「嫌あっ! 放してえっ!」
湊友希那は絶叫した。危険信号を受けた脳から飛び出した生命の叫びだった。しかし、その懇願を受け入れるべき対象である真っ黒なゴキブリは、うつ伏せで反抗している友希那のその声など聞いていなかった。もちろん、このゴキブリは大きさが友希那の全長とほぼ同じということを除けば一般的なゴキブリと同じであるため、人間の声を聞き分けることなどできないが、それでも友希那は、そんな昆虫の常識を無視して、ひたすら自分の安全だけを求め、自身の背に貼り付くそれに悲願を叫んでいた。
「放してっ……、放してよおっ……」
友希那がここまで叫び散らすのには他に訳があった。それは自身の股間に先ほどから当たっている異物の熱だった。明らかにゴキブリから伸びている突起で、不規則にびくびくと震えていた。まるで別の生き物かのような情緒のそれは、友希那が履いているパンツの上から、その薄い布を貫通して、熱という絶対的な存在感を示していた。
(こ、このままじゃ、私っ……!)
これからされるであろうことが、涙する友希那にはすぐに察することができた。だからこそゴキブリから一刻も早く逃れようとしていた。しかしこの蟲の力は思っていたよりも強力で、友希那のことを放してくれなかった。このままいけば確実に自分は犯されるはずだった。今まで静かに守ってきた純潔が危機に晒されていた。しかし今の友希那にはどうすることもできなかった。自分はこの蟲の前で無力であり、蟲なんかに自由を奪われており、それらの事実がどうしようもない屈辱として脳に蔓延っていた。
やがてゴキブリに動きがあった。友希那の背中で静止していたゴキブリは唐突に動き出した。それは友希那の股間に触れている突起ももちろん同様で、友希那のまだ純粋な亀裂を探り出した。
「な、なにしてるのっ! やめなさいっ!」
友希那の悲鳴もむなしく、ゴキブリは退けられたパンツの先の乙女の膣口を探り当ててしまった。他の肌の部位と比べると一段と柔らかいその割れ目を、ゴキブリは自身の突起で何度か突いた。自身の秘部に異物が触れると、友希那はそれだけで背筋に悪寒が走り、脳の奥がひやりと圧迫されるのを感じた。
「ちょっとっ……、本当にっ」
友希那の声を中断させるが如く、ゴキブリは突起を友希那の中にねじ込んだ。
「いぎいっ! ――い、痛いっ!」
一度の突き上げで突起は奥まで進んだ。友希那の未開発の性器を豪胆に割り、胎内へと侵入していく感触と同時に、ゴキブリは純潔を真っ向から破壊する破瓜の感触にも当たったはずだったが、いたいけな少女の初体験を味わい、その背徳的な趣きに酔う感性はゴキブリになどには無く、ならば何を思うのかと言えば、ただ雌個体の肉の穴をこじ開け、己の精を植えつけて子孫を繁栄させるという、ゴキブリであるならば至極ありふれた『本能』だけだった。
「う、嘘でしょっ? やめてっ……、やめてよおっ、そんなの……! 嫌よ! 嫌あっ!」
騒ぐ友希那は、自身の股間に挿入された異物の熱を感じながら、もう取り返しのつかないところまで来ていることをようやく理解した。
「ゴキブリのなんてっ……。そんなの嫌っ! 抜いて! 抜いてよおっ!」
小さければ簡単に踏み潰せるゴキブリだったが、しかし今の蟲は巨大であり、確実に友希那の一番を強奪しにきていた。人間ですらない異形の存在に、自分の最も大切な部位を蹂躙され、痛みだけを感じている友希那は、もう拭えない汚れた事実に心底憎くなり、しかし自分の身体は、挿入の衝撃で少しも動かず、もう本当に、どうすることもできなかった。
ゴキブリが動き出した。友希那の不本意に広げられた膣の肉壁が、蹂躙の痕が顕在する破壊された膣が、蟲の竿をしごき始めた。
「ああっ……、やめてえっ、やめてよおっ……!」
当然ゴキブリに友希那の身体を気遣う思考など無く、無遠慮で、ただひたすら生殖本能だけがある蠢きだった。それはまさに交尾と呼ぶにふさわしく、苦悶の声を漏らす友希那は、この行為がさっさと終われば良いとだけ考えていた。
(このっ……! 痛いっ……、早く、早く終わって……)
ゴキブリの動きが加速した。膣内で肥大化した竿がさらに激しく擦れ、その度に友希那は痛みを感じた。このまま股間周りを破壊され、自分の身体が真っ二つに割れてしまうのではないかと思った。配慮の無い蟲の行為の中で、友希那は自分に貼り付くゴキブリが本当にただの蟲であり、その蟲から自分は、ただの繁栄本能を満たすためだけの道具としか認識されていないということを察した。
高速で動くゴキブリの腰が、急速に上がってから一気に静止した。蟲は身体を友希那の下半身に擦り付けた。膣内の竿はより一層巨大化し、そしてその先端からは、熱く煮えたぎる液体が迸っていた。
「う、嘘っ……。これって……」
それは友希那の膣と、その先の子宮を不快に濡らし、じっとりとした重さのような存在感で胎内に在住した。
「いやっ……、嫌よっ……! そんなのっ」
蟲がしたのは明らかな射精であり、今友希那の身体の中にあるのは、明らかな精子だった。
「蟲の子なんてっ……」
友希那の脳裡に『妊娠』の二文字が浮かび上がった。それはどうしようもない波動を放ちながら友希那の鼓動を揺るがしていた。もしこのまま胎内で受精していた場合、友希那は蟲の子供を孕むことになった。それだけは嫌だった。わけもわからぬ合間に蟲と強制的に交尾をさせられ、許可も無く膣内に精を出された挙句、身勝手に妊娠するなど絶対にありえなかった。しかし現実として膣内に我が物顔で射精され、その精子は子宮へと到達しているようだった。蟲という本来貧弱で、文字通り足元にも及ばない存在に、こうして組み伏せられ、あろうことか純潔を奪われたという事実は、友希那の壮大な音楽まみれの人生の中で、異質を放つ汚点として存在し続け、本当に蟲の子を妊娠しようがしまいが、いつでも友希那を苦しめる要因になるはずだった。
(そんなっ……。こんなのっ、嫌よっ……)
脱力した身体の友希那は、股間の辺りに再びゴキブリの突起が触れるのを感じた。それはやはり不快な熱で、弛緩したはずの筋肉がぴくりと反応するほどだった。
(ああ、また――)
交尾はまだ、終わっていないようだった。