1287年 11月
ザクッ ザクッ
ボォオオオオッ!!
「おいそこ!地面の近くの雪は溶かさずにシャベルでどけろ!」
「斜面の雪は少し残しておけ!崩落を防げる!」
「、、、、、、、ふぅ、、」
雪が深くなり始めた11月下旬、、、俺達グリフィン流派はほとんど総出で雪かきを行っていた。
ウィッチャーが怪物退治をしないで雪掻きをする光景に唖然とする者もいるだろう、、、しかし理由は単純で、冬の間の城塞からコヴィリ、ポヴィス両国の街へのアクセスを良くする為だ。
それぞれの首都に繋がる道をできるだけ整備する事で城塞が中継地点となり、旅の人達や商人に対する宿の提供、そして両国の外交に一役買うのだ。
もちろん両国からは整備の謝礼も出るし、商団であれば両国の定めた通行量も落としてもらえる。
最初に始まったのは俺が来て4年目か5年目だったか、、、
オーレンは最初こそ、外の連中に良い顔する為のタダ働きと愚痴っていたが個人個人に謝礼が出るようになってからは露骨に頑張るようになった。
日が出ている時間が短いとはいえ、そこそこ重労働だ。
といっても、イグニが使えるようになってからは大分楽になった。
俺達グリフィン流派は印の扱いには長けている、鍛え上げられたイグニなら一方向に向けて火炎放射器のように放てるため、大抵は2日あれば終わる
今日は一日目、ポヴィス方面に向けての雪かきだ。
有事に備えてケイアセレンには何人か残ってなければならない為、俺はポヴィス方面の雪掻きのみの配属だ。
コヴィリ方面はコエンラッドやバーテルらが配属されており、あいつらは今日は城塞の中で暇を潰しているのだろう。
「トール、休憩だ。」
「ん、、、?おぉジアシュ!お前も手伝いか?」
「まぁな、雪を溶かすにも街道から外れないようにしなきゃいけないんだ、俺は地図を片手に指示役さ、それに俺もイグニなら使えるからな」
「そうか、、、転ばないように気をつけろよ?」
「心配しすぎだ、いつも通り1時間したら戻ってこい」
「了解、それじゃ、後は頼むわ」
俺はシャベルを持って先程通りかかった、休憩用の山小屋に入った。
ギイィィ
「、、、トール、、、休憩か?奇遇だな、俺もだ。」
「、、、これはこれはコーエン卿、、、」
小屋の中には何人かの仲間と、、、コーエンがいた。
ジアシュの野郎、、、休憩時間までにはまだ早いと思ってたんだよ、、、
「そう嫌な顔をするなトール、休憩に入ったばかりだろう、説教はせんよ」
「そうだと助かるんだけど、、、それにしても珍しいな、あんたが雪掻きなんて、、、城にいなくてもいいのか?」
「城の図書館にふんぞりかえっていても若者達の模範にはなれないと言ったらリウェリンが渋々許可をくれたのでな」
「グランドマスターに雪掻きを直談判できるのはあんただけだよ、、、」
「まぁ長い付き合いだからな、、、見た目通り聡明なお方だ、城に何人か残して万が一に備えたいのだろう。」
「万が一ねぇ、、、ここら辺にはもう怪物なんていやしないのに、、、あんたとか俺はともかく、結構な数の奴らが剣を持ってきてないぞ」
「あぁ、何人か見かけた、、、奴らの顔は覚えたから後でしっかりと言い聞かせるつもりだ。」
コーエンの目が据わっている。
(、、、おー、怖ぇ、、、剣持ってきといて良かったぁ、、、)
かくいう俺も剣を持ってくる事を少し躊躇ったのだ。結果的には持ってきたが、今になって今朝の自分を褒めてやりたい。
「それになトール、最も恐ろしい敵は怪物ではない、人間だ。」
「、、、、、なぁコーエン、今は休憩中だから説教しないって「これは説教ではなく教訓だ。ケイアモルヘンの虐殺を教えた筈だぞ。」
コーエンが俺の言葉に被さって話を続ける。
「、、、まぁいい、暇ならグウェントでもやるか?」
コーエンはバッグから箱の形をした布を取り出した。
恐らくカードを包んでいるのだろう
「やらないって、、、そのカードゲームそんなに面白いのか?」
壮年の厳つい髭面のオッサンがカードゲームに誘ってくる、、、
脳が混乱する、、、
「面白いなんて代物じゃないぞトール、これは奇跡だ、、、お前は女を抱いてサイコロポーカーに興じているが、これを知らないうちはまだまだ真の娯楽を知らないひよっこだな、、、どうだトール、ルールを教えてやろうか?」
「はいはい、、、また今度な」
「ふむ、、、無理強いはせんぞ、真の娯楽を学びたくなったらいつでも来い、それではどなたか!私と勝負したいという猛者はおらぬか!」
コーエンがそう言うと小屋の中にいた奴らのほとんどが立ち上がり
「コーエン卿、お手合わせ願えますかな?」
「コーエン卿、その次は私と、、、」
バッグや鎧の内ポケットの中からカードを包んでいる布や箱を取り出してコーエンの元に来た。
あっという間にコーエンは囲まれ、数秒もしないうちに机の上にはカードが広げられ、それぞれが戦いだした、、、
(いや、もはや怖いよ、、、この熱狂ぶりに俺は引いてるんだよ、コーエン)
俺は座っているカードの束を持ちながら順番待ちをしている人を捕まえ、口髭を蓄えた男に話しかけた。
「失礼、少しよろしいでしょうか?」
「おやトール殿、いかがされました?」
「このグウェント?ではコーエン、、、殿は人気なようですね」
「えぇもちろん!コーエン殿はケイアセレンでは並ぶ者無き実力者ですから!噂ではかの有名なノヴィグラドの大会にも優勝したとか、、、!ぜひ一度お手合わせ願いたいものです!」
(ノヴィグラドの大会、、、!?優勝、、、!?なんだよそれ初めて聞いたぞ、、、!?)
「そ、そうなんですか、、、」
「えぇ、普段は書斎に篭ってらっしゃるので話しかけ辛く、恐らくここにいる皆のほとんどが機会を伺っていたのでしょう、、、おっと、席が空きましたので私はこのへんで、、、」
「あ、はい、、、」
俺は先程まで話していた男を見送り、小屋の端に避難した。
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「おぉトール、帰ったか」
「ジアシュ!コーエンがいたぞ!お前知ってたな!?」
「まぁまぁ怒るなって、1時間ピッタリで帰ってきたって事は説教はされなかったんだろ?」
「説教はされなかったが、小屋はカードゲーム狂いの巣窟だったぞ!」
「あぁ、グウェントか、、、お前も意地を張ってないで始めたらどうだ?」
「、、、はぁ、、、まぁ、近いうちな、、、正直後悔してる、最初に誘われた時に大人しくルール覚えとけば良かった。」
「昔から変な意地を張るのがお前の悪いところだ、まぁ気が向いたらいつでも教わりに来い、いつでも相手になってやる。」
「そういやお前もやってたんだっけ、、、」
「、、、?何言ってるんだ?もう俺達でやってないのお前だけだぞ?」
「嘘だろ、、、!?だってお前ら俺の前じゃやってなかったろ!?」
「お前がグウェント嫌いって皆思ってたから気を遣われてたんだ。」
「はぁ、、、マジかよ、、、」
「どうだ?これを機に一からルールを教えてやろうか?」
「あー、、、うん、、、やっぱりまた今度かな!」
「はいはい、お前はそういう奴だったな」
「それはともかくお前知ってたか?コーエンはグウェントの達人らしいぞ?」
「そんな事この城のグウェントやってる奴らは皆知ってるぞ?」
「マジかよ、、、」
「話は終わりか?もうすぐ山の麓だ、早く作業に合流してやれ」
「あー、、、そう言えばそうだったな、行ってくる」
「あぁ、そろそろ暗くなるから気をつけろよ」
「おう」
俺はシャベルを持って作業組と合流した
入れ替わりだったのかさっきはいなかったオーレンがキビキビと働いていた
(オーレンの奴張り切ってんなぁ、、、あ、あいつ剣持ってない、、、コーエンに言いつけよ)
俺によって師匠に売られるつもりだと知らないオーレンは張り切ってイグニをぶっ放していた。
1時間ほど作業し、山の麓を越え、街の外壁が見えたあたりで俺達は後の作業を街の人達へ引き継ぐ為に旗を立て、撤収した。
帰る途中外壁から兵士がこちらに礼をしているのが見えた。
怪物を倒さずに、、、剣を抜かずに人に感謝されるのはどうにも歯痒い。