C×D
その映像は渡辺家のように、壁掛け時計に仕込まれたであろうカメラからの映像だった。
スクールアイドル部の部屋に、二人の人影が映っている。
「最近はちょっとご無沙汰だったねー、ダイヤさん」
「そうですわね。練習も続いてましたし、生徒会長の仕事もありましたから……」
そんな会話を交わした後、二人は静かにキスをした。まるで今まで、何度もしてきたかのように慣れた感じで。
「んぁ……今日はもっと楽しいことしたいなー」
「何ですの?」
「例えばー、おっぱい触り合ったり、とか」
「ぴっ⁉ (咳払い)……そ、それは……ここではちょっと」
「えー、いーじゃんいーじゃん。今日は誰も来ないしー」
千歌はぎゅっとダイヤに抱きつきながら、いつものスマイルでそう言った。ダイヤは「う、う~ん」と難色を示しつつも、本気で抵抗する素振りはなかった。
「……じゃ、じゃあちょっとだけなら、いいですわ」
「うふ♪ じゃあお互い脱がせ合うってのはどうかなー?」
「ええっ⁉ そ、そんな……ハレンチ、ですわ」
「いいじゃーん。その方が興奮するでしょー?」
千歌はそう言うと、ダイヤの同意も得ずに上着を脱がし始めていた。ダイヤは当惑しながらも、自分の方からも手を動かして千歌の制服を脱がしにかかった。
二人がブラ姿になると、千歌がまずダイヤの胸を揉み始めた。ダイヤは「ぴぐっ⁉」という変な声を上げた。
「ふふ、
千歌はそう言って、ブラの下から手を滑り込ませて、直にダイヤの胸に触れた。
「はぁ♡……ち、千歌さん…」
「ダイヤさんも触ってきていいんだよー?」
「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えて」
千歌に促される形で、ダイヤも千歌の胸を揉み始めた。最初はブラの上から、そしてブラの下から……。
「もういっそ、外しちゃおっか」
「えっ? え、それはちょっと……ち、千歌さんっ」
どぎまぎしているダイヤをよそに、千歌はダイヤのブラのホックを外した。
「ほら、ダイヤさんも外して」
「……しょ、しょうがない、ですわね」
言われるがまま、ダイヤも千歌のブラホックを外した。
「そりゃっ!」
お互いに上半身裸になったところで、千歌がダイヤに抱きついた。ダイヤは「ぴぎゃっ⁉」という鳴き声を発した。
「ち、千歌さん……む、胸が」
「うん、くっつけちゃった♪」
二人は互いの胸をむぎゅっとくっつけて、千歌は楽しそうに、ダイヤは恥ずかしそうにしながら、その愛撫を楽しんでいた。
やがて二人は、再びキスをした。キスにも色々と種類がある。唇を合わせるだけの軽いものと、舌を入れ込んでねっとりとした濃いもの。二人がしていたキスは、後者の方だった。
さらに千歌は、ダイヤの唇右下にある
「ふふ、ダイヤさんのその声好き♡」
「くぅ……こ、こんな声、ブッブーですわ…」
「そんなことないよー。もっと聞かせて♪」
千歌はそう言ってさらに黒子にキスをして、ダイヤの股に右太ももをぐぐっと押しつけた。ダイヤは快感に身体を震わせて、ひたすら千歌の
Y
「……ど、どうよ、この桃色ムンムンなお色気現場は……って、大丈夫ずら丸?」
興奮していた善子のとなりでは、花丸が愕然とした表情で硬直していた。善子が「おーい、ずら丸ー」と顔の前で手を振っても、反応がなかった。
「あらら、刺激が強すぎたかしらね。でも、もっとすごいのもあるわよ」
「こ、これよりも、ずらか?」
「うん。今度のも千歌だけど、えっと……あ、これだ」
善子は別の動画を画面に表示させた。それは、木目調の壁が印象的な部屋。
「これは……果南ちゃんの家?」
「そ。果南の誕生日にぬいぐるみをあげたんだけど、その目のところに仕掛けたカメラ。ベッドもばっちり映ってて最高のアングルよね」
「……善子ちゃん、最低ずら」
「ぐっ……だ、だって……い、嫌ならいいのよ、再生しないからっ」
「いや、観るずら」
「どっちサイドなのよアンタは!」
「だ、だって……こんなの一度見出したら、止まらないずらよ~」
「ほ~らそれ見なさい、ヒトは好奇心に抗えない罪深い生き物なのよ。……とにかく、観る?」
善子の声掛けに、花丸は黙ってうなずいた。
善子は、再生ボタンを押した。
K×C
ドアの開く音がして、制服姿の果南と千歌が映る。
「あー、なんか実家に帰ってきたみたいに落ち着くなーここ」
千歌はそう言ってベッドにダイブした。
「なに言ってるのよ、実家は旅館でしょ。りょ、か、ん」
果南は笑いながら、ベッドを背もたれにしてカーペットの敷かれた床に
「だってさー、小っちゃい頃からよく遊びに来てたし。果南ちゃんともよく遊んだじゃん、ここでさー」
「まぁそうだねー。幼稚園の頃からずっとだもんね」
「それにさー、ほら、覚えてるー? 果南ちゃんが中二で、私が小6のとき」
「あ、あぁ。初めての時ね……忘れるわけないじゃん」
「最初はビックリしたけど、気持ちよかったなー。それに楽しかったし。またやりたいなー」
千歌はわざと誘うような口ぶりで、ベッドに寝そべりながら果南に抱きついた。
「しょうがないなー。ていうか、それ目的で来たでしょ、千歌」
「あっ、バレたー? さっすが果南ちゃん」
すると果南は体を反転させて、千歌と顔を向き合わせた。部屋に設置したカメラからは、果南の後頭部しか見えない。
「大丈夫よ、別アングルもあるから」
善子はいったん動画を一時停止させて、別の動画ファイルをクリックした。それはベッドの枕側からの映像で、おそらく目覚まし時計か何かに仕込まれたカメラからの映像だろうと花丸は察した。……というか、何が〝大丈夫〟なのか。花丸はそうツッコミかけたが、やめた。
動画を途中から再生すると、顔を向き合わせた果南と千歌は、やはりキスをしていた。唇を重ねるだけの、軽めのキス。
「……じゃあ、しよっか」
果南はそう言うとベッドに移動して、千歌の上に覆いかぶさった。すると果南の体しか見えなった。
「よし、じゃあさっきの動画に戻るわよ」
善子はまた動画を一時停止させて、さっきの動画を少し時間を進めて再生させた。
果南と千歌が、指を絡ませて手を握り合いながら、何度も何度もキスをしていた。
善子がパソコンのキーを叩くと、二人の顔の部分がアップになり、かなり濃厚なキスをしていることがわかった。
「……脱ぐ?」と果南。
「うん、脱ぐ」と千歌。
そして二人は制服を脱いで、肌着姿で再びベッド上で抱き合った。
「千歌もエッチな子になっちゃったよねぇ。誰に似たんだか」
「そんなの、果南ちゃんに決まってるじゃん。私の初めても……果南ちゃんだし」
「……そうだよね。悪い先輩だねー私は」
「でも、大好きだよ。果南ちゃんのこと」
二人は微笑み合って、キスをしながらベッドの上でゴロゴロと右へ左へ寝転んだ。
善子がカメラのズームアップ機能を元に戻すと、二人がお互いの下腹部に手を遣っているのが見えた。そして色っぽい声を上げながら、手の動きをさらに加速させて……。
Y
「……っと、ちょっとここまでにしましょ!」
映像はまだ途中だったが、善子は動画を一時停止させた。この先の展開は、かなり刺激が強いからだ。花丸は、もう爆発しそうなぐらい顔が赤かった。
「か、果南ちゃんとまで……千歌ちゃん、何してるずらよ~」
「まぁショックよねぇ。アンタ、ダイヤと果南とユニット組んでるしね」
Aqoursの中には3名ずつの小ユニットがあり、花丸はダイヤと果南の三人で『AZALEA』というユニットを組んでいる。そのメンバーたちが、千歌と淫らなことをして遊んでいることに、花丸は深くショックを受けているようだった。
「ち、ちなみにこの後……ど、どうなるずら?」
「ど、どうって、その……お、女同士で、エッチを……言わすな!」
「ず、ずら~……」
花丸は頭が沸騰してしまい、後ろに倒れ込んだ。たたまれていた掛布団が花丸を受け止めた。善子の匂いが染みついた、いい匂いのする布団。
「あらあら、お子ちゃまには刺激が強すぎだったかしらねぇ」
「だ、誰がお子ちゃまずらよ! 善子ちゃんだって同い年ずら!」
花丸はガバっと起き上がってそう抗弁した。
「ヨハネっ! ……どうする、もう観るのやめる? 私は楽しいから観れるけど、ずら丸は真面目だから、あんまショック受けすぎるのも可哀想だし……」
「……ま、マルは大丈夫ずら。心配してくれて、ありがとう、善子ちゃん」
花丸は善子の袖を引っ張りながら上目遣いでそう言った。善子は、不覚にも「かわいい」と思ってしまった。だが花丸の方も、「いや、そもそもこれ盗撮映像ずらよ」と思い出して、二人の間に何とも言えない空気が流れた。
「……ほ、他のも観る?」
善子の問いかけに、花丸は「う、うん」とうなずいた。
「じゃあ、次はどれにしよっかなぁ……」
「……そういえば、ルビィちゃんの写真もあったけど、まさか黒澤家にも仕込んだずらか?」
「え? もちろんよ」
「何がもちろんずら! そんな〝当然でしょ〟みたいに言われても困るずらよ! 同じ学年の友達なのに!」
「だって、ダイヤっていっつも厳しすぎるから、それこそ何か恥ずかしいことしてないか見つけてやろうと思って」
「やっぱ最低ずら……で、でも…何かあった?」
「あるにはあるんだけど……いやぁ、アレはちょっとずら丸には見せられないなぁ」
「な、何で?」
「いやその、えっと……う~ん、何て言えばいいのかしら。ギリギリのアウトというか、アウト寄りのセーフというべきか……う~ん」
「そう焦らされると余計観たくなっちゃうずらよっ!」
「……じゃあ、覚悟なさいよ? 観た後で後悔しても、遅いんだから」
「そ、そんなに刺激が強いものずらか?」
「まぁその、布団で隠れてるから具体的に何をしてるかはわかんないけど……音がねぇ。まぁとにかく、ちょっとだけ観てみる?」
「……もうこうなったら、マルも腹をくくるずら」
花丸は自分の頬をパンパンと手で叩いて喝を入れた。
「わかった。じゃあ、再生するわ」
善子は『黒澤家』と題されたカメラの映像ファイルを選択して、再生ボタンを押した。
それは江戸時代からの旧家である黒澤家の、
ダイヤの部屋だった。
D×R
部屋は常夜灯が灯されていて、布団の中に誰かが寝ていた。
カメラのアングルは、六畳間の部屋を斜め上から映していた。善子によれば〝エアコンの脇にくっつけた器具〟からの映像らしい。
「お、お姉ちゃん……」
弱々しい声が襖越しに聞こえてきた。ルビィの声だ。
「ん……ルビィ? どうしたんですの?」
布団をめくり、パジャマ姿のダイヤが起き上がって襖を開けると、枕を胸に抱きしめていたルビィが立っていた。
「ルビィ、ちょっと、恐い夢見ちゃって……」
「あら、またですの? もうしょうがない子ですわねぇ。一緒に寝ますかルビィ?」
ルビィは黙ってうなずき、二人は布団の中に入った。
「何だ、ただ一緒に寝てるだけずらね。相変わらず仲の良い姉妹ずらね~」
「でも、よく見てなさい……」
花丸は最初楽観視していたが、善子にそう言われて、布団に包まった二人の動きに注目した。
何だか、モゾモゾしている。
どうも、寝ている動きではない。中で何かをしている。
「ちょっと音上げるわよ。よく聞いてみて」
善子はキーボードを叩いて動画の音量を上げた。花丸も耳を澄ませた。すると、「んっ♡」や「はぁ♡」といった色っぽい声と、クチュクチュという音も聞こえてきた。そのクチュクチュという音が激しくなる度に、掛布団のモゾモゾも比例して激しく動いていた。
布団の中で何が行われているのかは、映像からではわからない。
だが、善子も花丸もナニをしているかは、すでに想像がついていた。
モゾモゾとクチュクチュは、その後もしばらく続いた……。
H
「ま、まさかルビィちゃんが……ダイヤさんと……何てことずらぁ」
「これはさすがに私もショックが大きかったわ。他人同士ならまだいいとして、実の姉妹が、ねぇ……」
二人は頬を赤くしながら、しばらく黙った。
「いくら仲が良くても、これはもうアウトずらよ……アウトずら、アウトずらっ!」
「いや、それを私に言われても……まぁでも、しょうがないじゃない。私たちには、どうすることも出来ないわよ」
「うぅ……あのルビィちゃんが、純粋無垢なルビィちゃんが……」
「……ま、まぁその、二人は同意のもとでヤってるんだし、別にいいんじゃない?」
「よくないと思うずら」
「じゃあどうするってのよ。姉妹同士でエッチなんて不潔だからやめなさいって正直に言う?」
「……言えない」
「そうよね。そもそも何でそのことを知ってるんだって追及されたら、私もヤバイもん。ここはもうそっとしておきましょ」
「うぅ……い、いいのかなぁ」
「しかしまぁ、みぃんなすごいわね。千歌もそうだけど、果南だってそうだし、ダイヤもそうだし。でも特にすごいのは、鞠莉ね」
「ま、鞠莉ちゃんもずらか? ……そういえば、果南ちゃんとダイヤちゃんと三人でとか、言ってたよね」
「うん。アレはもう、その……まさにエッチなビデオそのものみたいな光景だったわ。とにかくすごい。ほら、あの三人って泊まるぐらい仲良しじゃない。もう泊まる度にハッスルしちゃってる感じよ」
「……スケベじゃないのは、もうマルだけずらか」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! 何で私はスケベの中に入ってるのよ!
「だって、こんなたっくさん盗撮してて、スケベじゃないと言える?」
「そ、それは……はい、そうです、私はスケベです……」
善子はあっさりと降参した。どう言い逃れしようと、自分のやってることは確かにスケベな行いだと認めざるをえなかった。
「……ちょ、ちょっと休憩しない? なんか、喉渇いちゃった」
「うん、そうするずら……」
善子はパソコンをベッドに置いて、部屋を出て飲み物とお菓子を取りに向かった。
その間、花丸はチラチラとパソコン画面を見ていた。写真も動画も、まだ膨大な量があることは画面を見れば明らかだった。
花丸は、パソコンのタッチパネルに触れて、善子がやってたように見よう見まねでカーソルを動かした。
その保存ファイルの中に、一つ気になるものがあった。『ずら丸』と個別に分けられたファイルがあったのだ。それを開いてみると、中には花丸の盗撮写真や動画がわんさかとあった。
しかもその中には、花丸の恥ずかしい場面を映したモノもあった。
「や、やっぱり善子ちゃんは、とんでもないスケベずら……」
この事はあとで追及することにして、とりあえずそのパソコン画面を花丸は新品のスマホで写真に撮った。
「……善子ちゃんの、スケベ」
花丸は苦笑いしながら、パソコンの画面を元に戻した。