これは、私がゾロアークについて、とある女性にインタビューをしたやつのテープ起こし原稿です。極秘内容なので、取り扱いにはご用心。

1 / 1
テープ起こし原稿 ~ゾロアークの噂~

 ええっと、こんにちは。

 確か……ゾロアークのお話、でしたわね。

 イリュージョンが使えるのなら、人間のふりをしているゾロアークもいるはずだ……という事ですね。

 でしたら、面白い話がありますよ。

 ある所に……そうですね、仮にカナエさんとしましょうか、カナエさんが一人で出かけている時の事でした。

 その日はどこか肌寒い日で、じっとしていると風邪をひいてしまいそうで。

「うー、早く帰ってあったかい物でも飲もうっと!」

 体を軽く震わせながら、カナエさんが急いで帰宅していると……

 ふと、草むらに黒い何かがうずくまっているのが見えたらしいの。

「あら、ポケモンかしら」

 別段ポケモンがいるのなんで珍しいことでもなんでもないんでしょうけど、カナエさんは妙に気になったんでしょうね。

 何気なく近づいてみると……なんと、それは弱ったゾロアだったの。

 大慌てで声をかけてみても、ぐったりして反応が無くって。

 どうしたの、ママはいないの? と聞いても、黒っぽいその子は何にも答えなくて。

 そもそも元気だったなら、人間が近づいてきた時点で逃げたり、襲いかかったりするんでしょうけどね。

 どちらもしない、できないという事は、かなり危ない状態だったんでしょう。

 カナエさんはダウンジャケットを脱いで、そのゾロアを包んであげて。

 自分も寒いでしょうに、その状態でゾロアを抱っこして家まで連れて帰ったんですって。

 知ってます? ゾロアって、思ったよりも重たいんですよ。

 10kg以上あるらしくって……それって、米袋より重たいって事でしょう?

 決して楽じゃなかったでしょうに、カナエさんは一生懸命連れて帰ってあげたんです。

 さてさて、あったかい所に連れ帰ってあげて、あり合わせの食べ物を用意してあげて。

 食欲自体はあったみたいで、勢いよくご飯を食べて。

 元気になったのかな? と思ってみてみても、どこかしょんぼりしていて。

 ほら、ゾロアって……白い子もいるそうじゃないですか。

 その子みたいな、どこか悲しげな表情をしちゃっているもんだから、カナエさんったら……

「白色が汚れているのかな?」って勘違いしちゃって、お風呂にまで入れてあげたんですって。

 最初はそのゾロアもシャワーに怖がっていたけど、次第に気持ち良くなってリラックスしていって。

 でも、やっぱり白色のゾロアではなかったみたいなんです。

 ホカホカの気持ちよさの中、そのままスヤスヤ寝始めたんですけど……しばらくすると、今度は悲しそうな鳴き声を出し始めて。

「大丈夫よ、私はここにいるわよ」って言いながら撫でてあげたそうなんですけど、しばらくするとまた鳴き始めちゃって。

 どうしたんだろう、辛いことでもあったのかしら、と思いながら……大変だったのか、カナエさんもゾロアの横で、うとうとと寝てしまったんです。

 すると、ですよ。

「もしもし、もしもし」

 って耳元で声がするんですって。

 いや、耳元、よりももっと近かった、とも言っていましたわ。

 こう、頭の中で声がする、という具合かしら。

「ううん、どなたですか」

 体がふわふわする中で、カナエさんが返事をして。

「わたくし、そのゾロアの母でございます」

 暗闇の中で……三角の赤い模様が、二つ浮いていて。

 多分、ゾロアークの目ですわね。

「えっ、お母さんですか? ゾロアちゃんを、迎えにきたんですか?」

 当然、こう問い掛けますわよね。

 ところが、です。

「いいえ、そうではないのです。 わたくし、その子を逃がそうとして——死んでしまったのです」

 えっ、と思わず小さな声を漏らしてしまい。

「じゃあ、あなたはなんなんですか、どうしてここにいるんですか」

 と言葉を続けて。

「わたくし、どうやら霊になってしまったようで……その子が心配で、ついてきてしまったのです」

 どこか申し訳なさそうな調子で、暗闇の中のゾロアークが喋り続けます。

 徐々に目が慣れてきたのか、特徴的なシルエットが徐々に見えてきて。

「今のところ、元気そうですよ。お母さんがいなくなってしまったから、寂しかったんですね」

 カナエさんはやっと理解して、納得したように首を振りました。

 すると……全く同じタイミングで、目の前のゾロアークも首を振ったのです。

「その……大変、大変失礼な話なのですが」

 とても言いにくそうに、ゾロアークが切り出します。

「失礼? 何か、ありましたか?」

 ゾロアークに手を伸ばそうとした時……相手も、同じように手を伸ばしてきて。

 そう、ちょうど鏡のような。

 鏡に向かって手を伸ばすと、向こうの自分も同じことをしてきますでしょう?

 本当に、あれそのものだったそうよ。

 唯一の違いは、視界にいるのが自分ではなく……ゾロアークということ。

「わたくし、あなたに触れようとした際に、あなたに入ってしまって」

「入っ、た?」

 急に、要領を得ない話。

「わ、わたくしも、全く分からないのですけれど、そうしたら……その、あなたの体が、わたくしになってしまって」

「ごめんなさい、よく分からないんですが」

 当然ですわ、言っていることが意味不明ですから。

「百聞は一見にしかず、ですわ……」

 その声が消えると共に、カナエさんはハッと目が覚めたのですって。

 今のは何だったんだろう、と寝ぼけた目を擦ろうとして……視界に、見覚えのないものが突然入ってきて。

「ゾロっ!?」

 そう、声が出なかったそうなんです。

 ちょうど、夢の中で話していたゾロアークのような鳴き声が口から漏れて。

 慌てた拍子にまた視界の中の妙な物が動いて。

 ——そこで、やっと気付いたそうですわ。それが、自分の手だという事に。

 もう、それは、人のそれではなく……三本指の、ゾロアークの物で。

「ゾロ、ゾロぉ!?」

 わけがわからなくて、姿見に飛びついて。

 目の周りの赤い模様が爛々と目立つ……ゾロアークが、驚いた顔で自分を見ていたそう。

「ゾロ、ゾロぉ!?」

『お分かりいただけましたでしょうか、こんな事になってしまって、本当にすみません……』

(な、何とか、戻れないんですか!? ゾロアちゃんは、私がちゃんと面倒見ますし!?)

 助けてあげたのに、これでは恩を仇で返された気分。

 ところが、返ってきたのは……

『分からないのです、わたくしも、一体どうしてこうなったのか。あなたの中に入ってしまって、わたくし、出られなくなってしまったみたいで……』

(そ、そんな、じゃあどうすれば!?)

 強い未練のせいでしょうか?

 ゾロアの母親のゾロアークの霊に取り憑かれた影響か、カナエさんはゾロアークそのものに成り果ててしまったそうですわ。

「ゾロぉ?」

 と、その時。

 後ろから、可愛らしい声が聞こえてきたのです。

 カナエさんが騒いだからでしょうか、ゾロアが目を覚ましてこちらを見ています。

『ああ、わたくしの可愛いゾロア! 元気になったのね』

 心の底からの安堵の感情が、同じ体のカナエさんにも伝わってきます。

「ゾロぉ……」

 無意識に手を伸ばし、そっと抱き上げて。

「ゾロぉ、ゾロぉ!」

 ゾロアが無邪気に笑い、母親だと思って胸に顔を突っ込んできて。

『おお、おお、ありがとうございます。あなたのおかげで、この子が助かって』

(な、何だろう、私も今、この子が助かってよかったって、思ってる……)

 じんわりと込み上げる温かい感情。

 きっとゾロアークの気持ちなのでしょうけど、同じ姿になったカナエさんにとってはもう、自分の気持ちに違いなかったのでしょうね。

『図々しいお願いなのですが……どうか、この子が立派になるまで、面倒を見てやってもらえませんか』

 本当に図々しい、のですけれども。

 それでももう、抱っこしているゾロアに、母親のような情愛を抱いてしまったカナエさんには何の躊躇もない問いかけなのでした。

(ええ、分かりました。私が、あなたの代わり……というか、あなたと一緒に、この子を世話させてもらいますわ)

 ぎゅっ、と強く抱きしめて。

「ゾロぉ、ゾロぉ!」

 ゾロアちゃんがやっと見せてくれた笑顔は、カナエさんの心を温かくさせるのには十分すぎて。

 

 けれども、問題がすぐ起きて。

(ええっと、ゾロアークさん?)

『はい、どうされましたか』

(私、仕事に行かないといけないんです。この子を連れて行く、としても……私もポケモンだと、ちょっとばかり)

『ああ、そうですわね、そうですわね。うっかりしていました、ではイリュージョンをば』

 イリュージョン、ゾロアークの得意技ですわね。

 見た目だけ他のポケモンになりすまして、本質は自分そのもの。

 いかにも、ゾロアークらしい特技ですわ。

(わ、私にできるのかしら!?)

『大丈夫ですわ、あなたはわたくしですもの。では、いつもの服装を想像していただいて』

(は、はい)

『自分は今この姿だ、と信じるように思い込んでください』

(こう、かしら)

 一見、何も起こっていない気がして。

『では、目を開けてみて』

「えっ……あっ!?」

 驚いたのも無理ありませんわ。

 鏡には確かにいつもの自分、仕事に行く時の自分。

『うふふ、うまくいきましたわね』

「す、すごいわ、ちゃんと喋れているし……」

『それは、あなたの元の姿だから……イメージが強かったおかげですわ。わたくしも、安心しております』

「じゃ、じゃあ、うまく行かなかったら?」

『例えば、声はわたくしのままだったりしますわ。目の模様が残ってしまったり、とか』

「よ、よかったぁ……」

 何とか誤魔化せることに安堵して、ゾロアに向き直って。

「いい、ゾロアちゃん? ママは人間としてお仕事するから、この姿になってるだけよ。だから安心して、一緒に来てね?」

「ゾロぉ、ろぉ!」

 すっかり信頼してくれているおかげで、擦り寄って甘えてきて。

『よかったわ、匂いもするから分かるのでしょうね』

「え、ええ、それはちょっと、嫌かも……」

『ご、ごめんなさい、どこまで行ってもポケモンなので、わたくしも……』

 少し多めに香水をふって、ゾロアちゃんと出勤して。

 可愛い可愛いゾロアちゃん、色んな人に可愛がってもらえて。

 でもやっぱりママが好きなのか、カナエさんのそばからは離れなかったそうですわ。

 

「ふう、イリュージョンが解けちゃうかもって思うと大変だったけど、何とかなったわね」

『ありがとうございます、わたくしのせいでこんな面倒になってしまって』

 シャワーのお湯が体にかかるたびに、全身が変化していきます。

 黒く、細く、人ならざるものに。

(ああ、ゾロアークに戻っちゃったわ。でも、この姿にならないとゾロアちゃんも可哀想だものね)

 少々名残惜しくも、情が移ったゾロアの事を考えて。

(ふう、なんだかんだで疲れちゃった)

 ほっと一息ついた、その時でした。

 突然、体がポカポカして来てしまい……

(え、え?)

『あ、あらやだ、わたくし、こんな時に!』

(ど、どうなってるの、これ!?)

 おさまる事のない火照りに、カナエさんは狼狽えるばかり。

『そ、その、そのですねぇ、嫌だわぁ、恥ずかしいわぁ……』

(は、恥ずかしいって、え、まさか!?)

『その、まさか、ですわ。ちょ、ちょっと、体が、発情……しちゃってますの』

(ま、待ってくださいよ、子供がいるんですよぉ!?)

『そ、それはそうですけれどもぉ! わ、わたくしだって、れっきとしたメス、レディですのよ!?』

(んもう、んもう……)

 呆れつつも、ムラムラしている以上どうしようもありません。

 そうっと手を股間に当て、優しく撫でて。

「ろぉん♡」

 恥ずかしくなるほどの大きな声が、つい出てしまい。

『あっ、いい、いいですわぁ♡』

(もう、あの子に気づかれたら、恥ずかしいじゃない、こんなの! で、でも、ゾロアークの、これ、結構、いい、かも……♡)

 こういうところにも同居している影響が出ていたのでしょうか、二人は仲良く……同じ体でいたして、すっきりしたそうですわ。

 もちろん、ゾロアには秘密。

 自分の子に、自慰をしているなんて恥ずかしくて言えませんもの!

 

 と、こうしてゾロアークになってしまったものの、何とかカナエさんとして振る舞って。

 悪いことばかりじゃなくてですね、いいこともあったそうですわ。

 イリュージョンって、服まで真似ることができるみたいで……

 欲しい服をお店で穴が開くほど観察して、家でイリュージョンお着替え。

 たまに失敗して、ゾロアークっぽいお肌が丸見えになっちゃう時もあったそうですけど、それはそれで楽しかったそうですわ。

 ゾロアちゃんのお世話をしつつ、仕事も行きつつ、一緒に遊んだりもしつつ。

 春が来て、夏が来て、秋が来て、冬が来て、また春が来て……

 とうとう、その時が来たのです。

 ゾロアちゃんが大きく鳴いて、体が輝いて。

「ゾロ、あぁァアアアク!!!」

 進化して、立派なゾロアークに。

 その喜びはもう言葉にできぬほど、思わず抱きついてしまって。

『ああ、ああ、よかった、よかったですわ。やっと、やっとこの子も一人前になったのね』

(よかったわね、本当に。私も、一緒にいてあげられてよかったわ)

 ずうっと中で、一緒にいた二人。

 喜びの感情は、分け合う必要がないほどに溢れていて。

 と、その時。

『ああ……わたくし、何だか……』

(あら、どうしたの!? 何だか、声が小さくなってるわよ!?)

『多分、心残りだったことが無くなって、わたくし、わたくし』

(ちょ、ちょっと、待って! そんな、ずっと一緒にやってきたじゃないの!)

 カナエさんが呼びかけますが、どんどんゾロアークの声は小さくなっていきます。

『でも、でも、これで、きっとあなたも……元に戻れますわ。この子はもう大丈夫。一人でやって、行ける、か……ら……』

(あ、あ!)

 お別れ、というものはいつだってあっけないもの。

 気がつけば、頬を涙が流れていて。

 あんなにも賑やかだった頭の中も、自分一人になってしまって。

 カナエさんは目を開けて、抱きしめていたゾロアークから離れ、涙を拭いて……

「ゾロぉ!?」

 そう、拭こうとしたのですけれどもね。

 手が、そのままだったのです。

 ゾロアークのまま。

「ゾロ、ゾロぉ!?」

 理由は分かりませんが、もしかすると……長すぎたのかもしれませんわね、ゾロアークでいる時間が。

 いくら慌てても、どう見ても自分はゾロアーク。

 目の前で息子……と言っていいのでしょうか、もう一人のゾロアークはきょとんとしているばかり。

 戻らない、とわかった途端、どっと徒労感が押し寄せて。

 でも、それはすぐに無くなったそうですわ。

 一年以上、ゾロアークとしてやってきたんですもの。

 自分に何ができて、何が出来ないのかきちんと分かっていて。

 いつもいてくれた、母親ゾロアークさんがいなくなってしまったのは寂しく、辛いものの……カナエさんは戻れない以上、これからもゾロアークとして生きていく決意をしたんですって。

 

 さて、さて、ですわ。

 ここからは少し、踏み込んだお話になってしまうのですけれど、せっかくなのでお話ししましょうね。

 ゾロアを見つけた日のような、シンと冷える夜。

 カナエさんはいつものように、ちょっとムラムラした股間をお風呂場で慰めていたのです。

 と、そこに突然……息子さんのゾロアークがドアを開けて入ってきてしまい!

「ちょっと、勝手に入ってきちゃダメってばぁ!」

 あ、失礼。

 ここからはゾロアーク同士のやり取りですので……分かりやすく、人の言葉に翻訳している、体でいきますわよ。

「だって、ママとお風呂、入りたいんだもん」

「もーう、立派なゾロアークになったくせに甘えん坊さんなのね!」

 湯を張った浴槽に元気よく飛び込む息子を見て、処理途中だった股間はなぜだか疼き。

(だ、ダメよ、私、この子のお母さんなのよ。だから、この子に、でもでも、そっくりにはなったけど、元々は別に、親子じゃあない、けどけど!?)

 急に思い出してしまった、一見矛盾するような事実。

 心が高鳴り、少しもじもじしてしまい。

「ママ、どうしたの?」

「えっ!? あ、う、うん、何でもないわよ!?」

 のんびりと風呂に浸かっている、息子の臭い。

 ポケモンなのもあるせいか、しっかりと尖った鼻はそれを感じてしまい。

 ——そう、オスの臭いですわ。

 いつの間にか、立派なオスになっていたという事実が、ますます心を燃やし始めてしまうのです。 お湯に浸かってもいないのに、のぼせたような感覚に襲われて。

 でも、まさか息子に欲情しているだなんて言えるはずもありませんわ。

 ところが、ところがですわ。

「ねぇ、ママ?」

「な、なぁに?」

「ママ、俺のこと、好き?」

 ドキン。

 わざとしているんじゃないかっていうほど、的確な質問。

「そ、そりゃあ、好きよ? わ、私の、息子だもの!」

 何とか気持ちを誤魔化して、一応嘘偽りのない事を口に出し。

 でも……いくら息子、でも大人になったら立派なものですわ。

「でも、ママって……本当のママじゃ、ないでしょ?」

 ドキン、ドキン。

「え、え?」

「俺だって、気づいてたもん。俺の本当のママ、あの時、あの時、リングマに襲われてさ……」

 悲しい記憶を呼び起こしたからでしょうか。

 肩が震え、声も弱々しくなり。

「そ、そうだけど、だからと言って、私があなたのママなのは……」

「ち、違うんだよぉ」

 泣きながら、甘えたような声をあげ。

「えっ?」

「違う、違うんだってぇ。ママが偽者だなんて思った事ないし、ママはずっと大好きだし、ママとずっと一緒にいたいん、だけどさ。ママ、本当の、ママじゃない、じゃない?」

 親子は似る、と言いますが……いざという時、なかなか切り出せないところもそっくりです。

「う、うん」

「本当の、ママじゃないってことはさ」

 またここで、言葉に詰まり。

「……」

 カナエさんは思わず、顔を近づけて覗き込み。

「ま、ママと、結婚したい」

 そう早口で言い切った瞬間、尖っているゾロアークの鼻が、自分の鼻に触れました。

「え、え、え、え、ええええええ!?!?」

「だってだってだってだってだってさぁ、進化してからさぁ、ずっと、ずっと、俺変なんだもん、ママのこと考えると、ママの匂い嗅いじゃうと、ドキドキして、こんなことなかったのにぃ、おちんちんずっとおっきくなっちゃってぇ、どうしようもないから触ってたらなんか出ちゃうし、出ちゃったら出ちゃったで、ま、ママにこれ、出しちゃいたいって思っちゃってぇ、ママ、ママぁ、俺、ダメ、ダメェ!?」

 あちゃあ、と顔に手を当ててしまいます。

 自分自身の発情に気は使っていたのですが……

 当然、息子だって発情するはずです。

 すっかり、そのケアを忘れていた自分が情けなく。

 とはいえ、息子が進化したての頃は、母親が成仏してしまって落ち着いていなかったので……仕方なくもあるのですが。

「も、もしかして、進化して抱きついちゃった時って」

「え、えへへ、すっごく、ドキドキしてて、思い出すたび、おちんちん、おっきくなっちゃって」

 恥ずかしそうに笑いながら、浴槽で立ち上がり。

 ザパァと湯面から飛び出したのは……

「わ、わぁ」

 思わず赤面してしまうほどに、立派な男根。

 そういえば、カナエさんはオスのゾロアークと出会うことはなかったため……オスのシンボルなんて、見るのは初めてだったのですわ。

 びく、びくと震えるそれ。

 どこからどう見ても、本気で盛っている……あら、失礼。愛しているのが見て取れて。

 急に、何かが弾けてしまって。

 気がつくとカナエさんは、その立派な肉棒を思いっきり、長い口で頬張っていましたの。

「あっ、あっ、ママっ、ママぁ♡」

 いきなり本番は、思いとどまったのかもしれませんわね。

 口を塞がんばかりの大きなそれを、吸って、舐めて、軽く噛んで。

 もう、もう、充満するオスの臭いで、頭がくらくらして。

 何もわからなくなって、ただただ、オスだ、オスだ、オスだ、オスだ、という感情が脳を支配して。

 お母様の魂が残っていたら、もしかすると悲鳴をあげてしまったかもしれません。

 ですが、もういないのですから。

 立派なゾロアークになる、ということに……もし、誰かとつがいになるのが条件としてあるのなら、自分で満たしてあげたい、そんな気持ちだったのかもしれません。

「ま、ママぁ、俺、俺ぇ♡」

 情けない声をあげながら、息子が絶頂してしまい。

 ドロドロの精液が、一瞬で口をいっぱいにしちゃって。

「んっ、ゲホッ……」

 その勢いに驚いて、咳き込みながらチンポを解放して。

 つぅ、っと白い糸が……いやらしく、口とおちんぽを結んで。

「うふふ、ママのお口に、ピュッピュしちゃったわね♡」

 もう、こうなったら止められません、いや、止める必要なんてありませんわ。

「え、えっとぉ、ご、ごめ……!?」

 謝ろうとするその口を、キッスで塞いでしまい。

「本当に、いいのかしら? ママ、嫉妬深いから……浮気なんかしたら、ぜぇーったいに、許さないわよぉ?」

 目の周りの赤さが、爛々とか輝かんばかりの迫力。

「俺、俺、本気でママが好きなんだもん。そうじゃなきゃ、こうやって俺、無理やりお風呂に入って来なかったんだし」

「うふふ、かわいいわねぇ。でも、もう……ママって言っちゃ、だーめ♡」

 はにかんでいる息子を、カナエさんが優しく突っついてからかいます。

「え、な、なんで!?」

「だって、今から交尾するってことは……夫婦になるって事なのよ。ママ、息子じゃなくて——これからは、妻と、夫になるの。わかるかしら?」

 息子の、いえ、夫の顔を見ながら真剣に話しかけ。

「わ、わかったよ、ママ……でも、たまには、ママって言っても、いい?」

「もーう、仕方ないわねぇ! いいわよ、たまには! 甘えん坊なんだから、あ・な・た♡」

 いまいち決めきれない夫を見て微笑みつつ、接吻をかわして。

 浴槽から上がってきた旦那さんの股間に、自分の股間を擦り付けて。

「え、えっと、どうすれば、いいんだろ?」

「うふふ、教えてないものね。じゃあ、私がしてあげるから……あなたは、じっとしていて?」

 風呂場の椅子に座らせて、そのまま見つめ合いながら腰に乗り。

 さっき抜いたばかりのおちんちんは、もう立派に勃っていて。

 処理の途中だったおまんこは、大喜びでナニを飲み込んでいきましたわ。

「う、ああ、す、すごい、すごぉい、すごいっ……!」

 初めての体験に、体を逸らして喘ぐ夫。

 奥さんであるカナエさんもまた、初めてのゾロアーク交尾で心がバックバク。

「あっ、あっ、あなたぁ、あなたぁ、呼んで、呼んでぇ、カナエって、呼んでぇ♡♡♡」

「か、カナエ、好き、好きだぁ、好き、大好きだぁ♡♡♡」

 カナエさんの腰の動きに合わせるように、息を吐きながら旦那さんが愛を叫びます。

「私も、私もぉ、私もぉ、あっ、あっ、あっ、愛してる、わぁああああ〜〜〜〜♡♡♡」

 恥じらう事を知らず、大声をあげ合う二人のゾロアーク。

 もうそれはそれはすごいもので、何度も何度も絶頂した、そうですわ……

 

 めでたくお二人は結ばれた、のですけれど。

 ひとーつ、大きな問題がありましたの。

 それは、二人とも……「野生の暮らし方を知らない」という事でしたわ。

 仕方ないんですけどもね、片方はいきなりゾロアークになっちゃって、もう片方はそれに育てられて。

 では、どうするか、ですわ。

 うふふ……知りたいかしら?

 答えは簡単ですわ。

 二人とも人間に化けて、人間の夫婦として暮らしている、そうですわよ。

 どうかしら、あなたの知りたかった事にぴったりの回答じゃなくって?

 

 あらあら、どうされました?

 そんな変な顔しちゃって……

 え、どうしてそんな話をこんなに詳しく知っているか、ですって?

 あらぁ、どうしてかしら!

 世の中、不思議なことが多いですから……

 あっ、こらっ! 今、お客さん来てるんですから、ママだなんて呼んじゃ、ダメでしょっ!

 すいませんねぇ、うちの旦那ったら甘えん坊さんで。はいはい、後でね。

 えっ、なになに、変じゃなかったかって?

 変って、何がかしら?

 顔? 私の顔の事かしら?

 ああ、うちの旦那の?

 どう変だったのかしら……

 顔が細長くって?

 耳が、後ろにとんがっていて?

 はい、はい。

 目つきが鋭くって、目の周りが赤くって。

 口も大きくって、付け根に赤い模様があって?

 あらあら、随分具体的ですわね。

 じゃあ一つ、よろしいかしら……?

 もしかして、

 それって、

 こぉ〜んなお顔じゃ、なかったかしらぁ?

 う・ふ・ふ・ふ・ふ・ふ〜♡

 

 

 おしまい


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。