1287年 10月
俺はコーエンからありがたいお説教を散々された後、日を跨いだ頃に釈放された、、、
「トール!!随分と絞られたみたいだなぁ!」
扉を開けると同時にコエンラッドが話しかけてくる、その横にはオーレンが立っていた。
「おぉ、!2人とも待っててくれたのか?」
「いや、今来たところだ!オーレンの奴が日を跨ぐ頃に釈放されるって言ってな!ちょうど来たらその通りだったってわけだ!」
コエンラッドは腕を組みながら話し続ける
「何でわかったんだ、オーレン?」
俺はオーレンの方を向く、オーレンは得意げな顔をしながらこちらを見ていた。
「コーエン卿は節操のあるお方だ、今日は帰ってきたら俺達と酒場に飲みに行くだろうと踏んでこの時間で切り上げたんだろうな」
「何言ってるんだオーレン?この説教の長さは平常運転だろ?」
「コーエン卿も寂しいんだ、口には出さないだろうがお前が帰ってきて嬉しいんだろうな、かと言って普通に長話をする話題がないから説教するってわけだ」
「なんだそりゃ、、、って言いたいところだが俺もコーエンと話せて良かったからな、あぁ見えて俺達若造の意見を尊重する人だ、説教だって苦痛には感じないさ」
「トール、、、お前がもう少しコーエン卿の前でもそれくらい素直であればな、、、まぁ良い、どこかで酒でも飲みに行くか?それとも大ホールで飲むか?」
「久しぶりに会ったんだ、羽目を外しかねんからな!大ホールで飲もう!」
俺が場所を指定すると、コエンラッドは俺達の肩を叩いた。
「よし!先に大ホールに行っとけ!俺は酒を調達してくる!それとディエデリックとジアシュも呼んでくる!」
そういうとコエンラッドは走り去って行った。
グリフィン流派のウィッチャーは規律を重んじる、その中には他人に迷惑をかけない世間体を保つ項目もある。
皆それぞれ街に降りて問題を起こせば仲間の評価まで下がる理解しているのだ
だから羽目を外しすぎてしまう事が予想される場面ではケイアセレンの中で祝杯を交わすのだ。
世間に迷惑をかけない代わりに俺達は仲間に迷惑をかける事を許容される、それがより絆を深めると信じているからだ。
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「今年の放浪の成功を祝って!乾杯!」
「「「乾杯!!」」」
コエンラッドが叫ぶと
俺 大ホールの一角のテーブルを囲んだ俺たちはジョッキを掲げた。
大ホールには机と椅子が乱立しており、数多の放浪から帰ってきたグリフィン流派のウィッチャーがそれぞれの仲間と飲んでいる。
心地よい喧騒に包まれて、家に帰ってきた事を実感する。
俺は周りを見渡して仲間の顔を見る
「なぁコエンラッド、ジアシュとヤスマエルは?ジアシュはともかくヤスマエルはまだ帰ってきてないのか?」
「あぁ、今年はアルド・カレイの森に行くって言ってたぞ?あいつの事だから今年もギリギリかもな、ジアシュはすぐに来るだろうさ。」
「あぁ、、、ヤスマエルらしいな、、、道に迷って今頃ヴェンガーバーグにいたりしてな」
「それがあり得るから困るんだ、まぁ帰ってきたら聞こうや、俺は毎年あいつの失敗談を聞きに帰ってきてるんだ」
コエンラッドはジョッキに酒を注ぎながら、俺達の弟分の帰りを待ち侘びていた。
「よぉトール、今年はどんなデケェ事をしでかしたんだ?」
横から坊主の男が話しかけてきた
こいつはバーテル、同年代のウィッチャーだ。
「バーテル!久しぶりだな!お前の方は?」
「俺はお前と違って生き急いでないんでね、今年1番の獲物はコカトリスぐらいさ」
「俺もコカトリスだ、奇遇だな、あと俺は別に生き急いじゃいないからな?」
「嘘つけ!」
「本当だって!南に少しだけ下ったんだ、コカトリスを狩れただけ幸運だ、、少し南に下っただけで怪物なんてもうほとんどお目にかかれないぞ?」
「南だと?どこまで行ったんだ?」
「ノヴィグラドだ」
「ノヴィグラド!?我らがトール様がついに大都会に出たのか!?どうだった!?」
「デケェ建物がいっぱい、全体的に汚かった」
「つまらん感想だな!それで、大都会の女はどうだった!?」
「よくぞ聞いてくれた我が友よ」
俺はわざとらしくニヤケながら話す。
「おぉ!その反応は!」
バーテルは食い入るように話を聞き始める。
「まずは店によってかなりレベルが違う、波止場や街の端の方にある娼館はひどいもんだ、、、あそこに行くならケイアセレンから街に降りて適当な女を引っ掛けた方がマシなレベルだ。」
「ほうほう」
「だが、街の奥に行けばまるで別世界だ、、、!」
「おぉ、、、!」
「娼館の建物はデカいし綺麗!それだけじゃなくて女のレベルも高かった!」
「、、、チクショーッ!、、、決めた!俺は次の放浪でノヴィグラドに向かう!」
「ハハハッ!やめとけバーテル!お前じゃその娼館のナッツも買えないだろ!」
オーレンが横からバーテルを茶化した。
「そういうお前はどうなんだオーレン!今や通貨はフロレンスだぞ!オレンばっか集めても小銭にしかならねぇだろ!?」
バーテルは不機嫌そうにオーレンに言い返した。
「バーテル、、、お前本当にその話好きだな、、、」
オーレン、こいつは子供の頃ウィッチャーに売り飛ばされた。
彼の生まれ故郷はテメリアだった。両親は子供がお金持ちになるようにテメリアの通貨であるオレンを文字ってオーレンと名付けた、しかし、彼が生まれて程なくして当時の王であるフォルテスト王が暗殺され、ニルフガードの侵攻によりテメリア王国は一時期無くなった、、、オーレンの両親はオレンはもう使えないと言ってオーレンを売り飛ばした。
当時まだ、ウィッチャー見習いを受け付けていた我々グリフィン流派にだ。
その後1273年に第三次北方戦争が終結するとテメリアはニルフガードにより自治を認められた属国として復活を許された、それにより、オレンは再びその価値を取り戻した。
オーレンがその話を知ったのは草の試練を終えてからだ、当初はショックを受けて自暴自棄になっていたが、今では笑い話だ。
俺たちが呆れていると後ろから声が聞こえた
「仮にオーレンがフローレンスって名前だったと想像してみろ、こいつは女みたいな名前だとバカにされ続けながら俺達に出会うこともなく小さな村で一生を終えていたのかもしれんぞ?」
カツン、カツン、、、
規則的な音を立てる方へ振り返ると、後ろから杖をついた男が歩いてきた
「それにフローレンスなんて名前、例え金持ちになれるとしても俺は願い下げだな、、、」
綺麗に切り揃えられた髪に、特徴的な丸メガネ、そしてウィッチャーとは思えない細身の体格をした男が杖をつきながら歩いてきた、しかしメガネの奥の瞳は俺たちと同じで変異体の特徴でもある黄色い目をしている。
彼はジアシュ、俺の同年代のウィッチャーだ
「ジアシュ!」
「やぁトール、聞いたぞ?今年の寄付は偉い額になったそうじゃないか?随分と稼いできたようだな、、、!」
「あの馬鹿げた量の品には理由があるんだ、、、まぁ座れよ、ジアシュ」
俺は立ち上がってジアシュのそばに駆け寄ると、彼の杖を預かり、彼に肩を貸しながら椅子に座らせるのを手伝う。
「あぁ、、、悪いなトール」
ジアシュは右足がほとんど動かない、、、
『草の試練』の後遺症だ、彼もまた脳に深刻なダメージを負ってしまったらしい、座学にて優秀な成績を収めていた彼はコエンラッドとは違い指南役の推薦を受け、今では年に数回城塞からコヴィリとポヴィスに降りては怪物への対処方を軍に教えている。
「それでジアシュ、今年はどうだった?」
「相変わらずだ、書物を漁って、たまに街に降りて授業をする」
「たまには遠出してもいいんじゃないか?馬には乗れるだろ?」
「授業は定期的にあるからな、穴を開けれない、それに今の生活を俺は気に入ってるんだ」
「そうかっ!遠出したくなったら言えよ!俺がいつでも守ってやる!」
「ありがとう、だが忘れたか?俺はこれでもウィッチャーだ、自分の身は守れるさ」
「ははっ!そういうと思った!」
「おいおい待てよ!トールの寄付が偉い額だって!?何だよその話!?」
バーテルが話に割り込んできた
「見てないのかバーテル?帰ってきた時のこいつの袋!今年の稼ぎはおそらくこいつがトップだろうな!」
コエンラッドがバーテルに説明する。
「おいおい、今度は何やったんだトール!コカトリスとドラゴンを間違えたのか!?」
「そんなわけないだろバーテル、まぁ、、、成り行きだよ、、、」
「成り行き?、、、トール?お前まさか盗んだんじゃ、、、」
「違う、お前達、詳しく話してやるから耳を貸せ」
俺がそういうと同年代の4人は机に身を乗り出して食い気味に話を聞き始めた
俺は今年あった主な出来事を話した。
コカトリスに襲われてた男、白髪の猫流派のウィッチャー、その後の事件
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「トール!やっぱり生き急いでないなんて嘘ッパチじゃねぇか!」
俺の話が終わるのと同時にバーテルは呆れながら俺に話しかけた。
「ガハハッ!流石トールだ!事件に巻き込まれる事においてお前の右に出る奴はいねぇなぁ!」
コエンラッドが笑いながら酒を煽る。
4人それぞれ違った反応をしていたがその中でも一際目を引いたのはジアシュだ、彼は顎に手を当て考え込んでいた。
「契約、、、そして人間が蒸発、、、」
「ジアシュ、、、?何かわかるのか、、、?」
「いや、、、だがトール、ダンディリオンの詩の『無情なる心』を覚えているか?当然ながらリヴィアのゲラルトについての詩だ。子供の頃街に降りた時に吟遊詩人が覚えていて歌ってくれた詩だ。」
「もちろん覚えてるさ、ある貴族の男が鏡の達人と呼ばれる超常の存在に魂を売ってしまったって話だろ、証拠に全て歌ってやろう!あるとーきー♩「いい、いい、覚えてるなら大丈夫だ、トール、続けるな、黙れ、、、座れ」
俺はジアシュに止められ、しょんぼりと席に着く、他の3人は爆笑していた。
俺を誰だと思っている、公にはしないが俺はリヴィアのゲラルトのファンなんだぞ、彼が出てくる詩はほとんど網羅している。
特に第三次北方戦争以降の彼の詩は全て暗記していて、習う気はないがリュートが弾ければ丸ごと歌ってみせられる程だ。
「それで?その詩と白髪の男になんの関係性が?」
「あぁそうだ、どこか似通ってると思わないか?物事の本質を捉え、契約を持ちかけ、魂を奪うとされている存在、お前の話にピッタリだ。」
「、、、彼があの鏡の商人だと、、、?」
「可能性としてはな、、、だが奴は自らを鏡の達人、もしくは鏡を売り歩く商人だとも説明していなかった、そうだな?」
「あぁ、」
「だとすると本人である可能性は極めて低い、詩にもあったが彼が会ったオクセンフルトの教授の話によると、、、」
「彼ーがー向かうーはーオクセンフルト♩」
「トール!歌うな!」
「、、、わかったよ、、、」
俺がジアシュに叱られるのを見て他の3人はまた笑いだした、、、
コエンラッドとバーテルは腹を抱えて机をバンバンと叩き、オーレンは飲んでいた酒を吹き出してしまっている。
「話を戻そう、、、彼は古くからどの時代でも自らを鏡の商人だと名乗った。それはある種の仮契約のようなものだと俺は推測している。だが白髪の男は一度も名乗らなかった、そこから導き出される答えは別人、だが同じくらい厄介な存在かもしれんという事だ。」
「、、、なるほどな、、、だが彼から邪悪さは感じられなかった」
「、、、本当にヤバい奴は大抵そうだ、、、とにかく、次またそいつに会う事があれば警戒する事だな」
「なるほど、、、ジアシュ、ありがとう」
「さて!大事な話は終わった事だ!本格的に酔うとするかぁ!」
コエンラッドがジョッキを持って大声で叫びながら大きめの水筒を机に出す。それに続き、俺達も持っている分の水筒を机に出す。
皆口に出さずとも中身を理解してる。
白カモメだ、、、ウィッチャーが調合する幻覚剤だ。
時は少し遡る、酒が飲める歳になった俺達は早速ケイアセレンで飲み明かそうとした。
しかしウィッチャーの代謝と毒への耐性からあまり酔わなかったところを年配のウィッチャーが声をかけてきて教えてくれたのだ。
白カモメと蒸留酒を半々に割って飲め、そうすれば酔えると、、、
その日は散々だった、酩酊の気持ち良さを知ってしまった俺たちは調子に乗って飲み続けた、、、ジアシュは吐き、バーテルとオーレンは机の上で全裸でコサックダンスを踊ってた。記憶はないが俺とコエンラッドは熱い話をしていると思ったら急に外に出て雪が降り積もった中庭で殴り合いを始めたのだそうだ。
この城塞の一番下の世代である俺達の愚行を、先輩方は暖かい目で見守る者もいれば、囃し立てる者もいたそうだ。
もちろん俺とコエンラッドは後日コーエンに怒られた、、、
今でこそ頭の硬い連中はいない者の、昔は鞭打ちレベルだったと言われた
お酒による最初の失敗だ。
それ以来、本格的に酔う時はケィアセレン、話を楽しみながら酒を嗜む時は街に降りる事で分けているのだ。
俺達は再度ジョッキを掲げると一口に最初の一杯を飲み干した。
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「バァテルゥ!!お前は欲望にバカ正直などうしようもない馬鹿だ!!だがそれがいい!」
「コエンラッドォ!お前が訓練の教官の誘いを断ってくれて俺は嬉しいぞぉ!!お前なんか野垂れ死にゃいいんだ!!」
気づけばコエンラッドとバーテルが上裸になって肩を組みながら話していた。
この時間になればトール達だけではなく、あちこちのテーブルで馬鹿騒ぎしている他のグループがちらほらいる。
(あぁ、、、あそこの奴ら、脱いで筋肉自慢し始めた)
「ジアシュ、、、お前はマトモぶってるけどなぁ、、俺ぁ知ってるんだぜ、街の娼館の女全員食っちまったそうじゃねぇかぁ?」
「何ぃ?詳しく話せジアシュ!」
オーレンが衝撃的な話題を提供し、トールは周りの観察をやめてジアシュに向き直った。
「あのなぁ!右足が動かなくたって俺だって色々溜まるんだよぉ!コーエンも言ってたろぉ!?学んだ事を実践しろってなぁ、、、偉大なるコーエン卿の教えとあっちゃあ断れん!四十八手全部試したかったんだが、、、!問題がある、、、俺は満足にたてない!!!」
「はっはぁっ!!ジアシュ!!お前ってやつは最高だぁ!!」
(、、、あぁ、あそこのやつら、、、あと10秒もすれば決闘が始まるな。」
(ありゃあ、相当酔ってるなぁ、、、投げつける為の左手の籠手を地面を這って探してるぞ、、、自分で着けてるのにな、、、しかもさっきまで言い争いをしてた奴まで一緒になって探し始めたぞ、、、!!!)
「おいコエンラッドぉ!!?」
トールはコエンラッドの首に腕を回し、他のグループに顔を向けさせる
「見てみろぉ!あそこの連中決闘しようとしてやがるぞ!」
「なんだよトールぅ!、、、決闘なんて、、、あいつら!何で地面を這ってんだぁ、、、!?」
「決闘を申し込む為に手袋探してんだよぉ、決闘しようとした相手と一緒にな!」
「ブワッハッハッハッ!!!なんだそりゃあ、しかもあいつら籠手つけたまんまじゃねぇかぁ!!!」
「おい、、、見てみろ、、、コエンラッドぉ!それを俺達が言うのかぁ!?」
トールはわざとらしく両手を広げる、他のグループをバカにしていたがトール達も、先程筋肉自慢を繰り広げていた為、ジアシュを除いて全員上鎧を脱ぎ捨てた上裸のままであった。
ひとしきりコエンラッドと笑ったトールは瓶を手に取るが、瓶の中身は空であった、、、
(あぁ、、、酒が無くなった、、、)
「皆ぁ!酒が残ってる瓶あるかぁ!?」
「ん、、、?あぁ、、、これもないなぁ、、、とってくる」
ジアシュが瓶をひとしきり確認した後、フラフラと立ち上がり、、、こけた
バーテルがフラフラとジアシュに駆け寄り、崩れ落ちるようにジアシュに寄り添い、椅子に座らせてやる。
「何やってんだジアシュウ、、、!おいトール!行くぞぉ!」
「あぁ、、、?俺もが、、、?」
「あったりめぇだよぉ!俺ぁ見てたんだぞ!さっきから獲物を探してるドラゴンみてぇに他のグループキョロキョロ見回しやがって!暇だろぉ!?」
バーテルが大袈裟に周りを見回し、ジアシュがそれを見て笑う
「あたりめぇだぁ!こんなとこコーエンに見つかったらって考えたらよぉ、、、!」
「やめてくれ、、!そんな事考えたくもねぇ、、!とりあえず行くぞぉ!」
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「よーし、、、4本もありゃ十分だなぁ、、、」
「戻ろぉ、バーテル、コエンラッドとジアシュが酒がないって癇癪を起こす前になあ、、、」
「ちょっと待て、、、俺は小便、、、」
「あぁクソ、、、意識したら俺もだ、、、」
ドンッ
「おっと、失礼、、、」
「これはこれは、リンデのトール殿ではありませんか」
目の前に立っていたのは年配のウィッチャーだ、、、と言っても見た目は30代、実年齢は7.80歳ってとこか、、、
「んぁ、、、?あぁ、、、これはこれは、、失礼、、、お名前を伺っても、、?」
「名乗るほどのものではありませんよ、、、それにしてもトール殿、今年も見事な成果だったとお聞きしております、流石『コーエン卿の驚きの子』ですなぁ」
「、、、えぇ、、、、これからも精進致します、、、、、」
「あー、、行こう、トール、、、失礼、私達は、、、その、厠に行くので、、、」
「おぉ、これは失礼、良き冬を」
「ええ、良き冬を」
相手が礼をするとバーテルも綺麗に礼を返す、、、俺はバーテルに引かれてトイレに向かう。
「、、、トール、、、トール!!」
「ん、、、あぁ、、、?何だ、、、?」
放心状態で便器に座っていたトールに、向かいのバーテルが声をかける
「なぁ、随分と綺麗になったもんだよな!」
「んぁ、、、何が、、、?」
「この城だよ!昔はトイレなんて無かったろ!?来た頃は皆庭で好き勝手撒き散らしてたもんだ、、!それが急に王様とかが来るからトイレを作ろうって話になってよぉ、、、あの時代が懐かしいぜ、、、」
「あぁ、、、そうだったな、、これできたのいつ頃だっけか、、?」
「確か俺達が来て2年経った位だ、、!それから汲み取り係を押し付けられたりする度にジアシュはぼやいてたな!」
「はっは、、!、、、懐かしいな、、、!」
「まぁ、慣れたらこっちの方が良いけどな、、、さて、戻ろうトール、、、そろそろコエンラッドとジアシュが限界だろうからな」
「あぁ、あいつら、、、下のズボンに手をかけてないか心配だ、、、」
「ジアシュはともかく、コエンラッドはもう手遅れかもな、、、あー寒ぃ、、10月でこれだぞ、、、」
「まぁベッドがあるだけありがてぇな、、、バーテル、覚えてるか、、、?最初の半年は馬小屋だった、、、」
「あぁ、、、よく思い出すよ、、、ジアシュが寝ないでずっと泣いてた、、、『ディエデリック』の奴はよく寝れないってぼやいてたな、、、その後、上の奴らがベッドを作って大ホールに移った、あの瞬間は忘れない、皆はしゃいでた、ジアシュが泣き止んで、あいつはすげぇ喜んでた、、、知ってるか?『草の試練』の後から、あいつのベッドは未だにジアシュが使ってる」
「、、、あぁ、知ってる、、、、、、すまない、この話はやめよう、、、俺達は生き残った、それが全てだ、、、だろ?」
「あぁ、、、さ、飲み直そうぜ!トール!」
「あぁ!」
酒を持って俺達は仲間の元へ戻る、それぞれの『道』で得た物語を分かち合うために。
亡くなった者達を悼む為に。