真っ白なシーツが眩しいベッドの上。
さながらダンサーみたいに周囲を無数のライトに囲まれながら、私は踊り狂う。
長い黒髪を靡かせながら、カラダの奥底から湧き上がる悦びに任せて、声を張り上げ舞い踊る。
淫靡に。淫猥に。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
白い裸身がリズミカルに弾んでベッドが軋む。スプリングの効いた弾力のあるそれの上で、私のカラダは意思にかかわらず跳ね上がる。
胸元で公表Eカップの大きな乳房がプルプルと震えて、その豊満さを見せつける。
子宮をたたき続ける亀頭の衝撃が、肉ヒダを削る剛直の鋭さが堪らない悦びになって甘い痺れを生み出す。
それが何よりも心地よくて。やめられないクセになって。
周囲を囲むカメラと大勢の男達の視線に心もカラダも焼かれて、ホットになって、ひたすらにカラダをくねらせるた。
屈強な男の上に跨って。快楽に、流されるままに。
「はぁっ、あっ、はぁん、んっ……あぁ、いいっ、気持ちっ、いい!」
視線を下へと向ければそこには男がいて、私が微笑めば彼もニヤリと白い歯を覗かせて、身体を起こして唇を重ねてくる。
騎乗位から対面座位へ。
より一層男根が押し込まれて下腹部を、身体の奥を圧迫してくる。息苦しさに吐息が漏れて、甘い声が溢れた。
重なったのは女のものとは違う、酷い感触の唇。でも不思議と嫌いじゃなくて貪りついてしまう。汗だくで息も苦しいのも構いなしに。――今日はじめて会ったばかりの男と、私は肌を重ね続ける。
舌を絡ませ唾を啜り、女のものとはまるで違う身体を抱きしめる。
腕を背に回して足で腰を挟む。女にしては背の高い私はさぞ絵になっていることだろう。
鍛え抜かれた屈強な肉体。ゴツゴツとしていて硬い筋肉まみれの肉体。
それが私を抱くために作り上げられたものだと思うと下腹部が熱く火照る。ただでさえ脱水ギリギリまで愛液を垂れ流してるというのにさらに溢れてくる。
「……
唇が離れ、男が私の耳元で囁いた。
私の、名前を。
耳たぶを甘噛みされると脳に電気が流れたような感じがして、何も考えられなくなった。返事など、できるはずがない。
焦点の合わぬ目で天井を見上げて。よだれが一筋、端から溢れた。
男からすればそれで十分だろう。私が快楽に堕ちていることなど、バレバレだ。
「……気持ちいいんだね。よかった……ならもっとペースあげるね……!」
一旦ナカから引き抜かれ、ぬぽんとマヌケな音を立てた。
「あんっ」
抜かれた感覚にすら快楽が混じり、私は不満げに声を漏らした。
そのまま体勢を変えられて四つん這いにさせられる。本音を言えばこの格好は嫌いだ。
お尻を雄の前に突き出した姿勢は何度やっても恥ずかしくて、今も尻たぶを掴まれ割開かれてるのも女陰も肛門も曝け出してしまって顔が真っ赤に染まる。
大きめの尻も今この瞬間だけは取り去りたいほど恥ずかしくて、開いてしまった陰唇からねっとりとした淫汁が太ももを伝うのを感じて、恥じらいから足を閉じたくなる。
「可愛いよチフユ。お尻もおまんこもどっちも綺麗だ」
「いやぁぁぁ、言わないでぇ……」
男はそういって私の尻を撫でてきた。そっと優しく餅をこねるように愛撫される。
褒められるのは満更ではないが、体勢が体勢だ。全身が赤く染まってるのは容易に察しがつく。
「挿れるよ」
言葉にするよりも早く、男のモノはすでに私のナカに侵入していた。
目にしなくとも分かるくらいに逞しい、メスを征服するオスのイチモツ。
1ミリ単位で挿入されるだけでゾワゾワとした刺激が背筋を流れ、足腰に力が入らなくなる。
女の弱さを嫌でもわからされる最悪で最高の瞬間だ。
膣が男を逃すまいと締め付け、離さないように喰らいつく。私が望んでやっていることではないが、半分本心だ。
だって今は見せていないけど、口元がだらしなく蕩けて、涎を垂らしているのだから。
「おっ、おっ、おっ、おっ、おっ」
背後から疲れてはしたない声が漏れる。女らしくない野太い声を張り上げる。
でも不思議とそれは嫌いじゃない。
だって私が声を上げるたびに、男のモノも硬くなっていくのがわかるから。
私で興奮しているのが、わかるから。
この私のカラダで、男が興奮しているのだ。
嬉しくなってこっちから腰を動かしてやれば、男は苦しげに声を漏らす。下腹部に力を込めて膣を締め付ければそれに切なさも混じってきた。
「……うっ、チフユちゃん。そろそろっ……」
「あはっ、いいよ……! ナカに出してもっ、いつでも出してぇぇぇ! ……あんっ」
男の腰がペースを上げて打ち付けられてくる。
脳を揺さぶるほどの振動に私のカラダから力が抜けていく。ズンズンと前に押されていき、同時に私も終わりが近いのを悟った。
手足が意思に反して痙攣して、視界がチカチカとする。息も整わなくて下腹部が燃えるように熱い。
何度も何度も経験した、絶頂の兆しだ。
「あっ、あんっ、あぁっ、あぁぁん! ……あっ、あぁ、イク、もう、イッちゃう……!」
「あぁ、一緒にイこう!」
男は痛いくらいに私の腰を掴み、自慢のモノを打ち込んでくる。
言葉通り、杭を打つように。
自分という存在を、わたしのナカに刻みつけるかのように。
「あんっ、あんっ、あんっ、あんっ、あんっ」
私のナカでびくびくと痙攣する肉棒を感じる。私の方も頭が真っ白になって何も考えられなくなってきた。
膣は別の生き物みたいにうねうなと唸り、暴走したかのように雄を責め続ける。その反応は私にさえ悦びを与え、更なる高みへと押し上げてくれる。
「はぁっ、はっ、あぁっ、も、もう……イ、クゥッ……」
「こ、こっちもだ……! 出すよ……出すからね!」
言葉より早く、もう我慢出来ないとばかりにピストン運動を加速させてきた。
私の背中に男の胸板が重なって、心臓の鼓動も合わさるように高鳴っていく。
「あっ! あっ! あっ! イク、もうイクッ……イっ、イっ、イっ、イキッ……イクゥゥゥ!」
男がトドメとばかりに腰を押し付けてきた瞬間、頭が弾けて視界が真っ白に染まった。押し寄せてきた絶頂感に叫びを上げ、背を逸らした。
女壺で迸った灼熱の牡液が私のナカを染め上げていく。柔肉が収縮するのに合わせて、残滓一つ残すまいと精を放ち続けている。
「あっ……あっ……あっ……」
ビクビクと痙攣するカラダからふっと力が抜けてベッドに倒れ伏す。お尻だけを突き出したまま。腰を引かれる感覚をゾクゾクとした刺激として感じて、間抜けな音を立てて肉竿を引き抜かれ、逆流する精液が太ももを伝うのが分かった。
「気持ちよかったよチフユちゃん……ほら、お礼のフェラは?」
「……ふぁ、ふぁい……」
呂律の回らないまま、私は男に従ってカラダを起こす。怠さで重いのを引きずって、咽せそうな程のオス臭さを話すそこに顔を近づけてから。
「……気持ちよくしていただきありがとうございます。……おちんぽ様にご奉仕、させていただきます」
その言葉だけで反応するイチモツを見て、私はまた下腹部が火照るのを感じた。
四つん這いで上目遣いをして男を見上げる。そして、その臭くてたまらないモノを躊躇なく咥え込んだ。
――
――――
「――カット! 2人ともお疲れ様ー!」
カットの声を聞いて、私はその汚根から口を離した。監督の合図がかかるまでしばらく咥えていたから顎が痛い。
身体を起こして横座りになってると、2人のスタッフが駆け寄ってきて私にバスローブをかけてくれた。そして撮影で乱れたメイクを直してくれる。
「お疲れ様ですチフユさん。飲み物とタオルです」
「チフユさん、メイク治しますね」
「……ありがとう、助かる」
スタッフに手渡された水に口をつけながらタオルで全身を濡らす体液を拭う。汗や愛液だけじゃない、色々な種類の汁に塗れた肌を念入りに丁寧に拭き上げる。
「チフユちゃんお疲れ様。さっきはごめんね、あんな激しくして」
「大丈夫です。私は鉄マンだからあのくらいなんてことはないですから。だから、気にしないでください」
「相変わらず凄いな。でも無理はしないでね。チフユちゃん、連日撮影漬けって聞いてるし、身体だけは壊さないようにね」
お色直しが済む間にさっきまでの媚びるような口調はやめて私本来の口調で男と会話する。いくら撮影の都合とはいえ、ああいう男受けを狙った言葉遣いは疲れる。
「チフユさんメイク終わりました。確認お願いします」
「ありがとうございます」
メイクの女の子が渡してくれた手鏡でメイクの最終確認をする。――それと同時に改めて自分の顔を見つめてみる。
切れ長の目、24歳よりも大人びた顔立ち、整った鼻と口。
「しっかし本当にソックリだよね。まるで
男の何気ない一言に私はピクリと顔を引き攣らせた。
本物の、千冬。
彼女が本物なら私は偽物だと言いたげな発言に苛立つ。
その言葉に無意識に握りしめていた手から力を歪めた。危うく握りつぶしそうだったから。
「……別に姉妹とかじゃないんでただのそっくりさんですよ。私、あんなカッコよくないですし」
「いやいや、実は生き別れの姉妹かもよ。口調さえ似せれば見分けつかないかも」
「そうか? ならここにいる私が本当かもしれないな」
「うわっ、本当に似てるな」
撮影所ではよくある話ではあるが、正直なところ気分のいい話題ではない。
「チフユさん、次の男優さん到着したのでスタンバイお願いします」
「はーい。では、私はこれで」
「もう次始まるの? 働き詰めだね」
「……働かないと生きていけないですから。さっきのエッチ、楽しかったです」
事務的に会釈して次のスタジオへと向かう。
本音を言えば今すぐにでも寝たかったが、今は、この話題から逃げられるだけ有り難かった。
――
――――
あれから二つの撮影を終え、スタジオを出る頃には日付は変わりかけていた。
「あっ」
誰にも聞こえないほどに小さな声が、不意に漏れた。
送迎車の中で夜の街を眺めていた私の視界を止めたのは、1人のOLだった。
知り合いではない。くたびれたリクルートスーツを着たたまたま見かけただけの女だ。
ボサボサの髪にお世辞にも整ってるとは言えない顔立ち。スーツ越しでもわかる平均より下のスタイル。姿勢の悪さや放ってる雰囲気も相まって、私が男でも彼女を誘うなんてことはしないだろう。(ホストなら搾り取って風俗に沈めるくらいはするだろうが)
でもそんな女から目が離せないのだ。
理由は分かっている。――なぜならあれはかつての私と言っても誇張にならないのだから。
この織斑千冬という女に似た姿になる前、私は地味で何の取り柄も魅力もない女だった。
こことは違う世界に生き、誰の興味も関心も惹かない、無個性で無価値な人間。運動も勉強も人並み以下で容姿も常にクラスで下から数えた方が早いレベル。
それでも人生を変えたくて必死に努力して入った一流企業は私にとって地獄でしかなかった。
セクハラ、パワハラ、モラハラ、恫喝、脅迫、いじめ。
これまでよりも何倍も酷い苦痛を味合わされ、あの時の私の心は完全に死んでいた。
そしてあの日、あの限界を超えたその瞬間に、通勤ラッシュの駅のホームで身を投げ出して――
「――チフユさん」
運転手に声をかけられて、私はハッとした。
気づけばもう車は私が住んでいる高級マンションの真下へと着いていた。
「起こしてすみません。撮影でお疲れなのに」
「……いや、ぼーっとしてただけなので気にしないでください。お疲れ様です」
そそくさと会釈して送迎車から降りる。走り去っていく車を見送ってから、私は自分が住んでいるマンションを見上げた。
私が文字通り身体で稼いだ、その富の象徴を。
「――ようやく見つけたぞ」
背後から声がして、私はゆったりと振り向いた。
後ろを見ずとも声の主は分かっている。何故なら、その声は普段から聞き馴染みのある声――私の声と瓜二つだったから。
「あぁ、
「……!? お前も、やはりあの研究所から……」
動揺しつつも
――線路に飛び降りた私がたどり着いた先。それは天国でもなければ地獄でもない。全く未知の別世界だった。
真っ暗な研究室。その中にいくつも並んだ培養槽の中で私は目を覚ました。
全身をチューブで繋がれ、拘束具によってまるで胎児のように身体を丸めた姿にはじめは病院か何かの医療施設かと疑った。
だが、水槽に映る自分の顔――前の自分とは似ても似付かぬ程に整った美しいその美貌に目を奪われて。そして、直後に流れ込んできた自分のものではない記憶から、私はこれが別人の身体であることを悟った。
目覚めた直後から周りを囲むように白衣の集団が集まってきて、私を様々な目で見つめ言葉を向けてきた。
『失敗作』
『出来損ない』
『廃棄処分済みの個体』
全ては聞き取れなかったが、鋭敏になった聴覚が捉えた一部だけでもどうやら私の存在は彼らにとってもイレギュラーなのはすぐに分かった。いや、分からされた。この身体は前の私よりも遥かに優れていたせいで。
白衣達は私の処遇について揉めてるらしく言い争いを始めた。私を予定通り処分したい者達もいれば、特異ケースときてモルモットにしたい者達もいた。
当の私からすればどちらもお断りだがそんな意見などここでは通らない。
結局は処分派が勝ったらしくて、培養槽のボタンに指をかけるのが見えた。
抗おうにもチューブと拘束具に縛られた状態では何も出来なくて。声も出せぬままに2度目の死を迎えそうになった瞬間――施設内が真っ赤に染まり、警報が鳴り響いた。
直後に駆けつけた警備員が、何かを叫んだと同時に施設が大きく震えた。
そして、白衣達は私のことなど忘れたかのように背を向け、一瞥すらすることなくその場から消え去った。
処分を免れ安堵するのも束の間、施設の揺れは次第に激しさを増していく。
このままではまた死ぬのは確定で、私はそんなことごめんだと懸命にもがいた。力が入らなくとも必死に暴れ、抵抗して。
それでもチューブを剥ぐのが限界で諦めた瞬間に施設の爆発がこの部屋にも到達した。
凄まじい衝撃に水槽は一瞬で割れて私は投げ出された。ハダカのままガラスまみれの床を転がり、口を覆っていたマスクを剥がした。
全身が痛くて、目を閉じれば気絶してしまいそうで。
けれども施設の崩壊は待ってくれない。私は痛む身体を引きずって命がながら脱出したのだった。
「――あの時はありがとう。あなたが逃げてくれなきゃ、私も逃げられなかったから」
後からとある情報筋から聞いた情報によれば、あの施設の爆発は千冬の脱走が原因だった。
『織斑計画』という究極の人類を作るとかの意味のわからない計画唯一の成功例である彼女と協力者が脱走するために施設を破壊。その混乱に乗じる形で私も脱走に成功したのだから。
「まさか私以外にも生き残りがいたとはな。他にもいるのか?」
「さぁ? 瓦礫の下にはもしかしたらいるんじゃない?」
彼女の問いに私は適当に返事をした。実際のところ私と千冬以外の生き残りにはあったことがないから答えようもないのだが。
「生き残りはお前と私だけか。寂しいものだな」
「えぇ、だからこれからは2人仲良く支え合って――なて言いにきたわけじゃないよね?」
なかなか本題を切り出さない彼女に私から話してみた。普通なら思い出したくもない記憶を連想させる相手に会いに来る理由など限られている。
「悪いことは言わない。こんな生活、早くやめろ」
「こんな生活って?」
「……っ、そ、それは――」
「人前でハダカになって、AV女優やってること?」
私の言葉に彼女は顔を真っ赤に染めた。
「……あぁ、お前ならもっとちゃんとした仕事で食べていけるはずだ。それなのにどうしてこんな――」
「――人の仕事をまともかどうかは私が決める。偉そうに指図するなよ」
千冬の発言に私は少し苛立ってしまった。
柄にもなく睨みつけてやれば千冬は珍しく怯んだ様子を見せた。この顔は貴方の物でもあるんだけど、普段からこんな険しい顔してる自覚がないのかな。
「……こんな事……ちゃんとした仕事……そんなこと言えるのは恵まれた人間だけだよ、千冬」
靴を鳴らして彼女の前に立つ。
背丈は同じで私も彼女もヒールを履いているのに何故だか今の千冬は小さく見えた。
「私には千冬みたいな協力者はいなかったの。自分のカラダ一つで研究所を飛び出して、頼れる人なんて誰もいないこの広い世界で、私は自分のカラダだけを頼りに生きてきたの」
私が一歩踏み出せば千冬が下がる。
押しかけてきたのは彼女のはずなのに今では立場逆転。私の方が優位に立っていた。
「わ、私だって苦労してきた……。お前と同じように、苦しい思い、辛い思いをして今の立場がある……だから」
「だから何? 私は千冬とは違う。あなたは成功例で私は失敗例。自分が出来たからって相手も出来るなんて思い上がるのは強者らしい発言だね」
彼女の耳元ギリギリまで近づいてから、そっと囁く。
「――それに知ってるよ。あなたが生きていけてるのは、10年前。世界を歪めたからでしょ?」
私の言葉に彼女は凍りついたみたいに動かなくなった。
「知らないと思った? 白騎士事件のこと。私には協力者はいなくても情報を知る術はある。あなたと違って己で一から気づき上げたものがね」
青ざめてすっかり勢いのなくなった千冬を見下ろして、私は微かに笑った。
――そして、思いつきのままに彼女のスカートを捲った。
「……なっ!?」
タイトなスーツミニスカートが捲られると顕になったのは黒いショーツ。地味な安物を履いてると思ったが意外にセクシーでつまらない。
「へー、意外とセンスいいんだね千冬」
「なっ、き、貴様……い、いい、一体なんのつもりだ!?」
顔を真っ赤にして狼狽える千冬を見て、私は笑いを堪えられなくなった。
「千冬ってさ、処女でしょ?」
これまでの赤面よりも一際真っ赤に、さながら茹蛸みたいな反応が答えだった。どうやら図星みたいだ。
「ネットで散々囁かれてたけど本当だったんだ。まぁその態度じゃ男から願い下げか」
ミニスカートの裾を懸命に伸ばして何とか庇おうとする姿がいじらしくて、これまで持ってきたイメージが壊れたギャップが面白くて止まらなくなっていく。
気づけば彼女を壁際まで追い込んで、顔もすぐ間近、互いの吐息と心音の音がはっきりと聞こえるまでに接近した。
自分と同じ顔だが、本当に整った顔立ちだ。同性からも異性からも愛される理想系。まさに究極の人類と呼んでも過言ではないだろう。ちょっぴり汗臭くて微妙に色気の欠けた服装なのが玉に瑕だが。
綺麗な輪郭の顎を掴み上向かせる。そして、その瑞々しい唇にむしゃぶりつく。
「――――!?」
千冬は目を見開いてキスのショックに狼狽えてる様子だ。
人造人間といえど、もう十数年は人として生きてきた乙女だ。まさかファーストキスが同じ顔の女に奪われるなど予想もしていなかっただろう。
ならその思い出を少しでも良いものに変えてやろう。
彼女の身体を抑える腕を回して乳房と尻を揉む。本来なら彼女と私のサイズは同じはずだが、男に揉みしだかれてる分、実はわたしの方が勝っているのだ。(公表Eだが実際はもう少し上だ)
ブラウスとスーツの生地越しでも身体の滑らかさは明らかで、これがまだ誰の手にも汚されていない事実に興奮が隠せなくなる。
その勢いに身を任せてブラウスのボタンを外してやれば黒いブラジャーが露わになった。形の良いそれは行儀良く収まってはいるが、欲求不満げに息づいているようにも見えた。
スカートも完全にまくり上げてショーツに指を挿し入れる。くちゅり、と音がして私の理性が飛びそうになった。
「……っ、いい加減に、しろっ!」
だがここまでだ。
ショーツに侵入された瞬間、千冬は私の身体を突き飛ばした。反動で互いに尻もちをつく。
私が倒れた隙に千冬は乱れたブラウスを正し、ショーツを治し背を向けた。
去り際、私の方へと振り向き、涙ぐんだその目で睨みつけてきた。
「……最低な奴だ。貴様のような女を、私は2度と同族だなどとは思わない……!」
そう吐き捨てると千冬は足早に私の前から姿を消した。きっと彼女が私の元に来ることは2度とないだろう。
私は千冬のショーツに突っ込んでいた方の手、その指先に残る愛液の滴をペロリと舐めとった。
「……弟クンにもよろしくね。千冬」
そして、クスリと静かに笑った。
――
――――
私の家は高級マンションの最上階にある。
街を全て一望できる高さのベランダから、全てを見下ろす。何も着ていない一糸纏わぬ姿で私は空を見上げた。
「……手に入れたんだ。この身体で。自分の力で」
誰も聞いていないのに、言い聞かせるように呟く。
「……絶対に手放すもんか、この生活を、この人生を」
最悪だった前世に思いを馳せ、そう誓った。
『失敗作』
『出来損ない』
この世界に来て初めて聞いた言葉だが、これは前世でも散々言われてきたことだ。友人や先生、自分の親からも。
「もう誰にも失敗作なんて言わせない……私にだって、出来損ないにだって意地はあるんだ……」
天に向けて拳を握りしめる。
もう誰にもこんなことは言わせない。どんな手段であれやり方であれ、必ず成り上がる、生き残る。
それだけが私の願いだ。
「……今回こそ、生き抜いてやるんだ」
言葉は夜の闇へと流れ消えてきく。けれども胸には刻み込んでおけば忘れはしない。
私は、今度こそ幸せになってやるんだ。