C×Y
それは壁から撮られた映像だった。
ドアが開けられて、学校の制服姿の曜と千歌が入ってきた。
そして二人は、ごく自然なことのようにハグをした。それは友達同士の軽いハグというより、恋人同士の熱い
やがて、二人はベッドに移動した。それも二人にとってはごく自然な流れのようだった。
二人は体を重ねて、キスをした。何度も、何度も、何度も。
さらに、曜が千歌の耳を甘噛みして、千歌は甘い声を漏らした。
「そ、そこっ……弱いの……んっ♡」
曜は執拗に千歌の耳を舐めて、千歌の性感帯を責め続けた。
すると千歌も行動に出た。覆いかぶさる曜の股に足を食い込ませて、さらに両手で曜のスカートをたくし上げて尻を揉み始めた。
「あはっ……それ、好き♡……」
今度は曜が甘い声を出して、尻を触られる感触と股を責められる快感に体を震わせていた。
「曜ちゃん……」
「千歌ちゃん……」
二人は見つめ合った後、再び濃密なキスをした。
二人の愛撫は、その後も延々と続いた……。
H
映像を見た花丸と善子は、しばらく黙っていた。
どちらも目を合わせず、頬も耳も赤く染まっていた。
「……あ、あの二人、仲良しずらね」
「そそ、そうね……幼馴染、だからじゃない? し、知らないけど……」
二人はもじもじとしながら、何とも言えない気まずい空気にもどかしさを感じていた。
「これ、どうやって撮ったずら?」
「……曜って、裁縫が得意でしょ。私の堕天使衣装づくりを手伝ってもらった時に、壁にかかってた時計をチェックして、同じのを買って改造したやつを別の日に遊びに行ったときに、取り替えた……」
「はぁ……もう完全にアウトずらね」
「……でも、アウトなのは千歌も同じだと思うけど」
善子の発言に、花丸は「えっ?」と声を漏らした。
「どういうことずら?」
「……見たい?」
善子は立ち上がって、机に置いていたノートパソコンを持ってきた。電源を入れて保存ファイルをクリックし、そこに保存していた或る動画を再生しようとした。
「……これを見るってことは、ちょっと覚悟がいるわよずら丸。それでもいい?」
「……わ、わかったずら」
花丸は戸惑いつつも、その動画の内容に興味があった。
善子は、再生ボタンを押した。
「これは、梨子の家で撮ったやつよ」
C×R
そのアングルは、どうやらベッドサイドの上のようだった。おそらく花丸のように、時計か何かに仕込まれたカメラからの映像なのだろう。
「あー、ぜんぜん歌詞浮かばないよー」
千歌の嘆き節が聞こえる。
「ちょっと息抜きしたら? 千歌ちゃん」
梨子の声も聞こえた。アングルには映っていないが、どうやら二人で新曲作りをしているようだ。
「息抜きかー……じゃあ、しちゃおっかなー」
千歌がそう言うと、二人の声が途絶えた。だがよく耳を澄ますと、「んっ♡」や「あっ♡」といった色っぽい声が聞こえてきた。
やがて、カメラの視界に二人が映ってきた。千歌が梨子を押し倒す形で、ベッドに寝転んだのだ。二人はまたしても制服姿だった。二人はキスをしながら、お互いの手をぎゅっと結んでいた。よく見ると、二人は舌をねっとりと絡ませ合いながらキスをしていた。さらに梨子は、千歌の弱点である耳も舐めた。千歌は子猫のような声を出して、快楽に溺れていた。
「……はぁっ……どう、息抜きになった? 千歌ちゃん」
口から唾液の糸を引きながら、梨子は訊いた。
「うーん……まだっ!」
千歌はいつもの太陽スマイルを見せた後、もういちど梨子と濃厚な接吻に興じた。梨子は、千歌の体を抱きしめながらそれに応じて、二人はベッドの上で長い長いキスを続けた。……
Y
「どうよ。千歌だって相当なこと、してると思わない?」
善子の問いかけに、花丸はすぐに答えられなかった。千歌と曜なら、まだ幼馴染という絆の強さから、ああいう関係になったと理解できなくもない。だが千歌と梨子までもそういう関係にあったことに、花丸は整理がつかなかった。二人の家が隣同士なのは花丸も知っている。千歌が梨子をしつこいまでにスクールアイドル活動に勧誘してきたことも知っている。だが、まさかキスをする関係にまでなっていたとは、想像もつかなかった。
「……ふ、二股、ずら」
「それが、そうとも言えないのよねぇ……」
「えっ? どういう意味ずら?」
花丸の問いかけに、善子はすぐに答えなかった。言葉を選びながら、再び口を開いた。
「……まだ他にも、あるのよねぇ。千歌のやつとか、
「え、えぇ~⁉ ほ、他のみんなも、ずらか……まぁ確かに、このスマホにそういう動画、いくつかあったけど……」
「やっぱ見たんだ、そこに保存してたやつも。スマホには一部しか入れてなかったけど、すごかったでしょ」
「う、うん……オラが見たのは、マリーちゃんと
「あー、アレはアレで強烈よね。さすが年長者組というか、性欲強すぎというか……うん、すごいわアレは」
「おかげで、あまり眠れなかったずら……興奮しちゃって」
「わかる、見てるこっちが恥ずかしくなっちゃうわよね。でも……何か、ハマっちゃってさ。みんなのそういう、秘め事を見ちゃうことに……」
「だ、ダメずらよ、そんなの……ダメ、だけど」
「だけど?」
善子は花丸の顔を覗き込んだ。花丸は、逡巡しつつも胸の内を明かした。
「ま、マルも……興味あるずら。みんなが、どんなことしてるのか……」
「本当っ⁉ じゃ、じゃあずら丸、よかったら一緒にもうちょっと見ない?」
「えっ。えっと、その……うーんどうしようずら~」
「面白いわよ~。それにもうここまで見ちゃった以上、ずら丸だって共犯よ」
「そ、それは違うずら! ま、マルはただ見ちゃっただけずら!」
「へー、でも千歌と梨子のやつだって、食い入るように見てたじゃない。それにスマホに入ってたのだって見たんでしょ、あの鞠莉と果南のやつ。それ見て、興奮したんでしょ?」
「そ、それは、その……」
「……実は、誰かとこんな秘密を共有したいなーって、ずっと思ってたのよね。ずら丸なら、信用できるし」
秘密の共有、信用できる……善子の発言に、花丸は少し心が動いた。
「もうちょっとだけ、付き合ってよ。ずら丸」
「……きょ、今日はもういいずら。帰りが遅くなるのも困るし」
花丸はそう言ってベッドから立ち上がり、鞄からストラップの付いたスマホを取り出した。
「これ、返すずら」
「あっ! あ、ありがと……え?」
善子はスマホを受け取ろうとしたが、花丸はなぜか手を放さなかった。
「その代わり……また、見せて。写真とか、動画……」
「あっ……はっは~ん、ずら丸もスケベねぇ」
善子は途端に得意気になったが、花丸はその態度にムッとした。
「あっ、そんなこと言うならいいずら。みんなにこのこと話すずら」
「えっ⁉ ちょ、ちょっとそれだけはやめてっ! 私、Aqoursにいられなくなっちゃうじゃない!」
「そんなの、マルだって嫌ずら。善子ちゃんのいないAqoursなんて、嫌ずら」
「……ごめん、調子に乗った。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
善子は、素直に頭を下げて何度も謝った。それを見て花丸も納得し、スマホをつかむ手を放した。
「……今度の休みに、また家に来てもいいずらか? 善子ちゃん」
「うん、いいわよ。鑑賞会の準備しておくわ……あとヨハネっ!」
いつもの善子の決まり文句に、花丸は「ぷっ」と笑ってしまった。善子もつられて笑った。
「ああ、そうだ。時計、まだ取っておいてあるのよ。返すわずら丸」
「……いいずら」
花丸がそう言って、善子は「えっ?」と意外な顔をした。
「なんで? 普通のがいいでしょ?」
「……今日の夜、カメラ見てずら」
花丸は、少し恥ずかしそうな顔をしながらもそう言い残して、津島家を去った。
今日の夜……善子は何度もその言葉を頭の中で
そして夜、善子はドキドキしながらパソコンを起動した。
自作アプリを起動して、『ずら丸の家』と登録していたカメラを起動した。そこにはまだ花丸の姿はなかった。善子はふと思って、カメラの記録映像を見返した。時刻は昨夜、パジャマ姿の花丸が善子のスマホを手にしていて、あたりをキョロキョロした。そしてカメラと目が合い「まさか、コレずら?」と言って時計を見てきた。そしてしっかりカメラのレンズと目が合いながら「善子ちゃん?」とつぶやき、「うわぁ……」と善子は恥ずかしくなって、頭を抱え込んだ。善子は記録映像のウィンドウを閉じた。
すると現在のカメラが映す映像に、花丸が映っていた。またしてもパジャマ姿。カメラのアングルも、元どおりのところに置かれていた。
花丸は、しっかりとカメラを見つめていた。
そして、パジャマの上着のボタンを上から二個外して、服を広げた。
花丸の胸が、ちらりと見えた。乳頭も、ほんのちらりと。
「善子ちゃんのス、ケ、ベ……うふふ」
花丸はそう言って笑うと、カメラのアングルが斜めにされてしまい、花丸の姿は見えなくなった。
「ど、どっちがスケベよ!……ずら丸のやつ」
善子は顔を赤くしながらも、花丸の思わぬサプライズに、正直嬉しかった。
「あっ、そうだ!」
善子はあることを思い立って、パソコンの『Word』ソフトを開き、或る文書を書き始めた。花丸と、秘密の契約を結ぶための文書を。