小柄な新人女優が映画で少年役に抜擢されて男の子の気持ちを理解する為に立ちションを極める話 作:喋家月餅太
外のトイレでは便器に背を向けておしりを突き出してするタイプAの、家のトイレでは器具を使って便器に向き合ってするタイプBの立ちションをしている。そんな彼女にも便器に腰掛けて用を足すことが一日1,2回は訪れる。それはうんちをする時だ。
これは男女どちらも必ず座ってするものだ。だから男女で何も違わないと思っていた。だが、立ちションをするようになってこれも男女で違うということを発見した。それは便意がまだ弱くおしっこだけをするのかうんちもしてしまうのかという判断がし辛い時だ。
これまではそう言うときは特に考えることもなく便器に座ってからうんちが出そうならそのまま出してついでにおしっこをすればよかった。うんちが出ないようならおしっこだけ出せばいい。だが、今はタイプAにしろタイプBにしろ便座に腰掛けるかどうかの判断をする必要がある。お腹の状態を見極めて座るべきか座らないべきかを考える必要がある。正直、立ちションが当たり前になった今なら便座に腰掛けるのは多少億劫に思える。だからなるべくおしっこだけで済ませたいがそれで立っておしっこをしたあとで便意が本格的にやってきて便座を下ろして腰掛けて用を足し直す必要にかられることもある。
家のトイレや女子トイレでよかったと彼女は思った。男の子だったら小便器大便器の使い分けがある。一度小便器で用を足した後でトイレに出る前にそれよりも面倒な大便器を使いに個室に入るのは面倒だろう。男の子の方がトイレで用を足すのは楽に思っていたがこういう時は男の子の方が面倒なんだろうと思った。
まさに今の彼女がその状態だった。弱い便器を感じて便座に腰掛けたもののうんちはでなさそうで久しぶりの座ってのおしっこをしていた。日常じゃなくなった座ってのおしっこをしてみて思うのはやっぱり面倒だということだ。それに今日はおしりにもおしっこがかかってしまった。洋式便器でも和式便器でも女性器からのおしっこはおしりや太ももにかかるリスクがある。それが特に面倒だ。
彼女はおしりを拭いて、股間を拭いて、立ち上がって水を流すと風呂場を出た。彼女はこれまで感じなかった面倒くささがなんか新鮮に思えた。これはトランス男性のブログでもそう書いている人がいた。立ちションが当たり前になると座ってする事が面倒だと。それを書いた彼の場合は手術でちんちんを作った人なので完全に男性のトイレの仕方になっている。生まれながらの男性も大なり小なりそう思っていることだろう。その生まれながらの男性の声に接する機会がゼロなのでわからないものだが、予想はできる気はする。
外では仕事以外では少年のつもりで態度や仕草や言葉遣いを男のものになるよう意識しているが、そんな日常の中でまた一つ男の子の気持ちを理解できた気がしてステップアップできたように思えた。
映画で彼女が演じる少年もこの面倒臭さを日常で経験していることだろう。
彼女には趣味がある。いくつかちょっとした趣味があるが手間と時間とお金をかけてるのはバイクだ。125ccのものを持っていてあまりスピードを出す方ではないが田舎の方に一人でツーリングに出かけたりする。元々は原付を交通の便の悪いところに出かけるために使っていたが、芝居やレッスンで疲れた時に人のいないところに行きたくて山や人気のない農業地帯に出かけているうちに原付ではキツくなって今のバイクに乗り換えた。
家庭教師先が少し駅から遠い事もあり、その際の通勤に使ったりしていたがこのところそれ以外では乗っていなかった。乗る余裕がない事も予想していたためメンテナンスに出していたが、返ってきた事もありいつも出かけてる場所の一つである小さな港町にいく事にした。
バイクに乗って1時間ほど一般道を走るとその街に着く。大抵は道の駅のフードコートのような食堂でお昼やコーヒーを楽しんで、付近を散歩したり堤防で黙って海を見たりしている。何度も来ている事もありこの小さな町のあちこちに詳しくなっていた。
人気がなくて一人になれるところをいくつか知っている。今来ている一車線の細いアスファルト舗装ではないものの整備されたから道の傍から伸びる鉄塔のメンテナンス用と思われる獣道のような通路もそうだ。藪に挟まれているがすぐに広い空間になっていて、バイクを押して入っていける。
鉄塔のメンテナンスなどの資材置き場か何かに使われるのか定期的に草刈りが行なわらていて奥の方まで道が続いている。彼女はこういった道路のすぐ近くの人のほとんど入ってこない場所をいくつか知っていて、そうした秘密基地で折りたたみ椅子を出してキャンプ用ガスコンロでお茶を入れて飲んだりもする。
今日は今までこういった場所に来た時にはなかった目的でやって来た。
立ちション器具に慣れてきたので、屋外で使ってみようと思ったのだ。器具が届いた日から練習を重ねてきちんと器具の中におしっこを出す事が確実にできるようになった。家でのおしっこはほぼ100%器具での立ちションだ。だが、まだ外ではタイプAのお尻を突き出すやり方を続けている。だから外で試してみる機会を伺っていたのだ。
タイプAのように外のトイレの個室で試さず屋外でする事にした理由は家でタイプBの立ちションをしていて解決できていない問題による。器具を使ってタイプBの立ちションをする場合はどうしても遠くに飛びすぎてどうしても便蓋や便器の向こう側の縁に当たってしまう。つまり遠くに飛びすぎるのだ。彼女はこれはコツを掴んで角度などを調整すればいけるだろうと当初は思っていた。だが、角度を変えようとすると性器に着けている側がズレてしまい、おしっこが外に漏れてしまう。つまり、彼女の持っている立ちション器具では洋式便器での立ちションに使うには飛びすぎるのだ。
これに対して彼女は色々調べてみた。その結果、2つのことが分かった。この器具はそもそも女性が屋外でお尻を丸出しにせずに用を足すために開発されたものらしい。そしてトランス男性向けには別途製品が存在するとのことだ。彼女同様に洋式便器で使った人は同じ状況になっているようだった。この器具の開発意図や開発動機になった需要に沿って使うとなると洋式便器での立ちションは想定されていない。商品名も女性向けであることを強調したような名前であり、女性がアメリカのような長距離の車移動でドライブインなどが長距離に渡ってない環境で尿意を催した場合に誰が通るとも分からない道の端っこでパンツを脱いで下半身裸でしゃがまなければならない。彼氏や家族ならまだいいとして、見ず知らずの人に通りすがりとはいえお尻を丸出しにしているのを見られてすぐにうごけないしゃがんだ姿勢になる事は好ましくない。彼女もそれについて書かれたサイトを読んで同じ意見を持った。この器具はそんな女性に男性のようにパンツを下に下げて立ったままのすぐに何かあったら動ける姿勢でおしっこをできる為の物だそうだ。どうやらすぐに装着できて失敗しづらい設計にした結果、遠くに飛びやすい構造になったらしい。あとは出終わりの段階で勢いが落ちた際に足にかかってしまうのを防ぐためあえてそうしているという説もある。これを考えるとトイレの個室でこの器具を使用する理由がないのだ。お尻を出すのを見られることや外ですぐに動けない姿勢で無防備な姿を晒す事を防ぐ目的ならば、誰にも見られることがなく安心が確保できるトイレの個室は安心して下半身裸に慣れる場所だ。それに女性は基本的に座っておしっこをすることに対して何も抵抗がない。誰かに見られることが嫌なだけだ。
そして、立ちションをどうしてもしたい、座ってするのが嫌だと感じているトランス男性向けにはトイレでの使用を考慮した製品が別途ある。どうやらそれは下向きにおしっこが出る構造で股間につけてそのままパンツを履けるようなものらしい。男の子の感覚を知りたいのであればそういった物を使うのもよかったのかもしれないが、彼女は立ちション器具を買うにあたり真っ先に却下したものだった。というのもセミオーダーや完全オーダーメイドで高いからだ。つけっぱなしに出来るという構造上、その人の女性器に合わせた特注品だ。ハードカバー本ほどの価格の彼女が買ったものに対して何万も何十万もする。流石にそれは買えない。足のない人の義足ならぬちんちんのない人の義ちんちんとでもいうようなものなので彼女の役作りの過程で男の子のおしっこの体験をしてみるという目的には過剰だ。もっとも彼女が一つの役で何千万ももらえるような大物でこれが大作ならそのくらいの物を用意したかもとは考えはしたが。それに多くのトランス男性も立ちションを希望する人は彼女が買ったような女性用の物やそう言う製品でトランス男性向けに多少アレンジした製品を外や男子トイレで使用しており、個室しかないトイレや家では座っておしっこをしているらしい。
そういう理由から、彼女も器具を使ったタイプBの立ちションは家で使う必要があまりないのかなと考え始めていた。だが、立って自分の前方におしっこを飛ばす体験をする機会を増やしたいとは考えていた。そこで考えたのは人気のない場所にバイクで出かけて屋外での立ちションをすることだった。
彼女はここで誰かに会ったことはないが念のため人がいないことを確認した。気配でも目視でも誰も居ないことは確認できた。
彼女は緊張して草むらの前に立った。昔、子供の頃、男の子たちが草むらに向かって並んでおしっこをしているのを見たことがある。もし仮に誰かが来たとしても背を向けていれば対処する時間を稼げる。それになんとなくこういう山や原っぱで男の子がおしっこをする際に藪や壁に向かってするイメージがあったからだ。
彼女はパンツをお尻のあたりまで下げて股に立ちション器具を挟んだ。いつも使ってる時と同じ位置でズレがないことを感覚を研ぎ澄まして確認した。これで立ちションをする準備は整った。彼女は神経を股間に集中させるとおしっこを出した。女性特有の勢いのある音が器具の中で響きそれから少し遅れて器具の先端からおしっこが出た。これまで一番飛んだ時にも便蓋にあたってこの器具でのおしっこの勢いが分かることがなかった。小陰唇の奥から勢いよく出るおしっこが器具の中を流れてその船体から放出されかなり遠くまで飛んだ。多分、家での彼女と便蓋の距離の1.5倍ほど先まで飛んだ。
彼女は自分の股間から前に向かっておしっこが遮るものがなく飛び、木や藪に囲まれた場所とはいえ青空の下で自分の背丈からの景色を眺めながら尿意が減っていく感覚を感じてとても心地よさを感じた。とても開放感があった。今まで生きてきておしっこを外でする機会はあったがこそこそ隠れてしゃがんでする事しかできなかった。でもそれが今は男の子の特権だと思っていた高い位置からの景色を見ながらのおしっこをしている。今は木に囲まれた草むらに向かってしてるが開けた場所や高い場所からしたらさぞ心地良いことだろう。彼女はこれまでの立ちション研究の中で一番楽しいという気分を味わった。おしっこが出終わる時、尿意から開放された感覚とともにとても充実感があった。男の子はこんな感覚でおしっこをしているのか。改めて子供の頃偶然出くわした男の子たちの外での連れションを思い出した。彼らのしてたこと、彼らにとって当たり前の事がこんなに心地良いものだったとは。なんだか彼女はとても満たされた気分になった。
もし誰かがここに入ってきたらまずいと思い、彼女は股間から立ちション器具を外してパンツをズボンを上げた。そして、飲用とは別に用意しておいたペットボトルに汲んだ水で器具を洗ってジッパー付きビニール袋に仕舞った。
彼女はバイクに寄りかかり、つい先ほどした自分の前の方におしっこを飛ばす立ちションをした様子を思い出していた。あんなにおしっこを「飛ばす」という行為が気持ちのいいものだと思わなかった。それにしゃがんでおしっこした時のように足の間にできたおしっこの水たまりを踏まないように気をつける必要もない。彼女の場合器具があるのでその片付けの面倒くささはあるが、それを除くとおしっこを出す事に関しては細かいことを気にしなくていい気軽さが魅力に感じた。今回はお尻までパンツを下げてしたが、慣れたら前の方だけ手で下げてその隙間に器具を差し込んで男性とほぼ同じ形でする事も可能みたいだ。今の状態だと木や草むらで腰から下が隠れる場所じゃないと出来ないが前を下げるだけでできるように慣れば男子トイレで立ちションをする事もできるかもしれない。実際に下半身の手術をしてなかったり、していてもペニスの形成をしてないトランス男性でこの器具を使って男子トイレで用を足してる人はそれなりにいるらしい。
彼女はもっと男の子の景色を知りたくなった。今回は出したおしっこは草むらの中に隠れた地面が砂利や土の場所で立ちションをして脚の間ではなく自分の前方におしっこの水たまりが出来てるところも経験したい。外での立ちション器具の使用というハードルを超えた彼女は男の子の振りのステップアップにワクワクしていた。
今日は忙しさから離れて頭を休ませる為にツーリングをしている。彼女は自分の暮らす街にはすぐに戻らずあまり通る頻度の低いルートを通り途中の道の駅に寄った。前を通り過ぎた事はあるが中に入った事はない。彼女は道の駅が好きで複数軒あるルートを通る時はハシゴすることがある。今日は遠回りしたかったので初めて来る道の駅で休憩を取る事にした。午前中の早い時間に出かけたので今はお昼時を少し過ぎていた。昼食を取っていなかったのでここで取ることにした。地元ベーカリーのパンと地元で獲れた魚を使った照り焼きバーガーが美味しそうだったのでそれを頼んだ。外の見える席で遠くの山や国道を走る車を眺めながら彼女は食事を楽しみ食後には紅茶とクッキーを楽しんだ。
しばらくぼうっとしていたが身体も休まったのでそろそろ帰宅しようと食事のトレイを片付けて道の駅を出た。
途中トイレに寄ろうとしたが、トイレは別の建物になっているらしい。彼女はその案内を見ると駐車場に面したトイレの前まで来た。そこで彼女は考えた。この村と道の駅には知ってる人はいない。もし、僕が男子トイレに入っても男子中高生が入ってきたようにしか見えないんじゃないかと。彼女は一人でいる時に役作りの一環として意識して一人称が「僕」の独り言を言うようにしてたが自然に頭の中の一人称が「僕」になっていた。さっき男性とほとんど同じ形で立ちションをした事から自然と男の子のモードにスイッチが入るようになっていた。それなら大丈夫じゃないかと彼女は思った。空いていたら器具を使って小便器でやってみよう。器具をすぐに出せる状態にして彼女は意を決して男子トイレに入った。幼い頃に父親と二人で出かけた時を除けば初めて男子トイレに入る。おっかなびっくり入ると怪しまれると思い「僕は男の子だ」と言い聞かせながら中に入った。
「……!」
男子トイレにはすでに先客がいた。4つある小便器は奥のものを除き中年男性3人で全て使われていた。一つ空いているが彼女の今のスキルだとパンツとズボンをお尻が丸出しになるまで下げないと立ちション器具を使えない。それにすぐ隣に人がいると器具をつけるのを見られて女だとバレてしまう。男子トイレに入ったはいいがこれでは立ちションは無理だ。彼女は慌てて個室の方を見た。個室は使われていなかった。急いで個室の中に入った。役作りを始めたばかりの頃に公園の男子トイレで外からおしっこをする少年たちを見て以来男性がおしっこをしてるところをはっきりと見るのは2度目だ。改めて男性がトイレでおしっこをしてる姿を見ると後ろ姿は丸見え、お互いの距離は近く覗こうと思えば覗ける。男性同士お互い見たりするものなのかは分からないがちんちんのないボーイッシュな女が横で立ちション器具を付けてしてたら痴女以外の何者でもない。自分が立ちションを失敗しないことばかり考えてたが、男の子がトイレでしている事を経験するには周りにわからないというハードルがありそれが思ったより高いことがわかった。そもそも今こうして個室に入ってるのも十分痴女だ。絶対にバレてはいけない。そう思った。
彼女はしょうがないので洋式の大便器の便座をあげてズボンを下ろすと便器の方にお尻を突き出した。すっかりやり慣れたタイプAの立ちションだ。これに慣れたので便座に座ってするのがすっかり面倒になったし、トランス男性のブログで見た女の股間からおしっこの出る音はちんちんではそんな音がしないというのを読んで便器の中の水たまりにおしっこが落ちる音でそれをかき消す必要性も感じたからだ。すこし気まずさと不安を抱えながら彼女はおしっこを出した。あまり自覚はなかったが膀胱には結構溜まってたらしく結構多く出た。おしっこがで終わると彼女は脱力した。時々この脱力で膝がガクンとなるが今日は持ち堪えた。これは長年便座に腰掛けておしっこをしてきて排尿後の脱力に対抗する必要のなかった中でついた癖だろう。
彼女は股間を拭くとパンツとズボンを履いて個室を出た。個室の外にはもう誰もいなかった。外の様子も伺ったが駐車場にも誰もいなさそうだ。彼女は以前スーパー銭湯でしたように小便器の前に立った。あの時の小便器は子供用に作られたものだった為、小さかったがこの小便器は彼女の胸の少し下くらいまで高さあった。思ったよりも大きい。彼女はズボンのチャックとボタンを開けて前の方を割れ目の少し下くらいまで下ろしてみた。ここで用を足すにはこの状態で股に立ちション器具を挟み込まないといけない。そして、左右隣の小便器を確認した。人がいたら見えなくもないがよほどじっくり見ないと股間は見え無さそうだ。便器の左右端がちょうど目隠しになってくれるみたいだ。当初危惧したよりも見えないだろうと彼女は考えた。それに女の感覚ならおしっこしている姿を誰かに見られるなんてありえないことだが、男の感覚はそれが股間に限定される形であるのかもしれない。ただ、妙な動きをしたら怪しまれるからもし男子トイレで立ちションをするなら人のいない時間に行動全てを練習して慣れておく必要がありそうだ。どちらにしてもこの辺は器具を使って小便器で用を足してるトランス男性のブログや動画で言及がないかを探してみよう。
彼女はその後すぐに男子トイレから出てバイクに乗ると家路についた。
会社が始まる時間は8:45とそれなりに早いが彼女は物流会社でもっと早い時間の経験もあるため平気だった。デスクワークなので体の負担も小さいが体力の低下が心配になったので朝、ウォーキングをする事にした。ジョギングも考えたが、養成所のレッスンのある日などに買い物を近隣の24時間営業のスーパーで済ませる事なども考えられた為、荷物を持つと走るのが大変だからだ。それに走れば汗をかいてシャワーを浴びる必要があるし洗濯も増える。通勤できる服でできるのも理由の一つだ。
家を出る8時少し前までは余裕がある為、5時半に家を出て1時間ほどウォーキングというよりも散歩に近い日課ができた。
個室とはいえ男子トイレでのおしっこと外での男の子と同じ姿勢でのおしっこを経験した翌日のこと、彼女は散歩の途中で最寄り駅に寄った。今日は最寄駅でこの時間でないと難しい用事を済ます為だ。
それは駅の男子トイレの小便器で立ちションをすることだ。というのも彼女の最寄駅では始発は5時台になる。その時間は以前、会社の撮影の応援の仕事で現場で向かう為に電車に乗ったことがある。都心から極端に遠くない郊外住宅地である彼女の住んでる街では駅も電車もガラガラに空いていた。
この時間であれば他の誰かに見つからないし、いたとしても一つ以上小便器を空けて並ぶことができる。器具を使っての立ちションはしやすいし、用を足した後洗う事も十分可能そうだからだ。もし無理なら個室でして逃げればいい。
彼女はそれをバイクでの帰路に思いつき、家についてから駅に出かけて、男子トイレに入って下見をしてきた。それほど人の多い時間ではなかったが何人かはいたし、準備が万全ではなかったので小便器がどんなふうに並んでるかを確認して個室でタイプBの立ちションをした。緊張したが、ある程度道の駅での体験から心の準備は出来ていた。
彼女が使うのは端にある手すりのついた小便器にする予定だった。端なので見られるリスクは半分になる。その便器はトの字の横線をまっすぐにしたような手すりが左右についている。これは調べてみると足の不自由な人が体を支える為にあるらしい。身障者用の設備を使う事は気が引けたが、手すりで股間と手元を隠すことができるので慣れない間は使わせてもらおうと思った。もちろん必要とする人がいない限りの話だ。
彼女が男子トイレに入るとその心配はないようだった。誰もいなかったからだ。昨日はその場の思いつきで男子トイレに入ったが今日はきちんと準備をしてきた。いつも使ってるメッセンジャーバッグの一番外側のポケットに立ちション器具を入れて歩きながら取り出せるようにし、トイレに入ると同時に器具だけを取り出して左手に準備をしていた。便器にいざ立ってからだと怪しまれるのですぐに取り出せるようにしてトイレに入るのと手に持つのを同時に出来るようにしたのだ。今はトイレに誰もいないため、彼女は誰にも見られず怪しまれるリスクもなく手順一つ一つを丁寧に確認できる事に安堵した。
駅の改札外の男子トイレには小便器が5つ並んでいる。彼女は手すりの付いている個室の並んでいる側ではなく反対の壁側の小便器を使うことにした。手すりがついている小便器は確かに手すりで手元や股間が隠れる事が期待できたが完璧ではない。個室に入ろうとする人ととなりの小便器がそれぞれいたら何かの拍子に見られてしまう恐れがある。慣れていないなら動作に隙も多いので見られる可能性のない状況を確保したかった。壁側は壁の方は誰も居ない、壁だけだ。見られるリスクは隣の便器側と半分になる。それに斜めに立って隣の人に背を向けるような姿勢を取ればさらにリスクを減らせる。彼女も昨日帰ってからブログや動画の体験談を色々見てると、トランス男性にも生まれつきの男性にも壁側の端の便器で見られないようにする人はいるということを調べていた。男性同士でも基本的に見たりしないが、それでも何かの拍子に見られることが恥ずかしいと考える人もいるようでそうしているらしい。中には小便器が空いていても個室でする男性もいるほどとの事だ。彼女には付いていないので分かりようがないが、用を足している時に性器を見られるかもしれないというのはすごい状況だなと思った。同じくそんな中にトランス男性でもない純粋な女性でありながら男のふりをして器具を買ってまで立ちションしようとする自分も含めて。
彼女は入り口の方に人の気配がないかを意識しつつ壁側の便器の前に立つと器具を股間に装着した。そして顔をあげると底には「出す時は一歩前へ!」という張り紙が目の前にあった。横を見ると各便器の前に貼っている。これもネットで調べてて昨日知ったもので男子トイレではよく見る注意書きらしい。出始めとで終わりにペニスの位置が便器の外の位置にあるせいで足元の床を汚す人が結構多いらしい。場所によっては「あなたの『もの』はそんなに長くない」なんて直接的な表現のものもあるそうだ。彼女はそれを見て一歩前へ進んだ。そもそも彼女にはその部分が付いていないし、ちんちんの代わりの役目をする器具の先端が便器や床の上空のどの位置に来るかを感覚的に把握できなかったからだ。そこで彼女はその行動に思わぬ利点を見つけた。身体の小さい彼女はすっぽり小便器に身体が収まる寸前くらいの状態になった。小便器の両端に腕がくっつきそうで汚いかもと思ったが、接触しないよう気をつければいいし、仮にそれで汚れてもシリコンゴムの器具を股間に付けてるのを見て女だと知られるよりずっといい。これは使えると思った。
構える姿勢を整えると彼女は昨日屋外でしたり、これまで家のトイレで練習した要領でおしっこを放出した。勢いのよいおしっこの振動がシリコンゴムの器具から手に伝わり、下を向くと器具の先端からおしっこが前に飛んでいき、それが小便器の内側の壁面に当たって下に流れていくのが見えた。昨日、道の駅で用を足してた男性たちもこういう景色を見ていたのだろう。それに公園で見かけた少年たちも。おしっこがで終わると彼女はほっとした気分になった。外でしたような開放感はないものの、個室に入ってお尻を出すのとぜんぜん違う楽さだった。彼女は漫画家志望者が描いたSNS上の男子のおしっこの仕方の図解を思い出して、男性がおしっこの後はトイレットペーパーで拭くのではなく、ちんちんを上下に振って先っぽに付いたおしっこを振り落とすというのを真似してみた。中に溜まってたり、先に付着したおしっこを手洗い場で洗う前に振り落としたいからだが、せっかくだから男の子の真似をしてみたかった。ペニスを振るだけだったり腰ごと動かしたりだったりと人それぞれだそうだが、どちらも試してみた。これで手洗い場まで着くまでにおしっこがたれて床をこぼす心配はないだろう。彼女は手で下げていたズボンとパンツを上げると身体の向きを変えて手洗い場に歩き出した。
「……!」
彼女は向きを変えた瞬間絶句した。おしっこをするのに集中しすぎていたせいで気が付かなかったが、アラサーくらいのスーツ姿の男性が2つとなりの小便器で用を足していた。彼女は器具を使っている事を悟られていないかを心配したが、男性はぼうっとした様子でぼんやり張り紙を眺めている風だった。彼女はその後ろを辺に不安に思ってることを悟られないように平常心を装って歩いていった。途中、男性の姿を斜めから見える位置に来た時に男性の下半身の方に目をやったが、体の側面と背中とおそらくちんちんを構えている事によって曲げられているだろう肘でまったく股間は見えなかった。彼女は少し残念に思いながらも斜めから見えない事を知り安心した。残念に思ったのは見えるのならば、ちんちんからおしっこが出ている様子を見てみたいと思ったからだ。立ちション器具の使い方に関する情報で得られるのは女性やトランス男性といったちんちんのない人たちの情報だ。少年役の役作りとして立ちションを練習している身としては男性のちんちんからおしっこが出ている事を知ることで自分の役がどんな光景を視界に入れてトイレにいるのかを知ることができるから気になっていた。とはいえ、見えない事の方がこれから先男子トイレで立ちションをする上でプラスになる。結局はその方がいい。
彼女は少し急ぎ気味に器具を洗い、カバンの中に入れたジッパー付きビニール袋に入れて自分の手を洗った。水滴が付いたまましまわなければならないのは気になるが、手を洗っている時に他にも人が入ってきたのでさきほど二つ隣りにいた男性も含めて普通の男性なら絶対に使わないものを洗ってる光景は見た人がそれを知っているかどうかに関わらず避けたかった。だが、濡れたまま仕舞うのは不衛生なので帰ったらしっかり洗って、今後どうするかを考えていこう。
彼女は男子トイレを後にした。
帰り道、彼女はなんだか分からないが満たされた気持ちになった。このまま数年間アマチュアのまま演劇の世界から消えるかもしらない彼女にとって最初で最後かもしれないチャンスの少年役を演じる上で内面の理解まで含めて妥協したくない気持ちはある。その役作りで女性として知ることが出来ないはずのことを体験してこの役をさらに次へのチャンスにできるかも知れないという予感と意気込みのようなものを形にできている充実感がその正体だろう。実際にパートタイムOLとしての仕事の合間にディレクターとの役についての打ち合わせでも飲み込みの速さや発想の広がり方を褒められることが増えてきた。自分も新たに提示される情報への理解の解像度が高くなった気がする。髪を切り、男装をして、言葉遣いも一人称を「僕」に変えたりそれ以外の部分も男言葉にして私生活では男性として振る舞ってそれが板について来た気がする。役と素の切り替え方も身に着けてきたのか、レッスンや仕事、たまに友人に会う時などに女性に戻るのもうまく切り替えができるようになった。とはいえ、小柄さに合わせてフェミニンに振る舞っていた自分はすっかりボーイッシュな女の子になっているのでイメージチェンジが伴ったものではあるが、少年でいることとボーイッシュな女性の使い分けはそれぞれを別のものと認識出来た上できちんとできている。
多分、この感覚に立ちションの研究があるのだと思う。おそらく物心ついて最初に理解する男女の違いは股間にちんちんがあるかないか、立ったままおしっこが出来るか座っておしっこをしなければならないかだろう。その根本の所から積み上げられるのは強いのかも知れない。
今日はこれからOLと家庭教師の二本立てで働く。一度帰って家を出たら女性でいる事になるが、移動中などは立ちション以外の役づくりの為の勉強をする予定だ。
男子トイレでおそらく怪しまれることなくそしておそらく少年と見られて立ちションが出来た成功体験は彼女のモチベーションになった。