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「はぁ、よかったずらぁ……無事にスマホ戻ってきて」
花丸は梨子から無事にスマホを返還されて、心からホッとしていた。
「まったく、もう二度となくすんじゃないわよずら丸」
教室の椅子に座る善子は、花丸のおでこを人差し指でツンと小突いた。案の定、花丸のスマホにはロックがかけられていなかった為、善子が代わりに設定をしてくれた。
「うん、気をつけるずら。……み、見られなかったかな、中のヤツ」
スマホは戻ってきたものの、拾ってくれた梨子がスマホをいじってないかどうか、花丸は少し不安を感じていた。
「リリーはそんなことしないわよ」
「そ、そうだよね。とにかくよかったぁ、もうマルの宝物だからコレは」
「……あ、あのさぁ。今度の休みなんだけど、ちょっと用事が出来ちゃって……その」
スマホに頬ずりすらしている花丸に、善子はいかにも言いにくそうな口調でそう言った。
「えっ? そ、そうなの?」
「うん、ごめん。また今度にしよ」
「わ、わかったずら……ちょっと、残念だね」
花丸は気落ちしながらそう言って、二人の間に沈黙が流れた。
善子は、そっと花丸の手に触れた。
「や、約束するから。今度は必ず、一緒に過ごせるようにするから……」
「……ありがとう」
善子の想いに応えるように、花丸は人目につかないように善子の頬にキスをした。善子は頬を赤らめた。
「ちょ、ちょっと! 誰かに見られたらどうすんのよ……」
「ふふ、ちょっとドキドキした?」
キスされた箇所を手で隠す善子に、花丸は柔和な笑みを浮かべた。
昼休み、善子としては埋め合わせのつもりで花丸をトイレに誘い、人目を避けて濃厚な口づけを交わした。花丸もグイグイと乗り気になって、パンツ越しに善子の秘部に触れた。善子も花丸の尻を
このとき花丸は知らない。善子が今度の休みに梨子の家に行くことを伏せていたことを。
Y×R
休日、善子はバスに乗って内浦に行き、桜内家のチャイムボタンを押した。
「いらっしゃい、善子ちゃん」
浦女の制服を着た梨子がドアを開けた。なぜか前日のLINEで『制服を着て来てね』とお願いされていたので、善子も灰色のセーラー服を着て来ていた。
「どうぞ上がって」
「う、うん……」
善子はよそよそしく玄関で靴を脱ぎ、二階にある梨子の部屋へ向かった。どうやら親は外出中のようだと善子は察した。家には梨子と二人だけ。
「ちゃんと持って来てくれた? 例のモノ」
部屋に入るなり、梨子は本題に入ってきた。善子は「う、うん」とスクールバッグに入れていたノートパソコンを取り出して、楕円形ミニテーブルの上に置いた。
「ねぇ、リリーはどうしてこんなのに興味があるのよ」
「それは……あとで、話すから」
釈然としないまま、善子は自作アプリを起動して、そこに記録保存されている赤裸々な映像写真たちを梨子に見せた。梨子は「うわぁ……すごい」と驚嘆に似た声を漏らした。善子はパソコンの操作権限を梨子に譲り、梨子はスマホよりも大きな画面で、Aqoursメンバーたちの門外不出な映像や写真に魅了されていた。
「……お、怒ってないの?」
善子がおずおずと訊ねた。
「え?」
「いや、勝手にカメラ取り付けちゃったりして……」
「……ビックリはしたけど、怒ってはないよ。というか、すごいねこんなに……」
梨子はパソコンに保存されている多種多様な秘匿映像を指して言った。
「私のことも、バッチリ撮ったんだね……千歌ちゃんと一緒のやつとか」
「う、うん……」
「でも、千歌ちゃん他の子たちともヤってたんだ……まあ曜ちゃんとか果南ちゃんは幼馴染だからわからなくもないけど、ダイヤさんともヤってたなんて……」
「ああ見えて、かなり大食いよね千歌は。曜と一緒にルビィのことも食べてたし」
「ハァ……す、すごいね。みんな」
「そ、そうね……うん」
しばらく二人に何とも言えない空気が流れて、梨子はパソコンの画面を見て、善子は手をもじもじさせるばかりだった。
「……花丸ちゃんのスマホにも、このアプリが入ってたよね。花丸ちゃんも……何ていうか、その……共犯なの?」
「ち、違う違うっ! それは違うから! 私のスマホを拾って、それでアプリのことがバレて……それで、ずら丸がスマホを持ってから、アプリが欲しいっていうから、仕方なく……」
「そうなんだ……まぁそうだよね。あの花丸ちゃんが、こんな不埒なことするはずないもんね」
「うん……ぜんぶ私が勝手にやってることだから」
「じゃあ、私にもこのアプリ、くれない?」
「はぁっ⁉ な、なんでっ⁉」
善子は目を見開きながら言った。
「だって花丸ちゃんにはあげたんでしょ? じゃあ私にもちょうだい」
「い、いやいや理由になってない! 何で欲しいのかって訊いてるのよっ」
「……ちょっと待ってて」
そう言うと梨子は立ち上がり、机の引き出しから一冊のノートを取り出した。
「……や、約束して。絶っっっ対に他人に言わないって」
梨子は強く念押しして、ノートを善子に手渡した。ページを開くと、そこには女性同士がキスをしたり愛撫し合っている光景を描いたイラストが多数描かれていた。どのページも同様で、中にはかなり卑猥な部類に入る描写の絵もあった。善子は赤面しながらノートを見終えて、同じく顔を赤くしている梨子に顔を向けた。
「な、なにこれ?」
「……しゅ、趣味。善子ちゃんも何となくは知ってるでしょ、私が同人誌集めてるの……」
梨子がいわゆる〝薄い本〟の蒐集家であることは、善子も認知はしていた。
「私も、描きたいの……自分の作品を。だから欲しいのよ、このアプリが。参考に、なるから……」
梨子は恥ずかしそうにそう告白して、善子はやっと合点がいった。
「へ、へぇ……いいんじゃない、別に? リリー、イラスト上手だし」
「本当? 嬉しい……」
絵を褒められて、梨子は素直に嬉しそうな微笑を見せた。
「アプリ、あげてもいいけど……絶対に他人にバレないようにしてよね。ずら丸みたいに」
「でも、善子ちゃんだってスマホ落としてバレたんでしょ? 花丸ちゃんに」
それを言われて善子は「ぐぬぅ……」と呻き、返す言葉がなかった。
……ともかく、善子は梨子のスマホに自作アプリ『Devil's eyes』をインストールしてあげた。
「じゃあ、この時計も返しておくわ」
善子はバッグから、梨子のベッドサイドに置かれている目覚まし時計と同じモノを取り出した。カメラも何も小細工がされていない、正真正銘の梨子の持ち物。
すると梨子は「ちょ、ちょっと待って」と善子の腕をつかんだ。
「それは……そのままでいいから」
「はっ⁉ な、何でよ? 普通の時計のがいいでしょ?」
「……善子ちゃん、もうひとつお願いがあるの」
梨子はぐっと前に出て、善子は軽く押し倒されそうになった。
「ちょっと、協力して。私の作品づくりに」
「へっ? な、何するって言うのよ……」
二人は、かなり顔の距離を近くさせながら話していた。
「……べ、ベッドに移ろ」
それが何を意味するのかは、善子にもわかっていた。
「え、マジで?」
「うん……ちょうど今、女学生同士のラブストーリーなやつを描いてるの。でもベッドシーンだけが上手く描けなくて……フリだけでもいいから、ね?」
善子は、それで休日にもかかわらず制服を指定されたのかと理解した。
「え、え~……でもなぁ……」
「……このアプリのこと、知ってるのは私と花丸ちゃんだけなんでしょ? 誰にも話さないから、ね?」
そう言われてしまい、善子は口をつぐむしかなかった。
「わ、わかったわよ……」
梨子は、カメラの内蔵された目覚まし時計を箪笥の上に置いた。
「アングル大丈夫かな?」
「うん……ベッドがよく見えるようになった」
パソコンの前にいる善子は、画面に映っている映像を見ながら言った。それは現在、善子と梨子がいる部屋を映したモノ。梨子の部屋だ。ベッドサイドからのアングルとは違い、ベッド全体がよく見えるようになった。
「……じゃあ、始めよっか」
「う、うん……あくまでフリでいいのよね?」
「うん。でも、できれば本気で来てほしいな」
設定はすでに梨子から聞いている。仲の良い先輩と後輩の女学生が先輩の家で二人きりになり、キス、愛撫、そして……という流れ。まさに現状そのものだった。
「まぁ、その……そういう雰囲気になったら、本気にもなるわよ」
「じゃあ、そうさせてあげる」
ベッドに並んで腰かけていた二人は、梨子から体を密着させてきた。そして頬に軽いキスをした。初めての梨子からのキス、柔らかい感触が伝わった。だが花丸との濃厚な口づけをすでに知っている善子にしてみれば、まだまだ序の口の愛撫だった。すると梨子は善子の肩に手をかけた。
「わっ、ちょっと!」
油断していた善子はそのまま梨子に押し倒されて、壁ドンならぬ床ドンのような状態になった。梨子が見下ろす形で、二人は視線を交わした。
「……んっ♡」
梨子は正面から顔を近づけ、唇を重ねた。
「んっ♡……んんっ♡」
舌が入り込んできて、善子はゾクゾクと興奮しながら梨子との接吻を楽しみ始めた。
やがてどちらともなく胸を触り始め、お互いの体を愛撫し始めた。チラリとパソコン画面に目を向けると、二人の様子はバッチリ撮影されており、善子は初めて撮られる側の羞恥を知った。今までは観る側だったのが、撮られる側になっている。こんなにも恥ずかしいことなのかと、善子はあらためて思い知った。
「……服、脱ぎたいな」
梨子が耳元でささやいた。
「う、うん……いいけど」
二人は制服を脱ぎ、下着姿で再び抱き合った。梨子はブラの下から手を伸ばして胸を触り、善子はパンツの中に手を入れて尻を触った。
「善子ちゃんも、誰かとこういうことやったことあるの?」
「い、いや……」
善子は、ここでは花丸とのことは伏せておこうと思った。
「にしては、上手だよね」
「……い、いつもみんなの動画とか観てたから、かも……」
そうはぐらかしながら、善子は自分から梨子の唇を奪い、梨子の上に覆いかぶさった。
そのまま主導権を握ろうとしたが、梨子がパンツの中に手を入れて、指を動かし始めたことで、善子は身体をビクンッと震わせた。
「んっ♡……んんっ♡……」
「ふふ、もうこんなに濡れちゃって……」
梨子は微笑みながら善子のパンツを脱がし、陰部をさらに指で弄った。形勢は逆転して、善子が梨子に押し倒される形になった。
「んんんぅっ♡……」
「ほら、どうしたの堕天使様。リトルデーモンに奉仕されて、そんなに嬉しい?」
「り、リトルデーモンなのは認めるのねリリー……んんっ♡」
「ふふ、善子ちゃん可愛い。私のも、触って?」
梨子は善子のブラを外すと、自身の下着も脱ぎ捨てた。二人は並んで寝転びながら、お互いの陰部を触り始めた。
「んっ♡……んふっ♡……」
善子の指が中に入ってきたのを感じて、梨子は甘い声を漏らした。
「んくっ♡……り、リリーだってかなり濡れてるじゃない……んんぅっ♡」
「んふふ、だって興奮するもん……んっ♡……よ、善子ちゃんと、こういうことするのって」
梨子は善子の唇を奪い、二人は濃密なキスに興じながら、互いの秘部を弄ることに熱中した。
「……善子ちゃん、もう我慢できないかも」
「え? ……ああ、イクってこと? いいわよ別に……んっ♡」
「違うの……もっと、楽しいことがしたいの」
梨子はそう言うと、キスも手マンもやめて、上半身を起こした。
そして、自身と善子の秘部をくっつけ始めた。
「んぁっ⁉ ちょ、ちょっとちょっとちょっと⁉ いきなりソレ⁉」
「い、いいでしょ? もう、我慢できないんだもん……」
体が火照っている梨子は、己の欲望のままに腰を動かし始めた。互いの秘部が接触すると、快感が二人を包んだ。梨子は善子の片足を持って、せっせこと腰を揺らした。
「んぁっ♡ んんぅっ♡……」
「んんっ♡……き、気持ち良いでしょ? ねぇ、善子ちゃん♡」
「よ、ヨハネ……んぁんっ♡」
もはや名前の修正より、秘部から電流のように感じる快感の方が優っていた。
目覚まし時計に仕込まれたカメラは、二人が絶頂する様子まで克明に記録した。
「ハァ、ハァ……気持ちよかったね、善子ちゃん」
事後、ベッドに並んで寝る善子に、梨子は息を荒げながら言った。
「う、うん……悪くは、なかった……」
善子は顔を真っ赤にしたまま、呼吸を整えようとしていた。
「もう、素直じゃないんだから」
梨子は善子の胸を優しく触りながら言った。
「でも、おかげで良い絵が描けそう。これからもよろしくね、善子ちゃん」
「うん……ん? こ、これからもって、また私とヤルってこと?」
「ヤダ?」
梨子は善子の目を覗き込んできた。
「いや……別に嫌じゃないけど……」
「ふふ、よかった」
梨子は微笑みながら善子の頬にキスをした。
正直、梨子との初体験は悪くなかった。結局、二戦も交えたほどだ。
「ていうか、ヤルんだったら千歌もいるじゃない……んぁっ♡」
善子がそうつぶやいた直後、梨子が乳首をキュッとつまんできた。
「今は善子ちゃんと二人っきりなんだから、ムード壊さないで」
そして強引に善子の唇を奪い、二人はまた重なった。……
H
そのころ花丸は、自宅の部屋で新曲の作詞に励んでいた。
文学好きな花丸に、『AZALEA』のリーダーである果南が白羽の矢を立てたのだ。
「うーん、良いのが思い浮かばないずらー……」
たしかに花丸は無類の本好きではあったが、読書家が作詞家にもなれるということはイコールではなかった。『AZALEA』は〝恋〟をモチーフにしたユニットなので、歌詞もそれにちなんだものにする必要があった。花丸の中で〝恋〟といえば、頭に浮かぶのは幼稚園からの幼馴染の姿……。
「善子ちゃん、いまごろ何してるかな……」
花丸はスマホを手に取って、LINEを送ろうと思った。
「あっ、間違えたずら……」
LINEのボタンを押したと思ったら、その隣に配置していた善子が作った盗撮アプリを起動してしまった。
「……ん? ……え?」
花丸は、表示された画面に気になるモノを見つけた。それは最新の映像で、二人の見知った顔が映っている。裸の姿で、ベッドの上で……。
「善子、ちゃん?……」
花丸はそうつぶやきながら、黙って映像を見続けた。