パリィンッ!
「、、、、ハッ!!」
フラスコか何かが割れる音で目が覚めた、大きな音にビックリしたのもあるが急速に焦りで脳の働きが良くなる。
(ヤバいッ!今の音!フラスコが割れた!?フラスコの中身は、、、!確か、大した物は入ってなかった筈だ、、、!、、、なら大丈夫か、、、、、、)
(、、、、、ん?)
男は冴え渡った脳ですぐさま結論を出し、二度寝をしようとするがすぐに妙な匂いに気づく、、、フラスコが割れた足元で煙が上がり始めたのだ、、、
(、、、、、ッ!!!??バカか俺は!中身は硫化鉄だったか!?)
男はすぐさま足元で上がり始めた火を消化する。
慣れた物で手際がかなり良い
消化を終える頃には脳は冴え渡り、すっかり眠気は飛んでしまっていた。
(あぁ、、、実に良くないな、、、危うく焼死体だ、、、)
(そういえば、午前の講義は確か、、、怪物学か、、、履修してたっけ、、、いや、単位がヤバいから当てずっぽうで休むのはやめよう、出席して、名前を呼ばれなかったら寝ればいいんだ)
男は癖毛をくるくると指で巻きつつ、思考をめぐらした。
彼の名前は『メイヤー・バックハルト』オクセンフルト学院生であり、入学してから3年経つが未だ卒業の為の論文を決めておらず、日々研究に没頭している。
彼は推薦でオクセンフルト大学に入学した数少ない学生であり、薬学においては彼の右に出る者はいないとされ、かつては神童ともてはやされていた。
しかし現在ではほとんど薬学に触れておらず、単位が危ない状態である。
男は着替え、オクセンフルト大学に向かう
「ふわぁ、、、、、ん、、、?」
メイヤーは大きな欠伸をつきながら大学に向かう、門の前に着くと明らかに浮いた人間を前方に見つけた、、、白髪の男(?)だ。
背中だけで顔は見えない為、老人かはわからないが身体の感じからしてかなり若い人物のように見える、、、
革のブーツに革のパンツ、、、素材に使われている革は一目でわかる程に良い物だ、、、年季が入ってるのがわかるが、未だ革は光沢を失っていない、あれほどまでに良い品はなかなかお目にかかれないだろう。
そして上半身は適当にシャツを着崩しており、捲った袖から伸びる腕の肌のツヤが彼が老人ではない事を示している。、、、そして、なにより目立つのは背中に背負われている一本の剣だ。
「おい、止まれ」
ガシャン。
白髪の男は案の定学院の玄関で警備兵に止められた
「今日からこの学院の臨時教授として雇われたんだ、通してくれないか、、、?」
白髪の人物はなにやら弁明しはじめた。
メイヤーはそれを興味深そうに観察し始めた。
「それは本当か?それではあなたがスレッタ教授の推薦の、、、」
「あぁそうだ、通っても良いか?」
「白い髪の少年、、、確かに聞いていた話と一致しますね、どうぞ、、、、ですが何故剣を背負っているのですか?ここは神聖な学び舎ですよ?」
「これがないと落ち着かなくてな、、、一本だけなら大丈夫かなって思ったんだ。」
「大丈夫でないから止められたのです。」
「まぁ、、、確かに、、、了解、、、」
白髪の男はため息をつくとそのまま学院の中へと入っていった
チラッと見えた男の横顔は老人ではなく、少年のような顔をしていた。
(なんだったんだ?)
メイヤーは少年を追って学院の中に入る
白髪の少年(?)は学院の奥、本堂と呼ばれる建物に歩いて行った。
メイヤーは彼の背中を見届け、自らの講義が行われる一室を目指す
(怪物の講義は確か、西棟16番講義室だったよな、、、)
男は歩き慣れた学院内に乱立している建物の一つに入り、階段を上がり、講義室に入り、適当な椅子に座った。
(ここで間違いないな、、、それにしてもなんだったんだあの男は、、、)
講義が始まるまで約15分、男は自らの持参した本を読んでいた。
(、、、、おかしい、教授が来ない、、、)
20分ほど経ったが未だ教授は来ない、、、
「ねぇ、やっぱりあの噂って本当だったのかしら、、、」
生徒達が話をし始める。
「教授が研究中に怪物に襲われて亡くなったって話?だとしたら私達に何かしら通達される筈よ」
「そうよね、でも臨時の教授が来るかもって噂話も聞いたわ」
「それなんだけど、今朝学院の前で、、、」
ギイイッ
女子生徒達の噂に耳を立てていると扉が開かれた。
「、、、ここっぽいな、、、」
講義室に入ってきたのは先ほど学院の前にいた白髪の男だった。
男、かどうかは当てずっぽうだ、彼は一見すると性別がわからない顔立ちをしている。
「すまない、この学院は広いな、、、見事に道に迷ってしまってな、、、」
白髪の男は顔をしかめて生徒達に語りかける。
「あー、、、シアナだ、、えっと、、、臨時教授の、、、」
白髪の男は講義室の生徒達の視線を一身に受け、気まずそうに自己紹介する。
「教授、、、いえ、、臨時教授、、、?」
物静かそうな男子生徒が恐る恐る手を上げる。
「おぉ、なんだ?」
「その黄色い目、、、もしかしてあなたはウィッチャーですか?」
生徒の1人がそう言うと
講義室全体がザワザワと騒がしくなる
大抵のものは彼の白髪と出で立ちに気を取られ、瞳の色を確認していなかったのだ。
「ウィッチャー、、、!?、、、すごい、、、初めて生で見た、、、」
「ウィッチャーってあの、、、怪物退治の、、、?本当だ、、、確かに目が黄色い、、、」
「ウィッチャーって、、、あの、、、?本当に存在してたんだ、、、」
「待てよ、、、白髪のウィッチャー、、、って、もしかしてあの、、」
生徒達がザワついている
「あぁ、ウィッチャーだ。それと、お前、残念だが俺はリヴィアのゲラルトじゃない。ただの白髪のウィッチャーだ。残念だったな」
白髪の男が口を開く
「さて、、、授業を始めたいところだが、、、俺は何をすればいいんだ?」
、、、、、、
「そうだよな、わかるわけないよな、、、あー、、、じゃあなんでも適当に質問してくれ、怪物の事ならなんでもこざれだ、、、おぉ、じゃあそこの君」
男、、、シアナと名乗るウィッチャーは手を挙げた女生徒を指す。
「先生!先生のお名前は!」
女生徒はピシッと伸ばした手をそのままにシアナ教授に元気よく問いかけた
「シアナだ」
シアナ教授は先程自己紹介をしたのにも関わらず再び自らの名前を名乗った
「じゃあシアナ先生ですね!」
女生徒は元気よく
「あー、まぁそれで良いぞ。」
「シアナ先生はウィッチャーなんですか!?」
「さっきも言ったがそうだ、、、なんだこれは、、、他のやつは?、、、じゃあそこの、君」
シアナ教授は呆れた様子で他の生徒を指した
「え、、、と、、、ウィッチャーは長命と聞きますが、シアナ先生は今おいくつなのですか、、、?」
「おぉ、、、よく知ってるな、えっとだな、、、覚えてるのが確か950年あたりで、今は1186年だっけ?87年、、、?だから、多分300年以上は生きてると思うぞ、、、?すまん、確証はない。」
少年のような見た目のウィッチャーの口から飛び出た衝撃的な発言に講義室が再びザワつき始めた。
「300年、、、!?」
「あのエーリエレンの反乱の時代の人って事か、、、?」
「のじゃショタじゃん、、、」
「いや待て、ウィッチャーは人よりは遥かに遅いが歳をとるって聞いたぞ?」
「じゃあ、嘘ってことか、、、?」
生徒達はそれぞれ目の前にいる異質な存在に議論を交わしていた。
「先生!なんで白髪なんですか!?」
続けて元気な生徒が勢いよく発言する。
「なんでって、、、これは生まれつきだからなんでと言われても、、、」
「先生!なんでそんなにちっちゃいんですか!?」
「いや!小さくはない!まだ成長途中なだけだ!」
シアナ教授はむすっとした顔で強目に否定する。
講義室は笑いに包まれ、先程までの訝しげな空気は消え去った。
「先生!ウィッチャーが子供を攫うって言うのは本当ですか?」
誰かがその質問を投げかけた瞬間に、講義室が一気に静まり返った。
「はぁ、、、これじゃまるでウィッチャーの授業だ、、、まぁいい、、、攫う、か、、、少し昔の話をしよう、今から100年程前の話だ、、、」
「昔は怪物はまだ沢山いて、被害を受けた村人達は我々ウィッチャーを頼った。そして時として報酬の代わりに自らの子供を差し出した、今からじゃ想像もできないが、報酬を払いたくないって理由と食い扶持を減らしたいって理由からでな、、、ウィッチャーはこれを引き受けた。何故ならウィッチャーは子供のうちから訓練を積まないとなれないからだ。」
「じゃあ、先生も子供の頃に親に売られて、、、」
「いや、俺の場合は少し特殊だ、、、とにかく、攫うって話は恐らく悪意をもった誰かが伝えたデタラメだ。」
「でも、ウィッチャーはなんで子供を引き受けたんですか?なぜ断らなかったんですか?」
「良い質問だな。ウィッチャーってのは軍隊が怪物を倒せるようになった今では考えられないが、当時は必要な存在だったんだ、怪物は未知の存在で、対処の仕方が誰もわからなかった、それに誰も怪物退治なんて仕事はやりたがらないからな」
「そして怪物を相手にすれば当然死ぬ奴もでてくる、大量にな。だから沢山子供を受け入れてできるだけ多くのウィッチャーを作る必要があったんだ。それに、ウィッチャーになる為の試練は生き残れる者がほとんどいない、母数が多ければそれだけ良いて考えからだろうな。」
「先生も子供を攫ったんですか、、、?」
「俺は、、、、、、、」
男は少し言葉を詰まらせ
「あぁ、俺もだ。」
まっすぐな目で生徒達にそう言った。
「その子供達は、、、、?」
静まり返った講義室で恐る恐る誰かが尋ねる。
「その子達は誰もウィッチャーにはならなかった、100年以上前だったか、、、皆寿命で死んだ。」
「ウィッチャーにはならなかったんですか?」
「あぁ、、、まぁ、話すと長くなるんだ。」
「せ、先生は何故教授になったんですか?」
先程の女生徒が空気を変えようと質問する。
「臨時教授だ、ずっといるわけじゃない、、、まぁ、ここのスレッタ教授に恩があってな、怪物の生態を学ぶならウィッチャー以上の適任はいないってさ、まぁ俺もそう思う。」
「と言っても、何を教えれば良いのか俺にはさっぱりだから、こういう感じで質問形式にしようと思う。」
「よし!それじゃあなんでも質問していいぞ、知ってる範囲なら答えてやる!」
「先生!ウィッチャーは女好きって本当ですか!?」
「、、、、まったく、、、」
シアナ教授は呆れ顔で天を仰いだ。
俺は他の生徒の圧に押され質問するタイミングを逃してしまった。