先生の想い人は自分だったことと同時に、想い募った結果、理性が掻き乱されるほどそれが歪み始めていると。
先生を慕っているマリーは、あることを口実に先生の気持ちを受け入れようとする。
── ── ──
※2022年3月7日にpixivで投稿した作品と同じ内容となっています。
※先生は男性です。
悩みごとを抱えてる方の中にも、顔を見せずに伝えたい方たちもいらっしゃいました。
そうした方たちの為にも、大聖堂の隅に設置されている懺悔室を流用して、私たち見習いを含めたシスターが、訪れた方の相談を伺っていました。
人一人が入れる小さな個室。私はその中で椅子に腰を掛けて、悩みを抱えてる方が向かいの部屋に入られるのをお待ちしてました。
直接、悩みや懺悔をお聞きすることには慣れていました。しかし、こうしてお互いにお顔が見えない為に、いらっしゃった方から見習いの私を「シスター」と信頼されて呼ばれることには、どうしても相談者の方を騙しているようで申し訳ない気持ちになることが多々ありました。
それでも、そうした方たちの救いになれているのであればと、この複雑な心境も受け入れることが出来ていました。
静寂に包まれた大聖堂。
誰もいない時間が過ぎていく間、私はまるで懺悔室と共に、大聖堂の一部にでもなってしまったかのように思えるほど、静かに過ごしていましたが退屈ではありませんでした。
次の方がいらっしゃるまで、本日、相談にいらした方々の悩みごとや懺悔を思い返し、手を合わせて祈っていました。
こうして相談者の方が居ない間も、私がそうした悩みに向き合うことで、その方の負担が少しでも軽くなればと思っての祈りでした。
──コツッ、コツッ、コツッ……
近付いてくる足音がして私は目を開け、まだ誰の気配もない真っ黒な網戸に視線を移しました。
硬くて重い足音。先生が以前に大聖堂の中で私の隣を歩かれている時もこのようにコツッコツッと足の面積が広い大人の方特有の重たい音を立てていた気がします。
「先生の……」
先日、先生からいただいたモモトークのメッセージ。
『今日はトリニティに用事があるから、大聖堂に顔を出しても大丈夫かな?』
大聖堂にも伺われるご用事があるものだと思っていた裏腹で、こうして私にいただけたということは、私に会いたいということなのではと、私は自分自身の不純な思いを恥じらうように顔を手で覆ってしまいました。
実際に間違っていなかったことに嬉しくも思いながらも、私は当番を終える時間を先生にお伝えました。
先生からいただいたメッセージにもう一度目を通してから、私は持っていた携帯端末を胸に当てて深呼吸をしました。
胸いっぱい吸い込んだ空気を吐き出すと、次に自然な呼吸で胸を満たしていく空気が、私の胸の内をポカポカと温めていました。
「『マリーに会いたいから』……ですか……ふふっ」
自室にいた私は、このとき嬉しさのあまり、ベッドに横たわっているだけで、夢見心地のように幸せな気持ちでいっぱいでした。
……いけない、いけない。
今は先生の生徒ではなく、シスターフッドの見習いとして仕えているのですから、雑念に囚われていてはダメですよね……
私はあのときと違って、気を取り直す為の深呼吸をして、首を左右にゆっくりと振ってから網戸に視線を向けました。
「──えっと、相談ってここでいい……ですか?」
「──っ! はい、お待ちしておりました。どうぞ、お入りください……」
男性の方でしょうか。
時折、機械頭の教員の方もいらっしゃることがありますので、私はそのつもりで、向かいの入り口から聞こえた声に返事をしました。
距離もあり、網戸も厚みがあってこもった声に聞こえたので、私は何の疑いもなくいらした方を招き入れました。
「私の悩みを聞いてくれませんか、シスター?」
「──!?」
せ、先生っ……!?
目の前に、相談者の方が座られて、話し始めたその声は、紛れもなく先生のものでした。
先生……もとい、相談者としていらしているためなのでしょうか、口調もいつもよりへりくだった話し方で、私はむず痒い気持ちになってしまいました。
……いえ、今は相談者とシスターの関係なのですから、私情を持ち込んではいけませんよね……
「シスター……?」
「……あ、すみません。お話しください」
「実は……私は教師をしているのですが、ある生徒に……恋心を抱いてしまったみたいで……」
「──っ!?!?」
こ、これは私が聞いても大丈夫なお話なのでしょうか。
私は先生とお会い出来る時間になるまでの間、大聖堂でのお仕事があるということしか伝えていませんでした。お互いこもった声でやり取りをしていますが、こうして先生は今から私と知らずにそんな大事な話をされるのでしょうか……
ここはプライバシーが守られた空間。
それは相談者の方だけでなく、私たちシスターが誰なのかも伏せられるということも意味していました。
「その生徒の子は、私のことをよく心配してくれる子でした。会うだけでなく、文字を使ったやり取りでも、彼女は自分のことよりも私のことを第一に考えてくれているような子です」
やはり、先生は生徒の方々にも恵まれているのですね……いつも大聖堂でお仕事をしている私には到底縁のないお話のように思えました。
この前、参加させていただいた戦闘でご一緒した方でしょうか。
とても先生のことをお慕いしているように見受けられる方々ばかりで、私には到底足元にも及ばないように思えました。
先生と長くいられる時間もきっと私よりあることでしょう。私がこうして祈っている間、その方は先生と同じ時間を過ごしていらっしゃるのでしょうか。
……それでも、先生が幸せなら、私の祈りは届いているということなのでしょうか。
きっとこれは罰なのかもしれません。
こうしている今も、私は先生の“ことを”と建前で祈り、先生が無事ならお会いした時に、私は先生と同じ時間を過ごすことが出来ると考えていると捉えられてもおかしくない祈りを捧げているようなものでした。
結局は先生のためと言いつつも、全て私が今まで行った不純な祈りがこうして歪んだ形で現れたのだとするなら、受け入れなければならないのですよね。
「何度か会っているうちに、本来仕事で会う目的とは違う意味で、彼女のことを意識してしまうようになって……」
「……恋心というのは、どなたにでも備わっているものです。きっと、あなたが抱いた気持ちは間違ったものではないと思います」
耳を塞いでしまいたいほど、胸が痛く感じていました。それでも、私がこうして先生の悩みを聞くことで、先生の気持ちが晴れるのでしたら、それこそ“本来の意味で”先生の為のことを私は成せるということなのでしょうか。
これも罰なのですね。不純な祈りを繰り返した、私への罰。
きっと、あの方なのでしょう。
もしかしたら、あの方でしょうか。
以前ご一緒させていただいたときの方のことをおっしゃられているのだろうと、私は先生のお話を目を閉じて、聞き入れていました。
「キヴォトスでは、教師と生徒との恋愛は罪に問われないらしいものの、どこかいけない気持ちを抱いているのだと、私には思えて仕方がないんです。今日までこうしてあなたに打ち明けるまで、ずっと抱え込んでいました」
「……大変、辛い思いをされていたのですね」
「……はい」
「告白などはされないのですか」
「ここで教師らしからぬ感情を抱いたことを打ち明けて、心を入れ替えようと思っています」
「……っ」
いけない。いけないと分かっているはずなのに、どこかホッとしてしまっている自分がいました。先生が折角抱え込まれていた悩みを打ち明けてくださったというのに、私は……
「それに、その生徒は聖職者でもあるので、彼女にもきっと良くないことだと思うので……」
あら……っ? ということはシスターフッドのどなたかでしょうか。
先生が最近、トリニティに訪れる度に、シスターヒナタとご一緒に歩かれているところを度々目撃していました。
確かに、あの方でしたら背格好も後ろから見ていて先生とお似合いでしたし、それに……スタイルも同性の私から見てもとても魅力的で、特に男性の先生がそのような気持ちをお持ちになられても不思議な事ではないと思います。
私は二人の幸せを……先生の幸せが叶うのなら……こうして……こうして影で祈りを捧げられることが私の幸せです……
私は先生の話をお聞きしながら、祈りを捧げるように両手の指を組んで握っていました。
この行為は決して祈りなんかではありませんでした。私が心で受ける懺悔と、その罰を受ける時間なのだと。
「今日もこの後、その生徒と会う予定です……その子と私はいつも両手を握り合って、祈りを捧げています」
「……え?」
──えっと、時間的に考えて、このまま相談が終われば、この部屋を出て先生とお会いして、一緒に祈りを捧げる予定でした。
そして、何か特別な用事がなければ、私の時間が許される限りの間、先生と他愛もない話をして、過ごさせていただくのがいつもの流れなのですが……
もしかして、私はずっと先生から自分へ向けられた異性としての見解を聞かされていたのでしょうか。
先生はそれから私が気付いてしまってからも、胸が張り裂けそうなほど、募り募った思いを吐露されました。
きっと次に私と握り合ったとき、胸の内に込み上げる祈りは私に対する雑念ばかりだと。私と会い、二人で祈りを捧げている時に、心に平穏を感じられているそうでした。
私は大聖堂に勤めるシスターの身ですから、先生と出会える機会も限られています。先生はどこにいても一人で祈りだって捧げられたはずですが、何度も私とのお祈りを繰り返していくうちに、先生は祈ることではなく、私と会えることで気持ちが満たされているようでした。次に私の手を握ってしまわれたら、先生は気持ちの限界で抑えきれなくなっているかもしれない状態だったそうです。
先生の話はまだしばらく続きました。
本当に全てを赤裸々に打ち明けて、諦められるつもりなのかもしれません。
手と手で触れ合う感覚。胸の内から込み上げるものが愛情を越した肉欲。修道服に包まれた私の華奢な体を思い描くだけで、気が触れそうになること。
私がどれだけ、先生から女として見られているということ。
……ち、違った意味で耳を塞ぎたくなっていました。
顔から火が出そうなくらい、顔が熱くなっていて、普段気にしないはずのフードの中で首周りが蒸れているように思えました。
「──マリー……」
「──っ!? こほんっ……お相手は、ま……マリーさんなのですね……」
先生は私に向けていた気持ちを洗いざらい懺悔されると、しばらく間を置いて深呼吸をしてから、愛しい人の名前を口にするように声を震わせて、私の名前を呟いたのでした。
今まで私に呼んだこともないほど、切なそうな呼び方。
私は思わず返事をしそうになっていました。慌てて、喉まで出そうになっていた「はい」の一言を飲み込んで、私は他人を装い続けました。
先生。私は見習いのシスターである立場さえ無ければ、あなたのその気持ちに応えられたのでしょうか。私が見習いシスターで無ければ、あなたにその気持ちを向けられることは無いのでしょうか。
身分という壁が、私と先生の関係を立ちはだかっていました。
きっとどちらの立場でも私と先生の関係が結ばれるのは難しいことなのでしょう。
「シスター……こうして、あなたに相談出来て良かったと心から──」
「──お……お待ちください」
「はい……?」
「お……思いは伝えられて問題ないと思われます……」
ごめんなさい……どんな罰でも受けます。祈りを捧げても敵わないほどの辛いことが待ち受けていても構いません。
これから私が行う身勝手な行為を、どうかお許しください。
私は今から自分が口にする言葉は、先生を助言するものではありました。
しかし、それを元に先生が行われる行動は、私自身をシスターの教えから背かせかねないものになるのですから。
相談に来てくださった方の中には、先生と同じように、胸の内に気持ちを抑圧し続けた結果、過ちを犯しかけた方もいらっしゃいました。
きっと先生も、このまま懺悔をされただけでは……
「あなたがどれほど、その方にぶつけてしまっても、きっと、その方もあなたのことを受け入れてくださると思います。仕舞い込んで抑圧された思いは、いずれ歪んだ形で顔を出すことも考えられます……ですから……ですから……」
「……シスター?」
「どうか……思いを伝えてみてはいかがでしょうか……伝えず諦められるのは、酷なことだと思われます……」
……言ってしまいました。
それから先生はしばらく無言になられたあと「ありがとうございます。前向きに考えてみようと思います」と粛々と言われそのまま向かいのお部屋から出られてしまいました。
コツッ、コツッ、コツッ……──
網戸の向こうからは気配がなくなり、懺悔室から重たい足音が離れていってしまいました。
……私は、懺悔室を出る前に、一度祈りを捧げました。
この祈りも先生のことを思った祈りでした。
──先生に好運が訪れますように。
──恋の結末がどのような形であっても、それが先生の幸せでありますように。
……先生、私は見習いのシスターです。
あなたが私に打ち明けていただいた中に、私と捧げる祈りにも私に向けた雑念が入り雑じってしまうと話してくださいました。
私も同じなのです。
心洗われるような祈りは全てあなたを思ってのもの。
あなたの幸せを願うことができ、それが叶うのなら、それは私の幸せ。
先生、私たちは両思いなんです。
それがシスターの教えから外れてしまうような歪んだ祈りだとしても、これはきっと純粋な愛の証明になってしまうほど、私たちは思い合っているんです。
────
「お待たせいたしました」
大聖堂の入り口まで向かうと先生が私を待ってくださいました。
お互い、懺悔室で会っていても知らぬ顔。
いえ、知っているのは恐らく気付かれていなければ私だけでしたね。
日に照らされた先生の爽やかな笑顔に釣られて思わず私も笑みをこぼしました。
──素敵な笑顔。ですが、このような素敵な笑みの下にも、私を手籠めにしたがっている、理性の鎖に繋がれた獣がいるのですね。
例え、懺悔室でどれだけの思いを赤裸々に話されていても、直接私と会う振る舞いは、違和感を感じさせないほどいつも通りの振る舞いをされていました。
そうした大人の一面もお慕いしています。
先生? 本日はどこでお祈りを捧げられますか? 大聖堂は、今は誰もいらっしゃらないので、清らかな空気に心を落ち着かせて捧げられると思います。
……シャーレの休憩室で、ですか……?
点呼の時間まででしたら、私は予定はないので大丈夫なのですが……先生が望まれるのでしたら……
本当に、されるのですね。
心臓がドクドクとはっきりと音を立てて、私の情緒を乱そうとしているように早くなっていました。
────
「──……じゃあ、その時間には帰るんだね」
「はい……その時間までにここを出られれば、寮には間に合うと思いますので……」
先生と歩きながら談笑を交わしつつ、シャーレ休憩室入り口まで着くと、他の方々が利用されていて祈りを捧げるには、あまりにも賑やかな空間となっていました。
先生からの次の提案は先生のお部屋に上がらせていただくことでした。
普段はあまり使われていないようで、必要最低限の物しか置かれていない、物寂しげなお部屋でした。
この哀愁漂う雰囲気は、家具が少ない殺風景なことより、このお部屋そのものが、先生の帰りをずっと待っていたような気がして、私の胸が締め付けられました。
確かに、このお部屋でしたら祈りを捧げるのに最適かもしれないですね……私たちは床の膝をついて、先生は両手の指を絡ませるように手を握って、私を待ってくださっていました。
私が先生の手を包み込むまでの間、顔を俯かせて、上目遣いで見るように、私の手が来るのをまだかまだかと待ちわびているような視線を送ってくるのでした。
こちらを窺うように向けられた視線。
そのような目を向けないでください。
私までそういう気持ちになってしまうじゃないですか……寂しくて、待ち遠しくて、そのままお互いに求め合いたくなってしまうような物を乞うような、切なそうな目。
私はソッと先生の手を包み込むように握りました。
いつ触れても大きな手。こうして祈り合うようにではなく、まるで恋人のように片手同士で指を絡ませ合えば、きっと私の手のひらなんて、簡単に包み込まれてしまいそう。
いつもよりも胸が高鳴っていました。
今から目を閉じて、次に目を開けたときに見える景色は同じでしょうか。
先生……目を、閉じてください……
静かな空間にいることは慣れていました。音の無い静かな場所は雑念を払うためにも最適で、私はこうして目を瞑って心を落ち着かせていました。
……今はどうでしょうか。
二人きりであるのもいつものこと、静かな空間であるのもいつものこと。
いつもと違うのは、先生のお部屋であること。
私の呼吸一つ一つが、先生のお部屋に残された先生の濃密な匂いが鼻を擽って、どんなに先生との距離を変えても私の頭に入ってきて、ぼんやりとしてしまう独特な匂い。
安心して、気を抜いてしまえば、何か過ちを犯してしまいそうな素敵な香り。
目を閉じていても、雑念が募り行くばかり。
先生は今、どんな気持ちなのでしょうか。
薄く目を開けると、先生も同じようにゆっくりと目を小さく開いて、私の顔をチラチラと見ていました。
「ふふっ……もう、先生……目を閉じていなければなりませんよ」
「……マリーこそ」
「ごめんなさい、先生のことが気になってしまって」
「私も気になってた」
「お互いのことを、思い合っていたのですね……それでは、もう一度閉じましょう」
「……っ」
先生とこうして過ごす時間が好きでした。
ずっとこの時間が、このまま続けば良いのに。
これも雑念。
私の胸の内にも、晴れることなく募り続ける先生への思い。
目を閉じているのに、少しずつ先生との距離が近づいているような気がしました。
先生と思い合っている証なのでしょうか。
──コツンッ。
「……っ? あら……?」
「あ……ごめん」
額に何かがぶつかって、再び目を開くと先生と額を触れ合わせていました。
もう、先生ったら……何て思っていましたが、お互いに額を寄せ合うように首を前に傾けていました。
……距離、近いですね。
先ほどまであった距離が一気に近づいて、目の前には先生の瞳に私が映っていました。
私の瞳にも、同じように先生が映っていますか……?
こうして見つめ合ってると、吸い込まれてしまいそうでした。吸い込まれた先にあるのは、あなたの心の中でしょうか。
今、心が通じ合えているのなら、あなたも私と同じこと考えているのでしょうか。
先生の中に入った私は、その中でどうされていますか。
きっとあなたに体を押さえつけられて、衣服を乱暴に破かれ、あなたが見たがっていた肢体を舐め回すように視姦してから、貪るように私は食べられているのでしょう。
私はそれでも良いですよ。
それが先生の望まれることでしたら、私は幸せです。あなたの心が満たされるまで、私は犯されても。
……え、良い匂いですか? そんな私の匂いなんて。
見つめ合う時間が長いと、鼓動と発汗量が相手と同じになってくると耳にしたことはあります。
いくら私が目を閉じても、今こうしてあなたと見つめ合ってる時も、私だけの静寂を破るように、うるさく思えるほど心臓は激しく音を立てていました。
──ドク、ドク、ドク……ッ……
先生の鼓動も一緒なのでしょうか。
首筋を伝う汗。その匂いでしょうか……何だか恥ずかしいです……
見つめ合っていると、額だけでなく頬と頬も触れ合わせていました。柔らかい頬と硬い頬を合わせていると、先生の吐いた息が顔を擽って、私は目を細めてしまいました。ここまで距離が近いと先生のお部屋に漂っていた匂いよりも、より濃い匂いが……
……いえ、臭くはありません。
ずっとこうしていたくなるような安心感が得られて、目を閉じて雑念を払うのとは違った意味で、私は一度目を閉じて、頭の中が真っ白になる心地よさにため息を吐きました。
「ん……はぅ……ぁ……こうしていると……身体が熱くなってしまいますね……とてもドキドキしています……」
「……マリー、実は」
私に手を包み込まれた先生の両手が、力んで角張っていました。
大丈夫ですよ、分かっていますから。
荒立った先生の息が何度も私の唇を擽っていました。
目の前に餌があるのに、ずっとおあずけされている子犬みたい。
──すりっ……
興奮している先生の頬に頬擦り。
少しチクチクしますね。お髭を剃られた跡でしょうか。
……先生、何をそんなに緊張されているのですか。
先生は次の言葉を躊躇っているかのように、唇を震わせていました。
一線を越えてしまう言葉。
明確にしてしまえば、聖職者の私にも危害が及ぶかもしれない、素敵な言葉。きっとこれから起こることも、私が前に不埒なことはいけないと伝えたことを気遣ってくださっているのでしょうか
「ふふっ、先生の目……とても綺麗ですね」
「マリーの目の方が綺麗だよ。透き通るような水縹色の瞳。見ているだけで心が和らぐような眼差しに、映り込む自分の姿を見ていると、まるでマリーの中に吸い込まれていくみたいで……」
「私も同じことを思っていました……先生の瞳を見つめていると、吸い込まれてしまいそうになりました……今もこうして……先生の中に、私が落ちていくんです……スッと、先生の深く、深くに……力まなくても大丈夫ですよ……きっと、考えていることは一緒ですから……こうして、無言の間……私の息の合った呼吸も、重なり合った鼓動も、一緒のはずですから……ですから……先生……」
お互いに息を吐き合ったと同時に、私たちは半開きの唇を重ねました。
しっとり濡れた唇が、ちゅっと音を立てて、私たちに戻れなくなる合図を鳴らしていました。
目を閉じて、顔だけを寄せ合った口付け。
決して大人の方たちがするような、深いキスではなく、唇同士が触れ合うだけの表面上のキス。
包み込んでいた手を緩めると、手の中で力んでいた先生の組まれた指が解かれて、両手を片手同士で指を絡ませ合うように握りました。恋仲の方々がされるような手の繋ぎ方。
きっとこの手の繋ぎ方では、祈りは捧げられませんね。
祈りではなく、あなたに向けて身体を捧げるための握り方。
今の私は見習いのシスターではなく、先生の生徒。あなただけの生徒ですから。
唇を深く付けるように、顔を上げると、先生の手がキュッと力が入っていました。私より手が大きくても、力はどうしても私の方が上回っているようで、先生の力んだ指先はまるで子どもが離さないように握ってくるような、愛らしさと必死な感じが伝わってきて、胸がキュンとときめいてしまいました。
激しく高鳴った心臓に耐えられそうにないほど鼻呼吸だけでは酸欠になりそうになっていました。少し息苦しくて、でもこの触れ合えている唇の感触と、唇越しにじわっと舌に伝わってくる先生の唾液を味わっていると、この酸欠で靄のかかる感覚も心地よく思えてしまいました。
お互いに手を強く握り合い、先に先生が辛くなられたみたいで、唇を離されてしまいました。
すぐに切れてしまいましたが、私には唇同士が名残惜しそうに薄い唾液の糸が一本だけ、ねっとりと引いていました。
「……先生の目、とろん……としてますね」
「……マリーだって」
「私は……ごめんなさい、気持ちよくて……少し眠たくなっただけですから……」
見え透いた嘘。ここから先は先生に委ねなければならない領域でした。先生が私の手を引いてくださらなければ、入ってはならない、シスターとしての教えに背く不埒な領域。
──先生、私……思うんです……シスターフッドには、世間の皆様から見て、厳しいと言われるような教えがいくつもあります……そのような教えに、夢の内容までは縛るようなものはものはありません……ですから、先生……失礼ですが、ベッドをお借りしてもよろしいでしょうか……?
……相変わらず優しいですね……ありがとうございます。もし、私が眠っている間に、何かあっても、それはきっと“夢”の出来事だと思うんです……
先生。
眠ってる間の私はしばらく目覚めないと思いますから……ですから……
私が一度先生から目線を逸らしながら、お誘いの言葉を選んでいると、先生は一度だけゆっくりと頷いたのでした。
先生のベッドの上。私が寮でも使っているような柔らかさ。特別ふかふかな訳でもなく、ありふれた手触り。
違う点があるとするなら、これが先生が普段使っているベッドであること。
私は掛け布団も被らず、そのまま上に乗って横たわりました。
お部屋の中でも、先生の匂いがいっぱい染み込んだベッド。
その上で目を閉じて、眠ったフリをするための深呼吸。
男性特有の形容し難い匂いが鼻を突きました。目を閉じているせいで、思い浮かぶのは先生のお顔。
先ほど間近で見た先生の瞳。
睫毛の長さがわかってしまうくらい近付いたあの距離。
すぅ……はぁ……
先生と目が離れてから、きっと私の心臓は先生よりも早く音を立てていました。
このまま破裂してしまいそうなほど、激しく高鳴って、私を苦しめていました。
きっと消えていないヘイローに狸寝入りであることはバレバレなのかもしれません。
本当の目的は先生が今まで抑圧し続けられた思いを私にぶつけられるお手伝い。
それでも、私も先生に向けて胸を焦がすほどの思いを募らせていたのです。
どうか先生、私を連れ出してください。
恋い焦がれる私も、この苦しみから……
──ギシッ……ギシッ……
ベッドのスプリングが軋む音。
お部屋に背を向けて横になっているので、先生の手足が置かれると背後が沈み込んでいました。
薄暗い視界。
お祈りの時に見慣れている光景も、本日だけは私に感じたこともない緊張感を与える世界になっていました。
感じるのは、先生が近づいてくる気配だけ。
「……マリー?」
私を呼ぶ声も様子を伺うだけの、返事を望まないような呼び方。
肩に触れられました。起こすような手付きではなく、これから襲う雌の体つきを探るような、獣の手付き。
きっと、先生はがっかりされるかもしれません。私は、他の方よりも線が細く、男性の方を性的に満たせる物は持っていないと思いますから。
それから、腕や、お腹……修道服の上から、普段分かりづらくなっていた私の身体の形を確認していくように触られていました。
先生の息遣いが少しずつ荒くなっているのが目を閉じていても分かるほど聞こえてきていました。
「──はぁ……はぁ……」
衣服越しに素肌を触られているのもあって、それが擽ったくて、私は時折身体を捩らせてしまいました。
まるで衣服越しに骨まで触るような力の込め方。
脚を触られて、また、体の上の方へ、上の方へと手が上って行き、胸部にまで到達しました。そこから、手が動かず凝視されているのかと思うと、壁に顔を向けている私の顔を覗き込むように顔を近付けられ、見えていなくても息遣いや、存在感で先生を感じていました。
項垂れて顔にかかった髪を避けられると、先生の更に顔が近付いていました。
まるで落ちている物を優しく拾うかのように頬に手を添えられると、上に向くように顔を動かされ、そのまま先生に唇を再び塞がれました。今度は先ほどしたような、“たまたま”触れ合ってしまったようなキスではなく、愛情表現によるキス。
キスをする前に、先生は私に向かって、小さく名前を囁いてからしてくださいました。
それから、寝息を立てている私の唇に触れて、舌をぐいぐいと、半開きの唇に捩じ込もうとしていたのでした。
ざらざらした感触が唇の表面を擽っている中、余った手で乳房の表面を撫で回されました。
乳房とはいえ、揉めるほどの大きさもないため、これもまた先生の性欲を満たせるものではないと思っていました。
ふにゅっ……ふにゅぅっ……
下着で覆われた胸のごくわずかな脂肪の感触を楽しむように指の腹で撫で回され続けました。
「──んっ、ふ……ぁ……」
時折、下着の中で硬くなった乳頭……乳首を衣服越しにコリコリと刺激されて私は温かい吐息を吐いて甘い声を漏らしました。
私は眠っているはずなのに、もぞもぞとベッドの上で身動ぎして身体を駆け巡る快感を逃がそうと必死でした。
口の中に捩じ込まれた先生の舌。
先生の体温を直接口で感じられているみたいで、舌の付け根から蕩けてしまいそうなほどの心地よさ。
私の口内にある知らない温もり。
ぬるぬると蠢いて、先生は私の体だけでなく、口内までも知ろうとしてるみたいでした。
ぬちゅっ……ちゅぅ……ちゅっ……
「んっ……ふ、ぅ……ぁ……ぁ、あっ……ふぁ♡」
口内を探っていた先生の舌はそのまま私の舌を捕らえて、ぐねぐねと器用に絡み付いてきて、舌を吸い上げられました。
前後に、何度も……ぎゅっ……って力強く啜られる度に、私の口内ではしたなく唾液がじゅるじゅると音を立てていました。
頭に直接響くような水音。
それでも私の痴態を晒す手伝いをするように唾液は次々と沸き出ていました。もっと飲んでほしいと。
衣服越しに擦られる乳首への刺激と、酸欠に追い込む激しいディープキスに、長い快楽で脳が何も考えられない海綿体のようにドロドロに溶かされてしまいそうなほどの快楽責めを受け続けました。私は横たわっていた身体を仰向けにされ、覆い被さられたまま、私は先生の腕の中でもがくように時折、ロングスカートをベッドの上ではためかせて快感を逃がそうと足をバタつかせていました。
──な……何か……キてしまいます……怖いです……お腹の奥から、何か……ぞわぞわと……先生、先生……せん……せ、いっ……──ッ!
私は意識が一瞬飛んでしまいました。
自分の身体のことにも関わらず、何が起こったのか全く理解出来ない体験でした。
シーツをギュッと握りしめて、弓なりになるように身体を反らして、そのまま全身に駆け巡った快感が抜けて、落下したかのように身体がベッドに引き戻されました。
──ぎし……ぎし……
ベッドに押し戻され、力が抜けた身体が揺れる感覚。
ボーッとした頭には、この揺さぶられる感覚も心地よくて、時折身体に電流が駆け抜けるようにビクンッと跳ねていました。
「──っ……ぁ……はぁ……はぁ──ッ! ん゛んっ……ゲホッ、ゲホッ……!」
舌の長い絡め合いで息もまともに出来なくて、肺いっぱいに酸素を取り入れようと息継ぎしました。先生と私の混ざり合った唾液が吸い込んだ空気と一緒に入ってきて、思い切り噎せてしまいました。
私の様子を見かねた先生は顔を離し、私の舌は搾り取るように蠢いていた生き物から解放されました。
口内からずるるっと抜かれた舌先には太い唾液の糸がドロッと引いていて、そのまま宙でぶつりと切れると私の喉に追い討ちをかけるように流れ込んできました。
空気と唾液の塊を飲んだ喉が、余韻のようにはしたなくキュゥゥ……っと音を立てていました。
あまりにも恥ずかしくて、寝たフリでもなければ、顔を今すぐにでも隠してしまいたい気持ちでいっぱいでした。
「ゲホッ゛……ケホッ……はぁー……はぁー……んくっ……はぁー……♡」
「……ごめんね、マリー」
フードに隠れた耳に近付いて、先生はそう囁くと、私の体から離れてしまいました。
まるで罪悪感を含んだ言い方。
もう私の全身の姿形が分かったから、これ以上はしてはならないと気を使われたのでしょう。
先生が私から離れようとしていたので、私は咄嗟に先生の袖を掴んで引き止めてしまいました。普段ならこのような甘え方はしないのに、高ぶったままの身体を残されるのは何もされないよりも生殺しでした。
「っ……? マリー?」
「せ、先生……続き……されないのですか……」
「──っ……」
先生からの返事はありませんでした。
先生は私から離れてしまい、私は発情した火照った身体にされて取り残されてしまいました。
ポカポカと温まった身体から、じっとりと汗もかいていて、私の身体が汗臭かったのでしょうか。
先ほど意識が真っ白になったときから、私は脚を閉じるように内股にして、もじもじと身体に残った快楽の波を落ち着かせることで精一杯でした。
このまま自分を慰めようにも、どのようにすれば気持ちよくなれるのか、ピンとこない私は天井を眺めながら息を整えて、今この高ぶった気持ちを宥めることしか出来ないのでした。
時折、ぐっしょりと汗と愛液で濡れた下着が擦れて、ぐちゅっとはしたない音をさせていました。
明るかった天井が急にパッと暗くなり、先生が視界の入るところまで戻ってくると、まだ外も明るいのにカーテンを締め切って、部屋の中だけ夕暮れを過ぎたように薄暗くなり、先生が荒々しくガチャガチャと音を立てながらベルトを外し、下半身を覆う衣服を全て脱ぎ捨てて再び私に覆い被さってきた先生は、獣そのものでした。
薄目で見ても視界に入るそそり立った男性器は、力こぶでも作ろうとしているみたいに青筋をいくつも浮かばせて、血液の流れ込みすぎで今にでも破裂してしまいそうなほど張り詰まっていました。
獣がドロッと唾液を溢すように、鈴口の先から先走り汁がボタボタと、シーツに滴っていました。
「ふぅー……ふぅー……」と荒く鼻息を立てている先生は、視線を私の顔から、スカートの中でぐっしょりと濡れている下腹部に視線を落としました。
今までスカートというヴェールで覆われていた、私の聖域を汚すようにスカートが捲られると、中で蒸れていた脚が、外気が冷たく感じるほど火照っていました。
先生がピタリと動きを止めて、まじまじと観察するように見られていました。
先生は物珍しい物を見るような目で私の脚に指先を触れさせて、脚の付け根まで躊躇いなく這わせると、下着に指をかけられて、ゆっくりと脱がされてしまいました。
ぬちゃっと音を立てて、秘部から吸い付くように密着していた下着を剥がされてしまいました。
スカートが捲られているのもあって、テントを作るように先生の下半身から下も覆うように隠れてしまい、私の秘部がどうなっているかも見えない状態でした。
感覚だけで分かるのは、内腿が冷たく感じるほど愛液が溢れて濡れていることだけでした。そこに丸い形状の物が私の股に押し当てられて、グリグリと動かされていました。まるで自身の性器に私の粘液を纏わせるような動き。
急に膝裏に腕を通されて脚を掴まれると、私の下半身は先生の身体に引き寄せられて、ぐちゅ……っと亀頭の先端が秘部を広げるように押し当てられてしまいました。
粘膜同士が自然と密着する感触。
期待と不安が込み上げる中、私の腰はびくびくと震えて、甘噛みするように咥えた先生の亀頭を上下に擦っていました。
「ぅ……っ……ふぅ……はぁー……はぁー……」
意識しなくとも胸を起伏させるほど、私の息が乱れていました。
そして、その丸みを帯びた槍状の男性器が私の中を掻き分けました。
──ずぷっ……!
「──ん゛っ……! ぅ……っ゛……! ぁ、ぐ、ぃ……ぃ゛……」
麻酔もされずに身体に刃物を入れられているような痛みが、下腹部を襲いました。
「ぁ゛……ぅ゛……ぅ……」
愛液でしっとり潤った膣肉が、男性器で裂かれる度に生々しい音を立てていました。
ぐちゅっ……くちゅっ……ずぷぷっ……
奥に奥に向かってそれが進む度に、中の愛液と膣肉が擦れて、下品な音を立てていました。
私は声にもならない声を上げて、シーツを握って、腰を反らせていると、先生の手が差し出されました。
「はぁ……はぁ……マリー……」
「──ッ……く、ぅ……ぁ……っ! ぁ゛ぅ……!」
駄目です……先ほどつい話しかけてしまいましたけど、シていることも、こうして感じていることも、本当はいけないことなんですから……
痛い。
得られるのは快感ではなく痛み。
きっとこれも背いた罰なのです。
見習いとはいえど、人に尽くすシスターとしての身でありながら、性の営みに及ぼうとした身体に課せられた罰なのですね。心地よく性器を交えることを許されないこととしての戒め。
ですから、ですから……
「これは夢……なんでしょ……? 悪夢じゃないでしょ……夢で辛い思いまでしなくていいから……だから、はい……手、握って……」
「先生っ……」
……それで良いのでしょうか。私が見ているのは夢であって、悪夢ではないなら……大丈夫でしょうか……
私は、シーツを握っていた手を離して、先生に差し出された両手を繋ぎました。
指と指を絡ませ合った恋人繋ぎ。
決してお祈りの時にしないような握り方。
先生に身体を捧げるようにぎゅっと握り、今まで守り続けていた処女を散らす痛みに耐えていました。
「せ、先生……い゛……痛いですっ……身体が……裂かれているみたいに……痛くて……っ……!」
「大丈夫……くぅ……ぁ……大丈夫だから……」
「痛いのです……やはり罰なのでしょうか……」
「罰じゃない……今の君は、シスターじゃなくて私の生徒だから……一人の女の子だから……」
先生は私にまるで至極真っ当であるような言葉を口にしているにも関わらず、繋がり合った下半身から与えられる快感に、時折歯を食いしばらせていました。
「そんな……気持ち良さそうな顔で言われても……説得力無いですよ……」
「ご……ごめんっ……マリーの中……キツくて……気持ち良くて……腰から蕩けそうなほど、中が熱くて……く、ぅぅ……ぁ……」
「ふふっ……本当にズルいですよ……先生……」
本当に私の中で気持ち良くなっているのだと、身体でも答えるように、私の中に入ってきた男性器は、むくむくと更に大きくなって、引き裂かれた膣肉を容赦なく押し広げていました。
「マリー……ごめん、もう……」
ぐいぐいと男性器が中を押し進む度に、硬直している膣襞がカリ首を、ぐりゅっと何度も擦れて、先生の腰が快感のあまりにガクガクと腰を震わせていました。
身体を密着させられ、あまり大きくもない乳房がぐにゅっと押し潰されるように先生の身体が倒れかかってきました。
先生の腰に、両脚を広げさせられ、深々と生殖器の侵入を許すと、子宮口と鈴口がキスをしていました。
──どびゅぅぅっ……! どぷっ……どぷっ……びゅぅっ……どぷっ……
「──っ♡ ぁ……はぁ……♡ で、出ています……♡ 先生の……熱い……もの……が……どぷどぷっと……注ぎ込まれています……先生の、愛情が……♡」
「マリー……マリー……ぃ……」
そんなに恋しそうに名前を呼ばないでください。
私はどこにも逃げませんから……
お互いを求め合うように、私たちは指に力を込めて、ぎゅぅっと、絡め合った指が離れなくなるくらい強く握り合いました。
子宮に精液を飲ませるように、亀頭が子宮口を無理やり開かせようと、食い込ませて何度も男性器を痙攣させながら精液を吐き出していました。
飲みきれなかった精液が襞の隙間一つ一つに染み渡るほど、先生の長い射精は続いたのでした。
私の身体に凭れかかられた先生の身体。
お互いに身体を密着し合って、肩で息をしているような状態でした。
一緒に息を吸い込んで、一緒に吐き出して……お互いに空気を吸い込む度に起伏して膨らむ胸が、お互いの身体を圧迫し合っていました。
息苦しいのに、身体が浮いているような心地。先生の体温を近くで感じられて、こうして一つになれている間、ドクドクと聞こえる心音も、先生と私のどちらの音なのか区別も出来ないほど、私たちの身体は交ざり合っていました。
先生がしばらくしてから息を整えると、意を決したような口調で私の名前を呼んでくださいました。
私は先生のその一言で、胸の内側から浮くような心地がピタリと止まってしまい、握り合っていた両手を解いて、先生の背中に回しました。
愛してるなんて言われて、嫌なはずがないじゃないですか。
「私も、先生のことをずっとお慕いしていました……ありがとうございます……ですが……今は答えをお待ちいただけないでしょうか……」
ごめんなさい、先生。私から出来るのはあなたの気持ちを受け止めることで精一杯なんです。
──ですから、先生……先生もこれは夢なのですから……今だけは私に募らせていた思いを全て打ち明けてください……
懺悔室での懺悔でも、大聖堂でいくら捧げても、きっと晴れることのないあなたの思いを……私に──
「──ん゛っ!? んっ、ぅ゛……♡ はぁ、ん゛……ぅ……♡」
私は先生の戻りかけていた理性の糸を再び切ってしまいました。
先生は私の頬に手を添えて、ご自分が口付けしやすいように私の顔の向きを押さえて、乱暴にキスをしてしまいました。
私の気道の配慮もない荒々しいキス。
募らせて燻らせていた歪むほどの愛に、火を着けたのだと思います。
喉が苦しかった私は、すぐに身体を捩らせて、気道の確保をするように楽な姿勢に変えている間、先生はキスをしながら、頬をほんの少し、間近で見なければ気が付かないくらい、少しだけ膨らませていました。
次の瞬間、先生の舌が私の唇を抉じ開けました。
口に溜めた温かい唾液が一気に私の口内に注ぎ込まれて、先生の温もりは口いっぱいに広がりました。
自分の唾液と違う温もりを持ったそれは、違和感を私の身体に残しました。
舌が引き抜かれ、まだ舌先から伝ってドロドロと流れ込む温かい唾液を口に含みました。
──ごくんっ……♡
喉に通っていく先生の温もり。
はぁっと吐きだす吐息も、あなたと同じ温もりに染まっていました。
今まで結合部を覆っていたスカートもわざとらしく、私に見えるように捲られて、あらわにさせられました。
色白の内腿を彩るように結合部から、深紅の粘液が枝分かれするように描かれていました。
私が処女を失った証。
先生は私の肩を掴んで、うつ伏せにされました。
生殖器同士繋がり合ったまま、身体を回されたので、身体の動きに合わせて反り返った男性器が私の中をぐりゅぐりゅと、まんべんなくかき回してきて、突然込み上げる快感に身体を強張らせることしか私には出来ませんでした。
先生の匂いがたっぷり含んだ枕に顔を押し当てられて、ついには先生すら見えなくなってしまいました。
先生の両手は、私の小振りなお尻を掴み、そのまま体重をかけるように腰をぶつけてきたのでした。
──ずぷっ……ずぷぷっ……ぬぷぅ……
お尻の形が変わるくらい、先生の体重が乗せられて、先生の精液が染み込んだ粘り気のある膣の中に再び、血液が流れ込んで硬くなった男性器が挿入されました。
先ほどと違った体位なこともあり、そり返ったカリ首が私の腰の裏を擽るように、ぐりゅっ、ぐりゅっと擦られて、私は海老反りにでもなりそうなぐらい脚を反らして爪先を丸めていました。
「──ッ! い゛っ……~~~っ……あ……はぁ……ぁ゛……はぁー……♡ はぁー……♡」
私は先生の枕に顔を埋めて、また身体を襲った快楽の波に呑まれて、私の頭の中と目の前が真っ白になりました。
至近距離で強烈なフラッシュを焚かれたような感覚。
目の前がチカチカと光って、身体は酸素を求めて痙攣しているようでした。
深呼吸すると枕から先生の匂いを胸いっぱいに取り込んで、蕩けた頭を更に麻薬漬けにでもされているような心地でした。
先ほど感じた、胸の内側からふわふわと浮かぶ心地がずっと続いてるようでした。
枕を握り締めていると、先生がその私の手の甲の上から、手を重ねてられて、指の隙間を埋めるように……きゅっと握られたのでした。
まるで全身が性感帯にでもなっているように思えるほど、身体が敏感になっていたのです。
握られただけで、お腹を引っ込めるように腰を丸めて、膣の中がぎゅっと引き締まったのでした。
「はぅ゛……ぅぅ……っ……♡ ご、ごめんなさい……せんせい……はしたなくて……ごめんなさい……っ……♡」
「あ゛っ──ぅ゛……! あ゛ぁ……はぁ゛……っ……!」
膣襞が先生の形ぴったりになり、そこからまるで押し潰すように収縮したのでした。それから先生が獣のような声を上げて、私のお腹の中をかき回すように、びゅぐっ、びゅぐぅっと男性器が脈を何度も打たれて、精液を私の中に撒き散らしていました。
中に注ぎ込まれた精液と、私の身体が興奮のあまり分泌させた粘り気のある愛液が混ざり合った物が男性器に纏わり付いて、引き抜かれる度に結合部からそれが何度も掻き出されているのでした。
私のお尻周りや先生の下腹部が、掻き出された粘液と汗でべたべたに濡れて、私たちの身体がぶつかり合う度に、ぬちゅっ、ぬちゃっ……と卑猥な音を立てていました。
ばちゅっ……ばちゅっ……ぬちゃっ……ぐちゅっ……ぐちゅぅ……
動物同士のような目合い。
そんなに、切なそうに呼ばないでください。顎を震わせているような声で私の名前を、寿命が近い壊れかけの電子機器のように繰り返し口にされているのでした。
いつか言葉すらも無くなって止まってしまいそうな切なそうな口振り。
きっと、その後に待っているのは私と先生を、聖職者以前に生徒と教師といった分け隔てる立場なんてものも関係なく、牡と牝同士の本能的に生殖器を貪り合う裸のお付き合いだけでしょう。
愛も欲も分からなくなって、生殖本能のまま動物のように濃くてドロッとした精液をドププッ……と、腰が抜けてしまいそうなほど子宮に注ぎ込んで満たすための行為。
先生の腰の動きが早くなっていました。
腰の内側をごりごりと擦り付けてくる、男性器は小刻みに脈を打って、膨れ上がっていました。膨らんで長さも増して、先ほどよりも子宮口を無理に開かせるほど、大きくされていました。
──ぐいっ……ぐいぃっ……
「──ぅ゛……! ぁ゛……はぁー、はぁー♡ せ、せんせ……また、またキます……ぞわぞわしたのが……おなか、からっ……だいじなとこ……きゅんって……なります……♡ せんせいの……しぼってしまいます……っ♡ あっ……♡ はぁー……ぁ゛ー……♡ ぅ……んぅぅぅ──ッ♡」
──びゅるぅぅっ! どびゅっ……びゅぐぅっ……どびゅっ……びゅるっ……!
先生が私の両手の甲をぎゅぅっと強く握って、腰を密着させて腰をガクガクと震わせていました。
「マリー……ぃ゛……あ゛っ……うぐっ……ぁ゛ー……ぁ……」
まだ先生の中に残されていた作りたての濃い精子を無理やり搾り出すように膣の中が収縮して、射精で暴れまわる男性器を押さえ付けていました。
耳元で先生が、胸の中いっぱいの空気を吐き出し「……はぁ」と腰が抜けるほどの快楽を得られたように心地よさそうに声を上擦らせていました。
密着させられた先生の腰が、時折ガクッ、ガクッと大きく震え上がって、身体の中から一滴残らず私に注ぎ込んでいられるのだと、身体で教えてくださいました。
先生の枕に顔を埋めていた部分が、私の唾液と汗でぐっしょりと濡れていました。
肩で息を繰り返している途中、先生の右手が私の頬を背後から触れてきたのでした。
靄がかかった視界のまま振り返ると、目元から頬にかけて涙が伝った跡をいくつも残した先生が目に入りました。
……もう、そんな顔をしないでください。
私の頬に添えられた、愛しい先生の手。そして唇に触れてる親指。
「ん……れ、れろっ……」
「──っ! ま、マリー……!?」
私は舌を伸ばして先生の親指を舐めました。
れろれろ……あむっ……んっ……ちゅぅ……ちゅぱっ……れろっ……れろっ……
身体を捩らせて、両手で先生の右手を掴まえると、先生の右親指がふやけてしまうくらい、咥えて、舌先で付け根から指先にかけて何度も舐め続けました。
「マリー……指なんて、舐めなくていいから……顔が見たかっただけだから……」
「ちゅ……ぷはぁ……れ、ぇ……ふふっ、見るだけで……良いのですか……?」
私が口を離した親指の先に、ねとぉー……っと細い唾液の糸が引いていました。
ぷつ……ッ……
ねっとりした唾液の糸が切れると、私の中で柔らかくなっていた男性器が再び大きくなり、先生は私の唇を貪るようにキスをしてきたのでした。
それからも、先生からの求愛はしばらく続きました。私の意識が失くなるまで、何度も繰り返されました。
先生の胸の内のわだかまりが、精液の塊となって吐き出せなくなるまで、何度でも。
──意識が無くなる直前の光景ははっきりとは覚えていません。
けれども、先生に思いをぶつけられている最中、ワンピース状の修道服のスカートをお腹まで捲り上げられ、生娘としての裸体を晒したままの私を、先生が嗚咽しながら抱きしめてくださっていたことはぼんやりと、頭に残っていました。
私はそのような先生の頭を、まるで自分の子どもをあやすように撫でているのでした。
本当に夢見心地な気分でした。
こうして先生に思いを伝えられるのも、先生の思いを一時的に受け入れるのも。
先生。夢というのは二度も同じ内容を見るのは難しいものだと思うんです。
私たち二人が肌を重ねたこの機会だって、二度目はきっとないものだと思います。
次に目を覚ました時には、私たちは先生と生徒の関係に戻ってしまいますね……
私も先生のことを、愛しています……
これからも、ずっと……あなたのことを、お慕いします……
私は先生への愛の言葉は胸にしまいこんだまま、先生を受け入れました。
────
頭部の耳を触られる感触。
軟骨を指で優しく掴まれて、くりくりといじられる擽ったい感覚に目を覚ましました。
「──せ、先生……?」
「あ、ごめん……起きた?」
「もう……何をされているのですか?」
「獣耳の部分、気になって……」
「そこも私の一部なのですから、擽ったいです──ひゃぁ、ぁっ……♡ 先生、それ以上は駄目です!」
「──ご、ごめん……」
フード越しとはいえ、耳介の外側だけでは飽きたらず、指が内側を撫でて擽るので、恥ずかしい声を出してしまいました。
眠りに就いた時と違って、私は先生が普段使っている掛け布団を体にかけさせていただいた状態でした。
ベッドから身体を起こしてみると、衣服にも先生の匂いが少し付いている気がしました。深呼吸をすると、部屋だけでなく衣服に付着した先生の匂いを胸いっぱい吸い込んで、頭の中がふわふわと浮かぶような夢見心地が続いていました。
伸びをすると少し身体に痛みが走りました。特に下腹部辺りから。
「……マリー、明日はトリニティに用事はないんだけど……大聖堂にまた、顔を出しに行っても良いかな。空いてたら、中で一緒に祈りを捧げたいんだ……私も一緒に、捧げなきゃいけないと思うから……せめてもの償いがしたい……どれもこれも、私の責任だから……」
「……ありがとうございます。私も先生が快く使っていただけるよう、綺麗にお掃除をして、お待ちしてます。ですが、先生……償いだなんて、悲しいことをおっしゃらないでください……それに……」
「……それに?」
「それに、私は先生と一緒にいられることが、何よりも幸せなんです。償わなければと思われるのでしたら、私の傍にいてください……そうしていただけるだけで、私の抱えた不安も和らぐのですから」
目が覚めてから先生のお部屋を出なければならない時間間近でしたので、私はそれ以上の言葉も交わすことなく私は身支度を済ませました。
……念のため、こっそりスカートの中を確認しましたが、血痕などは付いていませんでした。もしかしたら先生があの時、乱暴に私のスカートを捲り上げたのも、破瓜の血が付着しないようにするための配慮だったのでしょうか……?
その日の帰り道、地下鉄に揺られながら、ひと気が少ない車輌の中で私は両手を握って目を瞑りました。
違和感のある手の組み合わせ。
指の隙間にまだ、先生から握られていた感触が微かに残っていました。二度目はないと思っています。
きっと、この隙間はこれからあなたに埋められることは無いのでしょう。
先生と明日会えるまで、いえ、今後、あなたの手を取る度に、本当の温もりが恋しくなるのかもしれません。
学園に戻れば、私は見習いのシスター。
この気持ちもまた試練であるならば、罰であるならば、私は受け入れます。
それが、先生と一秒でも長く一緒にいられるためなら。