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家に帰った花丸は、その夜さっそくスマホを起動して善子の作ったアプリを開いた。もうタップやスライドといった動作は手慣れたものになっていた。やっと自分も〝文明人〟になれた気がして、花丸は嬉しかった。
が、いま自分が見ているものは、紛れもない犯罪の証拠。それが後ろめたくもあったが、善子も言っていたように「ヒトは好奇心に抗えない罪深い生き物」なのだと、まざまざと感じた。他人のプライベートを覗き見る、それは誰だって、心のどこかでは興味を持つ行いだ。いけないことほど人は興味を持ってしまう。残酷極まりない事件、凄惨な事故、そういった悲劇の再現ドラマや映画にヒトが興味を持つのも、心のどこかでは好奇心が
(まぁ、だからといって、コレを見るのが正しい行いとは言わないずらよ……)
花丸はそう自分を弁護しながらも、アプリを使って他のAqoursメンバーたちの様子をつい見てしまった。
まず見たのは千歌の部屋だが、誰もいない。夕食かお風呂だろうか。
次に見たのは果南の部屋。一人でのんびりと漫画を読んでいた。
ダイヤは机に向かって勉強をしている。
鞠莉は爪の手入れをしている。
「ま、まぁそんな毎日毎日、何かしてるわけないか……」
花丸はホッとしたような、ちょっと残念なような、何とも言えない複雑な気持ちになった。心のどこかで「みんなのエッチな場面を見たい」という本音があって、だからこそこのアプリを善子から融通してもらったのに。
梨子の部屋からはピアノの音が聞こえて、曜は洋服を作っている。
「ルビィちゃんは、何してるんだろ……」
当然の如く、ルビィの部屋にもカメラは仕掛けられていた。部屋にはいない。居間でテレビでも見てるのだろうか。
「何だぁ、つまらないずら……い、いやいや何言ってるずらよっ」
花丸は首を振りながらスマホを置いて、そろそろ読み終える谷崎潤一郎の『卍』を読み始めた。
一時間ほど経ってから、LINEの通知音が鳴った。善子からだった。
『千歌の家見て!』
とだけ送信されていた。花丸はすぐにアプリを起動して、千歌の家に仕掛けられたカメラの映像を見始めた。そこには二人の人影が映っていた。
C×M
「あーもー、最近仕事忙しくてさー。本当にもうクタクター」
千歌の姉である
「はいはいお疲れ様ー。マッサージしてあげよっか、
「おーおー、よきにはからえー」
千歌はうつ伏せで寝る美渡の上にまたがり、肩から腰にかけてマッサージを始めた。それだけなら、姉のことを大事に思う良い妹の姿だった。
「あ~そこそこ。気持ちいい……わっ! ちょ、ちょっと!」
千歌のマッサージに癒されていた美渡は、急に胸を揉まれて驚いた。
「じゃあ今度は千歌のこと気持ちよくしてよー」
「えー? だってアンタ、一回じゃ満足しないじゃん……まぁいいけどさぁ」
高海姉妹は位置を変えて、千歌が仰向けになってベッドに寝て、その上に美渡が覆いかぶさる格好になった。
「声抑えててよ、家族に聞かれたらマズいから」
美渡はそう言うと千歌のパジャマのボタンを外して、優しい手つきで千歌の乳房を揉んだ。千歌は喘ぎを抑えるために口に手を遣っていた。やがて美渡が乳頭を舐め始めると、千歌はビクッと身体を震わせた。
「まったくスケベな妹なんだからさぁ……まぁ、仕込んだのは私だけど」
すると美渡も上半身裸になって、妹の胸と自分の胸をくっつけた。そして互いの乳頭を触れ合わせて、互いに快感を感じて合った。
「私だってパートナーがいるんだしさぁ、あんま妹にこういうことしたくないのよねー……とか言って」
美渡はそう笑いながら、千歌のパンツの中に手を入れてきた。それからモゾモゾと指を動かして、千歌は悶えるように身体をくねらせた。
「ふふ、可愛いんだから……」
その後も美渡は妹の体を
H
花丸はあんぐりと口を開けたまま、スマホの画面を凝視して固まっていた。
黒澤家のみならず、高海家でも姉妹同士で不埒なことが行われていたという事実に、驚愕していた。
刹那、LINE通知が来た。善子からだ。
『千歌の罪深いカルマを観てどう思った?』
花丸は、まだ不慣れながらも頑張って文字入力をして、返事をした。
『どうもこうもないずら! ハレンチずら!』
不敵に笑う悪魔のスタンプが送信されてきた後、善子が続けた。
『そんなこと言ったって、興味津々なくせにー♪』
花丸は、言い返せなかった。善子の指摘は事実だったからだ。他人の秘め事を盗み見るなど、あまりにも人としてやってはいけないことだとわかっていながらも、花丸はもうこの沼地のような状態から抜け出せる気がしなかった。むしろどんどん、善子のようにハマっていくと思っていた。
でも、できれば善子には、自分のことをもっと見てほしい。そうも思っていた。
花丸は、LINEを返信した。
『5分したら、マルの家を見て』
Y
「な、何? 5分したらって」
ベッドで寝そべりながらスマホを見ていた善子はガバっと起き上がって、花丸から送られてきたメッセージに当惑していた。
「……まぁ、見てみるか」
善子は机に向かってノートパソコンを開き、スマホと同じアプリを起動した。
まだ5分前ではあったが、善子は『ずら丸の家』とタイトル付けたカメラ映像のウィンドウを開いた。カメラは起動していたが、まっくらだった。おそらく伏せた形にしてあるのか、カメラを仕込んだ時計の前に何かを置いて遮っているのだろう。
やがて、約束の時間になった。
カメラが動かされて、元の位置に戻された。どうやら伏せた形にされていたらしい。
黄色いパジャマ姿の花丸が、アングルの中央に映っていた。顔を見ると、頬を少し赤らめていた。
花丸は、パジャマを脱ぎ始めた。上も下も、ぜんぶ。
肌着姿になり、ブラも外した。
花丸は椅子に座り、股を開け広げた。
そして白いパンツの中に、手を入れた。
「んっ♡」
小さく甘い声を漏らしながら、花丸は自慰行為を始めた。画面越しにソレを見る善子は、手をわなわなと震わせて顔を赤くしていた。
「んんぅっ♡」
快感に震えながら、花丸は指を使って自分のアソコを弄り続けた。
善子は、体が火照っていることを自覚した。幼馴染のオナニーを見て、つい気持ちが
「んふっ♡」
「んっ♡……」
花丸の悦な声に返事をするように、善子も甘い声が漏れ出た。
「ハァ、ハァ……善子ちゃん、見てるずら?」
陰部を弄りながら、花丸はバッチリとカメラ目線でそう言ってきた。
「み、見てるわよ……ずら丸……んっ♡」
善子は画面越しにそう返事をしつつ、指を奥までぐっと挿れた。まるで花丸とヤっているかのような感じで。
「んっ♡ んぁっ♡……んはぁっ♡」
花丸は先にフィニッシュを迎え、その後に善子も「んくぅっ♡」と声を漏らしながら絶頂した。
「ハァ、ハァ……み、見てくれたずらか? マルの……」
息の上がった声で、花丸はカメラを見つめながらそう言った。
善子は、濡れた手をティッシュで拭いてから、スマホを手に取った。
最初は「このスケベ!」と打ち込んだが、少し考え直して「スケベ」だけに略し、文末にニヤニヤした顔のスタンプを添えて送信した。すると花丸が着信に気づいて、スマホの画面を見て微笑む様子がカメラ越しからも伝わった。
「……スケベ丸」
善子は苦笑しながらそうつぶやいて、カメラに映る花丸の姿を、頬杖をつきながらしばらく愛おしそうに見つめていた。