ガチャリ、という音と共に、後方に聳えているこの湊友希那の部屋の出入り口が開かれた。すぐに人の気配が侵入し、それは机に向かっている友希那の横で止まった。
「友希那ちゃん、何してるの?」
やはりそれは男の声だった。
「作詞よ」
友希那は平然とした受け答えを出した。机の上には紙が置かれ、友希那はそこに次の新曲の歌詞を記入していた。
「……何しに来たの?」友希那は胸中に咲いた疑問をそのまま吐き出した。
部屋に勝手に入ってくるのは少し嫌だったが、それでもその相手がこの男であることを考えると、不思議と怒りはすぐに無くなった。友希那は改めて考えた。どうしてこの男には何もかもを許してしまうのだろうと考えた。しかし答えは出てこなかった。何か、もやのようなものが脳裡に繁栄しており、男について深く思考するのがどうしてもできなかった。
「いやね。作詞の進捗はどうかなって」
「進捗? 正直、あまり良くはないわ」
友希那はため息交じりに答えた。すでに作詞を初めて一時間は経っており、創作の進捗ははっきり言ってあまり良いものではなかった。
「そっか。ところで口使わせてくれない?」
「構わないわ」
男はズボンとパンツを下ろして竿を取り出し、友希那が向かっている机に横から入って乗り上げた。その瞬間上の作詞の紙がくしゃりと崩れたが、友希那は構わず安全な箇所を狙ってシャーペンを走らせた。
次いで、口に男の弾頭が触れた。それは籠った熱を持っており、ぶよついていたが芯がある硬さも持っていた。横から口内に差し込まれてそのまま侵入してくる竿を友希那は無表情で受け止めた。唇で挟むと、そのまま舌と頬の肉でしごき始めた。
(それにしても、なんだか――)
横から頭部を掴まれ、そのまま器具のようにごしごしと動かされている友希那は、口内で異質を放っている男の陰茎を舐めながら違和感を得ていた。なにか、この男にとてつもない失態を見せているような気がしてしょうがなかった。自分は取り返しのつかない間違いか、あるいは巧みな罠のようなものにかかっているのではないかと思っていた。しかしいくら考えてもその違和感の正体はでてこなかった。それは男のことを考えた時と同じで、脳裡にもやのようなものが広がり、思考そのものを弛緩させているような具合だった。
男は次第に友希那の頭部を動かす腕を速めた。口内では頬の肉と舌が休むことなく竿をしごいていた。友希那もそれに合わせて舌を高速で動かして答えた。単調な舌の蠢きだったがそれでも男にとっては極楽であるらしく、口の中の竿が露骨に大きく震えていた。そこで友希那は再びこの違和感について思考した。しかし間もなくしてまたもやが脳に舞い、思考そのものを停滞させた。
(駄目ね……。今は作詞に集中しなきゃ……)
揺れ動く頭をそのままに、視線だけを紙に集中させて、シャーペンを握る素手に力を入れた。曲について思考するとすぐに良い歌詞が思いついた。友希那はそのまま紙に記入しようとした。しかしその瞬間快感に震えた男の膝が、友希那がちょうど書こうとした位置に触れ、ぐしゃりと潰れてしまった。友希那は平然とした顔で別のところにシャーペンを触れさせた。頭は相変わらず激しく振られており、紙の上の文字を捕えるのが少し大変だった。
「ううっ……、友希那っ、もうイくぞっ……!」
男が呻き、同時に友希那の頭部を自分の腰に擦り付けた。友希那は視線は机の上の紙だったが、その頭部の半身は男の腰の濃い陰毛が生え盛っている股間に埋まっていた。視線はやはり机の上の紙に向いており、男が射精しているうちも思いついた歌詞を冷静に記入していた。
口内で炸裂する苦い感触は間違いなく男の精液だった。それは友希那の口を濡らし、べっとりとした質感を与えて滞在した。舌がひりつくほどの激臭と不味さが脳にまで響き、停滞していた思考を悪い意味で揺るがした。
「ふうっ。気持ち良かったぁっ……」
男は友希那から手を離し、口からも竿を抜いた。陰茎が去った後の友希那は冷静な顔で居ずまいを正し、すっかりぐしゃぐしゃになった紙に改めて歌詞を記入した。口には出したばかりの男の精液があった。
「友希那ちゃん、ちゃんと飲んでね……」
机から降りた男の声と同時に、友希那は口の中の精液を一気に飲んだ。粘つく精液は喉に絡みついてしつこかったが、それでも友希那は何度も喉をゴクゴクと鳴らして全てを飲みきった。精液が喉を下り、口内に何も無くなると、友希那は口を開いて男に見せつけた。
「ちゃんと飲んだんだね……。ところで今、自分がなにしたか、わかる?」
「何って……。あなたが大事な作詞中に乱入してきて、身勝手に口を使ったんでしょう? せっかくここまで書き留めた歌詞の紙も、あなたの下らない性欲のせいでぐしゃぐしゃよ」
友希那はすっかり崩れた紙を見つめながら毒を吐いた。
「そうだね……。じゃあ僕の精液の味はどうだった?」
「精液の味? そんなの最悪に決まってるじゃない」友希那は先ほど飲み干した男の精液の味を想起して口を開いた。「苦くてねばついてて、この世にこんな不快な液体があるのが驚きだわ。これが催眠でさせられた無自覚フェラじゃなければ、絶対に口に入れたくない汚物の中の汚物ね」
「そっかそっか! でもそんな苦いものを全部飲んでくれて、ありがとね! 作詞、頑張って!」
「ええ」友希那は冷静に答えながらすっかり潰れた作詞の紙に向き直った。
(やっぱりなんだか、変……)
精液と唾液が混ざった液体が口角から垂れている友希那は、再び男と違和感について考えた。
例のもやが、ひときわ強く脳に蔓延った。