※この作品はR-18です。

ウィッチャー ラストグリフィン   作:ヤマタノオモチ

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長い冬を越える為に

1287年 12月

ポヴィス国

ケイア・セレン

 

 

「ん、、、あぁぁっ」

 

朝日を感じとり、トールは目を覚まし、全身に血液を漲らせる為に伸びをする。

 

 

起床した時刻はいつも通り、6時である

 

 

トールが目を覚ましたのは大きめの部屋だ。

 

ケイアセレンの正面の大ホールから入れる東の廊下を渡り、一階が武器の貯蔵庫として使われている東の塔、そこの最上階だ。

 

ここに帰ってくるほとんどのウィッチャーがゲストルームに雑魚寝したり大ホールにあるベッドで寝泊まりする中、トールは自らの私室をもっている。

 

ほとんどのウィッチャーは寝る場所に拘らない、それはトールも例外ではない、ジアシュはともかく、冬の間にしか滞在しない彼らにとって自らの部屋を持つ事は荷物を置く場所を限定される事、そして清掃の手間が増える為煩わしくてしょうがないからだ。

 

自らの部屋を持っている城塞の人物は数えるほどしかいない、トールが知っている範囲では、まずは城塞のリーダー『リウェリン』だ。

彼は城塞の最奥の北西の塔の最上階に自室を構えている。

そして『ジアシュ』

彼は城塞内の図書館の管理から始まり、教育係や外交等を取り仕切る立場の為図書館の奥のいくつかある部屋の一室を部屋にしている。

 

そして『コーエン』だ。

ケイアセレンの実質的なNo.2である彼はリウェリンと同じく、立場的な意味で自室を与えられたが本人はトールや他のウィッチャー達と同じで荷物を置く場所が限定される事と清掃の手間や責任を面倒に感じた、そして自らは図書館の端の一角に籠る為、部屋は不要だとも感じていた。

 

コーエンが与えられた塔は一階が武器庫となっており、そこそこの高さを登ったところにある2階と呼べる部分がかつてのウィッチャー見習いに対し座学の授業が行われていた場所であった。そこにも多くの書物がある為に知識を重んじるコーエンにリウェリンはこの塔の最上階に居室を与えたのだ。

 

しかし、コーエンはそこの書物を読み終えると図書館に移動し、自室に帰らなくなった。

 

そして、ある時面倒に感じたコーエンは理不尽にもトールに部屋を譲ると言い、表向きは弟子思いの師匠として塔の清掃の責任と階段の登り降り、移動の手間を押し付けたのだった。

これが今から5年前の出来事である。

 

ウィッチャーの見習いを取らなくなった現在では、各々の剣をもつウィッチャー達が武器庫に寄る事はごく稀であり、かつて自分達が丸々教科書を暗記させられた教室には立ち寄る事すらしたくない為、この南東の塔をトールは1人で管理せざるを得ないのだ。

 

トールは外の空気を吸い、顔を洗うと城塞の仕事を探しに下に降りる。

 

塔は誰も入らない為、コツコツとトールの階段を静かに降りる音だけが響き渡る。

 

(もう慣れたけど、なんで朝っぱらからこんな寂しい思いをしなきゃいけないんだ、、、)

 

砦の中を見て周り、仕事を探す。

 

冬の間にやる事は意外にも少なくない、特にこのケイアセレンではニルフガードが大陸を掌握した恩恵で外交によって手に入る物が格段に増えた為、冬の間のみならず、1年間育てられる作物が数多くあるからだ。

 

コヴィリとポヴィスには秋と冬しか季節が無いと言われており、実際にその通りの気候だが、問題なく収穫できる作物が意外にも多い。

 

そしてグリフィン流派の真骨頂とも言える追跡の技術で狩りを行えば、冬の間にひもじい思いをする事は無い。

 

そして食材を備蓄し、料理ができる者は大ホールに隣接されている厨房に配属される。

 

長い時を過ごし、知識を蓄えたウィッチャー達はそれぞれの役割を進んで受け入れる。

 

その他にも自らの剣の手入れ、ベッドの洗濯や砦の雑務、空いた時間を訓練にあてると、日が落ちるのが早い冬では一日は驚くほど短い。

 

更にトールは自らの寝泊まりする東の塔の手入れもコーエンに押し付けられている為、何日かそれで潰れるハメになる。

 

12月に入り、東の塔の手入れを終わらせたトールはやれる事を探していた。

一日が短いとは言え、なにもやる事がなければそれはそれで暇なのだ。

 

畑や訓練所、図書館にも行って仕事を探したが、他の場所でももう既に仕事は終わっており、トールは最終手段であるトイレの汲み取りも申し出たがそれももう既に2日前に誰かがやっていたようだ。

 

毎年恒例だが12月になると皆暇になる、一年のほとんどの仕事が終わる、その為この時期になると城塞が暇を持て余したウィッチャー達により奇妙な程に綺麗になる。

そしてこの調子だと今日の夕方にでも城塞の皆が暇になり、大抵の者は娯楽を求めて街に降りるか城塞に残った誰かが変な提案をし始める。

 

大ホールに着くと、十数人のウィッチャー達がそれぞれの暇つぶしを始めている。そのほとんどがグウェントだ。

 

トールは彼らを尻目に大ホールを散歩しながら思い出す。

 

(、、、確か5年前は壁画を描こうってなったな、、、4年前は剣の自作、、、3年前は訓練の道具の自作、、、2年前はステンドグラスを作ったな、、そういや去年も壁画だったな、、、)

 

「ステンドグラスは面白かったな、、、確か年配の誰かが製法をテメリア辺りの職人から教わったんだっけか、、、」

 

トールは窓のある位置を見上げ、自分達の作品を眺める。

慣れないウィッチャー達は苦戦し、ほとんどが割れたが丈夫な物や出来の良い物は今もなお飾られている。

 

「今年は誰が何を言い出すかな、、、」

 

トールは図書館、、別名コーエンの書斎に向かう。

 

勿論コーエンに会い、訓練を申し出る為だ。

 

 

 

 

 

今年の冬を越し、また一年を生き抜き、来年の今頃、誰かが提案する突拍子のないアイデアを実行に移す為に。

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