※この作品はR-18です。

スマホを拾っただけずら   作:沼の人

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3話『スマホを返すずら。でも…』

   C×Y

 

 それは壁から撮られた映像だった。

 ドアが開けられて、学校の制服姿の曜と千歌が入ってきた。

 そして二人は、ごく自然なことのようにハグをした。それは友達同士の軽いハグというより、恋人同士の熱い抱擁(ほうよう)だった。

 やがて、二人はベッドに移動した。それも二人にとってはごく自然な流れのようだった。

 二人は体を重ねて、キスをした。何度も、何度も、何度も。

 さらに、曜が千歌の耳を甘噛みして、千歌は甘い声を漏らした。

「そ、そこっ……弱いの……んっ♡」

 曜は執拗に千歌の耳を舐めて、千歌の性感帯を責め続けた。

 すると千歌も行動に出た。覆いかぶさる曜の股に足を食い込ませて、さらに両手で曜のスカートをたくし上げて尻を揉み始めた。

「あはっ……それ、好き♡……」

 今度は曜が甘い声を出して、尻を触られる感触と股を責められる快感に体を震わせていた。

「曜ちゃん……」

「千歌ちゃん……」

 二人は見つめ合った後、再び濃密なキスをした。

 二人の愛撫は、その後も延々と続いた……。

 

   H

 

 映像を見た花丸と善子は、しばらく黙っていた。

 どちらも目を合わせず、頬も耳も赤く染まっていた。

「……あ、あの二人、仲良しずらね」

「そそ、そうね……幼馴染、だからじゃない? し、知らないけど……」

 二人はもじもじとしながら、何とも言えない気まずい空気にもどかしさを感じていた。

「これ、どうやって撮ったずら?」

「……曜って、裁縫が得意でしょ。私の堕天使衣装づくりを手伝ってもらった時に、壁にかかってた時計をチェックして、同じのを買って改造したやつを別の日に遊びに行ったときに、取り替えた……」

「はぁ……もう完全にアウトずらね」

「……でも、アウトなのは千歌も同じだと思うけど」

 善子の発言に、花丸は「えっ?」と声を漏らした。

「どういうことずら?」

「……見たい?」

 善子は立ち上がって、机に置いていたノートパソコンを持ってきた。電源を入れて保存ファイルをクリックし、そこに保存していた或る動画を再生しようとした。

「……これを見るってことは、ちょっと覚悟がいるわよずら丸。それでもいい?」

「……わ、わかったずら」

 花丸は戸惑いつつも、その動画の内容に興味があった。

 善子は、再生ボタンを押した。

「これは、梨子の家で撮ったやつよ」

 

   C×R

 

 そのアングルは、どうやらベッドサイドの上のようだった。おそらく花丸のように、時計か何かに仕込まれたカメラからの映像なのだろう。

「あー、ぜんぜん歌詞浮かばないよー」

 千歌の嘆き節が聞こえる。

「ちょっと息抜きしたら? 千歌ちゃん」

 梨子の声も聞こえた。アングルには映っていないが、どうやら二人で新曲作りをしているようだ。

「息抜きかー……じゃあ、しちゃおっかなー」

 千歌がそう言うと、二人の声が途絶えた。だがよく耳を澄ますと、「んっ♡」や「あっ♡」といった色っぽい声が聞こえてきた。

 やがて、カメラの視界に二人が映ってきた。千歌が梨子を押し倒す形で、ベッドに寝転んだのだ。二人はまたしても制服姿だった。二人はキスをしながら、お互いの手をぎゅっと結んでいた。よく見ると、二人は舌をねっとりと絡ませ合いながらキスをしていた。さらに梨子は、千歌の弱点である耳も舐めた。千歌は子猫のような声を出して、快楽に溺れていた。

「……はぁっ……どう、息抜きになった? 千歌ちゃん」

 口から唾液の糸を引きながら、梨子は訊いた。

「うーん……まだっ!」

 千歌はいつもの太陽スマイルを見せた後、もういちど梨子と濃厚な接吻に興じた。梨子は、千歌の体を抱きしめながらそれに応じて、二人はベッドの上で長い長いキスを続けた。……

 

   Y

 

「どうよ。千歌だって相当なこと、してると思わない?」

 善子の問いかけに、花丸はすぐに答えられなかった。千歌と曜なら、まだ幼馴染という絆の強さから、ああいう関係になったと理解できなくもない。だが千歌と梨子までもそういう関係にあったことに、花丸は整理がつかなかった。二人の家が隣同士なのは花丸も知っている。千歌が梨子をしつこいまでにスクールアイドル活動に勧誘してきたことも知っている。だが、まさかキスをする関係にまでなっていたとは、想像もつかなかった。

「……ふ、二股、ずら」

「それが、そうとも言えないのよねぇ……」

「えっ? どういう意味ずら?」

 花丸の問いかけに、善子はすぐに答えなかった。言葉を選びながら、再び口を開いた。

「……まだ他にも、あるのよねぇ。千歌のやつとか、鞠莉(まり)のとか、ダイヤのとか」

「え、えぇ~⁉ ほ、他のみんなも、ずらか……まぁ確かに、このスマホにそういう動画、いくつかあったけど……」

「やっぱ見たんだ、そこに保存してたやつも。スマホには一部しか入れてなかったけど、すごかったでしょ」

「う、うん……オラが見たのは、マリーちゃんと果南(かなん)ちゃんのやつだけだけど……」

「あー、アレはアレで強烈よね。さすが年長者組というか、性欲強すぎというか……うん、すごいわアレは」

「おかげで、あまり眠れなかったずら……興奮しちゃって」

「わかる、見てるこっちが恥ずかしくなっちゃうわよね。でも……何か、ハマっちゃってさ。みんなのそういう、秘め事を見ちゃうことに……」

「だ、ダメずらよ、そんなの……ダメ、だけど」

「だけど?」

 善子は花丸の顔を覗き込んだ。花丸は、逡巡しつつも胸の内を明かした。

「ま、マルも……興味あるずら。みんなが、どんなことしてるのか……」

「本当っ⁉ じゃ、じゃあずら丸、よかったら一緒にもうちょっと見ない?」

「えっ。えっと、その……うーんどうしようずら~」

「面白いわよ~。それにもうここまで見ちゃった以上、ずら丸だって共犯よ」

「そ、それは違うずら! ま、マルはただ見ちゃっただけずら!」

「へー、でも千歌と梨子のやつだって、食い入るように見てたじゃない。それにスマホに入ってたのだって見たんでしょ、あの鞠莉と果南のやつ。それ見て、興奮したんでしょ?」

「そ、それは、その……」

「……実は、誰かとこんな秘密を共有したいなーって、ずっと思ってたのよね。ずら丸なら、信用できるし」

 秘密の共有、信用できる……善子の発言に、花丸は少し心が動いた。

「もうちょっとだけ、付き合ってよ。ずら丸」

「……きょ、今日はもういいずら。帰りが遅くなるのも困るし」

 花丸はそう言ってベッドから立ち上がり、鞄からストラップの付いたスマホを取り出した。

「これ、返すずら」

「あっ! あ、ありがと……え?」

 善子はスマホを受け取ろうとしたが、花丸はなぜか手を放さなかった。

「その代わり……また、見せて。写真とか、動画……」

「あっ……はっは~ん、ずら丸もスケベねぇ」

 善子は途端に得意気になったが、花丸はその態度にムッとした。

「あっ、そんなこと言うならいいずら。みんなにこのこと話すずら」

「えっ⁉ ちょ、ちょっとそれだけはやめてっ! 私、Aqoursにいられなくなっちゃうじゃない!」

「そんなの、マルだって嫌ずら。善子ちゃんのいないAqoursなんて、嫌ずら」

「……ごめん、調子に乗った。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

 善子は、素直に頭を下げて何度も謝った。それを見て花丸も納得し、スマホをつかむ手を放した。

「……今度の休みに、また家に来てもいいずらか? 善子ちゃん」

「うん、いいわよ。鑑賞会の準備しておくわ……あとヨハネっ!」

 いつもの善子の決まり文句に、花丸は「ぷっ」と笑ってしまった。善子もつられて笑った。

「ああ、そうだ。時計、まだ取っておいてあるのよ。返すわずら丸」

「……いいずら」

 花丸がそう言って、善子は「えっ?」と意外な顔をした。

「なんで? 普通のがいいでしょ?」

「……今日の夜、カメラ見てずら」

 花丸は、少し恥ずかしそうな顔をしながらもそう言い残して、津島家を去った。

 今日の夜……善子は何度もその言葉を頭の中で反芻(はんすう)して、花丸を見送った。

 

 そして夜、善子はドキドキしながらパソコンを起動した。

 自作アプリを起動して、『ずら丸の家』と登録していたカメラを起動した。そこにはまだ花丸の姿はなかった。善子はふと思って、カメラの記録映像を見返した。時刻は昨夜、パジャマ姿の花丸が善子のスマホを手にしていて、あたりをキョロキョロした。そしてカメラと目が合い「まさか、コレずら?」と言って時計を見てきた。そしてしっかりカメラのレンズと目が合いながら「善子ちゃん?」とつぶやき、「うわぁ……」と善子は恥ずかしくなって、頭を抱え込んだ。善子は記録映像のウィンドウを閉じた。

 すると現在のカメラが映す映像に、花丸が映っていた。またしてもパジャマ姿。カメラのアングルも、元どおりのところに置かれていた。

 花丸は、しっかりとカメラを見つめていた。

 そして、パジャマの上着のボタンを上から二個外して、服を広げた。

 花丸の胸が、ちらりと見えた。乳頭も、ほんのちらりと。

「善子ちゃんのス、ケ、ベ……うふふ」

 花丸はそう言って笑うと、カメラのアングルが斜めにされてしまい、花丸の姿は見えなくなった。

「ど、どっちがスケベよ!……ずら丸のやつ」

 善子は顔を赤くしながらも、花丸の思わぬサプライズに、正直嬉しかった。

「あっ、そうだ!」

 善子はあることを思い立って、パソコンの『Word』ソフトを開き、或る文書を書き始めた。花丸と、秘密の契約を結ぶための文書を。

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