1287年 11月
ポンター河 学術都市オクセンフルトにて
オクセンフルト、、、ポンター河に浮かぶ島を丸々学術都市として発展させた街である。
この街の南には大陸一の学校との呼び声が高いオクセンフルト学院があり、北側にはオクセンフルト学院の恩恵を受け、発展した街がある。
ノヴィグラドとは違い規模は小さいものの貧富の差が少なく街のどこを歩いても清潔な印象がある。
そして長くこの街の教授や生徒の憩いの場となっている酒場兼宿屋『アルケミー』
14年前、北方戦争が終わりこの街の大学が再び息を吹き返すと、瞬く間にこの店も再び繁盛した。
戦時中の静けさは嘘のように今では大変賑やかになっている。
その店の端で白髪の男は食事を摂っていた。
(、、、さて、冬の間どうすっかな、、、)
男はもくもくと料理を口に運びながら考えていた。
(ここか、もしくはどこかで宿でも借りようか、いやいっそ南下してトゥサンにでも行こうか?あそこには冬がないって話だからな、、、いやダメだ、もう雪も降り始めてる、、、ビューエルに無理はさせられないし、今年はオクセンフルトで冬を越そうかな、、、、ん?、、、あっちが騒がしいな、、、どれ、見てこよう)
白髪の男は持ち前の好奇心でざわついている自分のいる場所とは反対側の店内に足を向ける
「イカサマだ!てめぇふざけやがって!」
「誤解だ!私はイカサマなど、、、!」
ドガッ!
ガシャァンッ!
、、、何やら男2人が言い合いしてるようだった、1人はいかにも小悪党のような見た目、1人は、、、口髭と立派な服、、、見た感じ学院の教授であった。
勿論因縁をつけられ、殴られたのは教授の方であった。
白髪の男は先程まで揉めている男達が座っていたテーブルを見る。
(おっ!グウェントか、、、)
どうやらトラブルの発端となったのはグウェントらしく、理不尽な負け方をする事が少なくない白髪の男は小悪党の男に少し同情した。
(まぁ、殴りたくもなるが、ここでグッと堪えて再戦を申し込むのが真の漢だろうに、この男は、、、)
ドガッ! バキっ!
「へへ、これに懲りたら二度とイカサマなんかすんじゃねぇぞ!」
「うぅ、、、」
男は教授らしき人物を追加で2発殴り、彼の懐から金の入った巾着を盗み、、、机にあるグウェントのカード全て持ち去ろうとした。
(、、、こいつ)
スカンッ!
白髪の男は立ち去ろうとする小悪党の足を引っ掛けて転ばし、馬乗りになって後ろから首を締め上げる
「ぐ、、、っ!?なんだてめ、、、っ!!!!」
ギリギリギリギリッ!
白髪の男が首を締め上げて2分も経たずに、男は失神する。
「、、、」
チャリ
(すげぇ、、、学んだ通りだ、首の正面ではなく動脈を抑えれば気絶する、、一度試してみたかったんだ。)
男は彼の懐や手から金の入った巾着とグウェントのカードを取り返す。
そのまま男を店の端に引きずり、教授らしき人に寄り、胸ぐらを掴んで立ち上がらせ、座らせる。
白髪の男の足元に先ほど気絶させた男、そして向かいには教授らしき人物が座っているという構図だ。
「あ、、、ありがとう、、、?」
「さて、、、本当にしていないんだな、、、」
「、、、?な、、、何を、、、?」
「イカサマだ、本当にイカサマをしていないんだな?」
「本当だとも!この男が因縁をつけてきたんだ!」
「お前、信じている神はいるか?」
「か、、、神、、、?」
「あぁそうだ、この場でその神に誓え、私は神聖なるグウェントで一切イカサマをしてません、とな」
「あ、あぁ唯一神ゼーム誓ってイカサマはしていない、、、」
「よし、この金とカードは返そう、、、それにしても珍しいな、ゼームっていうのは確かニルフガードの一神教だったよな、、、ここら辺のやつらは皆メリテレを信奉してると思ってた。」
「あ、、、あぁ、、、そ、そんな事より、、、!ありがとう!その2本の剣に猫の目!あなた、もしかしてウィッチャーなのか?」
「ん、あぁ、、、まぁ、ウィッチャーだ。ウィッチャーを知っているならご存知の通り、助けてもらった対価を支払え。」
「た、、、対価、、、」
「あぁそうだ」
「わ、私に出せる物ならなんでも出そう!金ならある!」
「いいや、金じゃない」
「な、、、なんだ、、、?」
「さっきチラッと机を見たんだが、、、お前のもってるレアカード、それを格安で譲って欲しい、、、」
「、、、、、ん?」
「お前の待っているグウェントのレアカードを譲って欲しい!勿論タダでとは言わない!気持ち程度まけてくれ!」
白髪の男は一気に言い切ると机の上に突っ伏すように拝みこんだ。
「正気か!?こんなカード一枚のために助けてくれたのか、、、!?」
「あぁ、、、この話を受ける気になったら値段を提示してくれ、、、!」
「ははっ、、、なんだよそれ、、、いいや、大丈夫だ、、、是非とも貰っていってくれ」
「本当か、、、値段は、、、?」
「恩人からは受け取れないさ」
「お前、、、太っ腹だな、、、!」
白髪の男は目をキラキラさせながらカードを受け取り、斜めにかけたバックの中から箱を取り出し、そこに入れた、、、
途中、小悪党の男が目覚めかけた
「う、うぅぅ、、、」
しかし
ガァンッ!!
白髪の男が足でその男の額を踏んづけ、後頭部を思い切り地面に叩きつけると、再度大人しくなった。
「そ、、、その男、、、良いのか、、、?」
「ん?、、、お前はイカサマをしていないんだろ?それならこの男に非がある、死んでないだけ御の字だろ。それより、カードありがとな、大切にするよ」
「、、、、、ま、まぁ、喜んでもらえて何よりだ、とにかく、礼を言うよ」
「礼をしたいのはこちらだ、、、レアカードをタダで貰ったんだ、これでチャラだとは思わない、また何かあったら俺のできる範囲で助けになろう」
「このカード一枚にそこまで言うか、、、そ、そうだ!あんたウィッチャーだろ!?」
「あぁ、さっきも言った通りウィッチャーだ。怪物の依頼か?それなら別料金になるが、、、」
「いいえ、それとは別のお願いです、、、あぁ、申し遅れました、私はオクセンフルトで教鞭を握っております、スレッタと申します。」
「そうか、まぁ、オクセンフルトの教授だと思ったさ、よろしくなスレッタ教授」
「折り合ってお願いがあるのですが、此度あなたに、冬の間学院の臨時の教授をお願いしたいのです、、、!」
「、、、んん?、、、臨時、、、?、、、教授、、、?」
「はい、我がオクセンフルト学院では怪物に対する授業も行なっております、ですが前任の教授がアルグールの研究を行おうと街の外に出て、、、」
「、、、当ててやろう、怪物の餌になった、だろ?」
「、、、いえ、彼は十分警戒していたのですが、恐らく野犬の群れに襲われたと、、、」
「、、、なるほどな、怪物を警戒しすぎて野生動物を見逃していたのか、、、」
「はい、そこであなたです、ウィッチャーであれば怪物の専門知識については疑う余地は無い筈です、、、勿論給与もでます、どうでしょうか?」
「うーむ、、、」
(金が出るのはありがたいが、、、ガキ共に怪物の何を教えりゃ良いんだ、、、?)
「、、、こうしましょう、この街のレアカードを持っている人達の情報を全てお伝えしましょう」
「このマスター・ウィッチャー、臨時の教授の任、喜んで引き受けさせていただきましょう」
白髪の男は立ち上がり、胸に手を当て、高らかに宣言する。
「、、、、、えぇ、、、、よろしくお願いします、ミスター?」
「シアナだ、シアナと呼んでくれ」
白髪の男、シアナは教授と堅い握手を交わし、再度起きあがろうとした小悪党の男にストンプを喰らわせ、再び気絶させた。