の部分で口を拭って、スカートのポケットに乱暴に押し込む。

 

「な……なんなのぉ……ねぇ……もう、なんなの?」

 

 途端にぶわっと感情が押し寄せてきて、ぐずぐず泣きながら箱に寄りかかった。

 

 なにをしているんだろう、私は。

 

 急に冷静になった。まるで頭から冷水を浴びせられたみたい。もう帰りたい。帰らなきゃ。

 よろめきながら立ち上がる。

 

「も、やだぁ。なんでこんなとこ、わたし…………」

 

 おかしい。おかしいよ。わたしがおかしい。ここがおかしい。

 

 走り出そうとした瞬間、ぬるっとしたなにかに左足を掴まれて引っ張られた。

 

「きゃあああっ!!」

 

 地面に思いきりぶつけた額と腕が痛い。そのまま数メートルくらい引き摺られ、私は声が枯れるくらい叫ぶことしか出来なかった。

 

「ああっ。いやっ、いやあっ! やめて、離してよぉっ!」

 

 暗闇の中、必死に地面を叩いて落とした携帯を探す。やっとの思いで見つけた携帯はランプがついたままで、私は勢いよく引っ掴んだそれを後方に向けてかざした。

 私の足を掴んでいた何かが離れていく。

 

「あ……ああ…………」

 

 陶器のように艶やかな肌の一部を覆う長い黒髪。私よりも大きな胸は乳輪すらも大きく、乳首は突起している。胸部から骨盤まで、しなやかに伸びたラインは美しく、同性の裸体など見慣れているはずの私でも、思わず生唾を飲み込むほどだった。

 

「なっ……なにそれぇ」

 

 目の前の女性には下半身がなかった。否、下半身が人(・)間(・)の(・)も(・)の(・)で(・)は(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

 

 胴体は太く、強かで、鱗のようなものでびっしりと覆われている。まるで――ヘビそのものだ。

 

 ひゅうっと上手く息を吸い損ねた私はすっかり腰を抜かしていて、手の力だけでその場から逃げ出そうともがく。しかし、すぐに女性の下半身から伸びる尻尾のようなものに巻きつかれた。

 

「ぐうっ……! く、くるし…………」

 

 仰向けの状態で地面に倒れる。鱗でつるつるしているのかと思えば、一部突出した棘のようなものがあるらしく、その箇所が私の太腿に擦れるたびに痛みで叫びそうになった。

 

 それは意思を持っているかのように、小さくなったり大きくなったりする。時々ドクンッと熱くなり、小刻みに痙攣もしている。

 

「あ、んんっ……!?」

 

 女性の上半身に六つも生えている腕で引き寄せられたかと思えば、口内に熱いものが侵入してきた。それは私の歯茎をなぞるように動き、誰かと口付けすらしたことのなかった私に呼吸する隙すら与えない。

 

 女性の舌は恐ろしいほど長く、生き物のように私の口内を蹂躙していく。身体の熱が上がるたびに奥が疼いて、思わず身を捩った。

 

「ふっ……ん、んんっ……!!」

 

 思考がとろとろに溶けていく。漸く女性の舌と唇が離れた。

 蜘蛛の糸のように舌の先端に糸が垂れていた。溶けた思考のままぼんやりとそれを見つめる。

 

「……や、ぁ……もう、」

 

 私に巻き付いていた尻尾が離れ、太腿を撫で上げる。何かを探しているかのような動きを見せていた尾がするりと下着の内側へと潜り込んだ。

 

「あっっ、あああっ!! ひゃぁん、やだ、やだやだやだぁっ!!」

 

 尻尾の先端を丸くさせ、私の陰核をきゅうっと絶妙な力で締め上げてくる。それは耐え難い快感だった。

 頭が真っ白になって、なにも考えられない。奥からおしっこのように飛び出してきた汁がぐしょぐしょに下着を濡らした。

 

「はぁ……はっ……どうして、こん、なこと、するの……?」

 

 女性は私の左頬に優しく触れ、慈しむように額に唇を寄せてきた。ちゅっとリップ音がする。 

 今度はゆっくりと背中を地面に倒され、彼女が覆い被さってくる。どこかでみた光景だった。

 

 陰影のはっきりとした肉体。彼女の腕の一つが私のセーラー服を捲り上げる。

 

「あっ…………」

 

 簡単にブラのホックが外され、はらりと腹の上に落ちる。腕で隠そうとしたら、すぐに伸びてきた女性の腕に地面に押さえつけられてしまった。

 

「ひぃぃっ……! や、やぁっ、みない、でぇっ……」

 

 臍の緒から、胸部まで。味わうように丹念に舐められ、その度にびくっと身体が震える。よく見れば彼女の舌は先で二つに分かれていて、それこそヘビのようにチロチロと小刻みに動いていた。

 

 こんなの、まるで私の体じゃないみたい。

 

 羞恥心で真っ赤になった顔を腕で覆い隠し、鋭い快感に耐えるように唇を噛みしめる。

 

「んぅっ、んんっ。ああ、んっ……!!」

 

 胸の突起を口に含まれ、ころころと尖った歯で甘噛みするように刺激を与えられる。

 

 下着に入り込んでいた尻尾が、私の動きに応えるように陰核を擦り続けていた。時々捲れかけた鱗が当たって、私はさらなる嬌声を上げた。

 

 ビリビリと全身に電撃が走るような感覚。

 

 口端からは唾液が滴り、プリーツスカートには少しとろっとした透明な液体が飛び散り、乱れたセーラー服の隙間からは、私の控えめな胸がこぼれている。

 冷たい夜風にさらされ、敏感になった乳首がぴんっと張るのが分かった。

 

「はぅ…………んっ、ああっ」

 

 腟口から温かい液体が絶え間なく流れ出ている。余韻に浸るようにひくひくと陰核が痙攣していた。

 

 目尻に薄らと涙を浮かべ、私は女性を見上げた。遠くに転がっている携帯の明かりのおかげで、女性の姿は鮮明とは言い難いけれど僅かに確認することが出来る。

 

 ――彼女の容姿はとても美しかった。

 

 下半身が異形であろうともそれは変わらない。

 

 平凡な私とは比べるのも烏滸がましいくらいの美貌の持ち主で、ふっくらと厚みのある唇は私との口付けにより濡れていて、より扇状的である。

 

 豊満な胸にはらりと垂れてくる黒髪は艶やかで、形のいい瞳は伏せることで憂いを帯びた表情を作り出す。

 

 芸術作品のようだ、と思った。ごくっと喉が鳴る。唐突に自分の中の“飢え”を自覚した。もっと……もっと、欲しい。彼女が欲しい。

 

 求めるように伸ばした手のひらが彼女の胸元に辿り着く。彼女は先ほどの私のようにびくっと震え、己の乳頭を私の指に押し付けるように身体をくねらせる。

 

「あ……ふっ、んん……」

 

 引き寄せられるように口付けをかわし、居場所を探して彷徨っていた私の舌を彼女のものが絡め取る。

 

 キスだけでこんなに気持ちいいなんて知らなかった。頭が蜂蜜みたいにどろどろに溶けていく感覚。胸の奥底から込み上げてくる愛おしさで、どうにかなってしまいそう。

 

「ふっ、あ、ん…………んっ」

 

 下腹部、とくに子宮の辺りがキュンッとした。それは初めての感覚で、ほぼ無意識に下半身を彼女の尾に擦り付けていた。

 

「…………んん、」

 

 唇が離され、至近距離で彼女と見つめ合う。

 次の瞬間、私の頭は彼女の胸元に押し当てられていた。目の前の豊かな胸を両手でやんわりと包み、顔を近づけて先端の突起を口に含む。

 

 さっき自分がしてもらったことを思い出しながら、前歯を軽く当ててみたり、舌で舐めてみたり。彼女は声こそ出せないようだったが、身体は素直に反応しているようだった。

 

「い、いたっ!?」

 

 そうやって彼女を愛撫していたら脹脛に鋭い痛みが走った。よくよく確認してみると最初に尻尾が巻き付いてきた時にも見た、ゴツゴツとした棘のある妙な突起だった。しかも二つある。

 サンゴが風船のように膨らんだような見た目をしている。

 

 時折ぶるりと震え、切なげに私に押し当てられるそれ。男性と性交経験のない私でも、もしやと閃くものがあった。

 

「ま、まさかそれ……私に」

 

 ゾッとした。入るわけがない。無理に決まってる。

 

 当然ヘビの交尾が基本的に二十四時間かけてじっくり行われることも、彼らの性器がなぜか二つあり独特の形をしていることも知らない私は、顔を青くさせて離れようとした。

 

 しかし、しゅるしゅると伸びてきた複数の腕に拘束され、彼女の胸と私の胸がぴたりと重なるくらい密着する。

 

「やっ、やだやだやだぁ、やめてよぉっ!!」

 

 ふるふる首を振る。

 

「死んじゃう、そんなの絶対むっ……んむぅ、んんっ!!」

 

 目から流れる涙を舌で拭われたかと思えば、もう一度深く口付けられた。これまでとは比べ物にならないほど、長い舌が喉の奥まで入り込んできて息ができない。

 

 ようやく解放された時には、私の目は自覚できるほどとろんとしており、ぐったりと彼女に身を預けるだけになっていた。

 

「ふっ、あ……あん、あっ、あああっっ!?」

 

 脱力していた身体が一気に強張る。入ってきたのだ。あの棘で覆われた陰茎が私の中に。

 

 ギチギチと小さな穴が無理やりこじ開けられ、あまりの痛みに彼女の背中に爪を立てた。何度も、何度も。

 

「ふっ、ふぁっ、あああ……く、くる、し……!」

 

 狭くてひだのある中をゆっくりと時間をかけて侵入してくる彼女も、同じように私の背中に腕を回して苦しそうにしている。

 

 やっぱり無理なんだ。どうしてこんな酷いことをするの。

 

 怒りに似た感情が爆発しそうになっていたら、彼女のものが私の奥に触(・)れ(・)た(・)。

 

「ひぃっ、きゃああああっ!?」

 

 反射的に腰を反らす。痛みに混じって痺れるような快感が全身を駆け抜けていった。

 

 膣から血液と共にさらさらとした液体が噴出し、挿入と共に私の突起を撫でていた彼女の腕を濡らした。

 

「あ、んっ、やぁっ…………き、もち……いいっ……!」

 

 羞恥心に塗れながらこっそり一人でした時とは比べ物にならない。休む間もなく頻繁に押し寄せてくるオーガズムに溺れそうになる。

 

 あの痛みはおそらく処女膜が破れた時のものだったのだ。

 

 事前に十分に慣らされていた私の膣は彼女の陰部をあっさり飲み込み、中で膨らんだそれ独特の感触によがり狂うしかない。

 

 懸念していた棘の部分は内向きになっているため中で私を傷つけることはなく、膣のヒダに絡め取られた陰茎が絶妙にこすれて堪らない。

 

「いやっ、そっちは……ひゃあああんっ!?」

 

 私は忘れていた。彼女のものが二つあることを。

 

「そんっな、きたないとこ……やっ、あ、ああっ……!」

 

 ずんっと胸が苦しくなるほどの圧迫感。前と後ろ、両方の穴に挿入された私は痛みと快感の狭間でどうにかなりそうだった。

 

「ひあああっ…………んっ、ふ、んんっ」

 

 彼女が動くたび、密着させた胸同士が擦れてさらにどうにかなりそうになる。私はもう必死に彼女にしがみついているだけだった。

 時々彼女の動きに合わせて腰を動かし、貪るような口付けを繰り返す。

 

 理性を失った獣同士の交尾。身体だけでなく何故か心まで満たされていた。

 

「あっ、あ………ああん……」

 

 のぼりつめて、のぼりつめて。彼女のものが私の中で一段と大きくなる。縋るように伸ばされた手に自分のものを重ねた。

 

 一つに。一つになりたい。彼女と混ざり合って、溶けて、一つになってしまいたい。

 

 まるで遥か昔からの願いかのようにそれは私の心にしっくりと馴染み、せり上がってくる快感の渦の中で忘れてしまわないよう、必死に手繰り寄せた。

 

「んぅっ、あ、あああっ! ひゃああ……あんっ!!」

 

 熱い塊が同時に私の奥へと放たれる。ぶるっと中で生き物のように震え、少しずつ萎んでいく。

 

「あっ、ん……」

 

 ずるずると前や後ろから彼女のものが抜けていく。敏感になっていた私の膣が最後の快感を貪り、くたりと地面に背中を預けた。

 土が冷たくて心地いい。周囲にはどちらのものかも分からない体液が飛び散っていて、独特の匂いを放っていた。

 

「あ、の…………んんむっ!」

 

 彼女に話しかけようとしたら声が掠れていて驚いた。それでも構わず続けようとしたら唇を塞がれてしまった。複数の腕が私の胸元を弄っている。

 

「まっ、まって、もしかして……まだ」

 

 かろうじて身につけていたスカートと下着を完全に脱がされる。するすると絡みついてきた彼女の長い下半身が優しく肌を撫でていき、思わず声が漏れた。

 

「ひぃっ、や、あっ…………ああんっ! まっ、もうむりぃっ!!」

 

 

 

 目を覚ますと見慣れた天井が視界に広がっていた。

 

「…………へ?」

 

 起きあがろうとしたら、筋肉痛のような痛みでダメだった。諦めて横になったまま顔だけを動かす。

 

 薄ピンク色の壁紙に、覚えのある家具たち。私の部屋だと理解するのに数秒ほどかかった。

 

 放心状態で暫くぼんやりしていると、トントンッと誰かが階段を上ってくる音が聞こえてきた。音は私の部屋の前で止まり、扉が開く。

 

「あら、起きてたの。何回声かけても起きなかったから様子を見にきたのに」

「おかあ……さん?」

「変な子ねぇ。寝るならせめて着替えなさいよ」

 

 言われて自分の格好をみると制服のままだった。靴は履いていない。

 

 汚れてポケットにしまったはずのスカーフも、型崩れしていたプリーツスカートも、肩の部分が破けてしまっていたセーラー服も、全てが元通りになっていた。

 

「あら、あなた……いつの間にか少し太ったかしら。お腹が出てる」

「えっ」

「食べ過ぎかしらね」

 

 服の上からお腹を撫でる。確かに、いつもよりぽこっとしている気がした。

 

「早く降りてきてお弁当箱出しなさい。今なら洗ってあげるから」

「わっ、そうだった。すぐ行くから待ってぇ……!」

 

 ベッドの横に置いていた通学鞄を引っ掴む。先に部屋を出ていったお母さんの背中を追いかけるように、急いで階段を駆け降りていった。

 




・私(現在)
普通の女子高生だった
・私(前世)
ある美しい巫女の実の兄。愛しい人と家族になるのが夢だった

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