太陽が天頂にも差し掛かろうかという中特有の、眩む程の強い陽射しによって私は目を覚まさせられた。普段よりもずっと明るく周囲が照らされ、ぼんやりとしていた思考が少しずつ覚醒していく。そして、何気なく身体を動かそうとした時、尋常でない程の倦怠感に阻まれた事で私は異変を認識させられた。
目に飛び込んでくる辺りに飛び散った大量の液体と、それらが発する強烈すぎる性臭によって、強制的に昨日の自分の醜態の記憶が呼び起こされる。
(昨日私は……フリーレン様に襲われて……)
昨日、信じられない事に股に巨大な逸物を据えたフリーレン様に私は押し倒され、欲をぶつけられた。あわや底なしかと思える程の性欲を発露させるフリーレン様を私はされるままに何度も相手をした末、互いに疲れ果てて気絶するように眠りについたのだ。散々に貪られた感覚は色濃く私の身体に刻みついて、繰り返し絶頂させられた記憶を思い起こすと身体の奥が疼くのを感じる。
そんな風に昨日私を犯し尽くしたフリーレン様はというと、私の隣でまだ寝ているらしく静かな寝息が聞こえてくる。
「う……ぐ……」
私は力を振り絞ってどうにか重たい身体を起こそうとしたが、石でも乗せられているかのように身体は持ち上がらない。そうしていると自然と呼吸が荒くなってしまい、私は辺りの臭気を思いっきり吸い込む事になった。
「ふっ……うぅ……♡」
香りに脳が浸され、そのままクラりと気絶してしまいそうな感覚すら覚える。
私は悪戦苦闘しながらもどうにか上半身を少し起こす事に成功し、改めて辺りと自身の身体を目の当たりにした。
私の身体には乾いた大量の白濁液が大量に付着しており、更にその下にも所々に無数に朱いキスの痕が残されている。
そして先程の私の身体の重さは単なる肉体的な疲労だけでなはなかったのであろう。
私の動きを阻害していた、散々に精を注ぎ込まれ膨れ上がった腹部。お腹をさすると、溜め込まれたまだ生暖かい精の感覚が伝わってくる。
私は意を決してお腹を手で押すと、その瞬間蛇口を捻ったようにどぷどぷと胎内に溜まっていた大量の精液が流れ出した。
「お゙っ♡おぉ゙ぉ゙っ……♡♡」
粘り気の強い精液が私の中に留まろうと力強くしがみついているようにすら感じられる。
「はぁっ……はぁぁ゙……絶対孕んでるじゃん、こんなの……」
「うぅ……ぅ……♡」
どうにか粗方の残っていた精液の排出に成功した私は、這う這うの体で寝ているフリーレン様の股を恐る恐る覗き込むと、昨晩私を犯し尽くした逸物は流石に力を失い小さく遠慮がちに股間に鎮座していた。
でも、なんか割とまだ元気がありそうだ。もう一発くらいは頑張れそうな感じの瑞々しさが残っている。あれだけヤリまくったら干からびたミイラみたいになるイメージだったのだが、持久力ヤバすぎないだろうか。
そんな風に私がフリーレン様の強チンチンに内心で慄いていると、突然フリーレン様がもぞもぞと動き出した。
「あ……フェルン……もう朝……?」
そして目を覚ましたフリーレン様はぼんやりとした目つきで、覗き込む私と顔を合わせた。
「えっと、フェルン……どうした、の………!?」
私達は数瞬互いに見つめ合っていたが、フリーレン様が私の霰もない姿を見て昨日の出来事を思い出し、現状を認識したらしい。
「うわ……」
部屋を見まわしたフリーレン様は、ご自分が作り出した惨状だというのに目を見開いていた。
「……おはようございます。フリーレン様。今日は私まで一緒に寝坊してしまいましたね」
「フェルン……」
私はそんなフリーレン様に曖昧な微笑みを向けたのだった。
「えっと……えっとさ……」
フリーレン様はなんとも言い難い表情で言葉を詰まらせながら、何を話していいのか逡巡している様子。ちなみに私は先程少し身体を起こしただけでも結構キツかったので、再び身体を横たえている。このままでは一向に話が進まなさそうだと考えた私は、自分から話を切り出すことにした。
「とりあえず私の質問に答えていただいてもよろしいですか?」
「えっ!?あ、うん……」
私の言葉にビクリと身体を跳ねさせるフリーレン様。私は言葉を続ける。
「で、フリーレン様。なんで生えてるんですか?」
「え゛」
私が腕を持ち上げてフリーレン様のチンコを指差し言うと、フリーレン様は苦いものでも噛み潰した様に顔を顰めたが、やがて観念したといった風に口を開いた。
「…ごめん。フェルンの魔法、勝手に使っちゃった」
「……まぁそうだと思っていましたよ。というかそれ以外だった方が驚きではありますから」
フリーレン様の返答は、概ね予想していた通りのものであった。フリーレン様は私の開発したチンコを作る魔法を使ってチンコを生やしていた。
「でも、よく使えましたね。絶対読めないように書いていたんですが」
「そこはエルフ語から紐解いてどうにかって感じかな」
「まじですか」
まぁ使ったとしたらそういう事なのかと思っていたが、正直こっちに関してはかなり驚いている。実際に聴くまでは信じ難かったが、まさか本当にそんな事をやってのけるとは。フリーレン様ってやっぱり魔法使いとしての実力は凄いんだな。実力は。
「それで、フリーレン様……もう一つ確認させていただきたい事があるのですが……」
まぁチンコに関してはただ確認を取りたかっただけだ。私にとっての本題はこれではない。私にとって、絶対に確かめなくてはならない疑問がひとつある。それは、解答次第で私とフリーレン様の関係が決定的に壊れてしまうかもしれない程に重要なものだ。
だが、うかうかと先延ばしにはしていられない。時が経ち曖昧に風化してしまう前に、今ここでフリーレン様の真意を問いたださねばならない。私は意を決した。
私が本当にフリーレン様に確かめたいのは────
「…その、フリーレン様が昨日私に仰っていた言葉は、本当なのですか……?」
「え……?」
フリーレン様は、一体なんのことか分からない様子で疑問を顔に浮かべた。
「いえ、ですから……フリーレン様は私を嫌いになってしまっていた筈ではと……」
「ん?あれ?」
行為の最中に何回もフリーレン様が私に向けて言った、愛の言葉。それは今でも私の中に刻まれている。
もしあれが単なる行為中の興奮から来ただけのものに過ぎなかったとしたら。そう思うととても怖い。でも、どのような言葉が返されるとしても、事実だけは正面から受け入れよう。
そう考えていただが、私に返されたフリーレン様の言葉は、そんな私の決意を一笑に伏すものであった。
「フェルン、まだそんな事言ってるの?」
その言葉を認識した瞬間、私は頭に血が昇っていた。
「ま、まだ!?まだってなんですか…私は真剣なのに、そんな言い方……」
「えっ?あ、いや今のは違くて……」
呆れたという感情を思いっきり顔に出しているフリーレン様に私は思わず食い掛かってしまった。あんなに何度も好きだと言ってくれたのに、私の心は弄ばれただけだったのか。私が感じた愛は、セックスが見せたまやかしに過ぎなかったのか。
「いや、私が悪かったんだね……せっかく学んだのに」
「フェルンが好きだよ。ずっと、ずっとね」
「え…」
「ま、まぁ、今みたいにその……えっちな感じになったのはこの数日だけど……」
フェルン好きな事はずっと変わらないよ、と優しく紡がれる言葉には昨日と同じ確かな暖かさが乗っていて、私は胸が熱くなった。
しかし、その言葉に嘘がないと分かったからこその疑問がある。この事については説明してもらわなければならない。
「じゃあ、どうしてここ数日私の事をお避けになっていたんですか?」
「そ、それはね……勝手に魔法使っちゃったから、バレたら怒られちゃうかなって怖くてね……」
「えぇ…」
一気に全身の力が抜けた。
顔が熱い。まさかここ数日の葛藤が完全に私の独り相撲だったなんて。しかも、勝手に早とちりしてフリーレン様に激昂してしまった。めっちゃ恥ずかしい。フリーレン様の方を見れない。
いやでも、誤解させるような事するフリーレン様にも問題が……いや、それをいうなら私の魔法がきっかけなんだから最初から全部悪いの私では?自分の魔法の管理を満足にできなかった私に原因があると考えられるではないか。でも効果知らないままに魔法を使えるとか思わないじゃん……
「フェルン、やっぱり怒ってる…?」
「……はい。そうですね、怒ってます。色々と」
「ごめん……」
そりゃあまぁ勝手に隠していた魔法使われた挙げ句にぶち犯されたわけだし。おまけに気持ちを弄ばれたみたいな感じになってたし。
でもそれって全部私の魔法がなければ起こり得ない事態だったんだよな……そう考えると私が悪いのか。
……いやだとしても、その魔法をフリーレン様が勝手に使わなかったらよかっただけの話で。うーん責任や過失の追求をするのは不毛な気がしてきた。
ぎゅるる…
そんな私達のやりとりを、どこか間の抜けたフリーレン様のお腹の音が引き裂いた。
「あ、えっと、あんまりご飯食べてなかったから……」
そういえば、食事の時にフリーレン様は逃げ出していたな。
「…私、起き上がれないんですけど」
「……ごめん」
「だから、自分で何とかしてください」
普段この家では私が食事を担当しているが、今は私が身動き取れない以上はフリーレン様自身で頑張ってもらう以外にないだろう。当然の帰結だ。
私が疲労困憊にも関わらずなんかそんなに疲れているように見えないしなんならまだヤれそうな気配すらあるフリーレン様への八つ当たりの意思とかは含まれていない。一切。決して。
「フリーレン様の手料理、期待してますから」
「えぇ…!?できるかな……頑張るよ」
「あ、それとその前にこの部屋をなんとかしてください」
「はい……」
「それじゃあフェルン、楽にして待っててね」
少し小さくなりながら部屋を出ていくフリーレン様の背中を、私はベッドに横になったまま見送った。
それからしばらく身体を横たえたままでいるといい匂いが漂ってきて、やがてフリーレン様が2人分料理を運んできてくれた。私はどうにか上体を起こして、ベッドの上に腰掛けたフリーレン様に向き合う。フリーレン様は予想以上にちゃんとした物を短い時間で用意してくれた。ちょっと得意げな顔をしてるのが気になるがまぁいいだろう。
「……驚きました。フリーレン様って、料理できたんですね」
「フェルンのお眼鏡に敵うかはともかく、まぁ私だってこれくらいはね」
「じゃあ普段からもっとお手伝いをしてください」
「ごめんなさい……」
1000年の経験は伊達ではないというわけか。そういえばすっかり忘れてたけど、原作でもなんか超デカいハンバーグ作ってた気がする。
さて、そうして食事に就こうとした私達だが、なにやらフリーレン様が私の方をスプーンを構えている。はて一体何をしているのだろうか。少し考えて私はフリーレン様の意図を察し、思わず瞠目した。
「さ、流石に食べさせていただく必要はありません。それくらいなら自分でできます」
「遠慮しないで大丈夫だよ。無理しないで」
「いえ無理をしている訳では……」
何故だかフリーレン様は頑なに私に食べさせようとしてくるのだが、これは羞恥プレイの一環かなにかだろうか?えっちが終わったと思っていたのは私だけだったのか。私がどうにか断る理由を探していると、フリーレン様が眉を下げて言った。
「私に、フェルンにいっぱい無理させちゃった責任を取らせてほしいな」
……そんな言い方をされてしまったら断れないではないか。
「……わかりました。お願いします」
「任せてよ」
やっぱりなんか得意げな顔で頷くフリーレン様。私は羞恥心を捨て去る決意をした。それは昨日死んだのだ。
「はい、あーん」
「あ、あーん……」
そうして、私の恥ずかしい想いは食事が済むまで続く事となったのだった。
思えば前世の記憶を取り戻したのは今世での両親が死んだ後、そこそこ成熟した後だったし、ハイター様には迷惑をかけないように気をつけていたから、こうした経験は今世では全然なかった。
私に食事を食べさせ終わり今度はスプーンを置いて今度は自分の分を食べ始めるフリーレン様の姿を、私は思考に浸りつつも眺めていると、フリーレン様が少し居心地が悪そうに言った。
「フェルン……見られてるとなんか食べにくいな……」
「気にしないでください。というか、よくそんな事が言えますね。さっきの自分を思い出してください」
そうして食事を進めるフリーレン様の姿をぼんやり眺めていた私だが、ふとフリーレン様の口元に食べカスが付いているのに気づいて、私の中に少しだけ意地悪な心が芽生えた。
「フリーレン様、ちょっと動かないでください」
「ん……えっえっなに!?」
私が顔を近づけると、フリーレン様は面白い位に狼狽えた反応をしてくる。私は構わずにそのまま触れ合うほどの距離まで顔を近づけて、口元のそれを舐めとった。
ぺろ…
「はい。取れましたよ。フリーレン様……フリーレン様?」
私は顔を離してフリーレン様に向き直ったが、フリーレン様は硬直して固まってしまったかと思いきや、今度は奇怪な声を上げて震え出した。
「アッアッアッアッ…」
「フリーレン様!?」
フリーレン様が身を震わせる度に手に持っている食器がガタガタと音を立ててぶつかり合う。私が慌てて食器を奪いとり、荒ぶるフリーレン様を落ち着かせるのにはしばらくの時を要した。
「フェルン……そういうのは………ちょっと……」
「すみませんでした」
やがて落ち着きを取り戻してくれたフリーレン様だったが、どうやら私の揶揄いが過ぎてしまったようで、すっかりむくれてしまっていた。
フリーレン様のスカートが下から持ち上げられているのが目に入って複雑な気分になった。いや今のは私が軽率だったと思うけれども、あれだけヤってまだ元気があるとか流石に予想外過ぎるんだが……
お互いちょっと気まずい微妙な空気となってしまったが、そんな中で私は今後の事について話を切り出した。具体的にどうするかといった事が決まっていないので、お話はまだ終わってはいない。とりあえず、フリーレン様から事の経緯をきちんと聴かせてもらう事にした。
私の部屋でノートを見つけて魔法を使ったら、それが解けなくなってしまった事。
それを咎められたくなくて、私に対して余所余所しく見えるような態度をとってしまった事。
尋常でない程の性欲が芽生え、自分を抑えられなくなっていき暴走してしまった事。
射精やセックスをすれば魔法解けるのではないかと考えてもいたが、実際はこうしてチンコは消えずに今も残り続けている事。
それを聴かされた私の反応は、えぇ……なにそれ知らん。怖……だった。
どう考えてもスペックが私の想定を超えている。傍目に見て昨日のフリーレン様は完全にケダモノと化していた。いや確かに継戦能力は高めたつもりだけれども、それはまだ常識的な範囲に収まるレベルで、こんなエロ漫画でしか許されないような代物が出来上がるとは思わないじゃん。いやこの世界は漫画ではあるんだけれども。どうしてこうなった。
いや、おそらくだが、理由らしきものは一応推察がつく。チンコを作る魔法は人に明かす予定など全く無く他人に使われる想定などしていなかったし、私の元男としての男性器への理解を前提に置いたものであったから、その認識の差からこんな規格外の結果が生まれてしまったのではないだろうか。魔法はイメージによって効果が変わってしまうものだ。私以上にチンコを鮮明に理解できる女性が存在するとは思えない。
まぁもしかしたら全然そんな話は関係なくて、私の魔法がただただポンコツな欠陥魔法だった可能性もあるかもしれないけど。
正直、こんな私の想定を超えたものをすぐにどうこうできるとは思えなかった。こういう不具合を考えて一応自分ではまだ試していなかったのだが、それが仇となったのかもしれない。男としての自意識を持っている私ならこんなヤバい事にはならなかったかもしれないし、そうして魔法への理解を深めておいたなら、今の状況でも対処が可能だったかもしれない。
ちなみに、フリーレン様曰く、今後また昨日と同じように私を襲わない保証はないらしい。フリーレン様は縮こまりながらも私にそう話してくれた。私としてはなんとも複雑な想いだが、申し訳ないが口で『もうしない』と言われても信じられなかっただろうし、そこの所を変に誤魔化さずちゃんと打ち明けてくれたのは良かった。
さて、ここからは真面目な話だ。いや、これまでが真面目でなかった訳ではないけれども、特に重要な話。
「それで……フリーレン様、どう思われますか?」
「ど、どうって……?」
「いえ、ですから……」
「私の妊娠の可能性についてです」
「そ、それは……どうなの?」
「……実は私にも分からないんです」
そう、妊娠。セックスをすれば妊娠をする可能性がある。当たり前の話だ。だが、その当たり前が魔法により作られたチンコでのセックスにも当て嵌まるのかはわからない。私としては、とりあえずガワがチンコで射精して気持ちよくなれるものを目標にしていたので、そこら辺は割といい加減だ。本物に限りなく寄せようと頑張りはしたので、理論上できなくないとは思うのだけれども、実際どうなるのかは謎。そのため、フリーレン様の認識次第によって変わってくるかもしれないと思ったのだが……
「い、や……ちょっとわかんないかな……昨日は殆どフェルン好き!気持ちいい!大好き!としか考えて無かったから……」
それを話した私に返されるフリーレン様の言葉は、わかっていた事ではあるが明確な答えを齎すものではなかった。
「……まぁ妊娠の件は後々詳しく調べるとして、ひとまず置いておきましょう」
なんかこの人恥ずかしげもなく大胆な事言うようになってきたな。私はこれに一体どういう反応をすればいいのだろうか。
まぁそれは置いておくとしても、普通に考えて妊娠なんてヤってすぐ分かるような事ではないのだから、おいおい確認するしかない。となると、目下の最大の問題はやはりフリーレン様の性欲か。
「フリーレン様……フリーレン様は今のご自身の状態で、外に出る事ができると思いますか?」
「それは…いや……ちょっと……厳しいかな…」
「まぁそうですよね」
今のは言い換えれば、これから女性に出会った際に襲い掛からずにいられるか?という質問だった。元男として理解できる事だが、悲しいかな。愛情と性欲は必ずしも一致しない。フリーレン様は、人間社会で生きていく事が困難な性欲モンスターと化してしまったのだ。
そして魔法の解き方は私にもわからない。安全性の確保ができていない、魔法としては未完成なものであったのだから。こんな明らかに色々問題だらけなブツを無くそうと思ったら、その研究だけでもかなり期間を要するだろう。
「そっか……フェルンにも消すのは難しいんだね」
「お力になれず申し訳ありません」
「いやいや、もともと私が悪いんだから気にしないでよ」
さて、現状からすぐ問題の根本的解決はほぼ不可能だと答えが出てしまった。チンコは消せない。妊娠の可能性も不明。ろくに何も分からない。ならばこれから私達は一体どうなるのか?
「じゃあ、しばらくの間旅は無しかな。ここに残って研究しようか」
「……それは」
その言葉は私にとっては充分予想できるものであった。まともに女性と接する事ができず、それ以外でもどのような支障をきたすか未知数。そんな状態で旅になんて出られるわけがない。当たり前の結論だ。
「ハイターとの約束に背く事になっちゃうけど……きっと許してくれるよ。それに……」
「私はフェルンと一緒にいられたらそれでいいしね」
一度言葉を切ってから発せられたフリーレン様の言葉に私は胸が締め付けられるような想いを抱いた。嬉しい。それは間違いない。
それは───それは即ち、葬送のフリーレンの物語が無くなってしまうということだ。
私が知っているフリーレン様とフェルンの冒険が無くなってしまう。
いや、そんな考えで縛るのは辞めるべきだ。目の前のフリーレン様も、ハイター様も、私にとっては生きている人だ。フリーレン様には私の観ていないこれまでの人生があって、観ることのできないこれからの人生もあって。
勇者ヒンメルの死が皮切りとなって、魔族が勢力を盛り返し始める時期だから。ここで2人性欲に溺れている訳にもいかない筈。ハイター様が死んでしまったのは決定事項だったとしてまだ受け入れられるとしても、私のせいで救われる筈だった人達が助からないなんて事になるのは流石に御免である。ハイター様の元で生きた者として、胸を張って逝けるように私は生きていきたい。
きちんと話せばフリーレン様にもわかってもらえる筈。
ただ、実際に私の口から溢れていたのはそんな理屈の羅列とは違う言葉であった。
「私、昔からずっとフリーレン様の冒険に憧れていたんです」
これは前世から変わらない話だ。私はずっと憧れていた。勇者達との冒険、それに、その弟子達との冒険に。
「フリーレン様と一緒に冒険できるのを楽しみにしておりました……フリーレン様達の事を話す時、ハイター様はそれはもう穏やかな顔を見せてくれたんですよ」
「フェルン……」
ちょくちょくハイター様には話をねだっていたな。というか、思い出を語っている時のハイター様が好きだったのも大きいかもしれないけど。
「我儘だとはわかっているのです。ですが…」
もし、このままここに残り続けるなんて事になってしまうのならそれは、フェルンにはあんなに素晴らしい冒険が待っている筈なのにそれを奪ってしまったようで。いや、そもそもフリーレン様にチンコが生えてる時点で既に色々台無しかもしれないけれども。
「……そっか」
フリーレン様の声は優しいものであった。
「我儘……ふふふ…ハイターもきっと喜ぶよ」
なにやら急にニヤニヤし出したフリーレン様につい胡乱げな眼差しを向けてしまう。フリーレン様って、自分が持ち上げられるのにあんまり関心がないタイプだったと思うのだが、一体どういった心境の変化なのだろうか。うーむ、薄々勘づいてはいたが、私が持っていたフリーレン様への印象はもう通用しなくなってる気がするぞ。
「うーん、フェルンの想いはわかったけど……でも、実際どうするの?このチンチンの事はフェルンにもよくわかんないんでしょ?」
言いづらそうにフリーレン様が私に問いかけてくる。まぁ結局はそこだ。今後どんな道を選択するにも、目先の問題を解決しない事には始まらない。
そして私に全く策がないのかというと、それは否だった。
「……一応、考えはあります。フリーレン様にも協力していただかなければいけませんが…」
今後どうするにしても、とにかく先ずはフリーレン様ご自身に自制の心を持ってもらわなければ話にならない。
「フェルンに任せるよ。私も…その……フェルンに無理はさせたくないし」
「ありがとうございます」
そんな風に、バツが悪そうに溢すフリーレン様。こういう考え方はアレだが、言質を取ったならこちらのもの。
ひとまずの応急処置として、フリーレン様に性欲の制御を身につけさせる。多少手荒にはなってしまうが、このままではフリーレン様を一切外に出せないのでやむを得ない。万が一にでもフリーレン様に行く先々で誰彼構わず襲いかかる獣になられては堪らないからだ。そんな事はないと信じたいが、実際私は襲われてしまった身であるし、仮に今問題なかったのだとしてもこれからエスカレートする危険性がないとは言い切れない。事が起こってしまってからでは遅いので、心苦しくはあるが最悪の想定は必要だろう。きっとそれが、チンコを生やす魔法の開発者としての責任だ。
さて、肝心のフリーレン様に性欲を抑えさせる方法であるが、答えはシンプル。身体に直接教え込むのである。人間の意識というのは往々にして、どうしても甘えた方向に向かってしまいたいものだ。それに対して肉体が覚えた感覚というのは長続きする。なんだか犬の躾けでもするようで複雑だが、しかし実際人間の意識というのはそういう部分があると思うのだ。
「フェルン…えっと……それはなに?」
「貞操帯です。しばらくの間はこれを付けて過ごしてください」
「付けるってどこに?」
「チンコに決まってるじゃないですか」
私が用意したのは貞操帯である。フリーレン様の巨大なブツを通常状態で納めておけるサイズのもの。理性で抑えられないのなら、肉体に思考を制御させるしかない。私は心を鬼にして、ぐずるフリーレン様にさっさと着用をするよう促した。
「フェルン……これ、キツイ……」
「そういうものですから」
「……こんなのフェルンのこと考えるたびに痛くなっちゃうよ……」
「我慢して」
「そんなぁ……」
今のフリーレン様が快楽に依存した状態なら、その制御もまた身体で覚えさせなければならない。然るべきでない時の性的興奮と、自制の意識を強く関連付けさせる事で、自制心を植え付ける。
旅に出ようが出まいが制御は必要だ。
「最初は窮屈でしょうけど、きっとすぐに慣れますから」
「そういうもの……?っぅ゛…刺激で勃っちゃう…」
「落ち着いてください、フリーレン様。そういう時は数字を数えるとか、とにかく関係のない事を思い浮かべて気を落ち着かせるんです。これからフリーレン様には、ご自身の性欲を自制できるようになってもらいますからね」
「うぅ……私、この先ずっとこれを付けて生きていくの?」
涙目となり、悲痛さを私に訴えかけてくるフリーレン様。
流石にそれは可哀想だし、溜め込み過ぎたらそれはそれでヤバい事になるんじゃないかというのもあるので、そこはきちんと考えてある。
「大丈夫です。あくまで制御できるようになるまでの処置ですから。ちゃんと我慢できるようになったら、その後は外していただいて構いません。それに……なにもつけている間だって、ずっと射精してはいけないなんて言っているわけではありません」
「え……?」
「ちゃんと我慢してくれていたら、一定の期間毎に、溜まった性欲を解消させてあげます」
恥ずかしいからあまり言わせないで欲しいのだが。
「定期的に、私がフリーレン様をお相手します。避妊のためにゴムは付けてもらいますけど」
そう言うとフリーレン様の目が零れ落ちんばかりに大きく見開かれた。正直これには大分悩んだが、私の魔法が発端となっている以上は流石に酷が過ぎると判断した。
「……そ、それ、ほんと?いいの…?」
「えぇ。二言はありません。フリーレン様が頑張ってくれたら、その決めた日だけは私を好きにしていただいて構いません」
私がそう言い終わる頃には、先ほどのしょぼくれた様子は何処へやら。フリーレン様は目に見えてエネルギーに満ち溢れた顔つきになっていた。
「私、頑張るから……!」
フリーレン様は打って変わって真剣な目つきで私に表明してくれた。うーむ。なんというか現金なものだが、提案している身で言えたことではないか。
「……ところでフェルン、悪いんだけど一旦私から見えない所に行っててもらえるかな……?今の話でかなり興奮しちゃって……」
「はいはい、わかりました」
どうやら私はフリーレン様には刺激が強すぎるらしい。
辛そうに下腹部を抑えるフリーレン様の元を、私は内心前途多難そうだなぁと思いながらも後にするのだった。
次回で旅の前の話は最後になります。多分。