コミックマーケット103で販売する同人誌の冒頭部分です。
風邪を引いてしまった星咲桜花ちゃんを秀穂が看病する話です。
視点は桜花ちゃんになっています。

1 / 1
良薬(愛)は口に甘し

「桜花なんか顔赤く無い?」

2月のある土曜日の放課後。お昼ご飯を部室で食べ終わった時に杏音から突然言われる。

「そう?」

「うん。桜花が最初に秀穂からデートのお誘いがあった時くらい赤いよ」

「そ、そんなに?」

そこまでと思い私は持っていた手鏡で確認して見る。確かに顔が赤い。授業が終わるまでは全然そんな事無かったのに。

「今日は部活せずにもう帰った方がいいんじゃない?」

杏音は心配そうに私に言う。

「心配しすぎよ。私は大丈夫よ」

別に体調が悪いとかそんな感じは無かった。

「う~ん。そだ。ちょっとじっとしてて」

何かを思いついたのか。私に近寄り

ピタ

杏音は私の額に自分の額を当ててくる。

「ちょと!杏音。顔、顔」

私の言葉を無視して額を当て続ける。杏音の額はひんやりとして心地が良かった。

「うーん。やっぱり熱あるよ。それに顔さっきより真っ赤」

「それは今杏音がこんな事するからよ」

杏音の今行動で私は戸惑って体が熱くなってしまう。

バン

すると部室の扉が勢いよく開く。私と杏音はそっちを見る。

「だ、だめだよ。あのちゃん。そ、そんな事しちゃ」

なつめ先輩がなぜか慌てふためいていた。その後ろには友梨亜ちゃんと璃々子ちゃんもいたが二人も私達と同様なにがなんだか分かっていないようだ。

「び、びっくりした。いきなりどうしたんですか?なつめさん」

「だって今あ、あのちゃんが桜花ちゃんにキスしようとしてたでしょ?桜花ちゃんには秀君という彼氏がいるんだからそんなのダメだよ」

「キッキス!?」

私はなつめさんの勘違いにビックリして大声を上げる。

「そうなんです。じ、実は前々から桜花の事が・・・それでもうこの気持ちが抑えっ痛・・・ちょ止めてよ桜花・・・冗談だから冗談」

変な妄言を言う杏音の耳を引っ張る。

「何変な事言ってるのよ?もう・・・・コホ、コホ」

「だ、大丈夫桜花?」

「杏音が変な事いうからでしょ?コホ、ケホ」

「え~と結局なんだったの。何してたの?」

状況を理解していないなつめさんは目を点にしていた。

「実は・・・杏音がケホ。コホ」

「大丈夫?無理しないで桜花。私が話すから」

杏音はなつめさんに事の顛末を説明した。

「な~んだ。そう言う事だったんだ。てっきあのちゃんが桜花ちゃんを」

「てっきり何?なつめちゃん」

一緒に来ていた璃々子ちゃんがきょとんとした顔でなつめさんに質問する。

「な、なんでも無いよ。璃々ちゃんにはまだ早いから」

「???」

誤魔化すなつめ先輩。首をかしげる凛々子ちゃん。

「成程そんな方法で迫る・・・・ありね」

「友梨亜はなに小言でぶつぶつ言ってるの?」

なぜか友梨亜ちゃんはメモを取りながら呟いていた。

「ううん何にも♪でも確かに桜花さんの顔赤いですね」

「だよね。それに桜花さっき咳してたしやっぱり帰った方がいいよ」

みんなからも言われてしまう。確かに咳も出ていた。

「でも・・・」

みんなが早退を勧めるがそれでも渋ってしまう。

「秀穂とそんなに一緒にゲームしたいの?」

「それもあるけど・・・・」

「あるんかい」

「だってそれだときっと部活を」

秀穂君の事だ。きっと私の体調が悪いと知ると今日の部活事態をお休みにすると思う。でもそれはダメ。だってもう時間が無いのだから。

「そのことなんだけどね桜花ちゃん。今日の部活動中止にしようって話になっててそれを言いに来たの」

「「「え?」」」

私と杏音。それに璃々子ちゃんは同時に驚きの声をあげる。

「え?このままWGプレイせずに家にすごすごと帰れと?」

璃々子ちゃんは目を点にしていた。

「いやいやりりす。ここに来る前になつめ先輩が言ってたの忘れたの?今日はこれから大雪だから部活は無しだってお兄さんに言われたじゃないの。それを言いに部室に来たんでしょ」

「そうなんですか?」

「ほら。天気予報だとこれからもっと雪降るらしいから早めに帰ろうって。ゲームしてて大雪で帰れなくなったら大変だからね」

私はなつめさんが携帯の天気予報を見てその後窓の外を見る。確か外を見ると雲は厚く灰色になっていて雪の降る量も増えてる気がした。

「そうですか。なら・・・」

帰る準備をするために立ち上がる。しかし

くら

(あれ?)

一瞬意識が遠のき力が入らず崩れ落ちる。

「ちょ。おとと・・・」

倒れそうになった時杏音が気づいてとっさに受け止める。

「大丈夫?桜花」

「ご、ごめんなさい少し立ち眩みが」

まさか杏音の言う通りこんな体調だったとは思ってもいなかった。

「やっぱり言わんこっちゃない。とりあえず保健室に行こ。ほら肩かしてあげるから」

「う、うん。ありがと杏音」

「なつめさん。戸締りと秀穂にメールとかお願いできますか?」

「分かった。じゃあ、秀君にメール連絡しておくね」

「お願いします。ほら行こ。桜花」

私は杏音に肩と借りながら部室を後にした。

 

「38.0度。それに扁桃腺も赤くなってるし風邪ね」

保健室に居た田川先生に軽く診察をしてもらう。

「ほら。やっぱり私の言った通りでしょ」

「そうね。ごめんなさい」

「今年の風邪は一気に悪化するから。すぐに家に帰って安静にしていなさい」

「はい。ありがとうございます」

お礼を言って立とうとしたが

くら

再度立ち眩みがし倒れかける。

「ちょ!てんどんは洒落にならないから流石に。座っててよ」

また慌てながらも杏音に受け止められてそのまま座っていた椅子に座る。

「大丈夫?なんなら車で送るけど・・・」

倒れそうになり田川先生も不安そうに私に問い掛ける。

「そこの所は大丈夫です。秀穂がいますから」

「ちょっと杏音」

私よりも杏音の方が先に言う。

「ああ・・・男か。夏休みに一緒に留守番してもらってたっけ」

「は、はい。そうです」

私は少し濁しながら言う。あの時秀穂君との淫らな行為を未だに隠しているからだ。

「・・・・まあ、男がいるなら大丈夫だろ」

田川先生も何か言いたそうであったがそれ以上私には言わない。ただ・・・

「しっかしこの年で彼氏なんて羨ましい。私なんて学生時代は女子校でお陰で未だに・・・」

その後ぶつぶつと独り言をしゃべっていた。

「じゃ、じゃあ私達帰ります。桜花ゆっくりでいいから立と」

「ありがとう。杏音」

「お大事に」

保健室を出て少し歩いた後

「しかしあの桜花がねえ~」

杏音はにやにやしながら私に話かけてくる。

「な、何よ?」

「だって桜花が自分の体調が悪い事を気にならないくらいにゲームに熱心になるなんてゲーマーの私として嬉しい限りだよ」

「そ、そんなんじゃないわ」

「じゃあなんなの?」

「それは・・・その」

「やっぱりなつめさんのため?」

「!?」

すぐさま正解を杏音に言い当てられ驚く。

「やっぱり・・・」

「もしかして気づいてた?」

「まあ、桜花の性格からしてそんな気がしてたから」

「う~」

そんなに私ってバレやすいのかな?そう思い落ち込む。そう・・・もうすぐなつめさんは卒業してしまう。そうなるとWGもみんなで一緒にプレイする事は無理だろう。だから少しでも多くの時間をと思っていた。

「たぶんみんな気づいてると思うよ。そしてみんなも同じだと思うよ。もちろん私もね」

「杏音・・・」

「でもね。無茶な事しないでそんな状況じゃ桜花が楽しめないでしょ。みんなで楽しまなきゃ。だから今は風邪を治す事に専念して」

「そうね。ありがとう杏音。でも・・・」

「何?」

「ふふっ。まさか杏音にゲームの事でお説教をもらうなんて思っても無かったんですもの」

「ちょ!ひどくないかな?それ」

「だってホントの事じゃない。この前だってオンラインゲームで徹夜して遅刻ギリギリだったでしょ」

「あ、あれはイベントが・・・」

風邪を引いているのも忘れ二人して笑いながら歩く。

 

「あ」

下駄箱に着くと不安げな表情の秀穂君がいて私達を見てすぐ駆け寄る。

「秀穂君・・・」

「なつ姉から連絡があったけど確かに顔赤いな。先生なんて?」

「やっぱり風邪だって熱もある。それじゃあ秀穂も来たことだし私は先に帰るね。ではではお後は若い二人に任せてと。じゃあね~」

杏音は足早に帰っていった。下駄箱にはこれから大雪になるからか二人きりで少し緊張してしまう。

「一人で歩けそう?」

「だ、大丈夫・・・だと思う」

そう答えてみたけど足がおぼつかない。思い出すととさっきも歩いてる時も杏音に寄り添ってもらっていた。そんな私を見て秀穂君がすぐにしゃがみ

「おんぶするよ」

「いいの?」

「いいに決まってる。恋人が病気なんだから」

本来なら恥ずかしがって躊躇う場面なのだがそんな事も言ってられない。何より彼の好意を無駄にすることなんてできなかった。

「じゃあ・・・その・・・・お言葉に甘えて・・・」

私は恐る恐る秀穂君におぶさり体重をかけていく。

「立つよ?」

「うん。お願いします」

ゆっくりと秀穂君は立ち上がる。

「重くない私?」

「平気さ。むしろ軽いくらいだよ」

そうして秀穂君は私をおんぶして歩く。いつも私の隣を歩く時とは少し異なる歩き方。私を揺らさないように慎重に歩いてるのだと分かる。でも・・・

「ケホ。ゴホ」

「桜花。大丈夫か?」

おかしな咳で秀穂君が心配そうに私に声を掛ける。

「ご、ごめんなさい。その・・・・胸のせいで息がしづらくて苦しくて」

秀穂君におんぶされて胸が圧迫して息がしづらい。

「ごめん。気が付かなくて」

「秀穂君が謝る事じゃないわ。だから。え?ちょっと秀穂君」

すると秀穂君がキョロキョロして一度私を降ろす。

「秀穂君って・・・きゃ」

いきなり私を抱えお姫様抱っこをする。

「流石に人がいると恥ずかしいから。ちょっと急ぐから揺れるかもしれないからしっかり捕まってて」

そうしてゆっくり丁寧に私を抱え走る。私はそんな彼にぎゅっとしがみつく。心臓が高鳴る。WG内でお姫様抱っこをしてもらったが現実ではこれが始めてだった。もう風邪で熱があるのか今のこのお姫様だっこでときめいて熱くなってるのか分からない。でも・・・

(ああ、幸せ)

私の胸は高まるずっとこんな幸せな時間が続けばいいなと思うくらいに

 

「桜花」

「・・・・・・・」

「桜花?大丈夫?」

「は、はい」

夢心地でいると秀穂君が私に声をかけられ我に返る。辺りを見ると気が付けばもう家の目の前に来ていた。

「ごめん。慎重にしたけど揺らしちゃって気分悪くなったか?」

「大丈夫。幸せだったから」

「幸せ?」

「な、何でもない。す、少し熱で朦朧としてて・・・・」

「そう?ところで・・・」

秀穂君が少し戸惑っている。

「どうかしたの?」

「いや・・・家の中真っ暗なんだけど?今日誰もいない?」

私も見ると家には人の気配を感じない。

「え?そうだ。おばあちゃんは昨日から友達と一緒に温泉旅行に行てって。お母さんとお父さんは今日坂田倉に行くって言ってたからもしかしたらまだ帰って無いのかも・・・・じゃあ、これを使って」

私はポッケに入っていた鍵を秀穂君に渡す。

「ありがと。後常備薬とかしまってある所とか分かる」

「えーと確か台所に救急箱が」

とは言ったがその中に無く探してみたけれど家に医薬品は見つからずそれどころか食べ物もろくに無かった。

「ごめんなさい」

まさかここまで家に何もないとは思ってもみなかった。

「気にしなくていいよ。すぐにミハマイレブンまで買い出しに行ってくるから何か欲しい物ある?」

「特に無いわ。秀穂君にお任せするわ。それよりも秀穂君の方は大丈夫なの?外雪けっこう降ってるけど」

探しているのに時間がかかってしまいその間も雪は降り続け10CMは積もっていた。

「大丈夫大丈夫。桜花よりもこっちにいる時期は長いんだから雪道の歩き方とかは熟知してる。すぐ帰ってくるから」

そう言って秀穂君は足早に出かけていった。秀穂君がいなくなりひっそりと静まりかえる。それでも私の鼓動はまだ高鳴っている。むしろ

「つまりこれから秀穂君と二人っきりでいられる・・・」

これから二人っきりでいられる喜びで一層私の胸の鼓動は高まる。彼にあんな事やこんな事え、えっちな事をし、してもらってたりなんて・・・

(って秀穂君はエッチするためじゃなくて私の看病のために来ているんだからこんな妄想しちゃだめよ。しっかりしないさい。桜花)

自分に言い聞かせる。秀穂君は私の看病の為にいるのに私からエッチなおねだりしちゃダメじゃない。もう一度自分に言い聞かせて私は彼が帰ってくるまで安静にしていようと自分の部屋の扉を開ける。

(え?)

自分の部屋の扉を開けた・・・だけどそこは自分の部屋では無かった。そこは

 


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。