デリタが囚われていたのは、ユーゴの港の沖合に浮かぶ、グル島の要塞だった。そこの地下牢に彼は入れられていた。
ここは収容所でもあり要塞でもある。北の守りの要だった。地上には上陸したヴァーリンデン一行との激しい戦闘の痕があちこちにあった。なぎ倒された大木や崩された櫓などである。
闇夜の晩、かがり火によって明るく照らされたそれらを、マーシュは砦の天守閣から眺めていた。小さな身体に薄衣をまとい、身体の輪郭と肌がほんのりと見えていた。
だが、その身体は男の子のそれ、とは言い難かった。
彼の胸だが、ほんの少しだが膨らんでいた。それから、薄い寝間着から透けて見える股間には、ぶら下がっているものは無かった。
うつろな目で外を見続けていたマーシュの身体に、太い腕が巻き付いて来た。抱き上げられた彼は振り向いた。彼の『おじ』の顔があった。
「引っ付くなよ、ブラン。さっき相手してやったばかりじゃないか?」
「お前をもっと抱きたいんだよ。昔を覚えて疼いてしまっているんだ」
「3度も相手したじゃないか。もう……」
『おじ』は何一つ身につけていなかった。股間の太いものはぬめった体液にまみれていた。ベッドに投げ飛ばされたマーシュは脚をこじ開けられ、顔を埋められた。
「拭ってないだろ? 汚いよ?」
しかし『おじ』はお構いなしにぴちゃぴちゃと音を立ててマーシュのそこを濡らした。舐めたのは窄まりでは無い。その上にある、
「ガキのまんこはいつ舐めても、味わいが軽やかで口づけたいもんだよな?」
『おじ』は口をすぼめ、音を立てて味わう。小さいながらも複雑な形をしたそれは、彼とマーシュの体液の両方の味だった。
「くうん。そんなに、熱心に舐めるなよ……」
「いいじゃないか。お前が魔光王様の温情で、もとの性別に戻ったんだからな。お前のここをたっぷりと可愛がらせてくれ」
「そうされるのが、一番弱いんだよ……」
マーシュは、彼女は身悶えしながらブランの愛撫に身を委ねた。小さな陰唇と陰核とをしゃぶりつくされるそれに何度も歓喜した。
そうして肉が蕩けると、勃起したままの男根が入って来た。大陰唇がめり込むほどの太いものでの挿入に、マーシュは痛みではなく喜悦を覚えていた。
「おおっ。お前のここの受け入れ方が、さっきよりも良くなっているぞ?」
ブランの太いものが行き来する。マーシュの狭くて浅いそこは、ほじくられて熱くなっていた。精液がこびりついていた壁が、その奥からとろりと出て来た透明な女の液体で粘っこい男の体液を洗い出そうとしていた。
でもそれはその男根に、亀頭の先に、再びせりあがろうとする精液を放たせる為の用途に用いられるものだった。マーシュはせわしなく呼吸をしながらその時が来るのを待った。
「くっ! くうっ!」
「ほらほら、また飲みたがっているぞお前の膣は? こんな小さな体でも子供が欲しがるものなんだな?」
眦をあげて睨みつけるマーシュだが、その顔は秘密の快楽に浸っている、少女のそれだった。
「ほらっ、またそろそろ出てきそうだ。お前の身体は俺との子を欲しがっているんだな? よくわかるぞ?」
「あううっ! お前との子供なんて絶対嫌だッ!!」
マーシュの喉から出る声が、ひと際甲高くも柔らかくもなった。
「それと、あたしの身体は性転換の魔法の使い過ぎで、赤ちゃんをなかなか孕めなくなっているのよッ!!」
「だったら、子供ができるまで毎日俺の子胤を受け止めろよォッ!
そしてブランはひと呻きした後に小さな身体に精を放った。深く呼吸をして目に涙をにじませるマーシュを見た。
美しさと可愛さが同居している顔立ちだ。『妖精の子』ならば必ず持ち合わせているものだ。
マーシュは元々、ザルモールが持つ『百合園』で、彼の配下の性を処理する『妖精』と呼ばれる美女が産んだ娘だった。
だが『百合園』のあるじたるザルモールは、女の子よりも男の子を好んだ。まだ精通も始まらぬ少年の男性器を弄び、柔らかい肛門を犯すことを大魔道士は好んでいた。マーシュは性転換の魔法をかけられ、男児として主に奉仕した。
男に『性変化』したマーシュは、そのザルモールの一番のお気に入りとなった。だがそのお陰か、彼女は薫陶を受けた。魔道の使い手としてのだ。
放たれた精液を身体で受け止めた後、ゆっくりと深呼吸をするマーシュの頬をブランは撫でる。それからうすっぺらくも少しだけ脂肪が蓄えて丘になりつつあった乳房に触れた。
「『妖精の娘』は、何もかもがたまらないな。交合の為に生まれた生き物と言っていい。何もかもがそそるよ……」
「あたしがアンタの子供だったら、どうすんの?」
「もっと気持ちよく楽しめる。何せ親子の生殖器の相性はとても良い、と聞くからな!」
ブランはまだ硬いものでマーシュの奥をひと突きした。彼女の顔がひと際切なくなった。
粘り気のある体液が充填されたその中を乱れさせながら、ブランは喘ぐマーシュにこうささやいた。
「あのダリッドとかいうガキと、こういうことをしたかったか?!」
「そうじゃないよ、あいつは……」
友達でありたかったと言いたかったが、彼女は言うのをやめた。
でなければこの男が何をするか、恐れていたからだ。それから自分の立場では逆らえない。
ベイオルブ軍の中の序列で言えば、ブランはマーシュの上司にあたるからだ。
□ □ □ □ □
マーシュらがデリタを捕らえたのは、魔光王の密命だった。あの若者を城に連れて来い。当初はそのまま王都に護送するはずだった。しかしブランの一存でそれを止めた。魔光王がやろうとしている事を予想してそうしたのだ。
「魔光王様はダリッドという小僧を己の身体で篭絡するはずだ」
魔光王との性交は、受けた相手の潜在能力を引き出す力がある。回数をこなせばこなすほど多く引き出せるそうだ。
マーシュもそれを受けていくらか魔力が高まったが、ウルティーマの本来の性別である女のそれを使ってのそれは、度合いが遥かに違っていた。
「もしやと思うが、三元帥という制度も変えてしまうのではないのか。ザルモール様とダリッドを加えて4人の帥にするおつもりだろう、俺はそう考えたのだ」
マーシュにはわからなかった。何故ダリッドもとい、デリタがそこまで目を付けられているのか、その理由を知らなかった。
確かに会った時には帯びていなかった高そうな剣を身に着けていたが、それが魔光王の期待と何の関係があるのかは理解できなかった。
そのデリタだが、臭い牢の中で期をうかがっていた。枷を外す方法とそれに伴う苦痛への覚悟、その為の魔力を溜める為に静かに時を過ごしていた。
彼は牢の檻をじっと見る。魔力の気配があるか否かを確かめていた。
(微弱だがある、が、魔法で牢破りなど考えんほうが良いだろうな。)
牢番から鍵を奪う。その為の策を彼は遂行に移した。檻の向こうで足音があるのを確かめると、右足の親指で印を切った。1つの魔法ではない。重ね掛けだ。
印を切り終えると前かがみになり、歯を食いしばった。刹那、その左手が音もたてずに板から離れた。
(……!!)
激しく、耐えがたい激痛である。しかしデリタは必死で痛みをこらえた。
かけたのは風切りの魔法だ。それで己の左手首を切り落としたのだ。離れた左手とその痛みのもととなる手首からは、大量の血がこぼれていた。
(くそっ! 痛覚遮断の魔法も鍛錬しておくべきだった! 止血帯も準備できていれば!!)
激しい痛みと予想以上にこぼれる血とでデリタの心に恐怖が満ちていた。しかし冷静になれと自分に言い聞かせ続けて心を落ち着かせると、転がった手と血がで続ける手首とを重ね合せた。
(骨と血管、神経が合わさるのを想像しろ……。)
その間に淡い光が起こった。切り離された手と腕とが重ね合わさり、傷口が塞がって行った。骨が重なりあい、血管と神経がつながった。
1分して痛みは完全に失せた。悍ましいその感覚は残ったままだったが、左腕を持ち上げるとぽろっと落ちることも無く手も持ち上がった。ゆっくりと握りしめ、それから指を動かしてみた。
(……うまくやれたな。だが、頭はふらふらだ。)
デリタは自由になった手で、右手首と首の自由を奪う板の感触を確かめる。魔法で割られないように硬い防御が施されているようだ。魔法で焼き切るなどは相当骨が折れるだろう。磨丸なんぞ使った場合は首まで吹っ飛ぶ恐れがあるから却下だ。
それと、はめたものに魔封じを施す力があったように見受けられた。首も抑えつけるのは詠唱ができなくする為に考えたのだろう。
この世界の者らに魔法印を教えるは良くないな、とデリタは思った。自分の魔法知識は小出しにしておこう。もし広めたら、今の自分の方法も封じる術を考えてくるに違いない。
(さて、見張りをどう寄って来させるか。)
彼は便器代わりの桶の上に尻をつけた。ここは暗がりになってよくは見えなかったからだ。汚物が溜まったままのその上で、やかましく気張るふりをした。
「うるせえな!」
怒鳴り声と共に見張りがやって来た。檻の中を覗いて、用を足す振りをするデリタを見た。
「またうんこか。そんなにひねらないでくれよ。野郎のおまるを取り替えるのはまっぴらごめんなんだよ!」
「……」
「黙ってねえでよう、はい、すみませんとか、俺に謝れよ!」
この見張りは直情径行な男のようだ。持っていた鍵で格子扉を開けて入って来た。暗い顔をして黙っていたままのデリタを痛めつけようと、棘がついた棒の先を向けて来た。
「さっさと謝れ! でねえとてめえのチンポとキンタマをこいつですり潰すぞ!」
好機だ。デリタは自分に言い聞かせるとその棒の先を左手でつかんだ。
「な、なにしやがる?!」
手から電流が流れた。触れた相手を焼き殺す高圧電流だ。発するとすぐに棒から手を離した。看守は悲鳴を1つもあげずに黒焦げになって息絶えた。
デリタはその遺体から鍵の束を奪い取る。足枷と首を封じる板の鍵の両方があった。それを奪い取ると男の死体からかろうじて残っていた靴だけを拝借し、走り出した。
しかし頭がふらふらなのは変わりなかった。力もあまり出ない。ふと、こういう場合の応急の『自然療法』のことを思い出した。進んでやるようなやり方では無かったが、出くわしたら試すことに決めた。
風が吹いて来る方を走り続けると、巡回していた兵士に出くわした。
「わっ、脱走か!!」
デリタは印を切り、出会いがしらのその相手の首を風の刃で斬り裂いた。血しぶきをあげて倒れる男の喉元にくらいつき、血をすすった。
(まずい! 生臭いぞ!)
その術は彼の『前世』の世界にいた、人食い鬼族が編み出した治癒の術だった。それをただ飲むだけで体力が回復する彼等と違い、デリタの身体はそれだけで快復しなかった。
けれども、口に含んだ鉄物くさいにおいを放つ飲み物をごくりと飲み込むと、のどでその液体が含んでいる何かを察した。
(……だが、魔力を含んでいるわけだな?)
印を切り、自分に治癒の魔法を施す。ふらついていた頭と白くかかっていた視界がいくらか晴れた。どうやら血を飲んだ後に治癒魔法をかけるといいみたいだ。
(とにもかくにも……どうやって逃げるかだな!)
デリタは地上に出ようと、再び走り出した。
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