※この作品はR-18です。

ヘルマフロディーテの夜明け   作:黒須 一騎

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ほとんどエッチなお話はありません。
妊婦さんの描写はほぼ事実に基づいてますが、軽い人も居ればキツイ人も居ます。

一応、最終話となりますが、ご希望が有れば続編の準備がございます。
UAを1万近く頂いておるのですが、ご感想等でリクエストが有ればアップいたします。
またX(ツイッター)は脱会しておりますので読むこともレスもお返しできません。

もしご続きを娘希望の方がいらっしゃいましたら「続編希望」の一言でも頂ければ、書こうかなと。
表題はカリですが「ヘルマフロディーテの夜明け SG(セカンドジェネレーション)」でございます。


妊娠・出産と育児

 

 

「あきれた、あなた達妊婦を舐めているわよ。

 妊婦って漫画や小説の様な優雅なもんじゃないから。

 精々受験の時は6カ月ほどが限界よ、特に多胎の綾香さんはきつい筈よ」

綾香とみるく、そして後学の為とアーニャもソフィアのもとを訪れていた。

 

母の強い勧めもあって、結局妊娠6ヶ月以下の時に受験できるように調整する為、採卵と処置の期間を考慮し計画を練り直す。

 

「いい、最初の関門はつわりね、大体8割くらいの人に発現するの、症状が重くなると妊娠悪阻といって食事がとれなかったり脱水症状が出たりするのよ。

 あまりひどい場合は点滴や静脈栄養で補なわなきゃいけないくらいなの。

 でも人によって症状は大きく異なるの、一人目は楽だったけど二人目はキツイとかホントになって見ないと予測不可能ね」

「ね、ママ。

 なんでつわりって起こるの?

 調べたんだけとあんまり情報が無くって」

 

「正確な事は解っていないのが現状ね。

 かつては低血糖やホルモンバランスの乱れが原因ではないかと考えられていたけど、最近では成長分化因子15というホルモンが急増する為に発生するというのが最新の学説ね。

 その次の関門は体重増加ね。

 特に多胎の場合、あっという間に増加するの。

 それこそ、2日で2キロ増えたとか普通に起こるわ。

 体重が増え過ぎると妊娠中毒や高血圧などの不味い関連症のリスクが大きくなるの。

 その次の関門は、胎児の体動ね」

 

「あのお腹の中で動く奴ですよね」

アーニャも興味深々だ。

 

「最初は可愛い物よ、ポコ、ポコポコ程度だもの。

 だから、この時に母性に目覚める人も多いわ、妊娠中のハッピータイムね。

 でも7カ月過ぎると凄いわよぉ。

 どったんばったん暴れてくれるわよ。

 ドスンドスン子宮を蹴られたり、食後には胃袋を蹴られる、膀胱を蹴られた日にゃ尿漏れね。

 ただ、これも人によって大きく違うの。

 大人しい子も居るしウニョウニョ動くだけの子もいるわ。

 酷い人も居れば楽な人も居るのよ」

 

「それって、胎児が元気かそうじゃないかって事?」

「違うわ、どうやら羊水量が絡んできているみたいなの。

 胎児が24時間以上ずっと大人しかったら逆にすぐ医師に見せる事よ、重篤な場合も有るから」

 

「ゴ、ゴクッ・・・他には・・?」

「下腿のむくみや頻尿は普通ね。

 こむら返りも結構あるわよ。

 お腹が大きいのに足がつったらどうしようもないわよ、パートナーに伸ばしてもらうしかないの。

 便秘も起こりやすくなるしね。

 なにせ内臓が殆ど片隅に追いやられているから」

 

「なかなかに大変そうだね、二人とも」

「アーニャ、他人事のように言ってるけど、数年したらあんたもだからね」

 

「あと、多くの人が炭水化物を好むようになったりするわ、白米やパンが美味しく感じるの、あと人気なのがマ○ドのポテトかしら、血液量が増加するから鉄分やカルシウムもしっかりとらなきゃいけないわよ。

 あ、葉酸はちゃんと飲んでる? 今から忘れずに服用してね」

「ね、受験や卒業式は制服なんだけどどうしよう」

 

「1月の受験時は大体4ヶ月くらいだから問題無いわよ。

 大学の入試や卒業式はちょっと厳しいかな、特に綾香さんは。

 見た目臨月くらいの人も居るから。

 でもあなた達は幸せよ、家事もは他の人がやってくれるし、小さな子の面倒も無いでしょ、世の母親の多くはワンオペで必死にがんばって居るのよ」

「はぁ~なんか気が重くなって来たわ私」

「一人なら楽なのかなぁ」

 

「まあ、つわりが終わったら時間のほとんどは食う寝るトイレね。

 特に多胎の綾香さんは。 ま、がんばんなさい」

結構それなりに脅された。

 

大学の共通一次が1月下旬、2次が1月末から2月上旬、2月から3月が2から3回に分けて試験が行われる。

端正の場合は、国公立大とほぼ丸かぶりで、受験生は場合によっては国公立を選ぶか端正を選ぶかの選択を強いられる。

 

卵子の採卵は2か月間、4個づつ採取される計画だ。

そこら辺はママかにお任せだが、4つも採るのは1個だとダメージを卵子が受けている場合もう一度採るには次の1か月間排卵期まで待つ必要があるからだ。

それと私とアーニャの精液、まあこれは何時でも摂れるので受精卵を作る時で構わないらしい。

 

春からアンタゴニスト法による卵胞成熟を行い、2周期にわたって採卵、二人から合計8個のーを採卵した。

綾香の卵子はアーニャの精子を卵子の周りに円周状に撒き受精させ、もう一つはみるくの精子をピエゾICSIつまり顕微授精した卵子を卵管に移植した。

複数受精卵を作るのは、受精する確率が100%では無いからである。

 

その年の9月私たちは揃って卵管に受精卵を移植、定着したかどうかは10月にならないと確定できないらしい。

 

 

「ねえ、みるく。母子手帳は何時頃貰えるの?」

「正確に言うと母子健康手帳ね。

 妊娠が確定して、医師の診断日や署名などが記されている妊娠届出書がママから出して貰えるわ。

 それを持ってマイナンバーカード、本人確認書、私たちの場合は健康保険証だけどマイナンバーカードに統合されているからその二つで市役所の健康福祉課の窓口に行けば交付されるの。

 保護者の欄はあるけど、籍を入れる前は性を鉛筆で書いておいた方が良いわ、入籍後書き直しが楽だから。

 あと、子供の名前の欄は決まってからで良いの。

 あとは貰ってからのお楽しみ」

 

「ね、一番満18歳の遅いのはアーニャだったわよね」

「うん、8月の24日だね、それが?」

「既に籍入れられるわね。籍入れましょう」

「ええ、構わないわ籍入れてから結婚式上げる人も多いし。

 写真だけでも撮りましょう」

 

「私、ドレスが着たい」

「それは私もよ」

「三人で着れば良いじゃない」

 

話には聞いていたが妊婦という物をこの時私たちは舐めていた。

 

 

「おめでとう無事二人とも妊婦よ。

 綾香さんは当然二卵性で羊膜も胎盤も二つよ。

 みるくは胎児は一人」

 

「性別は・・まだ判る訳ないか・・」

「当たりまえよ、まだ性分化していないんだから。

 あと、来月の診察で確定して妊娠届出書書いてあげるから市役所に行ってきなさい。

 それと母親教室に申し込んでおきなさい。

 配偶者も一緒だからちゃんと計画的に申し込んでね」

 

セックスに制限は無いけど、激しいのはダメとママにやんわり釘をさされた。

 

 

「夏風邪ひいても風邪薬が飲めないのが辛いわねぇ、グズッ」

「綾香が罹ったら私にも確実に移るんだから気を付けてよぉ、グズッ」

「大変だねぇ二人とも」

「最初に貰って来たのあなたでしょうがぁ!」

綾香がキレていた。

 

新型かと思ったが従来からある単なるアデノウイルスだったが長引くのが辛い。

 

俗に言われる夏風邪、これは従来の昔から有るプール熱だ。

最初にかかったのはアーニャだ、どうやら学校のプールで感染したらしい。

調べたらアデノウィルスだったが、妊婦は抵抗性が落ちているので要注意だ。

彼女の症状は軽かったが、綾香はのどの痛みと下痢、みるくは食欲不振と倦怠感が主訴。

ママに見て貰ったが調べてもそもそもそのウイルスに対する薬も無いし妊婦だから有っても飲めない。

 

「熱が出るようなら連絡を頂戴」

 

「で、みるくこのサプリは何?」

「葉酸のタブレットよ。

 妊娠初期には不足しがちだし、食品では足りないの。

 推奨摂取量は400μg、この400μgをクリアするためには、ブロッコリーなら8房、ほうれん草なら7株、グリーンアスパラなら12本なのよ、

 とてもでは無いけどそんなに食べられないわよ」

 

「アスパラって言ったら昔を思い出すね。。

 アスパラは好きだけど、おしっこがあんなに不味くなるとは思わなかったわ」

「懐かしい話ね、愛の所はまだ出禁なの?」

「出禁喰らったわけじゃ無いけど、出しずらいじゃん、顔」

 

「そういや、水木会はどう?」

「引継ぎも済んだし特に大きな動きは無いわね。

 最近はインシデントも起きてないし」

「なんか私たちの時代が一番酷かったのかな」

「酷いというより溜まってたものが出て来たって感じよね・・あふっ・・わたしちょっとお昼寝してくるわ。

 ご飯の1時間前には起こして」

綾香は寝室へと向かった。

 

アーニャは「さて、続きやろっかな」そう言って、居間の80インチモニターの前に女の子座りしてゲーム機のスイッチを入れた。

雨が降ってるためか土曜日だというのに誰も来ない静かな週末だった。

 

翌週、三人は市役所の窓口へと向かった。

 

婚姻届けは既に記載してある。

法改正により、家庭裁判所の複数婚承認書も手元にあるし、マイナンバーカードも持ってきている。

婚姻届けは普通の男女の婚姻届けとは異なり、性別を書く所や世帯主となる者の氏名、配偶者1む、配偶者2と言うように並んでいる。

 

「婚姻届けの提出です」

「はい、おめ・・・でとうございます。

 少々お待ちください」

窓口の若い職員は婚姻届けを持って後ろの方に居る少し年配の男性へと行った。

暫くして戻ってきて「では、御三方のマイナンバーカードをお借りします」

と言われ、しばらくしたら戸籍と謄本が出来てきた。

昔の処理に比べれば格段に速くなったらしい。

 

 

私達は学院への苗字の変更、戸籍の変更等結構な書類を書き提出した。

一般校にありがちな「他の生徒の動揺を防ぐため内緒にする」とか「学校では旧姓で」などと言う事は無い。

そこそこ入籍により姓が変わる事は端正では珍しくないのだ。

特別な事情が無い限り、ちゃんと校内の電子掲示板に掲載されるのだから隠しようがない。

なので「藤原さん」なんて呼ばれたら誰が呼ばれているのか判らない。

よって自然に名で呼ばれることが増えてきている。

 

「ねーねー、みるくさんも綾香さんとできちゃった婚?」

「できちゃった婚じゃ無いわね、計画的よ。

 私の子の父親はアーニャよ。

 入籍は元々18になったら入れるつもりだったのよ。

 子供は若いうちに産んでおこうと思って」

 

「じゃ、高校卒業で家庭に入るの?」

別の娘が聞いてきた。

 

「違うわ、大学受験はするわよ。

 ただ、大学入学と同時に2年間休学して出産と子育てに勤しむわ。

 まあ、ウチの場合アーニャも居るから子育てには苦労しないしね」

 

そうなのだ、届出では高園みるくが藤原みるくに、アーニャ・ガリツカヤは藤原アーニャとなった。

男性と女性、珍しいところで両性と女性のカップルは多いが、女性と両性2名の多重婚は国内でも少ない。

まあ、世の中では男性と複数女性の多重婚は一気に増えた。

因みに世帯主は綾香で、みるくとアーニャは配偶者となっている。

 

もちろん、学院内では初めてのケースで話題は暫く続くだろう。

後ろめたい事は何も無いので、三人は平然としてる。

しかし、セックスフレンドを始め深い関係の娘たちの反応は様々だ。

真理や凜の様にその中に混ざろうと画策して居る者も居れば「一人で二人も確保するのはズルイ」と嘆く者も居る。

もちろんほとんどの娘は祝福してくれたし興味津々だ。

 

「ねぇねぇ、セックスって妊婦でも普通にできるの?」

とか「何処まで激しいのは大丈夫?」

いや、いくら高校生でも生々し過ぎるだろう、ここは学校だ。

ああ、女子校では普通なのか、女子校の弊害かもしれない。

 

 

綾香が市から送られてきた固定資産税振替通知書を見ていた。

「ま、予想はしていたけど結構な額ね」

「なんの通知?」

「固定資産税の振替通知よ」

 

固定資産税」と合わせて「都市計画税」も課税されるのだが、本宅の土地が65万、家屋が120万、一応居住用家屋なので、本邸は安い。

別邸が土地が12万、家屋が98万、家屋の固定資産税と言うのは広さや豪華さには関係なく、立てた時の金額で決まる。

それの60%が課税対象金額となる。

それに、車庫と従業員用の居住棟と合わせて、300万ほどの課税金額だ。

毎年小型車が買える価格。

 

「ビルなんかは普通数百万とか数千万は普通よ」

「だから、行政も対応はいいわよ。

 他の税金も大きいし、会社含めて数億は直接的に市の収入になっているわ。

 県と国もしかりね」

 

 

みるく達の話題に皆飽きてきた頃、綾香のお腹が大きくなってきた。

「二人分だから判っちゃいたけど、もう少ししたら制服は無理ね」

「みるくはそんなに目立たないね」

「ええ、脱いでも今は殆ど判らないわ」

既に季節は秋から冬へと変わろうとし、二人は妊娠10週を迎えていた。

 

「う、なんかご飯の炊いた匂いが堪えるわ」

そう言って綾香はトイレへと走った。

「みるくは大丈夫なの?」

 

「私はご飯の炊いた匂いは大したこと無いわね。

 逆に魚は苦手になったかな、特に煮魚の匂いは堪えるわ。

 でもずっと弱い吐き気は続いているのよ」

 

妊娠10週は胎児がトカゲみたいな姿から手足が伸び、人の形に近くなっていく時期だ。

先日撮った4Dエコーにもちゃんと赤ちゃんの姿で写っている。

綾香なんかスマホの待ち受けにしているくらいだ。

他人にはドン引きの映像ではあるが。

 

タイミングが良いと家で持っている3Dエコーでも動いている姿は見られる。

そして二人ともよく眠る。

とにかく眠いらしい。

安定期は大抵4~5カ月以降だが今月の検診で衝撃的な事を言われた。

 

「安定期? 単児の場合は4から5カ月に入って問題無ければ安定期に入ったと言えるけど、双子なんかの多胎妊娠には安定期などと言うものは存在しないわよ。

 だから旅行や遠出はNGね」

にっこり笑うママが綾香にとって地獄の閻魔に見えていた事だろう。

 

安定期に入ったら南国での旅行を計画していた綾香は泣く泣く全てキャンセルした。

「まあ、綾香。わたしも付き合うから」

 

 

翌週には学校に制定のない制服が届いた。

「なにこれ?」

アーニャが不思議そうに届いた箱を開けた。

「制服?」

 

「あー、やっと届いたんだ」

「綾香、コレ新しい制服?」

「広げて御覧なさい」

「ワンピース型の・・・制服?

 ああ、マタニティか!」

 

「そう、今まで高校で妊娠した子は市販のマタニティだったじゃない。

 だから、自費になるけど選択肢としてマタニティ制服を作ったの。

 ちゃんと学院公認よ」

アーニャの手には、色遣いや裾からパニエが裾から出る所は似ているが、腰のリボンは安全を考慮して小さなものが着けられている。

ボタンは前開きだ。

 

「あら、届いたのね」

「みるく、私一人じゃ寂しいから一緒に着てよ」

「はいはい。

 解ってるわ、私は未だ目立たないけどね。

 はい、ルイボスティーよ」

「わたしも着たい!」

どうやら、三人出来る事になるらしい。

 

翌週、学校にマタニティを着ていくとみんなにスマホ片手に「一緒に写真撮らせて!」と寄ってたかって撮影会となった。

ただ、体育の時間となり綾香とみるくはもちろん見学だが、アーニャは普通に体操着に着替えてバスケットに参加している。

慌てたのは教師だ。

てっきり三人とも妊婦だと誤解し、必死になってアーニャを止めている、いや懇願している。

 

「おねがいっ! 見学してて。

 何かあったら、私の責任になるから。

 それに赤ちゃんにも激しい運動は良くないの」

「私、妊娠していないよ?」

 

「二人じゃ寂しいからって、お付き合いで着てるんだ。

 結構楽で快適だねマタニティって」

「・・・へっ?」

教師は魂が抜けたようにグラウンドにペタリと座り込んだ。

そんな事をしているから堕女神なんて最近言われるのよぉ、アーニャ。

 

 

綾香のつわりは大分落ち着いてきた。

「綾香、なんか1週間ごとに大きくなっていない?」

「そうなのよ、ヤバいから先週から妊娠線の予防クリーム塗り始めたわ。

 倍の速度で膨らんで居るものぉ、多分受験の日は臨月に近くなるかも」

「うわー、ね、胎動は?」

 

「うーん、腸のガスが動いているのか子供が動いているのか良く解らないわ。

 みるくは?」

「うん、全然わかんない。

 エコーじゃ動いているんだけどね」

 

そして正月体重計にのった綾香は難しい顔をしていた。

「そんなに食べてないのに、なぜ増えるのぉ!」

「綾香気にしないの、増えすぎも良く無いけど双子は増えやすいって聞いていたじゃない」

「そうなんだけど、現実的にショックよ。

 これちゃんと戻るのかしら」

 

「そんなあなたに、はい磯部巻き」

反射的にそれを口にする綾香。

もぐもぐと食べだした。

 

「アーニャ、餌付けしないの。

 やっとつわりが収まって食べられるようになって来たから、体重が爆増するわよ」

「はっ?! そのせいか!」

どうやら、今頃気づいたらしい。

 

1次2次の共通は端正で行われるので問題は無かった。

綾香は結構お腹が目立ってきて、いかにも妊婦だ。

アーニャが好んで撫でたがる。

安全の為、私かアーニャが付いて入浴するのだがしっかりスローセックスを楽しんでいるらしい。

私の方は「性欲どこ行った?」状態ですっごく楽だ。

 

どうでも良いけど、次私入るんだけどお湯替えてよ。

お腹の毛に引っかかるのよ精液。

この腹毛ずっと生えたままなのかしら、嫌だわ。

それとお臍を中心にうっすらと正中線が出て来た。

 

妊婦は人によっては、お腹に結構長い毛がびっしりと生えてくるのだ。

児を守るための母体の名残とは言え、自分で見ても結構引く。

なのに綾香は殆ど生えていない、解せぬ。

 

共通試験も終わり、後は端正大の試験だけだ。

綾香は最近立ち上がる時「よっこいせっ」と無意識に言うようになって来た。

本人に聞いてみたらマジで無意識らしい。

みるくはマタニティを着ると殆ど目立っていない、流石に脱ぐとしっかり膨らんで居るのが判る。

どうやら骨盤が大きいのでまだ自然分娩か帝王切開化を迷っているらしい。

 

「あ、動いたっ!」

綾香の胎動が始まった。

ポコポコと感じるお腹を擦り幸せそうに蕩けている。

みるくも偶に感じるらしい。

この時は胎動があんなに激しい物とは解っていなかった。

まあ、幸せな時間が過ごせただけ良しとしよう。

 

「最近おしっこが近いのよねぇ。

 でもその割には量も出ないのよ」

「まあ、内臓が体の隅に押されてるからね」

「そう言うみるくは?」

「私はまだ全然余裕、ママが骨盤広いからだろうって」

「その大きなお尻が今だけは羨ましいわ」

 

「でも、ポコポコやトントンは可愛いけど時たまギュルンッて動かない?」

「未だそれは無いわね、でも日々ポコポコが時たまボコッて動く時は有るわ」

 

 

「お願いだから二人とも大人しくしててよ。

 これから受験なんだから」

既に綾香のお腹の中ではウニョウニョと盛んに動く様になっていた。

綾香はマタニティのお腹を押さえながら言い聞かせる様に言っていた。

 

そして、端正の試験も無事終わり、みるくは医学部に合格、綾香も経済学部に合格した。

アーニャはと言うと、結局医学部に入った。

自分の様な子供たちを助けたいというのが大きかったらしい。

あと、みるくの父に脂肪細胞の移植について詳しく聞いていたものだから、それに興味を持ったらしい。

 

大学への休学届も終わり、これからは全部子供の為の生活となる。

流石にみるくのお腹も大きくなってきていて、普段着る服もゆったりとしたマタニティだ。

淡いブルーの毛糸の腹巻がお気に入りらしい。

綾香はと言うと街へ出ると臨月と間違われるらしい。

もちろん、葵と陽菜がしっかりガードして居るのだが、運動がてらスーパーの買い物はストレス解消だ。

それに体を動かしたくて仕方がないらしい。

 

 

そんなこんなで、桜も散り梅雨前8か月目に入った。

 

「うおぉぉ・・・・・やめてぇ・・蹴るのやめてぇ・・・肋骨痛いよぉぉぉ」

綾香がソファでうめいている。

 

「ネットで調べたら、実際に肋骨骨折の事例があるみたいだねぇ」

アーニャがしれッと言う。

 

 

隣ではみるくが綾香のお腹を擦っていた。

「随分今日は動くのね、この子達」

 

「ホントよぉ・・人の腹ん中で何やってるのよぉ・・・・」

「胎児の大切な運動だよ、ソフィアママから聞いたじゃん。

 しっかし、妊娠線予防クリームも殆ど役に立たなかったみたいだねぇ」

急激に臨月を超えるお腹になった綾香のお腹はまるでスイカの柄のように妊娠線が走っている。

 

 

 

「はあ・・はぁ・・ゔっ!」

 ち・・・恥骨が痛い・・ううっ・・・蹴られた?」

 あ・・・破水!?」

みるくは慌てて綾香のマタニティショーツの股間からオリモノシートを外し確認している。

匂いを嗅ぎそして、ギュッと絞って掌に絞り眺めて舐めた。

 

「破水じゃ無いわね、尿漏れね。

 多分恥骨蹴られたか頭突きで膀胱も押されたんでしょうね」

「なーんだ、焦ったよぉ」

アーニャもソファから立ち上がっている。

 

「ところでアーニャ、学校は良いの?」

「ああ、大丈夫だよ、単位先取りで来年の分も今取ってるところ」

 

「ううん・・うぴっ!」今度はみるくの変な声が出た。

「なに、今度はみるくなの?」

「・・大丈夫・・なんか中でギュルンギュルンて回ってる感じがするわ・・」

 

この頃はまだ二人とも我慢できた。

そう、この頃はだ。

 

「おぴょっ! でっ! いででででっ!」

綾香が大きなお腹を押さえて悶えた。

お腹を捲ってみるとダイナミックにお腹が動いている。

ボッコンボッコンとダイナミックに形を変えていた。

まるでお腹の中にエイリアンが居るみたいに動きまくる。

 

 

「ぐうっ・・・や、やめてぇ・・・膀胱を乱れ打ちしないでぇ…地団駄踏まないでぇ・・ぐへっ・・漏れるうぅぅ」

綾香に泣きが入る。

 

 

検診でみるくは逆子で有る事を告げられた。

「逆子ね、もう少し様子を見ましょう」検診ではママから伝えられた。

胃は頭で圧迫され胃痛迄あるのに腹は減る、でも量は食べられない。

食べた途端何故か胃袋に打撃を喰らい戻しそうになる。

 

綾香に至っては、既に諦めに入っており、大人用おむつを絶賛愛用中だ。

「恰好なんて気にしていないわ、それどころじゃないのが現実なのよ」

「お風呂の後なんか凄いわよねぇ」

「あと、寝入りばなにお腹の中で運動を始めるのは勘弁して欲しいわ」

 

 

みるくは「眠い!!だるい!!乳が痛い!!」と機嫌が悪いし、綾香は「あんた等子宮の中で何やってるの! 取っ組み合いでもしとるんかい・痛い痛い痛い!! ゲ八ッ! ああ、漏れたわ尿が・・」と賑やかだ。

 

みるくも流石に胎動が大きくなってきており、活発に動く時はダイナミックにお腹の形が変化する。

しかもウニョウニョ動くのだ。

「おうぅぅぅ・・・ででてっ!」

 

綾香は38週前に帝王切開が確定している。

1人は逆子だし、多胎の場合は帝王切開となる事が多い。

 

結局、みるくの逆子は治らず仲良く帝王切開となった。

先に綾香が手術室に入った、みるくの父、母そして数名の看護師と、広いオペ室は結構満員だ。

背中に脊椎麻酔の針を入れられる。

全身麻酔は胎児にも影響が有る為使えない。

ただ、生まれて来た子の顔をすぐに見られるのがメリットだ。

 

「第一子出ます」

「2010g男児です、時刻は10時22分」

「つづいて第二子出ます」

「2000g女児です。時刻は10時25分」

 

「胎盤取り出しますよぉ」

大きな膿盆にベチャリと乗せられる。

見せられたがいらんて、こんなもの。

えっ? 昔は食べた? 食べないわよ。

 

オペ室に元気な双子の泣き声が響く。

 

「はい、元気な子よ。

 抱いてあげて」

二人の我が子の顔を見た途端綾香の目から涙がどっと溢れた。

「ありがとう・・生まれて来てくれて・・」

 

そして明日はみるくの番だ。

「自然分娩が良かったけど、仕方ないわね」

「みるくも覚悟だけはしときなさいね。

 経腟分娩は産むとき大変だけど、産後は比較的に楽なのよ。

 でも、帝王切開は産んだ後がキツイの。

 だからママも二人目は頑張って経腟分娩にしたのよ」

 

 

毎日アーニャが来てくれるが、しんどくて動けない。

翌日に膀胱のカテーテルは外された綾香だが唸りながらトイレに行く姿はとても他人には見せられない。

みるくも明日はカテーテル抜去だ。

つまり歩いてトイレに行かねばならない。

明日は我が身だ。

 

これが結構しんどい。

ベットの背中を起し、体をうなりながら90度横向きにする。

ベットの柵に掴まって体を起こし、脚を下ろす。

そして点滴スタンドに掴まりながらトイレへとヨタヨタと歩いて行くのだ。

幸い特別室なので歩いて10歩なのだがこれがとてつもなく遠く感じる。

 

帝王切開と聞くと楽なように思われることが多いが、とんでもない。

腹の中にトータル5kg以上入って居たモノが無くなり、巨大になってた子宮が数日で一気に収縮するのだ。

その痛みと来たら「分娩の方が楽だったんじゃね?」と言えるほどしんどい。

うーうー、2日程唸り声を上げる羽目になった。

 

「ママ、これ麻酔効いてるの?」

「効いてる筈よ、ただ子宮の収縮痛にはあまり効かないわね」

それを聞いた二人はどんよりとする。

聞いていたアーニャは言った。

「私は通常分娩にしようっと」

 

 

腹も切って40時間しか経っていない。

当然痛い、しかも子宮が縮んで居るのでこれがまたすごく痛い。

しかも、看護師が定期的に来て悪露の排出の為、結構な力で下腹部を押されるのだ。

もちろんめちゃくちゃ痛い。

尿が漏れるなんて気にして居られないくらい痛い。

 

「切った所の痛みは2.3日で楽になるけど、まあ、お腹切ってるから腹筋動かすと数日は痛いわね。

 今日明日は背中に脊椎麻酔に針が入ったままで、鎮痛剤と麻酔剤が入れてあるからあまり辛いようならボタンを押しなさい。明日には外すけどね」

「・・なんども使って良いの?」

「何度押しても良いわよ、でも30分に1回しか薬は出ないから連打しても無駄だけど」

 

お腹を切った事が有る人は知っているだろうが、腹筋は体を動かすにも重要な筋肉で、この痛みが有ると碌に体が動かせない。

そして何が辛いかって、鼻をかんだり、咳払いの場合は実は腹筋が仕事をしているのを痛感させられる。

 

「はい、授乳の時間ですよ」

綾香の双子とみるくの娘をコットに乗せて看護師さんが来てくれた。

本当に助かる。

綾香の第一子の長男は、時間が掛かるけどしっかりと飲む。

お腹いっぱいに為ったらアーニャに渡してげっぷをさせる。

 

第二子の長女は凄い勢いで飲む、結構痛いくらい吸い付かれているらしい。

みるくの娘の次女は、乳首を数回はガンガン吸うものの、後は吹き出る母乳を口に溜めては飲むというものぐさ娘だ。

まだ、シワシワで手足も細いが、あっという間にプクプクになっていくらしい。

 

「二人の授乳クッション届いたよ」

「ああ助かるわ、二人抱えての授乳はきついのよ」

アーニャが待ち遠しい物を持って来た。

 

「これが綾香の、で、こっちがみるくのだね」

体をぐるりと270度にわたって幅広くぐるりと回って居るのが綾香の特注の授乳クッションだ。

何故なら、胡坐をかいてこのクッションを着け、両側から2児の頭を近づける様に抱えるためだ。

 

「しかし、二人とも凄いよねぇ、おっぱいと言うより授乳器官と言う事が良く解るよ」

胸は二人とも1サイズ大きくなり、しかも至る所に青い血管が見える。

触ってみても硬い。

綾香のおっぱいは平均サイズだが、出は良いらしい。

でもそのせいか子供たちが8割ほど飲むとお腹いっぱいになるようで長男は「ポロッ」と乳首を離し、長女は「プイッ」と吐き出す。

 

結局残った母乳は搾乳機で絞って他の母乳の出が悪いお子さんの糧となったりする。

「ね、二人とも母乳余って居るのなら私飲んでみたいんだけど」

アーニャが興味津々で言い出した。

「いいけど、そんなに美味しく無いかもよ」

わざわざ下の自販機でブラックコーヒーまで勝手用意してきた。

 

「先ずは一口其のままで。

 んくっ・・・」

そしておもむろにコーヒーにぶち込んだ。

「・・・・コメントは控えよう、うん」

あまり美味しくないらしい。

 

みるくの娘はと言うと、お腹いっぱいになると乳首を舐めて遊んでいる。

「もう、お腹いっぱいなの? 遊んでるの?」

「どうしたのみるく」

「この娘お腹いっぱいになると乳首を舐めだすのよぉ、こんなの聞いたことも無いわ」

 

「血は争えないわね、みるくあなたもそうだったのよ」

ママが病室に入ってきた。

「えー? わたしこんな事してたの?」

 

「あなたも良く舐めてたわよ。

 もう少し大きくなってからだけどね。

 お腹いっぱいになると普通は乳首を離したり嫌がって首を回すんだけど、レロッレロッて舐めるのよねえ。

 ホントそっくりだわ」

「ごめん記憶にないわ」

 

 

子供たちの名前は産む前から幾つかのパターンで決まっていた。

三人で寄ってたかってワイワイと決めた。

長男が優理と書いてユーリと読み、長女が麗奈と書いてレイナと読む。

二人とも完全な男の子と女の子だ。

みるくの娘は、みごとに両性、来夢と名付けられた。

 

長男はクオーターなので日本人の子とそんなに変わらない。

長女はダブル、いわゆるハーフなので将来は美人になるだろう。

みるくの娘である来夢はクオーターでも日本人の血は1/4なので、どちらかと言うとヨーロッパ系の顔立ちだ。

三人の子供たちも日々体重が増え、ちゃんと赤ちゃんの姿になってきている。

 

長男は黒髪、長女は明るい茶、次女はホワイトブロンドだ。

まあ、成長すると紙の色が変化していくことも多いので気にしない事にする。

眼は長男と長女がが黒っぽいグレー、次女はアーニャの遺伝子を継いだのかちょっとグリーンが混じったプルーだ。

 

目を開けるがまだほとんど見えていないという。

視力は0.02程しか無く全部ぼやけているとの事。

これから1歳で0.2、1.0まで視力が出るのは6歳ころくらいまでかかるという。

「ド近眼なのね」

 

「20~30センチくらいの距離なら少しは見えるかも、授乳中目を開けてたら試してごらんなさい。

 あと、良く話しかけてあげる事が大切よ。

 夜は出来るだけ暗くしてあげて、昼は短時間の外気浴ね。

 あまり強い灯りの環境が続くと将来近視になるというデータも有るの。

 それより来週には退院よ、準備しておいてね」

 

「うう、まだ居たいかも」

「そうは言うけどね、今この市は結構ベビーブームまでではないけど、次の帝王切開の妊婦さんの予定が入ってるのよ。

 だからこの特別室も空けておかないといつ緊急帝王切開が入るか判らないの、理解して」

 

通常帝王切開の出産の場合、体調に問題が無ければ7日目には退院となる。

綾香は長男を、アーニャが長女を、そしてみるくが次女を抱っこしての退院だ。

 

「初産なのに次女とはこれ如何に」

「まあ、法律上はそうなるんだから、母子手帳には第一子で記載があるでしょ」

「二人とも結局卒業式は出られなかったわね」

「胎動でそれどころじゃ無かったわ。

 式の最中に救急車で退場なんて迷惑過ぎよ」

 

 

新生児は本当に大変だ。

優理は細い声で「ふぎゃ・・ふぎゃ・・あああん」と泣く。

麗奈は結構大きな声で「ほぎゃあ、ほぎゃあ」と力強い。

来夢がこれまた特徴的で「ぎゃーーーっ、ふぎゃーーー」とのっけから大音量だ。

 

だから、1週間もすると三人だけでなく、葵や陽菜も聞き分けるようになって来た。

夜は葵か陽菜がサポートの為、同じ部屋で眠る。

広いと思っていた寝室は追加ベットとベビーベット、で一杯だ。

 

授乳とオムツの世話も単純に三倍だ。

もちろん、ミルクも併用し母親の睡眠はできるだけ確保しているが、そうすると胸が張ってしょうがない。

問題はオムツだ、排便をしてもどの子したのか判ららない。

だから嗅ぎに行くしかない。

 

「炊き立てのご飯の匂いって本当なんだね。

 うふっ、可愛いチンチン」

アーニャは来夢のオムツを取り換えながら笑顔だ。

 

そう、新生児のウンチは炊き立てのご飯の香りがするのだ。

最初は何故寝室でご飯の匂いがするのだろうと思ったが、子供と生活して初めて知った。

まあ、この香りは新生児だけで離乳食や普通に食べる様になるとウンチからウンコにクラスチェンジするのだが。

 

家事や炊事が殆ど無い分、世の母親より遥かに睡眠時間は取れている。

それでも暇さえあれば眠りたいという睡眠欲求は1か月続いた。

 

「ああ、笑ったわ・・ああ‥可愛すぎるぅ」

「不思議ねこの娘も笑ってるわ」

新生児微笑と言う新生児特有の微笑は反射的な要素が多いとされている。

レム睡眠時に起こりやすく、ウトウトしている時や眠って2.30分してニッと微笑むのだ。

 

人の顔や声などの外的な刺激に反応してほほえむ「社会的微笑」が見られるようになるのは、生後2か月を過ぎてからだ。

最初の1か月は怒涛の様に過ぎた。

まさにオシメ、授乳、睡眠のサイクルの繰り返しが大変だ。

起きて居る間は3人の母親が優しく話しかけたり、葵と陽菜も話しかける。

 

生後2カ月目に入り子供たちは「あー」とか「うー」とか声を発するようになって来た。

クーイングと呼ばれる発声だが、起きて機嫌が良い時は良く声を出すようだ。

麗奈はよくそんな言葉を発するようになったが、優理は「ん・・・あう・・」と言葉少なめだ。

心配した綾香がソフィアママに相談するほどだ。

 

「逆に早いくらいよ、普通は2か月から3ヵ月になってからクーイングは始まるんだから。

 その子の性格だと思った方が良いわ」

来夢はというと「あーーっ!!  いういーーーっ!」と声を上げる為、何事かと驚いてベビーベットに走る始末だ。

「この娘、遊んでいるわよね絶対・・」

 

おっぱいも来夢は良く飲む。

みるくのだけでは足りず、優理と麗奈が飲み残した綾香の母乳を綺麗に飲み干す。

「いやー、来夢が居て助かるわ、搾乳機で絞らなくても良いもの」

時折みるくが優理や麗奈に母乳を与え、綾香が来夢に与える時もある。

こういう時に二人授乳が出来る者が居ると非常に楽だ。

 

三人とも首が座り、体もダイナミックに動かす様になってきた。

既に6カ月検診だ。

寝がえりの期間はあっという間に過ぎ、今はずり這いとなってきている。

しかし、これが侮れない。

気が付くといろんなところに移動しているのだ。

優理はなぜかうつ伏せではなく、背面のまま足を付けずり這いを始めるわ、麗奈は途中で力尽き眠って居たり、来夢はダイナミックにゴロゴロと横に転がって移動していく。

 

既に公園デビューは済ませているが、まだ長時間は難しく今は敷地内の道路をベビーカーで歩く自然浴が主だ。

すでに、話しかけたりすると理解しているようで「ん」とか「あー」とか返すようになってきている。

広い敷地はゆったりとベビーカーでお散歩するのは気持ちがいい。

一番騒がしいのは来夢で「あーうー」「ふぶっパッ」と何を言っているのか判らないがよくしゃべっている。

似たような遺伝子を持っていても性格は全く違う。

 

先日、離乳食を作っていてアーニャが人参のペーストだと思い込んで混ぜてしまったのが干し柿のジュレ。

一口食べた優理はニマァと笑ってすぐにお代わりし、麗奈はがっついて食べている。

来夢に至っては綾香の持っていたスプーンをがっしりと握りしめ強い力で引き寄せる始末だ。

あまりに食いつきが良いので一口食べて見た。

 

「? 甘い・・・なんで?」

作ったアーニャ自身が不思議そうにしている。

冷蔵庫を確認したみるくが、干し柿ジュレが減って居る事に気づいた。

「アーニャ、これ人参じゃ無くて干し柿よぉ、道理で食いつきが良い訳だわ」

ジュレにハチミツが含まれていなかったのが幸いだが、それ以来、作った離乳食には日付だけでなく内容も書かれるようになった。

 

 

三人ともヨーグルトは大好きだ。

特にチョコソースを少し掛けたものを好むのが麗奈と来夢、チョコの代わりにこしあんを入れたものが優理の大好物だ。

シフォンケーキも三人の好物だ。

まだ量は食べさせらせないが、小皿に半分程度のケーキヨーグルトを少量掛けたものが大好評。

離乳食の後だというのに、ペロリと平らげる。

 

ハイハイする時期は大変だ。

優理はだっまてオムツが交換されるのを待っているが、麗奈は身軽になったとたんハイハイを始めてしまう。

来夢に至っては、お尻にウンチを付けたまま脱走する。

 

「来夢まって。ちょっと待ってよぉ」

綾香が慌てて追いかけるが、このハイハイが素早い。

そして絨毯にペタリとお座りする。

「いやぁぁ! やめてぇぇぇ!」

結局、絨毯は撤去代わりに簡単に交換できるタイルカーペットに交換された。

 

まあ、一通りの母親としての経験と失敗を経験し、子供たちはスクスクと育っていく。

1歳の誕生日にはシフォンケーキで祝う。

「あ、ローソクは食べられないのよ来夢」

「だう?(ダメ?)」

 

「ヨーグルトだけ弾いて食べないのよ優理」

「いやない」

「ああ、そんなに口に一気に入れないでよぉ麗奈」

「ううーっ!」

とにかく振り回されっぱなしだ。

 

「こうして眠ってると天使よねぇ」

麗奈は優理か来夢にくっついて眠ることが多い。

くっつかれた優理は眉間に皺を寄せ迷惑そうにしているが、来夢に至っっては手を握られても意に介せず眠っている。

 

「ねー優理ママのお腹の中に居た頃を覚えている?」

「うーん、暖かいけど狭くって時折横からグイって来るから押し返してた」

「麗奈は?」

「狭いから押し返したり殴ってた。

 あと、足の下がボヨンボヨンするから蹴って遊んでた」

お腹の中で何をしていたか理解した綾香だった。

 

「来夢ちゃんは覚えてるの?」

「んあ? 聞こえて来る音が楽しくって踊ってた」

そうなのだ、ヘッドホンやイヤホンではなにも起こらないがテレビやオーディオを掛けると胎動が激しくなるのは踊ってたのか。

 

子育ては色々な事が起こる。

子供と一緒にお風呂に入っているとお湯を口にしたり「ままー、ちーちでたー」湯船の中では効きたくない言葉だ。

来夢に至っては「んう・・」ときばったと思ったら水面にプカリと茶色い塊が浮かんできてパニックになる。

 

寝ている時だって大変だ。

優理は麗奈や来夢が泣き喚いていると、眉間に皺をよせながら迷惑そうにしている。

麗奈は時折夜泣きをする、どうやら怖い夢でも見ているのか。

来夢に至っては夜中に突然起き上がり、白目で宙を見つめ「へへっ・・ふふっ・・へっへっへっ」と笑うのだ。

「怖いから止めてよぉ来夢」

 

 

 

 

そんな子たちももうすぐ2歳。

公園に連れて行くと一気に3方向にに走り出す。

ワンオペなんて絶対に不可能だ。

世の双子の親や稀に見る三つ子はどうしているかというと、ペットの様にリードが付いたリュックを背負わせたり、ジジババが付いていたりと大変だ。

その点、我が家は少なくとも三人の大人が付いている。

 

寝室がある棟の居間には80インチのモニターが置いてある。

お気に入りの子供番組は仲良く三人で見ている。

でもモニターから1m程の所で見ているのだ。

視力が2歳児は0.6なので仕方ないが、あまり近いと目には良くない。

 

「三人とも少し離れなさい」

そういうと「はーい」と素直に離れるが、モニターから遠ざかるのではなく、3人が横に広がった。

″違う違う、そうじゃない″とぼやく綾香。

それを見て笑うアーニャ、ヤレヤレといった表情の綾香、そしてそれを微笑ましく視るみるくが居た。

 

 

 

それから早二年、子供たちは4歳となり、幼稚園や端正幼等部への入園入学を控えていた。

 

「ねえ、どうしてお兄ちゃんだけ幼稚園なの?」

疑問を投げつけて来たのは麗奈だ。

「それはね男の子だからよ。

 端正は女の子か両性の娘しか入れないの」

「でも、それだったら皆同じ幼稚園でも良くない?」

″来夢、そこはツッコんじゃダメ″

 

綾香が助け舟を出してくれた。

「本当は皆同じ所へ入れたかったの。

 でも端正は基本女子校なのよ。

 それとも周りが女の子だらけの所に入りたい? 優理」

 

優理はプルプルと首を振る。

この家で唯一の男性である優理はどちらかというと、男の子と遊びたい盛りだ。

気に入ったテレビ番組もロボット物や変身ヒーローものへと変わってきている。

もちろん、来夢も時折一緒に見ているが、どちらかというと変身美少女戦士の方がお気に入りだ。

麗奈は来夢と一緒に女の子向けのアニメを見て居ることが多くなってきた。

 

 

 

三人で同じ部屋で遊んでいることも多くなってきた。

「ではお父さん、立ち会ってくださいね」

「はい、宜しくお願いします」

最初はままごとでもしているのだろうと思っていた。

 

『もうすぐですよぉ、頑張ってください』

『ううっ! ううん!』

『ハイもっと力んで!』

 

「ちょっと、子供たち何のおままごと?

 力んでとか言ってるけど」

「綾香気にしすぎだよ、多分ヒーローが助けるシーンとかじゃないかな」

「それより、手を動かして、今週中に幼稚園のお道具入れとか着替え入れとか色々造らなきゃいけないんだから」

 

優理が入る幼稚園は第三セクターが運営する幼稚園だ。

そのため、家庭で袋類や物入を作る必要が出て来る。

「でもなんで、手作りなの? 市販品でも結構あると思うんだけど」

「それはアーニャ、好き勝手にさせたらキャラクター物やブランド物を持たせるおバカ親が居るからよ。

 それが子供の社会に嫉妬や差別を生むからよ」

 

「それは解るけど、市販品でもシンプルなの売ってるよね。

 なんで手作りが推奨なのかが判らないわ」

「禁止とは言って無いけど、飾りのないモノ、プリント柄やキャラクターが付いてない物にのよ。

 探すと判るけど殆どそんなの売って無いわ。

 園の仕様を見ると市販品を否定するような仕様よね」

 

「わたし、ちょっと子供たち見て来るわ」

綾香が子供たちを見に隣の部屋へと向かった。

まあ、裁縫に関してはアーニャとみるくがメインで、綾香はほぼ戦力外である。

端正は幼等部でも服や上履きの指定は有っても、バックや袋の指定は一切ない。

推奨の○○入れ袋とか持てる程度のバックとかだけである。

 

 

『ちょっとぉ、二人とも来てくれる』

みるくとアーニャが行くと、其処にはひじ掛けの付いた椅子に、両足を広げ股を開く妊婦役の麗奈とその手を握る優理、そして麗奈の股の間には来夢がマスクをして覗きこんでおり、丁度クマさんのぬいぐるみを取上げた所だった。

 

「うふふ、何処で覚えたのかしら」

「あははは、麗奈がパンツ履いているのがせめてもの救いだね」

「あ、あんたらぁ、生々しすぎるわっ!」

 

 

優理の送り迎えは葵や陽菜がやってくれる。

ときおり三人の内一人が送り迎えすると自動的に葵か陽菜が付いていくため、人員的に無駄が生じるからだ。

まあ、偶には親の顔を園に見せる為にも三人の内一人行くことも有るが、綾香の場合は例によってトヨダのショーファーカーとなる。

みるくは便利だという理由で軽の箱バンなのだが、アーニャがたまたま空いていたヒューロンAPCで行った際には大騒ぎになった。

 

 

アーニャも2年空けて顕微授精で男の子を授かり、今は2歳児の母となった。

来夢と同じく日本人の血が1/4しか入っていないクォーターだ。

名は真郁(まいく)と付けられた。

アーニャの血が強かったのか、綺麗なバターブロンドに目は緑色が混じるブルーだ。

パット見た目は女の子にしか見えない。

だから、男の子女の子両方のお下がりが着せられ、ある日は男の子、別の日は女の子と見た目の性別が変わる。

 

見た目は女の子でも性格はやはり男の子で、面倒見の良い優理がよく遊んでくれる。

良いお兄ちゃんだ。

麗奈は真郁を猫可愛がりだし、来夢はおもちゃだと思っている節がある。

クリクリとした大きな目で見つめられると親でもちょっとドキドキする。

 

「ねえ、真郁の勃起した時の大きさ知ってる?」

真郁とアーニャ、綾香の三人でお風呂を使っていて話し出した。

「やだ、アーニャったら食べちゃったの?」

「いや、この前オチンチンを洗ってあげてたら勃起しちゃってさ。

 いや、びっくりしたよ」

 

「そろそろ覚えている時期になってるから気を付けてね。

 で、何をびっくりしたの?」

「私らよりこの子大きいかも・・・」

「まじ?」「マジで」

 

丁度綾香ががオチンチンの皮を剥き洗ってあげてたところだ。

少しばかり刺激を与えてあげると、ムクムクと大きくなり出した。

「えっ?」

「ねっ?」

 

「みるくは知ってるの?」

「もちろん」

其処には綺麗に包皮が剥け小ぶりながらもしっかりとしたペニスが揺れていた。

「ちょ、既に6センチくらいあるじゃない」

 

「普通この位の年齢の陰茎長は精々が3センチ程度なんだ、勃起しててもね。

 でも真郁はすでに6センチ、将来が楽しみだねぇ」

「デカけりゃ良いってもんじゃ無いわよ」

「それでも小さすぎるより良いんじゃない」

 

洗い終わりシャワーで洗剤を流すとすぐにしぼんで皮を冠った。

大きさは、2センチも無い。

風呂から上がった綾香はみるくに聞いてみた。

 

「ああ、あの子膨張率が凄く大きいのよ。

 私たちと違って萎んでいる時は標準的な男の子の大きさなんだけど、勃起すると私たち両性の同年代と比べて大きくなるの。

 遺伝子って不思議よねぇ」

 

「来夢はどうなの?」

「あの娘は両性の平均より少し小さいくらいかしら。

 まあ、それでも男の子より大きいけど思春期を過ぎなきゃ判らないわ。

 以前にも話したと思うけど、人間ほど性器の形状や大きさにバリエーションがある哺乳生物はいないのよ。

 それこそ、千者万別ね。

 ああ、来夢、そろそろ服着ないと風邪ひくからパジャマ着なさいね」

 

「良く勃起時の小児データなんかあったわね」

「高園で何例の両性を取り上げたと思ってるのよ、多分一番多いんじゃないかしら。

 生まれてから転院してくるお子さんも多いし」

 

「そういや、優理と麗奈はいいけど、来夢にちゃんと教えてあげなきゃね。

 そろそろ性欲が出て来るから」

「そうなの?」

「小児性欲を舐めちゃだめよぉ。

 わたしだってムラムラして酷かったんだから。

 身近に女の子と男の子がいる訳じゃない。

 せめて遺伝子的には私達とは異なる遺伝子に惹かれて欲しいのよね」

 

「その可能性は?」

「子供たちがセックスする可能性って言う事?」

「ええ」

 

「ゼロでは無いわね。

 優理は心配なさそうだけど、麗奈がね・・・女の子って結構早熟なのよ、知識も興味も。

 あと、まだ強くは無いけど小等部に入ったら強い性欲が発現するわ事故が起こる前にちゃんと発散して解消する方法を教えてあげないとダメなの。

 まあ、遺伝的親族嫌悪が働いてくれたら良いんだけど、人によっては感受性が違うからねぇ」

 

「ま、そんなに心配いらないと思うよ。

 あの子達異母兄弟みたいな物だし、兄妹として育っていることだしね」

「話は変わるけど端正はまだ2年保育なの?」

「いいえ、確か今は年少、年中、年長の3年教育になったはずよ。

 5.6年前だったかしら。

 端正では″保育″と呼ばず教育と呼んでいるわ」

 

「ん? 保育とは違うの?」

アーニャが不思議そうに聞く。

その質問には綾香が答えた。

 

「日本には大別して保育園と幼稚園の2つが有るの。

 これは知ってるわよね。

 で、厚労省管轄の児童福祉施設なのが保育園、文部科学省所管の学校教育施設が幼稚園なの。

 端的に言えば保育園は養育の為の施設であり、幼稚園は学歴の一つである学校なのよ。

 事実、小学校入学時点での学力は幼稚園の方が高い事が判っているわ」

 

「でも、補足すると実際には幼稚園並みの教育を行っている保育園もあるのよ。

 幼稚園は文科省の幼稚園教育要領に沿った教育という縛りも有るから、その縛りの無い保育園では英語教育に力を入れていて業績を伸ばしている所も有るの」

みるくが続けた。

 

「まして幼稚園は2年と3年の教育が混在しているし、最近では4年教育も普通になってきているわ。

 保育園は0歳から受け入れているし、本来の目的が保護者の就労などで保育に欠く乳幼児を保育するのが目的だから」

「なるほど、だから先生も幼稚園教諭と保育士の違いが有るんだ」

 

 

朝は結構にぎやかだ。

まだ小さな真郁は除いて幼稚園と端正に通っている為、ご飯を食べさせたり園からの通知を見ながら忘れ物が無いかをチェックしたり、三人は大学の講義へと忙しい。

それこそ、エッチもお手軽に済ませてしまう事も多い。

 

理系の学部、特に医療系の学部はアルバイトなんてしている暇は無いし、実習も入ってきている。

まあ、綾香も経済学だけでなく経営学や情報社会学にも手を出している為、そこそこハードだ。

 

忙しい日々と成長していく子供たち、日本国内の両性の人口は総人口の5%を超えマイノリティとは言えなくなってきた。

そして両性同士、両性と異性の婚姻も増加し、日本は世界的に見ても両性についてはトップを走っているといっていい。

いままで何をやってもダメだった人口減少も少しづつ改善傾向がみられ始め、経済も政府が言うような口先だけの回復ではなく、着実な改善傾向を示してきた。

 

世界に技術と経済で再び返り咲くきっかけが両性の出現であったと言う学者もいる。

両性は日本のパラダイム変え、旨くそれを国家発展に繋いだ功績はまだ少し先になる事だろう。

 

そして何時かはこの時代が「ヘルマフロディーテの夜明け」と呼ばれるのかもしれない。

 

 

【Fin】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後は突っ走りましたが、まだまだ書きたいシチュエーションは有ります。
ですが、みるく達両性の生きざまは、ひとまずここで幕を下ろしたいと思います。

この続きですが、実は子供たちの世代のお話もプロットは有るのですが、皆様方の反応次第では書かせていただくかもしれませんし、そのまま混沌のなかに消えゆくかもしれません。

なお、作中に出て来る固有名詞、組織等は現実と似通っていてもあくまで架空の物ですので、ご了承ください。

誤字脱字も多い本作にお付き合いいただきありがとうございました。
今後も継続して気が付き次第、修正していきますが作者が気が付いていない部分も多々あると存じます。
都度、誤字報告等でご教示頂ければ本当に助かります。

A bientôt, à bientôt.
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