1287年 9月 自由都市ノヴィグラド近郊
ラヴィラック邸
ノヴィグラドから少し離れた邸宅
俺達はそこで何枚かの書類にサインを書かされていた、、、
「なぁ」
「、、、なんだよ」
俺の隣で書類全てに適当にサインを書き終えた白髪の男が片肘を机について俺に向かって話しかけてくる。
俺はイラつきながら返事をした。
何故イラついてるのか?
答えは簡単だ、この男は絶対に意地悪くこう言ってくるからだ
「俺の言った通りになったろ?」
ほらな
俺はその言葉を無視しながら書類の一枚一枚にしっかりと目を通していき、サインしていく。
依頼の紙に書いてあるラヴィラック邸に到着した俺たちは衛兵と話し、従者を呼んでもらえた。
依頼の前倒しを交渉すると、案外すんなりと了承してくれたのだ。
曰く、依頼の前倒しを提案してきたのは俺たちが最初ではないそうで、報酬の山分けに気づいた若者が何人か尋ねてくる事があり、そういった者にも対応しているのだそうだ。
まだ依頼が撤回されてないって事はその若者達がどうなったかは大体察しがつく、、、
俺たちはそのまま促されるまま書類にサインを進めていた。
しかし、この書類は、、、この男の言った通りだ、、、
しっかりと報酬は山分けである旨、そして亡くなった者の報酬は残った者の山分けではなく出資者に返還するとまで書いてある。
それもあえて煙に巻くような難しい文体で小さく、、、
未だ北方と呼べる場所とはいえ、俺は南に降りてきた事を何度も後悔した。
罵声に偏見、報酬の値切り
コカトリスから助けてやった男みたいなのは稀だ。
俺はひどく失望させられた。
人間の醜さというものをまざまざと見せつけられた気分だ。
幸い仕事を受けられないような理不尽な条項がない事を確認した俺は書類全てに目を通しサインし終えた。
従者を呼び、書類を渡すと
従者の横に立っていた衛兵から地図を渡された。
ところどころにバツ印がつけられていた。
「それが今回確認できたドラウナーの巣の大まかな位置だ!全て破壊したらまたここに戻ってこい!」
「親切なこった、、、」
白髪の男がそう呟いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
時刻は20時を回った。
日が沈み切る少し前だがもうすでにあたりは暗く、明かりのない山道の為、
普通の人間なら行動を控えている時間だ。
しかし俺達は夜目が効く、ドラウナーの巣は三つ、しかもかなり近場にある為
うまくいけば日を跨ぐまでに終わると結論づけた。
思い出すのは『コーエン』に何度も書き写しさせられたブルッゲのジョンの書物だ
ドラウナーは水辺に生息し夕暮れと夜中に活発になる
、、、とても興味深く、何度も読み返したのを覚えている、、、
この白髪の男は巣の詳細を知る為にわざと奴らが獲物を探す時間帯に顔を出して、死体から逆算して巣を特定しようと提案してきた。
効率的だ、そしてなにより危険だ、、、
夜目が効くウィッチャーしかできない方法で依頼を迅速に解決する。
間違いない、、、深く知るつもりはないが彼は間違いなく手練れだ、、、
俺達はそれぞれの馬にまたがり移動し
しばしの沈黙の後、白髪の男が口を開いた。
「なぁ、一つ言い忘れていたんだが良いか?」
「、、、なんだ?」
「俺は正直あいつらを信用していない」
「俺もだ」
「もしかしたら俺達に伝えてないだけでなにか強い怪物が潜んでいるかもしれん、まぁ憶測だがな、、、覚悟しておけよ」
「、、、、、」
俺は返事をせずに僅かな動揺を抱えながら馬に揺られ続けた、、、
思い出すのは子供の頃に受けた試練
確か、、、月の試練だったか、、、
夜の森での生存競争
ドラウナーの群れに出くわしてしまった事があった。
何人かがズタズタにされて池の中に引きずり込まれた。
俺達は過半数以上が生き残った優秀な世代だと聞かされた。
当時は仲間の死に頭が混乱していたが、誇りに思ったのは覚えている。
そしてこう言われてるのも覚えてる。
ウィッチャーになれば恐怖、動揺、躊躇い、負の感情とはおさらばだとも聞かされた。
そしてその言葉が真実でない事を、今理解した。