1287年 9月
自由都市ノヴィグラド近郊
ラヴィラック邸
俺達は今、家の玄関前でこの家の主人にして依頼主である
ギンター・ド・ラヴィラックと話していた。
邸宅についた俺達は衛兵と話し、従者を呼んでもらい、依頼の完了の報告をした。
そのまま邸宅に従者が引っ込んだ後
20分近く待たされた挙句、出てきたのは初老のいかにも悪い金待ちらしい見た目をした男だった。
この男がギンダードラヴィラックだ。
「失礼、私達は確かに地図に記載してある巣を破壊しました、それでいて何故報酬をもらえないか説明していただけませんか?」
俺は湧き上がる怒りを胸に努めて冷静に受け答えしていた。
「使いの者に確認させなければねぇ、、、それにこんなに早く帰ってきたとあれば、嘘をついている可能性もありますから」
最悪の想像が現実となった。
この男はあろう事か難癖を次から次につけて、支払いをしないつもりだ。
「それはありません、我々ウィッチャーは何より信用を大事にしますので、その言葉は我々グリフィン流派への侮辱と捉えられても仕方がありませんよ?」
「いえいえそんな、我々はただ、慎重を喫したいだけなのです。」
「失礼ですがラヴィラック殿、誓約書によると依頼達成後の報告で報酬が支払われる筈です、その後の調査後ではありません、慎重を喫したいお気持ちはわかりますが、ウィッチャーの名誉にかけてこの仕事は完遂したと言わせていただきます。」
「それでも証拠がなければねぇ、、、」
「おい、証拠ならあるぞ?、、、ビューエル!、、、おい!、、ビューエルッ!!!、、、おーい!?、、、、」
ここでずっと黙っていた白髪の男が口を開いた。
なるほど、、、ドラウナーの首は難癖をつけられた時の、この時の為か、、、いったいどこまで先を見越してたんだ、、、?
白髪の男は馬の名前を呼ぶが、馬は一向に来ない、、、
白髪の男は痺れを切らして指笛を鳴らすと、馬は一目散に彼に駆け寄った。
そのまま馬の鞍からドラウナーの生首の帯を全て外すと、ギンターの足元に投げつけた。
「な、、、!?」
驚くギンターを尻目に白髪の男は喋り続ける。
「この街は一時期ニルフガードのものだった、だが5年前に永遠の炎と新しいビッグ・フォーが台頭して再び独立して自由都市となった、、、」
「麻薬王ギンター・ド・ラヴィラック、お会いできて光栄です。」
白髪の男はぎこちなく礼をする。
、、、伸ばす腕が逆なんだよなー、、、
「貴様は何者だ!!」
「私は、いいえ、我々はウィッチャーです」
「知っておる!この金の亡者が!!私の家からでていけ!シレッセン!」
「はい。」
平静を失ったギンターは従者を呼び、書類を読ませた。
この男、金持ちだと思ったらクスリを売って儲けていたのか、、、!
この外道が、、、!
「この契約書では『勇敢な者』と指定したはずだ!だがお前達はウィッチャーだ!ウィッチャーは人ではない、怪物だ!怪物に渡す金などない!!そして依頼には9月24日にここなら集まるように書いてある!シレッセン!今日は何日だ!」
「はい、9月14日であります。」
「お前達は契約違反だ!わかったら出ていけ!」
、、、俺は唇を噛み締めて、怒りを堪えていた、、、
この男は、この男こそ、人間じゃない、、、!
殺してしまおう、、、そう固く誓った。
「すごい開き直りだな、、、たかが500クラウンだぞ?」
俺の怒りとは裏腹に、白髪の男は冷静だった。
というより言われ慣れている、という方がしっくりくるような落ち着きようだ
「ウィッチャーに渡す金などない!貴様らなど!怪物同士殺し合って怪物の餌になれば良いのだ!」
「良いか?これ以上は言うな、後悔するぞ?ここにはウィッチャーが2人もいるんだ。どうなったっておかしくない」
白髪の男は目を見開き、ギンターに詰め寄る。
しかし
「私を脅すつもりか?あぁ、前にもいたぞ、私から金を取ろうとした輩が、そいつもウィッチャーだったな、そいつを捕らえて酷く責め抜いてやったぞ!何年にも渡ってな!最後は四肢を切り落として生きたまま犬の餌にしてやったわ!貴様らもそうしてくれるわ!衛兵!!!!衛兵!!!!」
ギンターは既に冷静さを失い、衛兵を呼んだ。
完全に敵対してしまったようだ。
まぁ、こちらとしても好都合だが
「、、、っ!待て、、、!」
俺が剣を抜こうとした時、
白髪の男がひどく動揺しながら両手を広げ場を納め、ギンターに語りかける。
「それは、、、、本当か、、、?」
「ウィッチャーの話か!?本当だとも!そいつの鎧、二本の剣!やつには勿体無い代物だった!」
「、、、そうか、、、、、、気が変わった」
「ゔぁっっっ!!!」
ッッ!?!?!?!?!?
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっっっっっ!!!!!!!」
白髪の男はギンターの胸の辺りに手を突き刺すと、ギンターの身体はみるみるうちに蒸発した。
蒸発、、、としか形容できなかった、、、
ただわかるのは酷く苦しみながら、ギンターが死んだ事だけだ、、、
残ったのはギンターだったモノ、、、骨だけだった、、、
「、、、何をした、、、?」
「何をしたかって?それは秘密だ。ただ、こいつは生かしておけなかった、まぁ、だからと言って殺したと言っていいか怪しいがな」
「それより衛兵が来るぞ、、、!逃げろ、!」
「いたぞ!!!あいつらだ!!」
「!?、、、クソ!」
俺は鋼の剣を抜いた。正義、騎士の美徳、そんなものは頭になかった。
この白髪の男の話に乗らなければよかったかもしれない、、、
俺の頭にあったのはそんな他責の感情だ。