悪役令嬢・エリーゼが、ライバルであるリサを陥れようとするのですが……まさかの自爆で、自分とライオンが合体してしまい!?

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悪役令嬢のワタクシ、嫌がらせに失敗しまして――ライオンのワシとガッチャンコ!

「きぃーっ! 悔しいったらありゃしませんわ、どうしてワタクシよりあんなヤツと……!」

「お嬢様、そんなお顔をなされては……」

「うるさいうるさい! 爺やには関係ないでしょう!」

 怒りにまかせ扉を閉め、ワタクシはベッドに突っ伏す。

 また、またですわ!

 折角、折角憧れのあのお方に完璧なお誘いをできたというのに……!

「すまないね、今日はリサとの予定が入っているんだ」

 だなんて。

 んもう、あの小娘ったらどうしていつもワタクシを出し抜けるのかしら。

 色んな人と仲良くやってる八方美人っぷり、見ているだけで虫唾が走って敵わないったらありゃしない。

「まあ、今回はいいとするわ。今から中庭を通った時が、あの女の最後ですもの」

 もう一時間もすれば、あのハンサムで素晴らしいロバート様と一緒にここを通過するはず。

 観劇だか、食事だか知らないけれど……ウキウキしている所に天罰をお見舞いしてやりますわ!

 ワタクシは、包み紙の中に隠しておいた物を取り出す。

「うふふ……通信販売となめていましたけれど、こういう物が手に入るとは誰も思わないでしょうね」

『Akujon』と書かれた紙を暖炉にくべて証拠隠滅しつつ、ワタクシは計画の用意をする。

「全く、ほんっとうに丁度いい時に……お父様のご趣味のサーカス団、ケダモノが増えたものですわ」

 ライオン、とかいうケダモノ。

 顔の周りにもさもさの毛が生えていて、やたら頭が大きくて、臭くて汚らしくって。

「いいかいエリーゼ、このライオンという動物は雄々しくて逞しいんだよ。ウチのサーカス団の目玉にしてみせるんだ」

 なーんてお父様はおっしゃってたけど、檻の中でボヤッとしているだけでちっちも雄々しくも逞しくもないんだから。

「うふふ、見物ですわねぇ……! 愛され美人が、一瞬でボヤボヤケダモノと一緒になってしまうなんて!」

 そう、これはなんでも合成できるという銃。

 いつでもあのリサを汚らしくできるように、これが届いた日にライオンの方は登録済み。

 後はワタクシがリサを狙い撃ちして……うふふ、パニックになるのが楽しみで仕方ありませんわ!

――

「ロバート様、今日もいい天気ですわね。お花があんなに綺麗!」

「そうだねリサ、でもどんな花も君の前にはかすんでしまうよ」

「あらぁ、そんな……がおぐろぉおおおん、ギャオォオオオオオ!!!」

「う、うわぁあああああ!!!」

――

 リサがたちまち毛むくじゃらになって叫び狂い、ロバート様が大慌てで逃げ惑い。

 そこを、たまたま二階の自室で目撃していたワタクシがお助けするのですわ。

 うんうん、完璧!

 一旦机に銃を置き、満足げに伸びをして。

 それから窓を開け、外を見る。

 まだ、ですわね。

 気をつけないといけないのが、狙い撃つ所を見られてしまう事。

 リサがケダモノになっても、ワタクシのせいとバレてしまっては元も子もないですもの。

「何か……うまい方法は無いかしら?」

 これを注文した事実を消すために、カタログや注文用紙、領収書まで燃やしておいた際に掃除を頑張り過ぎちゃったかしら。

 綺麗なお部屋になったのはいいのですけれど、これはこれで考え物ですわね。

 まあ、時間はありますわ。ゆっくり――

 

「ロバート様、今日もいいお天気ですね」

「ああ、そうだね。リサも――」

 

 ええええええ!?

 待って待って待って待ってお待ちになって!?

 

 嘘嘘、もう?

 だってだって、劇の時間にしろ食事にしろ、まだ時間的に早すぎるじゃないの!?

 どうしようどうしよう、早くしないとリサの奴が逃げてしまいますわ!

 とにかく、まずは急いで……

 ワタクシは机に手を伸ばし、銃を手に取る。

 いいえ、取ろうとしたのです。

 ギリギリ届いていなかったせいでワタクシの華奢な手が銃を落としてしまい、ますますワタクシは気が動転し。

「あっ、わっ、きゃっ!?」

 更には何もないカーペットでつまずいてしまい。

「えっ」

 反射的に手をついたまでは良かったものの……ワタクシは計画に一番重要な銃に、全体重をかけてしまいましたの。

 変な音がして、火花が散って、光って、これ、爆発――!?

 

「うぇほ、ゴホッ、ワタクシ、ワシ、どうなったんじゃ!?」

 なんだか頭がぐらぐらする。

 う、ううん、さっきまでワシ、昼寝しとったはずなんじゃが。

 って、お待ちになって? ワタクシ、そんな事してなかったはず……え。

 やっと視界が落ち着いてきたのは良いのだけれど……ケダモノの手が見えている、ような。

 嘘嘘、そんな、そんなまさか、ですわ!?

 手を引っ込めようとすると、ぱらぱらと粉みじんになった何かが散らばって。

「え、これ、ワタクシが買った……」

 触ろうと思うと、さっきから見えている……まるで大きな手袋をしたかのような、毛だらけの……ゴワゴワとした、手のような物が、その、思い通りに動く。

「え、え」

 嘘でしょ、い、いいえまだ、そんな。

「お嬢様、いかがされまし――」

「あっ、爺や! その――えっ、何、この声」

 大声を出そうとして、喉が低く唸る。

 いつも通りのワシの声じゃが。

 えっ、また、なんだか、変な考えが!?

「わ、わ、わ……!」

 爺やが後ろに下がりながら、尻餅をつく。

 あ、初めて見ましたわ。なんかかわいい。

 じゃ、じゃなくてぇ!

 ワタクシは恐る恐る身体を起こし、お気に入りの姿見を見たのですわ。

 特注の、いつもの距離だと私の全身がすっぽり入り、まるでおしゃれなフレームのような縁取りが素敵な……

 そんな縁取りに私の姿は切り取られ、見る事ができたのはパンパンになっているドレス、その中にあるであろう大柄な肉体。

 そして、見覚えのあるケダモノのような……タテガミ。

「え、えぇえぇええええええ!?!?」

 わ、ワタクシが、ライオンとか言うケダモノと、

 わ、ワシ、なんで人間みたいな服を着とるんじゃ!?

 あっ、また、なんか、ワタクシ、ワシ、どうなっとるんじゃ、なんなの、これ!?

 

「うぅ、なんでこんな事に、ワタクシの美貌がぁ……」

 手鏡を覗き込む。

 かわいらしいまつげのせいで、ますますライオンの顔になってしまったのが現実だと分かってしまう。

 ぼさぼさのタテガミに、手入れを欠かさない長い髪が合わさってもう、デタラメですわ。

 あぁ……これが、どなたかがいたずらで絵を貼り付けただけ、ならどんなに良い事か。

 なんかワシ、元気になった気がするのう。

 気を抜くと、わけの分からない事を考えてしまいますわ。

 もう、なんなのこれ。

「え、エリーゼかい!?」

「あっ、えっ、その声、ロバート様!?」

 無理無理無理無理!

 い、今、ワタクシ、ライオン、ワシじゃな、とくっついてるのに!?

 慌てて鏡で顔を隠そうとするのですが……ダメですわね、ライオンそのもののお鼻がひんやりとするだけ。

 なかなか、気持ちいいもんじゃがな。

 んもう、なんなの、これ。

「ひどい、誰が一体こんな事を……!」

 ワタクシの自爆ですわ。お主のせいか。 なーんて、言うわけにもいかず。

「わ、分かりませんわ、気がついたら突然、こうなっていて……!」

「ええ、私もお嬢様のお部屋から大きな音がしましたので、駆けつけた時にはもう……」

「誰かが何か、細工をしたとでも言うのかい? ああ……エリーゼ、こんな姿になってしまって」

 あっ、なんだか、いつもより優しくしていただけてる気がしますわ……

 ちょっと、嬉しいかも。

 ふん、いけすかんオスじゃな。ワシの方が立派じゃぞ。

 ……ええっと、ワタクシ、何を張り合ってるのかしら。

「お嬢様のお部屋を調べたのですが……何か爆発した、以外には何も分かりませんで……」

 あ、良かったわ。包み紙のもえさしとかあったなら、ちょっとまずいですものね。

 しかし、人間っちゅうのも悪くないのう。ワシ、気に入ったぞい。

 えぇ!? どうしてワタクシ、こんな毛むくじゃらでムキムキな身体、気に入ろうとしているのかしら!?

「エリーゼを陥れるなんて、そんな酷い事を……! エリーゼ、君がどんな姿になっても、君は君だよ?」

 あぁ……なんとも優しいお言葉。

 嬉しい、嬉しいのですけれども。

 それって今言われると、『姿がまるっきり変わってしまっている』っていう証明になってしまいますわよね……

 まあ、ライオンのワシが人間とくっついたんじゃ、仕方ないわなぁ。

 え、え、ワシ、ワシって、あ、あのライオンの……!?

 なんじゃ、今更気づいたんか。ワシ、さっきから分かっとったぞ。お主の脳、優秀じゃしな。

 うそうそうそうそ、ワタクシ、ライオンなんかと……なんかとはなんじゃ! くっついただけじゃなくて、心が一緒に!? ああ、そうじゃぞ。ワシの名前はレオじゃ! ワタクシは……そ、そんな話じゃなくってぇ!

「え、エリーゼ!」

 げっ、リサの奴まで来てしまいましたわ。めっちゃタイプのおなごじゃな、むふ!

 じょ、冗談じゃないわ! どうしてこんな姿をあんな奴に見られなきゃならないのかしら、少し、この身体の自慢してアピールしたいのう! わ、ワタクシは女ですのよ!? ワシはオス、おっさんじゃもん。

「エリーゼ、エリーゼですのよね?」

 あーっ、腹が立つったらありゃしませんわ。

 素直に笑い飛ばせば良いのに! なんじゃなんじゃ、お主。あのおなご、めちゃくちゃ素直に心配してくれとるぞ。うるさいっ!

「ふ、ふん! 何をしに来たのかしら? いきなりこんな……ライオンと混ざり合ったワタクシを馬鹿にしに来たのかしら? 見なさいよ、この逞しい腕……!」

 ちょ、ちょっと!? いいじゃろ、ちょっとくらい自慢しても。

 も、もう、ワタクシの身体ですのよ!? ワシのでもあるんじゃが?

 で、でも……! いやいや、ワシはお主のせいでこうなったんじゃぞ大体。まあ、無理にワシがこの身体を使うつもりはないんじゃが……ちょっとくらい、許してくれてもいいじゃろ。あ、ええ、まぁ、おっしゃるとおり、ワタクシのせいなんですけれども、じゃろ? はい……

「そんな! 私、エリーゼが大変だって聞いて急いできたのに、そんな強がり言わなくても!」

 ほら見ぃ、泣きそうになっとるぞ。いつもこうやって、みんなの同情誘うのよ! いやぁ……? これ、どう考えてもお主の態度が悪いじゃろ……も、もう、ケダモノに人間の感情のご高説なんてされたくありませんわ! ええい、仕方ないのう。手本を見せてやるわい、ちょ、ちょっ……

「あっ、ご、ごめんなさい、リサ。ワシ……ワタクシ、今、動揺しと、してまして。つい、あなたに酷い事言ってしも、しまいましたわ。こんな顔で、こんな身体で、折角気をつかってましたのに、こんな姿になってしまいまして、その……」

「あっ、その、私も、ごめんなさい。今一番つらいのは、エリーゼなのに」

 あっ、なんか、悔しいですわね。

 ほれ見ろ、悪いのはお主の態度じゃて。

 くぅー、さっきまでただのケダモノだったあなたの方が振る舞いうまいの、腹が立ちますわ。

 あの、いっとくがのう。何よ。これ、お主が「本当はこうしたいのにな」って思っているのをそのままやっただけじゃぞ? ワシがやったから、ちょっとワシが混ざっとるが。え、えぇ、そんな、えぇ……!?

「困りましたな、このままではエリーゼ様がライオン人間のままですぞ……エリーゼ様も、こんな姿を見られるのはお辛いでしょうに」

 あ、あれ? ワタクシ、みんなから嫌われていると思っていたのですけれど?

 そりゃあ、普段のお主が態度悪いからのう。

 だ、だって、ワタクシはリサなんかより優秀で、美しくて、素晴らしいのですよ!? なのに――それがいかんっちゅうの! ワシみたいに、むやみやたらに威張らずおとなしくしている方がいざという時に――じゃあ、やって見せなさいよ! おお、見とるが良いわ。

「いえ、ワタクシは大丈夫ですわ。むしろ、お父様や爺や……それに、他の方々はよろしいのでしょうか? ワシ……じゃなかった、ワタクシ、こんな立派……じゃない、筋骨隆々の姿になってしまって、ほら、ドレスだってもうこんな」

「エリーゼ、そんな事心配しなくてもいいんだよ」

「そうですわ、エリーゼ。私、あなたがそんな事になったからって軽蔑したりなんてしないわ」

「ほっほっほ、エリーゼ様。私はエリーゼ様がエリーゼ様である限り、爺として仕えさせていただくだけですぞ?」

 あれ、えっ? ほれ、今からかっこよく決める所じゃぞ、やるか? い、いえ、お任せしますわ……なんじゃ、素直じゃのう。人間、素直が一番じゃぞ! ら、ライオンに言われたくありませんわー! ワシ、もう半分は人間じゃもーん!

「皆様、ありがとうございます」

 ワタクシの身体が勝手に立ち上がり、深々と頭を下げる。

 うう、身体を動かされるって……変な感じですわね。

「ワタクシ、負けませんわ。例えライオン人間になったとしても、ワタクシはワシ……ワタクシですから。色々と皆様にご迷惑をおかけするとは思うけれど、改めてよろしくお願いしますわ!」

 にっこり、笑っている感覚。

 今、どんな顔なのかしらワタクシ。

 お主、そもそもにっこりそんな笑った事ないじゃろ。うるさいわねぇ。

 拍手が聞こえ、ロバート様が、リサが近寄ってくる。

「流石エリーゼだ、君はいつだって気丈で素敵だよ」

「ですです。やっぱり、ロバート様とエリーゼはお似合いですわよ」

「……え?」

 待って待って。意外じゃの、この二人、付き合っとるんじゃないのか? ワタクシはそう思っていたのですけれど。聞いてみたらどうじゃ。あ、え、ええ。

「えぇっと……」

 喉がグルグル唸ってしまうの、ちょっと恥ずかしいですわね。練習がいるのう。

 二人が同時に、ワタクシを見上げてくる。

「その、つかぬ事なのですけれども……お二人、交際なさってるのでは?」

「えっ、えっ、エリーゼ、何言ってるの!?」

 ちょ、ちょっと、リサ、そんな慌てなくったって!? いやぁ、めんこいのう! もう、すけべジジイ! まだおっさんじゃ!

「ははは、エリーゼにはそう見えていたのか、悪い事しちゃったな」

 えぇ……?

「もしかして、ロバート様と私が今日デートしていると思っていました?」

「最近、急速に仲がよろしいですから……ねぇ?」

 ワシに聞かれても。あ、失礼しましたわ。つい。

「違う、違う! エリーゼとリサは仲が良いじゃないか。それでね、今度の誕生日にどんな物を贈ったら喜んでもらえるか、アドバイスを貰おうとね」

 こいつめっちゃいい男じゃないか! そりゃそうですわ、ワタクシの惚れた相手ですのよ? ガハハ、今度はワシが失礼してもうた! んもう。

「あ、あらぁ、そうでしたの。イヤですわ、ワタクシったら、恥ずかしい……」

 ワタクシ、勝手に一人でイライラいしていただけですのね。まあ、好きな奴をとられるの、腹が立つのは分かるわい。あらぁ、ケダモノのくせにですか? ケダモノじゃから、じゃ! ガハハ! うふふ、自分の境遇を茶化しちゃうの……良いですわね!

「ええっと、ではロバート様。ワタクシ、欲しいものがありますの」

「あれれ、君におねだりされたらサプライズになら無いじゃないか……! まあ良い、何が欲しいんだい? 言ってごらん?」

「うふふ、分かりませんか? リサは分かるかしら?」

 ほら、そうやってすぐ喧嘩を……落ち着きになって、見てなさいって。

「えぇ……? 何かしら、分かりませんわ」

「んもう、二人とも酷いんですわね。見ておわかりになりません? この身体にぴったりの、ド・レ・ス、ですわ? もう、身体も胸も大きくって、窮屈なんですもの!」

 しばらく間があいた後、皆様一斉に大笑い。

 おお、良い感じじゃのう。でしょう? ワタクシ、とにかく当分はこのままなんですし……ワシはずっとこのままでもええんじゃが? んもう、とにかく……ワタクシがワタクシをネタにしちゃえば、困る方は減りますでしょう? まあ、そうじゃな。

 

 と、ワシと一緒になったワタクシ。

 なんとかかんとか事態は落ち着いて、きちんと事前に証拠を燃やしていたおかげで自爆とは気づかれず。

 にしたって、もう少し食事に肉が出てほしいんじゃが。

 んもう、明日から増やしてくれるっておっしゃってたでしょう! それより、あなたもきちんとテーブルマナー、覚えていただきますわよ!

 う、うへぇ……人間はライオンより気楽と思っとったが、大変なもんじゃなぁ……

 当然! いいこと、ワタクシ令嬢ですのよ?

 うむ、ううむ、ライオンのオスなんじゃけど、ワシ、令嬢になってもうたんじゃな……?

 ふふん、先ほどこのままで良いとおっしゃっていたくせに。

 くぅ、お主やっぱり……意地悪じゃのう? うふふ。

 食事もして、入浴もして、後はぐっすり眠るだけ。

 幸い、元からかなり大きなベッドでしたから……ギリギリですわね。

 ちょっと伸びしたら、端に足が触れるのう。まあ、これは爺やに新しいのをお願いするとして。

 んー、しかし……ベッドっちゅうもんはなかなかいいのう、尻尾がちょっと落ち着きませんわね。

 ああ、すまんのう。気持ちと連動してどうしても動くもんで、お食事でメインディッシュが来た時、急に動くから驚いてしまいましたわ……う、うむ、律せるよう努力するわい……

 まあ、まだお互い初めてですものねぇ。これからよろしくお願いいたしますわ、レオ。おう、こちらも頼むわい、エリーゼ。

 ……

 ……

 ……

 ええーっと。なんじゃ。

 ひ、一つよろしいかしら。今更何を遠慮しとるんじゃ?

 そのぉ、ワタクシ、寝たいのですけれども。別に……寝たらええんじゃないか?

 ん、これ、あなたが何かしているわけじゃないのですか!? 何の話じゃ、ワシゃ何もしとらんぞ?

 え、え、え、え? じゃあ、この股間の……あぁー! 勃起か! こりゃ仕方ないわい! し、仕方ないって、全然落ち着けないんですけれどもぉ!?

 そりゃあ……ワシの肉体からすると、天国じゃからな。飯もあるし、寝床もあるし、敵もおらんじゃろ? じゃあ性欲が一番元気になるわな。

 な、なるわなって、で、では、そうするんですか、こ、この、いやぁー、確かにこりゃすごいのう。なんだかんだ言って、年くっとったから……ここまでチンポがギンギンになるのは久々じゃわい、確かに。感心している場合じゃありませんでしょう!?

 そんな怒っても、仕方ないじゃろう。性欲なんじゃから、無視するか発散するしかないじゃろ? お、収まらないのですか!? うーん、どうじゃろ。数時間は勃ってる気がするがなぁ。そんなぁ、寝られませんわ、こんな、こんな……

 手が動き、布団が動かされ。

 仕方ないのう、じゃあ……お、お待ちになって! まさか、リサを……いやいや、流石に令嬢としてあるまじき行為じゃろ、それ。あ、いえ、そもそも令嬢にその、チンポないわなぁ、ガハハ。い、言わなくてよろしいですわ!

 手が動き、いきなり股間で盛っている物を掴む動きをして。

「ゃんっ♡」

 おほっ……♡ ちょ、ちょっと!? なあに、メスに挿れる代わりに……な?

 え、え、あっ、手が、手がっ、アァ、んっ、こ、これ、自分で擦るのも、なかなか、じゃなぁ♡

 なんとワタクシ、その……ライオンと、レオとくっついたせいでできた、ええっと、お、おチンポを、レオが動かす自分自身の手で、こう、あっ、あーっ……♡

「あっ、あっ、ぐぉおおう♡」

 やだぁ、ワタクシったら、ど、どうじゃ、ワシは、もう、めちゃくちゃ、いいんじゃがっ♡ あ、え、え、んもう、失礼、しちゃいますわねぇ……!

 ワタクシは咄嗟に、自分で自分の胸を掴んでしまいましたの。

「ぉおおおっ♡♡♡」

 なんじゃあぁああ、これ、これぇ♡♡♡ お分かりになります? な、何をじゃ、おほっ♡ わ、ワタクシが気持ちいい事、あなたも、良いっ、んっ、でしょう♡ あっ、んっ、がぉおおおんっ、つ、つまり、ワシが気持ちいいとぉ……お主も、じゃなぁ♡ 分かったならよろしい、ぃいいいんっ♡♡♡

 同じ身体で、同じ頭を使っていて。

 それなら、感覚だって同じなのですから、感じ方が同調するのも当たり前の話、ですけれども。

 まさか、まさか、ワシがぁ、人間の、乳でぇ、おおっ、おっ、何じゃあ、その、先端のぉ♡♡♡ あ、あなたもぉ、初めて、手でしている割には、やっ、あっ、そこっ、そんなぁ、やぁんっ♡♡♡

 油断すると思わず、獣の咆哮が漏れそうになり。

 我慢しながら、我慢せずにぃ、あっ、あっ、自慰するの、自慰って言うんじゃな、ワシはまだおっさんじゃが、しょうもない事、あぁ~ん……♡ 言う暇があったら、ワタクシに負けないくらい、あっ、あっ、やだやだぁ、女なのにぃ、おチンポの方が、気持ち、どうじゃあ、ワシの、ワシのぉ、でも、乳の、乳首もぉ、ぉおお~~~ん♡♡♡

 間に合わせで作っていただいた寝間着が、たちまち爪でボロボロになってしまい。

 何言うとるんじゃあ、直接触る方がぁ、あぁん♡ そりゃあ、気持ち、いいのはぁ、そうですけどぉ……♡

 おおっ、おおんっ、なんだかっ、臭いっ、臭いがぁ、ワシ、ワシの、チンポの、臭いっ、イヤですわぁ、ワタクシの、ケダモノの、オスのっ、臭いですのにぃ、ぐふふ、ワシがワシの臭いでドキドキしとるっちゅうことはぁ、ぁああ~ん、意地悪ぅ、あなたも大概、意地悪ですわねぇ、意地悪と合体したからのう、むふふ、じゃあ、すけべと合体したからワタクシもすけべなのですわねぇ、あんっ、あぁ~んっ♡♡♡

 暗闇の中なのに、自分の姿が、部屋の中がよく見えて。そりゃあ、ワシは夜に活動するからのう。こんなの、明るいくらいじゃぞぉ……? ほれ、ほれ、ここが乳首じゃなぁ♡ ゃああん、なんかヌルヌルしてますわよ、ワシの先走り、お主の胸についちまったのう、もう、汚いですわぁ♡

 くっついて同じはずなのに、やっぱりワタクシになかった物、ワシになかった物は特別ドキドキしちゃってぇ、でも、ワタクシの物、ワシの物なのにぃ、あっ、あっ、あっ♡

 皮を被って、少しだけ中が顔を出しているチンポがワシの手で揺らされて、大きく柔らかいおっぱいがワタクシの手で変形して……。

 でも、この手ってワタクシの、ワシの、じゃからぁ、じゃあ、じゃあ、ワタクシ、おチンポ、ワシ、おっぱい、あっ、ぁっ、ガオ、ぐぉおお、ワシ、ワシ、ワタクシ、ワタクシ、ワシ、ワタクシ、どっちが、どっちで、どっちも、どっちでぇ、あぁあああ……♡

 気持ちよすぎて、ドキドキしすぎて、頭の中がグルグルして、ワシ、ワタクシと一緒になってるせいで、どちらなのかなんだか、分からなくなってきましたわぁ、ワタクシも、こんな、気持ちいいの、初めてじゃあ、全く、お主のおチンポ、たまりませんわね♡ おっぱい、おっぱい♡ ぐへへ、揉めば揉むほど、ドッキドキして、ワタクシ、嬉しい♡ いい、良いですわぁ、ワシが気持ちよくなればぁ、ワタクシも気持ちよくなっちまうからぁ、もっと、もっと、よくして欲しいぞぉ、んもう、あなたは令嬢なんじゃぞ、ライオンのお主が欲しがりさんなのがいけないんでしょう? うふふ、さっきからおチンポにメロメロなの、どなたかしらぁ? そりゃあもちろん、ワタクシ、ワシ、あぁ~ん、ワシのおっぱい、こんなに気持ちいいの、初めてですわぁ、ワタクシのじゃぞ、ワシ、ワタクシ、うふ、うふふぅ、なんじゃろなぁ、どうしてかしらぁ、ワタクシ、ワシ、何が何だか分からないのにぃ、ワシが誰だか、ワタクシだったかしらぁ? こう、どう言えばよろしいかしら、変だなって思っちゃえば思うほど、ワシ、たまらないですわぁ♡ ワタクシがワタクシじゃない気もするけどワシじゃない、でもワタクシってワシってなっちゃうとぉ、頭も身体もキュンキュンしちゃうわい、ワシばっかりずるいわよぉ、お主だけじゃなくてあなたも一緒にキュンキュン、ドキドキ、ムラムラ、しちゃいなさい、あんっ、おっ、おっ、しちゃう、しちゃう、ワタクシ、ワタクシの身体勝手に使って、ワシ、気持ち、いぃいいいい♡♡♡

 チンポが、おっぱいが、脳みそが刺激され、もうワシもワタクシも何が何だか分からなくって。

 とにかく、気持ちいい、気持ちいい、もっと、もっと、気持ちよくなりたい!

 あっ、あっ、ワシに、ワタクシが、入って来ちゃいますわぁ♡♡♡

 おおっ、良いっ、良いっ、ワタクシに、ワシ、入ってきてくれぇ、ああっ、すごい、すごいぞぉ、もっと、もっとぉ♡♡♡

 胸の、逸物の刺激で血流も心も頭も加速して、グルグルして。

 ワシってワタクシ、ライオンだけど女性で、おちんちんシコシコ気持ちいいのにおっぱい、あぁ~♡ もう、ワタクシがだれでもいいわい、もう、ワシと、一緒になっていくのが、気持ちよくて、気持ちよくてぇ、ああっ、ワタクシ、ワシと、混ざりなさい、ああっ、言われなくともぉ、ワシ、ワタクシ、ぜぇんぶ、一緒、あっ、あっ、イク、イク、イク、ライオンなのに人間なのにオスなのに女性なのにケダモノなのに令嬢なのに行儀悪いのにもっと気持ちよくなりたいのにもうわけが分からないのにワシなのにワタクシなのに出る出る出る出る出る出る出る出るぅうううううう♡♡♡♡♡

「ぅうおおおおおおおおん♡♡♡」

 我慢しきれずに、ワタクシは雄叫びのように唸る。

 ワシの手に一段力が入り、まるでその拍子に押された分が出て行くかのように白い液体が亀頭から飛んでいき。

「おっ、あっ、すごっ、出るっ、良いっ、ああっ、んもう、エッチ、なんじゃからぁん、うふ、うふふぅ、あぁああ……♡♡♡」

 ライオンと人間の自我が完全に混ざってしまったのを理解しつつ、ワシと重なったワタクシは、まだこんがらがっている記憶を味わいつつ……久々の、初めての射精を堪能するのじゃった。

 

 

 

「お、お嬢様! 危ないですからお部屋でお待ちくださいって!」

「なぁーに言うとるんじゃ、ワタクシが手伝った方が早く用意できるのはお分かりでしょう?」

 サーカス小屋の中、ワシはウキウキと用意をしている。

 周りは令嬢だから、と止めようとするのですけれど……もう、ワタクシのこの逞しい筋肉、使わないともったいないからのう!

 そ・れ・に、もう衣装着替えてしまいましたから……スイッチ、切り替わってしまってますのよ?

 数人がかりで運んでいた荷物をワタクシ一人でさっさと運び、大きな鏡に目をやる。

「むふふ、ぴっちりスーツ、えろいのう……胸も股間も、こんなに大きいんですものね♡」

 バレエのレオタードのような衣装を着たワシ自身に、ついついワタクシは大興奮。

「あらいけませんわね、勃起しちゃったらすぐバレちゃうんじゃから♡」

 もうそろそろ始まるって言うのに、ワタクシったら本能に正直。

「さてさて、さっさとステージの支度を手伝って……一発、抜いておくに限りますわね♡」

 ワシのパワーのおかげで、ワタクシの肉体は力持ち。

 あの日から、令嬢として暮らしつつも館の力仕事だってしちゃっているほどに力を持て余しておるんじゃぞ。

 だってぇ、使いませんと……余った分、夜に、ねぇ♡

 もう、心も混ざっちゃった今、自分で自分が大好きになっている分、オナニーも激しいからのう、ワタクシ♡

 イカン、イカン! 今はそんな事より、サーカスのショーの事を考えませんとね!

 

「皆様、お待たせいたしましたー! 当サーカス、開演でございます!」

 割れるような拍手、大きな歓声。

 ううん、これこれ、これが良いんじゃよ。

「それでは我がサーカス団名物視界の、レオーゼちゃんの登場です! はーい、レオーゼちゃん、どうぞ!」

 一瞬の緊張の後、ワタクシは堂々と歩いて舞台に上がる。

「がぉおおおお!!! ワシはレオーゼ、ワタクシライオン令嬢ですのよ~!」

 笑いと驚きの声が上がり、全員の視線がワシに集まるのを感じる。

 あ~、たまらんわい!

 ワタクシ、やっぱりサーカスのライオンじゃったから……好きなのですのよね、この感覚。

 爺ややお父様はお止めになったけど、うふふ!

 ワタクシは令嬢ですけれど、サーカスのライオンでもあるからなぁ!

 観客の皆様を見ていると……あっ、いたいた。

 ロバート様とリサちゃんが、こっちを見て手を振ってくれてるわい。

 うふふ、彼氏が、愛しの子猫ちゃんが来てくれているとますます嬉しいのう♡

 あー、今度はどっちとデートしちゃおうかしらねぇ……

「あー! あのライオン人間さん、おちんちんおっきくなってるー!」

 んもう、さっき沢山抜いたのに、いけませんわ♡

 今はサーカス、お客様を楽しませないと!

 ……それはそれとしてだな、ライオンと人間の混ざった自分が興奮しているのを見られていると思うと、あーっ、合体ってやっぱり、良・い・気・持・ち、ですわね♡

 

 

 おしまい


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