お盆は皆さまいかがお過ごしでしたか?
私は夏風邪でおふとぅんの中に居ました。
鼻水に咳に痰と3セット。熱が出ないから余計に質が悪かったです。
皆様も体調にはくれぐれもお気を付けください。
あと今回はエッチなしです。病魔に煩悩を祓われました。
太陽から降り注ぐ日照りがじりじりとした熱を持つ頃、オラリオの名物となっている怪物祭が開催された。
普段も賑わうメインストリートだが、今日は普段にも増して人でごった返しており、行きかう人々は額に汗を滲ませながらも年に一度の祭りを楽しもうと盛り上がっている。
そんな喧騒を道端の日陰に身を寄せながら眺めていると不意に目の前に人が立ち塞がった。
「ねぇ、そこのカワイこちゃん? 暇なら一緒に遊ばない?」
「……はぁ」
人だかりから焦点をずらせば、目の前に立っているのは見も知らない男だ。
色褪せ、袖回りが擦り切れたシャツに草臥れたブーツ。休日だからかもしれないが防具も着ていないのに腰にはちゃっかりロングソードを帯剣しているのを見るに売れていない傭兵か、傭兵崩れの冒険者だろうか。
冒険者を長くやっていればいるほど自身の獲物を手放しづらくなるのも理解はできる。だが碌に手入れをされていない様を見ればそれが安心の為なのか虚勢なのかは一目瞭然だ。
現に目の前に立つ男は剣の柄に手を乗せ、見せつける様に柄を撫でまわしている。
「私には待ち人がいますので、他をあたってください」
この程度のチンピラなどロキファミリアのエンブレムを見せればそれで終わるのだが、今日はお忍びで祭りに参加している為なるべく人目を引くことが憚られた。
そのためやんわりとお断りをしたのだが、目の前の男には通用しなかったようで構わずに私へ身を寄せると脅すように私が背にしている壁に手を付け顔を近づけてきた。
「いいから遊ぼうぜ? 俺のほうが楽しませてやれるしよ、な?」
「ハァ……」
男、というか中年特有の汗と皮脂の臭い、そして僅かに混じる鉄臭に思わず眉を顰める。
流石に面倒、というか私これでも
折角の日だというのに朝から気分が巨蒼の滝並みに急降下していく。
ニタニタと下卑た顔をして言う目の前の男を殴り倒そうかと本気で拳を握り締めようとしたとき、
「ちょっと」
「!」
すぐ横から見慣れた声と手が私を庇うようにのびてきた。
男の手を払うように押しのけ、私を背後にすっと庇う。男の顔は直ぐに見えなくなり、目の前には見慣れた背中と嗅ぎ慣れた優しい匂い。
私は自身の耳がピッピッと羽ばたくのを感じながら、緩む頬とふわふわと舞い上がる心を抑える様に彼の背中へ顔を埋めた。
干し草のような、若い新芽のような、温かい太陽のような、不思議な――――でもちょっとだけ汗くさい……ベルの臭い♥
それからしばらくして男が悪態をつきながら去っていくのを見届けたベルが私へと振り返った。
「すいません。レフィ、お待たせしました」
眉尻を下げて申し訳なさそうに謝るベルに先ほどの男らしさは微塵もない。
いつもと変わらない、頼りなさそうな風貌に思わず笑みがこぼれた私は、彼の鼻先を人差し指で小突いてから2歩下がって見せる。
「ふふ、そんなことよりほかに言うことはないんですか?」
パチパチと目を瞬かせるベルへニコニコと笑みを向けながらその場で1回転して見せた。
今日私が着てきたのはサックスブルーのシンプルなワンピース。特にフリルや刺繍などはなく、白い帯と胸元に三日月をモチーフにしたブローチをしただけだが、彼はこれの意味に気づいてくれるだろうか?
期待が8割、不安が1割、あとの1割は…
ふわりと広がったスカートが萎むのを待って彼を見上げてみれば、ベルは顔を真っ赤にして視線を右往左往させ、口元をもごもごとさせた後そっと私を抱きしめる。
「えっと、今日も素敵で可愛いです……”僕の”レフィ」
彼の言葉に、私の胸はどきゅりと変な音を立てる。
囁かれた鼓膜がじりじりと熱をもって頬を焼き、体の芯を溶かすような甘い痺れが膝を揺らした。
衝動的に彼の腰へ手を回しそうになった私だったが、彼の腕の隙間から見えた光景に今度は別の意味で心臓が跳ねた。
「べ、べベベル! はやくイキマスよ!!」
彼の抱擁から飛び上がる様にして脱出し、ショックを受けるように固まる彼の手を掴んで走り出す。
慌てる彼の声と、いくつもの囃し立てるようなヤジと口笛に耳を真っ赤にしながら、私はしばらく無言で走り続けた。